ある青年が畫くヒロインは、いつも似たり寄ったり。

それに気が付いた青年は、とある春の失恋を思い出す。

そう、青年の作品には彼女を忘れかけた今でも居座っているだ……。



2500文字で送る超短編小説です!読んで絶対損はしないので、是非是非読んでみて下さい!





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まずはこのページを開いて頂きありがとうございます!!

小さな物書きの短い物語なので、是非目を通して見てください!


その物書きの作品には、いつも少女が棲んでいる「一話完結」

 ソファーに寝転がりスマホとにらめっこする青年が一人。

 

 その画面には横書きの文字列が映し出されている。

 

 青年が手を動かすたび加筆され、難しそうな表情をするたび削られていく。

 

 何もメールをしている訳ではない。

 

 その数万字にも渡る文字列は一つの世界であり、たくさんの人の思いが交差している。

 

 そう、青年は小説を書いているのだ。

 

 まだ小説家とは呼べない小さな趣味を楽しむだけの物書きもどきだが、そんな少年にも悩みがあった。

 

「ヒロインが似たり寄ったりだな……。」

 

 完結こそさせていないものの、そのメモ帳にはたくさんの話の一話が書き綴られている。

 

 結末は決まっているのに、更新を止めてしまうのだ。

 

 そんな作品の断片のどれを覗いても、メインヒロインの性格は似通っている。

 

 底抜けに明るく天然で、誰からも好かれる優等生。

 

 容姿こそ違えど、ヒロイン達の性格は皆これに該当している。

 

 もちろん、キャラクターとして魅力的なのは確かだ。

 

 誰にも嫌味の無い態度は嫌悪の対象になり得ないだろうし、そんなヒロインに憧れるのは当然ではある。

 

 青年の好みがそこに詰まっている、と言えばそれで終わりなのだろう。

 

 しかし、青年はそれ以上の意味があることを知っている。

 

 

 

 時は遡ること数年。

 

 青年がまだ少年だった頃。

 

 中学校の離任式だ。

 

 その日は、少年の片想いの相手との別れの日であった。

 

 春の太陽のように優しく明るいその人への想いは、既に最高潮に達していた。

 

 離任式ということは、もちろん教員の一人……という訳では無い。

 

 同級生の少女だ。

 

 生徒会長を務める彼女は後に少年のヒロイン像となる人物でもある。

 

 クラスの人気者だった少女と少年の接点はそう多くなかった。

 

 ただ、社交的な少女が話しかけてくれたに過ぎない。

 

 恥ずかしがり屋な少年も、きっかけさえあれば話すことは出来た。

 

 クラスメイト以上友達未満と言ったところか。

 

 特別親しい訳では無いが、仲が良いか悪いかで言えば良い、程度の関係だ。

 

 だが少年は、少女に恋をした。

 

 今思えば非常に単純な動機でしかない。

 

 可愛くて性格の良い女の子が優しく話しかけてくれて、親しくなって勘違いを起こしたのだ。

 

 それでも恋愛を知らない少年にとってはかけがえのない想いで、どうしても叶えたい願いだった。

 

 しかし、まともな経験もない少年の恋愛の知識は小学生で止まっていたから、あまりに拙いアピールしか出来ない。

 

 いや、天然な少女からしたらアピールとすら感じられないものだ。

 

 だから、大して整った顔立ちをしている訳でもなく、誰からも好かれる人望がある訳でもない少年の告白が断られるのは火を見るより明らかだった。

 

 その日を境に、少女との関係は止まったままだ。

 

 そこですっぱり忘れられる程大人では無い少年は、どうにかしてこの想いを残そうと考えた。

 

 それが小説という形だ。

 

 ライトノベルにハマっていた少年は、もとより自ら創作したいという欲に駆られていたのだ。

 

 だから、少年は筆をとった。

 

 主人公は自分で、ヒロインはもちろん少女。

 

 この苦い想いを残すために主人公がフラれるところから始まり。

 

 もしも上手くいっていたらという後悔を並行世界の少女と出会い関係をやり直すという形にして。

 

 やがて二人が結ばれるラブストーリーを創り出した。

 

 しかし、それはまだプロットの形でしかない。

 

 拙い文章で綴られる告白はあまりにも薄っぺらく、少年と少女の織り成す会話はどれだけ捻っても嘘臭い。

 

 頭の中にある最高傑作はこの世のどの作品よりも美しく愉快なのに、実際に手元に溢れ出すのは作品とも呼べないチープな文字列だ。

 

 だから少年は筆を置いた。

 

 これ以上書き続ければ思い出を汚してしまうと感じた少年は、それ以降この作品に手をつけなかった。

 

 ただ、想い出の具現化が止まっても、アイデアはいくつもの浮かんでくる。

 

 それを忘れるには惜しくて惰性で文を書く。

 

 無能だと罵られた魔法使いが見返す話だとか、終わらない夏休みを生きる男女の話とか。

 

 思い付くアイデアを形にする事で文章力が上がれば、きっとあの想い出を綺麗な形に出来ると思うから。

 

 しかし、飽き性な少年はなかなか完結に漕ぎ着けない。

 

 そうこうしているうちに、少年の中で想い出も薄れていく。

 

 未知の環境で生活を送り、新たな人間関係が構築され、別の恋を経験して。

 

 今では少女を思い出すことも少なくなってきた。

 

 少女との関係や想い出は薄れるばかりだ。

 

 それでも、少年の創作の中には今でも少女が居座っている。

 

 少年の創り出すヒロインはいつも人気者の優等生で、主人公は冴えない少年だ。

 

 もちろん意図してでは無い。

 

 例え思い出すことがなくなっても、少年にとって魅力的なヒロインが少女そのものであり、少年が欲している展開というのは少年と少女の恋物語なのだ。

 

 だから、少年の書くヒロインは似通った性格をしている。

 

 それが少年の悩みであったのだ……。

 

 

 

 時は戻り。

 

 物を書く手を止めた青年は、久々に少女のことに思いを馳せた。

 

 青年では到底届かないであろう進学校に進んだ少女は、今頃何をしているのだろうか。

 

 きっと勉強に追われて大変な思いをしながらも、青春を謳歌しているのだろう。

 

 もしかしたら、彼氏とかは出来たのだろうか。

 

 そうだったら、そいつは幸せ者だろう。

 

 次に会えるのは同窓会になるのかもしれないな。

 

 中学生の頃と比べ物にならない程大人びて可愛らしくなっているに違いない。

 

 あれやこれやと考えているうちに、青年は一つの決意を固めた。

 

 想い出を一つ前に進めようと。

 

 止まってしまっていた続きをまた自分の手で作ろうと。

 

 そうなれば出来ることはそう多くない。

 

 再びスマホに視線を戻した青年は再び文字を連ねる。

 

 とても大切にしてきた想い出の続きだから、丁寧にじっくりと言葉を選ぶ。

 

 出来上がった文を何度も読み返し、不備を探し続ける。

 

 相変わらず拙い文章力だが、練習の成果は出てるんじゃなかろうか。

 

 必死に書き直した文はなかなかの出来だ。

 

 まず、まともに見てもらえるのか。

 

 そして、読んだその人は興味を持つだろうか。

 

 もし反応があったら、きっと嬉しくて舞い上がってしまうかもしれない。

 

 そんな不安と期待を胸に文を送信した。

 

 こうして青年の想い出は、一つ前進していく。

 

 あれから様々な物が止まったままの青年だが、今度はその手でやり遂げるだろう。

 

 青年にとってそれは、大切な存在なのだから……。 




さてはて、青年は想い出を進めるために何を書いたのでしょうか。

少女とまた仲良くなるためのメールなのか。

それとも、美しい想い出を再び形にしようとしたのか。

こういう終わり方、いいっすよね。

実体験風ですが、こんな/\の生えた物書き、いるわけないですよねぇ?

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