まあ、ウマ娘での馬の字といえば点4つではなく2つというのが常識ですが
実は先日気になって少し調べたところ、馬の字の前2つの点以外は尻尾を表しているとわかり、『じゃあ別にいいじゃん』となったので、当方の作品内での有馬記念は有馬記念です。
悪しからず。
誤字報告自体はめっちゃ助かってるので、これからも見かけたらよろしくお願いします。
スマホでポチポチやってるせいか誤タイプが多くて困るんですよねぇ。一応自分でも確認しながら書いてるんですがね。
メイクデビューは恙無く終了した。
ウイニングライブも、おハナさんの指導もあってジュニアクラスにしては抜群の出来であった。
問題はここからである。
「やだ」
「や、そんな事言わずに。な? ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから」
「絶対イヤ」
「タイシン……」
メイクデビューから、早くも一週間が経とうとしている。
まあ、それ自体はいいのだ。
次に予定しているのはホープフルステークスだから、それまで時間はたっぷりとある。一週間経過したところで、特に問題はない。
問題らしい問題と言えば、そう。
乙名史悦子による取材の話である。
あの時札幌レース場で、タイシンの事を考えて取材の打診という形にしてくれた手前、こちらとしてもタイシンに話を通さざるを得なかったわけなのだが……。
どうやらタイシンは取材は受けたくないらしい。
「なあ、タイシン。なんでダメなんだ?」
「その乙名史って人は、妄想癖が激しいチケットみたいな人なんでしょ。そんなめんどくさい人の取材なんか絶対にヤダ」
訂正しよう。
どうやらオレの紹介の仕方が悪かったようだ。タイシンに非はない。
いや待って欲しい。
我ながら言い得て妙な紹介だと思ったんだ。
タイシンに取材の話をした時に『その乙名史さんってどんな人?』って聞かれたから、昔の印象そのままに『妄想癖の激しいウイニングチケットみたいな人かな』って答えたのが間違いだったんだ。
実際は……あー……まあ、チケットより多少マイルドでは……うーん……。
……よし! 今回は無かった事にしよう。
「わかった。じゃあ、今回の取材は受けなくていい。けど、お前がこれから勝ち進んで行けば、必ず取材を受けなきゃならない時は来る。それは覚えておいてくれよ」
「……わかった。で、今日は何すんの?」
「うん。タイシンはメイクデビュー戦で芝2000を走破したわけだから、2000は問題なく走れるよな?」
「当たり前でしょ」
「感覚も覚えてる」
「それが普通でしょ」
「なら、ダービーに向けた調整をしていこう」
「ダービー……!」
日本ダービー。またの名を東京優駿。
この中央トレセン学園からさほど遠くはない東京レース場、または府中レース場と呼ばれるそこで行われる、『最も運のあるウマ娘が勝つ』とされているレースである。
その名前から、このレースに勝ったウマ娘を日本一のウマ娘とする風潮もあり、ここで勝つ事を目標にしているウマ娘も少なくはない。
クラシッククラスを代表するレースのひとつでもあり、皐月賞、日本ダービー、菊花賞を制したウマ娘をクラシックの代表レースを制したウマ娘として『3冠ウマ娘』と称する。
ちなみに、ここ中央トレセン学園では、ウイニングチケットが日本ダービーへの並々ならぬ情熱を有している事で有名である。
「わかっているとは思うが、一応復習しておこうか。日本ダービーは東京レース場で行われる芝2400mのレースだ。ギリギリ中距離の、左回りのレースだな。メイクデビューで走った札幌やホープフルステークスの中山は右回りだから、ここはちょっと注意が必要だ」
「左回り……」
「で、オレの見立てでは、お前はホープフルステークスも皐月賞も問題なく走れる。どのみち芝2000の右回りだからな。両方中山レース場ってのも大きい。そこで、今回から一週間ずつ交互に左回りと右回りの練習をやる」
「それ、練習要るわけ?」
「もちろんだ。右回りは良い走りをするが左回りは凡走……逆に、左回りは良い走りだが右回りは凡走ってウマ娘は少なくない。……まあ、お前は問題ないと思うが、やっておいて損はないだろうな」
右に曲がるのと左に曲がるのとで、どうしたって感覚の違いは出てくるはずだ。
それを身体に覚えさせないと、いざ走った時に十全に走れないかも知れない。
故にこそ、こうした日頃の練習というのが大事なんだ。
「それでな、タイシン。前々から打診してた奴の都合がついたから、そいつに併走を頼んでおいた。今回からは勝負形式の併走がメインのトレーニングだ。心してかかれよ」
「……それはいいけど、肝心のそのウマ娘は?」
「……はて。そろそろ来ててもおかしくないんだが」
と、口に出した時、そいつは現れた。
風と音を置き去りにして、そこに。……というのは流石に語弊があるが、まあ、それくらい速かったのだ。
「いやー、すまんなぁ。オグリの世話しとったらちょっと遅れてもうたわ」
トレセン学園指定のジャージに身を包んだ、垂れ目で芦毛のウマ娘。
関西弁が特徴のそのウマ娘の名は、タマモクロス。
タイシンよりもさらに身長が低く、しかしタイシンよりも追込策に一日の長があるウマ娘である。
「……誰?」
「あぁん? なんや、椎名トレーナー。ジブン、ウチの事なんも話しとらんの?」
「いや、てっきり知ってると思ったが……知らないのか?」
「知らない」
「かーっ! なんやねんジブン、そんな『ウチは他のウマ娘なんかに興味ありませんー』みたいな顔しよってからに! ウチはタマモクロスや! よう覚えとけ!」
相変わらず押せ押せのタマモクロスと、『えっ……なんなのコイツ』と言わんばかりの顔をしたタイシン。
……まあ、ぶっちゃけ相性は悪いよな。
「いや、名前言われてもわかんないし……」
「ホンマにジブン、他のウマ娘に興味ないんか!? 白い稲妻タマモクロスゆーたら、そこそこ有名やと思うんやけどなぁ!」
「どうどう。落ち着けよ、タマ。とりあえず紹介しよう。こいつはタマモクロス。お前より小さくて、だがお前よりも強い、追込策を得意とするウマ娘だ。ちなみに食が細い上にレース後の消耗が激しいんで、あんまり頻繁にはレースに出てないな」
「要らん事まで言わんでええねん!」
「アタシより小さくて……アタシより強い……?」
上から下まで眺め、確実に自分より小さい事を確信してグッとガッツポーズ。
「なんやジブン! 背ぇ高かったら偉いんか!? どつき回したるぞコラァ!!」
それを見てブチギレるタマモクロス。
「はいはい、併走で十分どつき回してやってな。……さて。いいか、タマモクロス。今回お前には、このタイシンを追いかけ回してもらいたい」
「はぁ? 追いかけ回すぅ? なんや、鬼ごっこでもせえっちゅーんか。そんなんすぐ捕まるに決まっとるやろ」
「は……?」
「やめろやめろ。なんだってお前はそうすぐに噛み付くんだ、タマ」
「そうは言うけどやなぁ……」
「ま、とにかくだ。形式としては鬼ごっこで間違いない。まずタイシンが走り出す。その5秒後にタマはスタートしてくれ。タマはタイシンにタッチするのが目的。タイシンはタッチされないように逃げるのが目的。タッチされたら、タイシンは10秒間の全力ダッシュ。……と、こんなとこでどうだ?」
「はー、なんやおもんないな。そんなんすぐに捕まるに決まっとるわ」
やれやれと肩を竦めてタマモクロスは言う。
確かに、ウマ娘の身体能力を加味すると、タマモクロスにとって、障害も何もない場所でタイシンにタッチするだけなのは、かなり楽に思えるだろう。
だが、これはまだ触りの部分だ。
「まあ、そう言わずに頼むよ」
「……まあ、引き受けたんはウチやし、やらんとは言わんけど」
「ちなみに、タッチ1回につきベジノマギアのニンジンアイスをひとつ贈呈しよう」
「なんやと!?」
ベジノマギア。
それは、ウマ娘による、ウマ娘のための、スイーツ専門店。
専属契約を交わした農場から直送されたニンジンをふんだんに使用したスイーツの数々はウマ娘たちの胃袋をがっしりと掴んで離さない。
本来は購入に際しては予約が必要で、それ故に完全限定生産となってしまっているのだが、何故かオレのところにはベジノマギアの優待券が届く。
不思議に思って問い合わせた事もあったが、『お世話になっているのでそのお礼です』という事しかわからなかった。
ベジノマギアを立ち上げたウマ娘とは面識は無いはずなんだが。
さておき、ベジノマギアはウマ娘であれば誰もがそこのスイーツを欲して止まないほどのウマ娘界隈での超有名店なのである。
あのメジロ家でさえ購入には数ヶ月前からの予約を必要とする事から、どれほどのものか察せるだろう。
「タイシン。タマから1度もタッチされずに逃げ切れたら、ベジノマギア本店に連れて行ってやろう」
「本店に……!?」
途端、闘志の蒼炎が双眸に燃え上がった。
タマモクロスの方も、何故か、身体が白い稲光を纏っているように見える。
「……とはいえ、だ。タイシンとタマでは、残念ながらタマの方に軍配が上がってしまう。そこでだ。チームリギル、チームスピカ、チームカノープスから助っ人に来てもらった」
「……いないけど」
「もうすぐ、もうすぐ来るから!」
この嘘つきめ、と言わんばかりのじっとりとした視線を向けてくるタイシンに必死で弁明する。
「――お待たせいたしましたわ」
それからしばらく『まだか?』『もう少し!』を繰り返していたら、背後からお嬢様然とした声が聞こえてきた。
振り向けば、今回の助っ人として来てくれる予定だった面々がようやく揃っていた。
助っ人の面子は、チームリギルからグラスワンダーとエルコンドルパサー。
チームスピカからはメジロマックイーン、トウカイテイオー、ダイワスカーレット、ウオッカ。
チームカノープスからはナイスネイチャ、イクノディクタス。
そこにタイシンとタマモクロスで、総勢10名での合同トレーニングである。
チームスピカのゴールドシップ、チームカノープスのツインターボ、マチカネタンホイザに関しては、今回の企画に合わないので辞退していただいた。
というか、ゴールドシップには普通に断られた。
グラスワンダーとエルコンドルパサーはおハナさんに無理言って貸してもらっているだけである。
「来たな、ご褒美に釣られた強欲ウマ娘ども」
「違います! 決してベジノマギアのスイーツになど釣られておりません!」
「ご褒美としか言ってないんだがなぁ……。ま、とにかく今日は来てくれてありがとうな。みんなには、このタイシンとタマモクロスがやるゲームのために協力して欲しいんだ」
「それはいいんですけど、何をするんですか?」
そう口を開いたのは、赤茶色の大きなツインテールが特徴的なダイワスカーレットだ。
「やる事は簡単だ。タイシンとタマモクロスは鬼ごっこをやるんだが、その際、間に入って壁役をやってもらいたい。タイシンが先頭を走るから、その後に続いて、自分の脚質に合ったポジションで追走してくれ。タマはタイシンにタッチしに行く時、壁役のみんなをすり抜けて行く事。大外ぶん回すとか、内ラチを攻めるのはナシだ」
「そんなんいくらでも出来るわ」
「ちなみに、連続タッチを防止するために、タマは一度タッチしたら最後方に戻ってくれ。んで、タイシンが10回タッチされたら、タマはそのまま先頭に。タイシンは最後方まで下がって役割交代。10回タッチ出来たらまた交代だ」
集まったみんなはしばらく黙っていたが、やがてルールを把握したようで銘々に頷いた。
「でな? 壁役のみんなにも罰ゲームを設けようと思うんだ」
「ケ!? そんなの聞いてないデース!」
「言ってないもん。で、オレ、みんなにベジノマギアの優待券あげるって言ったよな」
これにも頷きを返してくる助っ人メンバー。
「10回抜かれたら優待券没収な」
「お、横暴だ!」
「んー? いいんだぞ、ウオッカ。お前だけ不参加でも。そうなると優待券に余りが出ちゃうなぁ……」
「くっそ……やる! 絶対やるからな!」
優待券か、はたまた無報酬か。
助っ人に集まったウマ娘たちは、それぞれに闘志を燃やしている。
特に燃えているのはグラスワンダーとメジロマックイーンだろうか。グラスは単純に勝負事だからかも知れないが、このメジロ家のご令嬢は間違いなく優待券目当てだろう。
「よし、じゃあ早速始めるか!」
レースではないが、ウマ娘たちの絶対に負けられない闘いが幕を開けた。
あと、誤字報告に関してなんですけど。
『ここ間違ってないか? 大丈夫か?』みたいなのは嬉しいんだけど
『ここ要らんわ。ここも』みたいな、添削めいた事されると
『そんなもんお前が書くお前の作品内でやったらええんじゃ。そこはそれで合っとるんじゃ。いいから黙って読めや』ってなるので
純粋な誤字報告以外は要らないです。はい。