様々な登場人物が居ます。
今回はそんな中から少し変わった組み合わせで
お楽しみください。
でわ、始めましょう。
賑やかな声が溢れる店内が一瞬静まり返った。
「お邪魔だったかな?」
声の主は遠慮がちにカウンターの中へ視線を移す。
「とんでもない。今、お席をご用意いたします。」
若いグループから少し離れた席を手早く整え
「どうぞ、此方へ。」と招き入れる。
「すまないね。気を遣わせてしまった。」
座面にクッションを置いて足元には踏み台。
その心遣いに礼を言い客は腰掛けた。
「どういたしましょう?」
「…そうだな…甘い目のカクテル。ツマミはフルーツで。」
「承知いたしました。」
客はグループへ会釈をし声をかける。
「吾輩の事は気にせず楽しんでくれたまえ。なぁに、マスターと少し昔話をして退散するさ。」
その客は店内をぐるっと見廻し、何か安心した様に正面を向く。
「どうです?当時のままでしょう?」
シェイカーを振りながら笑みを浮かべる。
「君の希望だね、ピッキー。」
「はい。アインズ様に無理を言って当時とそっくりの内装にして頂きました。」
「偉大なる御方は全てご承知だよ。このスペースにはナザリックの全てが詰まっている。」
「チョコレートグラスホッパーで御座います。」
「オリジナルかい?」
「いえいえ、グラスホッパーのちょっとしたアレンジです。」
カクテルを舐める様に楽しみ思わず声を出す。
「…旨い。」
「ありがとうございます。」
「実はね、さっきコキュートス君の所へ行ってたんだよ。」
「コキュートス…様の?」
ピッキーは少し首を傾げ続けた。
「確か…コキュートス様は…。」
「そうだよ。冬眠中だ。だからカプセルに話しかけていたんだよ。そうしたら何故かココに来たくなってしまってね。」
「左様ですか…仲がお宜しかったですからね。」
「同族って事もあったが、彼は礼節に優れた武人だったからね。吾輩の騎士道とは通じる物があったんだよ。」
「もう何年になりますか…。」
「忘れてしまったよ。このまま老いて御方の剣になれないなら、いっそ"その時"が来るまで眠るなどと言いだしてね。当時は皆んな驚いたが、御方は彼の気性を熟知されていたからね。アッサリと申し出を受理された。」
「ご本人も余程のお覚悟でしたのでしょう。」
「それはそうだろうとも。繁栄したこの世界を楽しむ事も、仲間たちとの団欒も、全てを諦めてただ待つ事を選ぶのだから。」
「しかも、その時は来ない方が良い。」
「その通り。最も望ましいのは自分が永遠の眠りから覚めないこと。盾となり死ぬより過酷だよ。」
「忠義ですねぇ。」
2人の間に、在りし日の武人の勇姿が思い浮かぶ。
カクテル同様の甘い思い出が酔いを誘う。
「忠義と言えば最近新しい試みを始めてね。」
客は得意気に胸を張った。
「詳しいお伺いしても?」
仕事の話は基本しないのが心得なのだが
それもお客の意向による。
その辺はプロである、さりげなく続きを促す。
「聞いてくれるかい?実は眷属を街の酒場へ配置したのさ。
酒場は情報の宝庫だからね。」
「やはりまだ、御方へ逆らう輩が?」
「居ないとも限らない。それこそ御方のお言葉を借りるなら
戦いは始まる前に終わっているのだよ。」
「成る程…確かに情報は防衛の要、と聞きます。」
「その通り。敵を知ればなんとか、だよ。」
「益々お忙しいですね。」
「まだまだ老け込んでは居られないよ。それに眷属共もヤル気でね。フロアにもかつての活気が戻った様なんだ。」
趣味とは言え飲食店を営むピッキーは、活気に満ちて動き回る"眷属たち"を想像して少し気持ちが悪くなった。
「そ、それは良うございましたね。」
なんとか言葉を返したピッキーは、いつの間にか空いたグラスに目をやる。
「何かお作りしましょうか?」
来店した時とは違い上機嫌になった客は、スッと手を出して言った。
「いや結構。これ以上は明日に差し障る、それに表にシルバーも待たせているしね。ピッキー、楽しい夜だったよ。ありがとう。」
「此方こそ。私も懐かしいお話が聞けて楽しゅうございました。」
そう言って客は器用に椅子から降りて、他の客に声をかけた。
「年寄りの昔話に付き合わせて悪かったね。夜はまだ長い、楽しんでくれたまえ。」
ピッキーはカウンターから出て小さな包みを手渡す。
「シルバーさんへのお土産です。」
包からは良い香りが漂う。
「気を使わせてしまったね。中身を聞いても良いかな?」
「特製の干し肉です。ちょっとしたお口汚しに。」
「そうかい!それは喜ぶよ。帰って分けるとしよう。
じゃあ、ご馳走様。おやすみ。」
「お疲れ様でした。おやすみなさい。」
客はこれまた器用にシルバーと呼ばれた"乗り物"に跨り
音もなく帰って行った。
(まだまだ店の看板は外せませんね。私も頑張らねば。)
消えた先へ深々と一礼をして、
蝶ネクタイをキリッと締め直したピッキーは、
再び店内へと消えた。
営業中と書かれたプレートが気持ちよさそうに揺れていた。
、
お疲れ様でした。
カクテルの名前は検索で見つけました。
説明を読んで美味しそうだったのと
見た目も綺麗そうだったのが選んだ理由です。
あと、シルバーゴーレム・コックローチは
飲食しないのではと思いましたが流れで可能としました。
じゃあ、またお目にかかりましょう。
ありがとうございました。