『AR/MS!!』 冷淡JKが本気の「コスプレサバゲー」に挑戦する話 作:よしどら
原作はとても面白いので宜しければそちらをどうぞ。現在ニコニコ漫画で連載中!
子供の頃、私はラブリーミリィが好きだった。
自分には一切持ち合わせてなかった優しさや力強さ、そして変身してないときのおっちょこちょいさ。
私は彼女が大好きだった。願わくば、あの子になれたらいいのにと思うほどに。
でも私に似合う魔法少女はと言われたら、私は全く違う少女を選ぶだろう。
「魔法少女クーアルスノウ」
映画版のみで登場した“最も嫌われた”魔法少女。
性格は残酷で無慈悲。世界を救うために“人間を犠牲にしようとした”、滅ぼされるべき悪。
ソラールを取り込み、ミリィの精神を氷で閉じ込め…そして最終的に消えてしまった少女。
子供はギャン泣き、親から批判が殺到。最後がハッピーエンドで終わった時ももやもやを残した賛否両論の作。
そんな彼女を追っていく内に、私はあの子になりたいと思ってしまった。
『
そんなときに見つけたゲームが、AR/MSと呼ばれたサバゲーだった。
『エルフに
なりたいあの子になれるなんて聞いたら、私は我慢なんてできなかった。
冷淡で残酷、すべてを捨て去りながらも全てを奪い取ることが出来なかった優しいあの子に。
『魔法少女!』
『AR映像を自分に直接投影することで、画面越しじゃなく生身のまま!キミもなりたい姿になれるのだー!』
『そんな夢と現実が混ざり合うフィールドで…』
伊達眼鏡をはずして、私は小さく笑みを浮かべる。
そのまま第二体育館に行こうと足を動かし……目の前の光景を見て足が止まった。
やばい!人だ!?
(どうしようどうしようコミュ障の私が一緒に歩いたら迷惑かな此処はちょっと抑えつつ足を止めてそっと周囲を見渡してる風を装ってそっとばれない様に扉を開けたりとかしていや待って此処で自己紹介とかしないと私ボッチでサヴァイヴする事になる!?一緒に青春駆け抜けようって仲間居ないのにレッツサヴァイヴ(笑)とか言われるのかなどうしようどうしようどうしよう早く行って欲しいいや出来れば私に気付いて会話にそれとなく混ぜて頂けると助かりますでも無理矢理じゃなくても)
私の思考がどうすればいいのかパニックになっている間にも、三人は扉を開けて入っていく。
それをじっと見つめ…その後に周囲に人が来るか確かめつつ…私は扉を音を立てずに開閉してすぐに入る。
小柄で良かったと思いつつ、私は小さく安堵の息を吐きつつ…急いで人の居ない席に座って小さく安堵の息を吐こうとして……
「…あ、隣座ってもいい?」
「……うん」
思わず吸い切った息を全て吐いた。
終わりだ。私の学校生活は此処で終了する…いやまてせめて明るく楽しい会話をすればまだ光は…
「AR/MSは初めて?」
「此処に書いてある」
「あ、えーっと…そうだよね。ごめん」
おわった!私の生活が全て終わったよ!
…取り敢えず此処は戦略的無言だ。逃げるが勝ちだし。
あ、一番前の席に座ってた子ってさっき三人で話してた…やっぱり話す意味なかったかも。三人席だったから一人あぶれちゃうし。
…あれ?ひーふーみーよーいつーむーな……あれ?あれ?
「全員!注目!!よくきたな新入生の諸君!私は部長の
「副部長の田中 進です」
…え。部長は分かるけど田中さんあんな見た目で高校生なの?本当に?
あのピッチピチの制服を着てても絶対顧問だと思ったよ?!ありえないでしょ!
そんな事を考えている内に部長の言葉を聞き流してしまい…私の周囲の人達が立ち上がったのを見て渡井は思わず周囲を見渡した。
「ん?なんだお前は、行かないのか?」
「……」
ヤバい部長に目を付けられた部活生活終わっちゃう!?
えっとこの時はなんていえばいいんだっけえーっとえーっと…そうだ!
「別に急いでも更衣室が空く訳じゃないので」
「ふ…そうだな。だが我が学校の更衣室は広いぞ?」
「そうですか。ではいどうしますね」
良しこれで完璧なコミュニケーションだ。
取り敢えずこのスーツを…わぁピッチリ…ファウンデーションスーツって言うんだっけ。
更衣室でも皆恥ずかしがってる…わぁ。恥ずかしがると余計えっちな服みたい…なるべく気を付けよう。
「…あ、の…」
「?」
「何でそんなに平気そうなの?恥ずかしくない…?」
「周囲みたら分かる。そうしてる方がとても恥ずかしい」
嘘だよ今でも恥ずかしいよ何処に目付いてるのさ!
凄い顔赤い気がするし…もーう…!
「…た、確かに。でもそんなに普通みたいに出来ないよぅ…」
「……服は服。裸よりマシ」
「うぅぅ…凄いんだね雪白さんって」
小さく目を瞬かせる。今名前呼んでもらっちゃった?
好き。
「…名前」
「あ、ごめん。アンケート見たらって言われて観ちゃって…
「うん。宜しく!」
「うん!因みに私の名前はナズナ!
「ん。よろしくナズナ」
「こちらこそ!……良い子、なのかな?」
最後にぼそっと言われたけど何言われたんだろう。調子乗ってるとかかな?どうしようどうしようどうしよう。
取り敢えず握手して手を三回上下してから離して外に行こう……うん、恥ずかしがってる女の子やっぱ可愛い。
「あ、やっぱり此処にいた」
「…ナズ…なに?」
名前呼ぼうとしたけど辞めてしまった。馬鹿!此処は勇気出さないと駄目な場面でしょ!
ナズナから貰ったタブレットを操作して、キャラクター欄から私が目指したキャラを探す。
…私が探していたキャラの二個上にミリーがあった。
折角なら使ってみようかな、でも私が目指してるキャラもあるしでも最初に好きになったのは…
「ミリー!」
「…っ」
思わず聞こえた声を聞いて振り向く。
…魔法少女ラブリーミリー好きが居るなんて!この年代だと確かにいるっちゃいるけどオタクの方が強かったイメージでまさか同年代しかも女子に居るなんて……しょうがないミリーは譲ってあげよう。
でもスノウは私のものだ。絶対渡さん。
「…ふふ」
「見つかった?」
「ん」
「そっか。…あ、備品取りに行かないとだって!一緒にいこっ?」
「ん」
クーアルスノウの武器はどうなるんだろう。あの子ちょっと使い辛い性能だし……あ、この子は杖とカードだけなんだ。
ミリーと同じ武器種だと…最初に現れた時の疑心暗鬼モードかな?…成る程三つの種類で…使える魔法も固定されてるんだ…!最高!
「これでこそスノウ」
「うわぁ。怖い」
「…なに?」
「いやなんでも。っと…フィールドってこんな感じに造られてるんだね」
そういって辺りを見渡したナズナを習って私も周囲を見渡す。
…確かに、こんな棒が木になったりとかするんだ…面白そう。初めてやるから早く始まってほしいという思いが止まらない。
「全員注目!これよりフィールドを起動するがその前に!ARレンズの着用を忘れた者が居ないかだけ確認しておく!」
「ほら吹雪ちゃんおめめぱっちりしてー?…んー?……はいだいじょーぶ!」
「…いらないでしょ」
「一応確認確認!ほら吹雪ちゃん!私の目も見て?」
「…とどかない」
「知ってる♪からかっただけだよ!」
ナズナは意地悪。しっかりと覚えた。
今度意地悪されたら凍らせてやるなんて思いつつも、私はフィールドが変わる瞬間を今か今かと待ち望む。
「それでは!!新入生の諸君!!」
部長が手を上げるのと同時に、私は自分の姿を見つめる。
…ピッチリのスーツに白い杖の備品、そしてカードが入ってるホルダー。
「改めて歓迎しよう!
それが一瞬で切り替わる。
ぴっちりとしたスーツは真っ白な衣装に、ふわふわとしたフリルのドレス。
一見してそれは雪の妖精の様な姿で、けれど何処か高級感と威厳を感じさせる姿とアクセサリー。
…白かっただけの杖は持ち手の後ろに黒の宝石、そして白くて無骨なまっすぐの棒だった筈の部分は精巧な彫刻が。
先端に輝くのは映画のキーパーツの魔法少女の涙と呼ばれた宝石が嵌め込まれている。
「……スノウに、なってる…」
「凄いね…私も何か好きなキャラクターを作っておけばそういう感情になれたのかな?」
感動しながらナズナのほうを見つめると…先程までなかった筈のケモ耳と尻尾が生えている。
…獣人だ。でもピッチリスーツのほうが布面積大きかったのはなんでなんだろう。
「…恥ずかしくないの?」
「恥ずかしいよ!お陰で感動薄れちゃったよ!?」
「…だろうね」
取り合えずチーム分けが発表される。
…ふむふむ。私の所為で奇数になってるから私が入ったDチームの対戦相手のCチームも増やすのか。誰か一人AとCを両方体験出来るらしい。
…うらやましい。
「良かった!一緒のチームだね!」
「ん」
「ふふふ…嬉しい?ねぇ嬉しい?」
「ん」
「観戦いこ?一緒に見よ?」
「ん」
生返事をしながら私達はフィールドから離れて外に歩いていく。
…そして試合開始の合図を聞きながらも…私の身体はうずうずしていた。
試合したい戦いたい遊びたい蹴散らしたい闘いたい。
そんなことを考えていると…私の後ろの方からぎゅっと抱きしめられる。ナズナの体温?
「…ナズナ?」
「怖がらなくても大丈夫。私が絶対守るからさ」
「……あ…うん」
ごめん怖くて震えてた訳じゃないの…唯戦いたいってだけなの。
…でもこれってあの映画と凄い似てる。
震えてる彼女に魔法少女のミリーが小さく笑みを浮かべて、私が守るからって台詞と…
「…ん」
「お。わらったなー?こちょこちょー!」
そんなことを考えて私は思わず笑みを浮かべる。
まさか此処でこんな風な役職が回るとは思ってなかった。今回は隠れて逃げようかな?
経験者に任せれば終わるでしょ。多分。
そんなことを考えつつも、私達はフィールドの中に向かって歩いていく。…こういう構造になってるんだなぁ…不思議。
「あ、こっちですよ。後の三人はまだ作戦会議中ですかね?」
「…です」
ちっこいせんぱいかわいい。ぎゅってしたい。
ナズナちゃんもうずうずしてるしこれはぎゅってしても許されるのでは…?
「ナズナ」
「ん?どしたの?」
「勝とうね」
「もっちろん!楽しもうぜぃ!」
私がそういうのと同時に、後ろから悲鳴のような歓喜の様な叫び声が聞こえて思わず振り返る。
「あぁぁぁぁ!ふぁぁぁぁぁ!?」
「……?」
「見てみて!本物!本物のスノウが居る!嘘!?」
「…貴女と同じ」
「ふぁぁぁぁ!そんなこと言って本当は本物だったりするんでしょ?!此処まで一緒だなんてー!ねぇ!疑心暗鬼モードだよね!?もしかして他のモードもあったりする!?」
「らしい」
「わぁぁぁ!ね!ねね!一緒に戦わない!?ね?ね?」
「いやその娘居たら作戦が意味をなさない…って聞いてませんねこれは…」
…?作戦が意味を成さないとはどういうことだろう。
スノウ…雪…凍らせる。…ミリー…炎…火……あ、もしかしてもしかする?
急に出会ったのが後悔に変わったかもしれない。このこと居たら巻き込まれそうだ。
「…私は別機動。ミリーはミリーの戦い方をして」
「っ~~~!分かったよスノウ!こっちは任せておいて!…後終わったら連絡先登録しよ?」
「ん」
最後は唯のオタク友達の会話だが、それでもいい。
まさか此処まで知ってるとは、此処は映画のワンシーンで其処まで有名じゃない。でも知ってるってのは相当な魔法少女ラブリーミリー好きだ。
このチャンスを逃したら私は明日から不登校になるに違いない。
「…で、良いんでしょ?」
「おや。私としては一緒になってくださっても構わないのですが?」
「やめておく。爆発はスノウじゃない」
「…ふ。貴女も相当な様で」
その言葉と同時に試合開始の合図が聞こえる。
それを聞きつつも、私はミリーから離れた位置で観察をし始めた。
…カードだけじゃ駄目なんだ。…ってそれはミリーじゃない。ミリーの詠唱は元気いっぱい大声だもん。
…馬鹿。恥ずかしがっちゃミリーじゃないじゃん。
「…どうしたの。そんな今まで見た事無いくらいにやきもきした表情して」
「別に」
「んん?別にって表情ではないけどねぃ」
「……ミリー」
「およ?…あ、成る程」
…どうやら覚悟を決めたようだ。恥ずかしさは残ってるけど…元気いっぱいに変身ポーズを決めてる。
……折角だし私もやっておこう。長年の夢だったし。
「…笑顔いっぱい、力百倍!魔法の力で全てを包み込む!」
「およっ!?」
此処で杖を投げる!ノールックでつかむのは沢山練習したし大丈夫!
これくらいの力で籠めれば映画と同じ回転速度で同じ向きで落ちてくれる。…キャッチ!
「幸せを呼ぶ雪の調べ!魔法少女フェアリースノウ!」
「…フェアリースノウ?」
「最初は自分を隠してた魔法少女。そのときの名前がフェアリースノウ……なんだぁ♪」
そしてこの子はミリーと同じ名乗り口上…そして最後に
そんなスノウになれて、しかもミリーと一緒に戦えて…そんなの…
「あなたのハートに届け!」
そんなの…
「ラブ!バーニングッッ!!」
楽しいに決まってる!
炎が森に着弾し、其処から油が着火した音が聞こえ…数瞬後に爆発する。
…その光景にミリーが驚いて固まっている。…それもそうだろう。
『Cチーム二名リタイヤ!*1』
「わぁーぁ。…かく乱てレベルじゃなかったねぃ」
「まぁ…作戦開始という事で、燃えない自信があれば突撃どうぞ―」
よし、許可は貰ったな。
…燃えない様に、なんて簡単だ。氷で炎を一直線に消せば良いのだ。
「フォームチェンジ。“クーアル”」
「お?突っ込む気かい?いける?」
「…私を誰だと思ってるの?」
「……ほほう。なりきってるねぃ」
杖を回し、カードを杖に付ける。冷たい氷が杖に伸びていって私の腕を凍り付ける。
…感じない冷たさに笑みを浮かべながら、
「太陽を凍らす彼方の一撃。絶氷は何れ、海を凍らし月へ昇る。顕現せし牢獄よ。全てを凍らせ今望み高き理想卿を作らん」
「え。全部覚えてるの?!」
腕を凍らせていた氷が全て杖に移動して輝きが増す。凄い、此処までちゃんと出来てるんだ。
もっと、もっとやりたい。でも此処で手を全部見せるのは“スノウ”じゃない。
だから、此処は我慢。
「古より来たらん
冷たい氷が天へ向かって放たれる。
ソレは空中で爆発をして雪の結晶を多数作った後に……再度爆ぜて矢の様に地面に向かって一直線に飛んでいく。
「わわわっ!?何あれ何あれ!?」
「範囲に特化した魔法。普通の敵に威力は其処まで高くないけど、全てを氷漬けにする…って設定がある」
「…おお…でも設定かぁ」
「そのままは強い。精々…うん、速度に影響が出るくらい」
そう言いながら指を差した先には、味方である朝凪さんが全弾避けつつボロボロになった敵を追いかけまわす姿が見えた。
…うん。これで消火は終わったし、後はのんびり待つだけかな。
「…これなら突撃出来る。したいなら勝手にしたら?」
「ふふ…もしかしてあたしに花を持たせに?」
「そんなんじゃない。私は自分の安全を最優先にする」
スノウが前に言ってた言葉を言いながら、私はゆっくりとミリーの方へ向かっていく。
…ミリーへたり込んでるしこのままだとちょっとな…
「フォーム。“疑心暗鬼”……ミリー!」
「あ…スノウちゃん!来てくれたんだ!」
「ミリーさっきの力凄かったね!あんな一撃見た事無いよ!」
「そ…そんな事は……それよりスノウちゃんの方が凄いよ!?まさかあんな広範囲を凍らせるなんて!」
「そんな事無いよー!あの一撃だって唯広範囲を凍らせるだけだもん!威力も全然ないから倒せないし…」
「ううん!ねぇ!私と一緒に戦おうよ!スノウちゃんが抑えて私が倒す!完璧なチームじゃない?!」
その言葉を聞いて、私は目を瞑って映画の内容を思い出した。
…確か…
「…うん。二人の力を“合わせたら”、きっと無敵だよね」
「っ…そう、だね…」
おお、まさか乗ってくれるとは思わなかった。でもちょっと辛そうなのは…やっぱり知ってるからかな?
…うん。何時かソラールとかと会わないかな。戦ったりしたい。
「…私ねスノウちゃん!今のスノウちゃんならミリーの」
『Dチーム勝利!』
ミリーが何か言った様な気がして、私は思わず首を傾げる。
…それを見たミリーちゃんが何か言おうとした瞬間、周囲の歓声で声が掻き消された。
それを聞きつつ私はフィールドから降りて…そして小さく溜め息を吐く。
「…二次創作は駄目。あれは