アクアリウムは踊らないの二次創作ssです。

館長の話を書きました。

考察、ネタバレ要素、オリキャラ要素がありますのでご注意ください。

自己責任でGO。

なお、後半が出たらこっそり消します。

何故って?

お前そりゃ考察要素含んだssだから間違ってたら恥ずかしいやろがい!!!

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アクアリウムじゃ踊りにくい

オッス僕館長!

 

ビアンカ水族館ってとこ経営してんだけどマジで破綻寸前でぴえん超えてぱおん。

 

両親の遺産は兄が持ち逃げダイナミック!!

 

妻を食わせていかねぇといけんし……ヤッヴェぇこれ本気でしゃばい展開だわどうすっかねぇ!

 

くぅ! 海で時間潰すのも飽きたし部屋に戻って海洋生物調査の論文でもちょっくら書き溜めて一攫千金狙うかぁ???

 

ーーーそんな時に、浜辺に打ち上げられていたホオジロザメを見つけた。

 

「あなた!! そんな……素手で体長6mはあるホオジロザメを運んでくるなんて何を考えているんですか!」

 

「……だけど、ホオジロザメを救うにはこうするしかなかったんだ」

 

真面目なトーンで話しているが僕である。

 

それにあのホオジロザメ、なんか目が違ったんだよな。意思があるっていうか……。

 

こっちを見て生きたいって願ってたような……。

 

 

 

 

それからというもの、先ずはホオジロザメの回復を優先させた。驚くことに、そのサメは特殊個体と言っても差し支えないほどの回復力と、独自の動きを見せた。

 

僕に恩義を感じているような素振りを時折見せるのだ。

 

サメに名前をつけることにした。

 

僕はネーミングセンスがないから、妻と一緒に「クリス」と名付けた。

メスのホオジロザメだったから、可愛い名前が良いかなと思ったのだ。

 

 

 

それからというもの、運気が向いてきた。

ホオジロザメを保護・研究の名目でお金が手に入ったのだ。

 

回復してきたホオジロザメを展示したことで、少しずつ客足も来て、破綻寸前の水族館は快方に進んだのだ!

 

やったぜ。

 

でもまだ油断はできない。どうも胃に消化しきれない異物があるみたいだし……まるで石のような何かがあるんだ。

 

だが健康上何も問題はまだ起きていない為、放置するしかなかった。

 

どのみち、最後は海に還すことがゴールなのだから。

 

クリスに餌をあげている時、彼女はすごく甘えたような声を出す。それがすごく面白くて、いつも飼育員を突破して関わろうとしてしまう。

 

「ねぇクリス。君は天からの贈り物だよ。水族館も救ってくれて、僕も救われた。本当に助かったんだよ」

 

まるでクリスはしっかりと僕の話を聞いてるかのように唸る。

 

「そんな君が元気になってきてくれて本当に嬉しんだ。本当によかった」

 

「あなたー!」

 

妻が僕を呼んだ。僕が立って腕を広げると、妻は僕に応えて抱きしめてくれた。

 

「ねぇ聞いた? 年間パスポートの売り上げ過去最高だって! しかも、ほら見て新聞の記事。おしどり夫婦の奇跡だって! やだもー!」

 

「はは! でも間違ってないよ。君がいなかったら、僕は何もかも諦めてた。いつも助けられてる」

 

「あなた…」

 

そして彼女の潤んだ瞳を見て、思わず唇を近づけるとーー。

 

バシャン!

 

クリスが大きな動きで水槽に飛び込んで、僕ら2人はびしょ濡れになった。

 

それもなんだか面白くて、2人で笑った。

 

 

 

 

 

ある日のことだ。

 

ホオジロザメの水槽の前で、子どもや大人がはしゃいでるのを眺めているのを見て、物足りなさを感じてしまった。

 

「僕は、クラゲが好きなんだ。だからクラゲのブースを多めに設けててさ。父もそうだった。クラゲの研究に夢中でね。……クラゲは育てるのがすごく難しいんだ。デリケートで、寿命も半年から1年。繁殖に失敗したら、また海に行って探して…。その繰り返しで。だけどなんだろう。心臓も血管も脳もないのに、生命の脈動を感じるんだ。あの色合い、形。何を取っても……美しいんだよ」

 

妻に聞き流される蘊蓄を、目の前のホオジロザメにペラペラと話す。

おそらく僕の話をまともに聞いてくれるのはクリスだけだ。

……いや、サメなんだけど。

 

「でもね! クラゲの中でも不老不死って呼ばれてる存在がいてさ。……傷付いて死にかけたら若返って、蘇るんだ! しかも若返った際にクローン体も誕生する。この研究が進めば不老不死になれるかも、なんて民間のゴシップ屋は言ってるよ! ……不老不死に憧れる気持ちは、分かるけどね」

 

妻の顔が浮かぶ。

 

水族館の施設が隅から隅まで映像としてよぎる。

 

失いたくない、無くしたいものが、いつの間にやら沢山増えていた。

 

……死んでしまったら、きっと耐え難い辛さが待っているんだろうと、自覚していた。

 

「勿論、クリスとの別れも辛いなぁ。ほら、ホオジロザメの寿命って70年はあるって言うだろ? 僕が死んでしまったら君は……誰が面倒を見るんだろうなぁ」

 

黄昏てしまって、深くため息を吐いた。

 

「あなたー!」

 

妻が来た。迎えに来てくれたらしい。

ーーあぁ、そうか。

別れが辛いからこそ、人は命を繋いでいくんだ。

 

「……どうしたの? そんな深刻そうな顔をして」

「……あの、お願いがあるんだ」

 

妻に素直に打ち明けた。水族館の経営の危機では成せなかった事を望んだ。

僕は、どうしても妻と生きた証が欲しかった。

妻は、少しだけ涙を浮かべて、遅いわよと笑った。

 

ホオジロザメが、僕らの姿をじっと見ていた。

 

 

 

 

 

「え? 女性の来館者が行方不明に? はい、……はい。分かりました。近辺を私どもの方でも確認します。施設も、はい念のため。はい。よろしくお願いします。……」

 

警察から連絡が来た。

 

水族館に来た女性の足取りが掴めないらしい。それも、気付けばいなくなっていたそうだ。

 

何事も無ければいいが…。

 

「ねぇあなた聞いた? 最近水族館で話題になってるパワーストーン」

 

「え、何それ知らない」

 

「なんでも、深■の石って言って…。石を身につけているとどんな願いも一つ叶えるんですって。だけど、かなり物騒で、いじめっ子が自殺したとか上司が死んだとか」

 

「物騒だな…。そもそもそんな石をパワーストーンにするなんて」

 

「えぇ…。若い子の間で人気らしいんですけど……。そんな物にお腹の子もハマってしまうのかなぁって思うと、ちょっと心が痛くて」

 

妻のお腹は少しずつ大きくなっていった。なんとなく僕もそこから父親としての責任感が芽生えてきたのであった。

 

「……大丈夫だよ、僕たちの子だ。そういうものに頼らず、自分の力で未来を切り開いてくれるよ」

 

そう、僕は妻に語った。

 

ーーこの先の未来を見据えて、本気でそう思ってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぅ、ぅう」

 

なんだ。

 

どこだここは……。

 

目が覚めると、全身がひどく傷んだ。

 

それに、嗅ぎ慣れていない生臭さが鼻を貫いた。

 

「おはようございます、あなた」

 

……顔を少し上げると、誰かがいた。

 

……いや、なんだこの違和感は。

 

「だれ、だ……」

 

「? あなたの妻ですよ?」

 

「ち、がぅ……僕には、分かる……誰だ、君は……」

 

「……あなたの妻ですよ。わたくしは、あなたの妻の、“クリス”です」

 

ーー息が止まった。

 

クリス? ホオジロザメの、あのクリスの名前がなぜ出てくる?

 

ここは……水族館? いや、なんだこれは。

ビアンカ水族館が、まるで鏡合わせのように左右非対称に……。

 

「わたくしも最初は驚きました。あの石を飲み込んでから、不思議な感覚がずっとあって。この世界は、あなたのいた世界とは別の世界です。ここはこの石に望まれたニンゲンたちが管理されていた。いわばアクアリウムだったんです。時間も、空間もこの石の所有者が望む世界に変わる。そして」

 

「……」

 

「この世界に閉じ込められた人間たちは、この世界で死ぬと理性なき怪物になるか、クリーピーと呼ばれる存在になる」

 

「なんの、話だ……。っ、妻は、妻はどこに……」

 

妻を求めて、体を起こす、現実と向き合う為に周りを冷静に見渡す。

 

「……ぁ」

 

そこにあったのは、顔と下半身のない妻と思わしき遺体。

 

そして、自ら妻を名乗った女の顔は、妻の顔をしていた。

 

「ぉ、ぁぁ、ぁああ!?」

 

喉が詰まり咽せる。悪夢だ。悪夢としか思えない。

 

「……願いを叶えてもらったんです。成りたいって。人間に。……隣にいる、あの女にって」

 

僕は叫ぶばかりで何も聴こえていない。ただ女は嬉しそうに語るのだった。

 

「わたくし、あの石を飲み込んでから意思が生まれたんです。そして、初めて恋を知った…。怪我を治してくれて、ずっと話しかけてくれて、初めて、一緒にいたいって思ったんです。だから……」

 

「子どもが欲しかった……だけど、あの女がもういたから、諦めるしかなかった……。

でも望んだ世界に来て、その人の顔とお腹を手に入れた……。これで、あなたに愛してもらえる……あの日、あの女にしたみたいに、わたくしも抱きしめてもらえる……。だからっ」

 

サメは、クリスは僕を背中から抱きしめた。

 

「好きです。ずっと、好きだったんです。一生、一緒にいましょう」

 

 

 

 

 

それから、意志のない生活が始まった。献身的にクリスは僕の面倒を見ようとする。妻の顔で、別の魂で。

 

どうでもいい。

 

ーーどうでもいい日常だった。

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

僕は、1人で徘徊した。

 

素直にいうと、自殺する為だった。

 

もう生きててもどうしようもない。そんな風に思っていたのだ。

 

そう思ってたのに、だれかにぶつかった。

 

「あ、ごめんなさい!」

 

「あぁいえ、僕もよそ見をしてーーー」

 

それはクリーピーと呼ばれる生物だった。

 

おそらくこの世界で死んだ人間が別の生命体になったものだろう。

 

それこそ、ベニクラゲのような。

 

ーーベニクラゲのような。

 

「き、君は」

 

「え?」

 

記憶がない。僕は何処にいた? 生まれた土地は? いつの間にかボケてしまったのか?

いや違う、目の前の彼女のことはわかる。

 

ーー最愛の人の名前が、何故か出てこないだけなのだ。

 

分かった。全て理解した。

 

僕がこの世界で成すべきことを。

 

君を、クリーピーを、人間に戻そう。

 

僕はその為に、生きてきたんだ。

 

 

 

 

 

「お願いです!! 出てきてください!!」

 

クリスが部屋のドアを叩く。うるさい、まだ研究は続いているんだ。

 

「もう何日も食事を取ってないんです!! 早く出てきてください!!」

 

うるさい、僕は彼女を救うんだ。

 

閉じ込められたクリーピー達も、絶対に人間に戻すんだ。

その為に、その為に。

 

「……お願い……です……」

 

サメがいつもの様に、狂った様に愛を呟く。

30分、扉越しに好きと言われ続ける。

 

ーーここで僕が彼女に狂えていたら、どれほど良かっただろうに。

 

クリスはまた、消えていく。おそらく律儀に妻の顔で僕の水族館を運営するのだろう。

 

現実とこの世界の時間にはズレがある。

 

だからこそ、僕はここでどれほど研究に時間を注いでも問題ない。

 

ーー人間が欲しい。

 

普通の人間じゃない。

 

この世界に順応し、水生生物から人間にスイッチを入れ替える存在が。

 

あぁ、もう名前の忘れてしまった君へ。

 

僕はまだ頑張るから。大丈夫。

 

だっていつも君がそばにいたんだ。今度は僕がーーーー。

 

 

 

 

 

 

後に、博士と呼ばれる様になった男と。

 

スーズが出会うまでは、遠くない。

 

 

 

 

 


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