『AR/MS!!』 冷淡JKが本気の「コスプレサバゲー」に挑戦する話 作:よしどら
「なあ…なんだって俺は部長率いるガチくせぇチームと試合することになってるんだ?」
「いや…さっき小耳にはさんだんだが……どうも姐さんが部長に喧嘩売ったらしい」
「マジか。つくづくヤベーな姐さん…」
喧嘩売ったの向日葵ちゃん!?それの巻き添え喰らっただけだったの!?
…そんな事ある?ねぇ、ある?
「うわぁぁん!吹雪ちゃーん!」
「…喧嘩売った?」
「違うのあの二人組に謀られただけというか」
「納得した」
なーんだあいつらが悪いんじゃん。潰すぞ?
そんな事を考えながら杖を握って二人の方を見れば、二人はしっかりと作戦を組んでいるらしい。
…一応勝つ気はあるのかな?
「どうしよう負けたらチーム入りだよ?失礼な態度の後輩だよ?かわいがられるよ?!」
「どうどう。別に負ける気はない」
「でも相手は地区大会準決勝でー!」
その言葉を聞いて少しだけ苦笑しながら、向日葵ちゃんの頭をぽんぽんと叩く。
……背伸びしてギリギリ届くの本当に辛い、身長縮んでくれ。
「相手も卒業生が出てる分弱くなってる。それにあいつら強かったでしょ?任せたらいい」
「…うぅぅ…でも…」
「それともミリーは此処で弱音を吐く人だったの?」
「……吐かない。ミリーはしっかり戦い抜く。……ありがと」
「ん」
小さく呟いた感謝の言葉を聞きながら、私は目を部長達が居る方向へ向ける。
「いいか!!先に説明した通り我らは!!ナメられている!
故に!!実力を示さねばならん!!
手心は一切いらん全力だ!!!活きのいい後輩共の鼻柱をへし折り!!新たな戦力として掴み取るぞ!!」
「「「「……」」」」
あ、クリちゃん先輩だ。手を振ってみようかな。
……よし振り返してくれた。ということはアレを信じてるのは部長だけかな?他の人も苦笑してる感じだし。
…良し。
「大丈夫。私達は絶対勝つよ」
「……うん!」
絶対勝つではなく絶対勝たないといけないの方が正しいけどね。
…だって勝たないと私達かわいがり確定だもん。絶対死ぬもん。
『ARフィルタ――
その声と同時に私達の後ろに綺麗な宝石が現れる。
それを見つつも、私はカードを確認してから小さく頷いた。
「あれが
「そろそろ開始ッスね。作戦指示とかあります?」
昨日戦ってた二人組の内一人が眼鏡に対して話しかける。
「…………そうですね。工兵の僕としては仕込みの時間と場所が欲しいのですがお願いできますか?」
「場所と時間の確保ッスね」
「では佐伯君は春一君と前へ」
「ウス」
「私は勝手に動く。時間が欲しいなら不規則に動いた奴の方が取れるでしょ」
「ふむ………わかりました。それからヒマワリさん」
「えあ私は…」
「あなたはここで待機。ホラ、彼にも見せ場を作るチャンスをあげないと」
「おお…余裕ッスね!お気遣いありがとうございまス!」
「……」
どうやら未だに緊張が解けてなさそうだ。
これは第二回大規模魔法唱えて目立っちゃう作戦の実行が近づいてきたかもしれない。
嫌だ、出来ればしたくない。
『それではカウントを開始します!よろしいですね?』
「さて、これであなたが動かなくても怪しまれません」
『5 4 3 …』
「春一君の言う通り、今回はこちらがケツ持ちすべき案件ですからね。後は僕たちにまかせて――」
『2 1』
「あなたはそこでジッとしててください」
『ゲームスタート!!』
「それじゃ頼みましたよ」
そう言いながら佐伯君の身体をポンと叩いた眼鏡を見つつ、私は杖を握って前を見つめる。
…見渡す限りの大森林、前回と同じだけどミリーの魔法で焼いた訳じゃないから上からの攻撃は難しそう。
「…私も少し時間貰う」
「どうぞ。でも遅れない様にお願いしますよ?」
「勿論」
そう言いながら去っていく三人の背中を見ながら、私はゆっくりと杖を持っている手に力を籠める。
そのままARで映し出された宝石を優しく撫でてから…私は杖を地面に振り下ろして魔法陣を浮かべる。
【世界の心理を解き、力の全てを解放せん。呪いは反転し祝詞となり得る】
【今宵太陽に背きし者。壊れし想いを結晶に変えて今届かん】
【呪いよ響け。世界を穢す憎しみに変われ。そう。それは…】
「「世界と訣別し、雪降る大地へと変わるのだ」」
隣にいる
…これで良し、暫くは近接で戦えるようになる筈だ。
そんな事を考えながらも、私は姿が変わった杖の先端をもって小さく息を呑む。
「ちゃんとシステム上剣になってるんだね。不思議」
「…気にするところそこなんだ…」
「杖を掴む感じなのに剣で斬るようにしないといけないから難しいのか…不人気には不人気なりの理由があるんだね……」
そんな事を呟きながら私が全力で走って居ると……前の方に隠れている二人の姿が見えた。
…取り合えず遠くから様子を…
「我らが唯一つ目指す先は?」
「「「「――勝利!!」」」」
「ではその道行きを阻むものは?」
「「「「ただ!打ち倒すのみ!!」」」」
「骨は拾うな!踏み越えろ!!征くぞ!!!」
「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」」」
声が響く。身体が震える。
けれど、私はそれを必死に抑えて前を向く。此処で怖がるのはスノウじゃないから。
そんな事を考えながらも私は二人が銃を撃っているのを見て考える。此処で加勢するか…いや…
「佐伯。これ多分押し切られる。下がるか近接装備に切り替えろ」
「いや多分いけるッス。さっきはビビって初動が遅れましたけど自分もう大丈夫ッスから。全弾命中さあせてやりますんで」
「いやだからそれ全部盾で」
「折り込み済みッス!こういうのは何度も潰してきてるんスよ!この調子で受けさせれば盾がお釈迦に――」
そう言いながらも、部長の盾は壊れる様子が無い。
…まるで盾で防ぐというよりも、盾で弾を逸らしてる様な…
「
「そういうことだ。狙いが正確だった分実に流しやすい射撃だったぞ?」
「例を言う。死ね」
そう言いながら部長ともう一人の先輩が佐伯君に対して自らの武器を振るう。
…此処は待ちの一手。スノウは此処で味方の為に突っ込む様な奴じゃな…
――ドオオオーン!
「っ?!」
『――りょ…両チーム……1名ずつリタイヤ』
佐伯君が突然光り輝いて自滅した!?
…とは言えないよね。本人凄い周囲見てるし、でも朝凪君は逃げて…というか文句言ってる?
…という事はやっぱりあの眼鏡が悪いのか。眼鏡野郎め。
「…ッとぉ」
「やってくれたな。よもや我らの突撃をあんな方法で止めるとは」
「すみませんね。なんせ味方を味方と思わねー奴がいるもんで」
「何を謝る必要がある。それでこそだ!」
部長はそう言いながら嬉しそうに剣を振るう。
…それをいとも容易く防ぐ朝凪さんは一体何者なの…?いいな、私も挑戦してみたい。
「成果の為なら犠牲も厭わんその姿勢!!ますます欲しくなった!死んでく…」
「部長後ろです!」
「なぁっ!?」
…取った。そういう感触を味わいながら私は杖を握り直し…
「っ!?」
「良い一撃だ!」
振り下ろされた剣をほぼ感で避けつつ、私は小さく息を吐いた。
…よし、盾がなくても避けれる。私はまだスノウになれる。
「田中!そろそろいけるか!?」
「……えぇなんとか」
「あの後衛は放置できん。確実に息の根を止めてこい!」
「御意」「いかせない」
私がそう呟くのと同時に、部長が私の方に一撃を入れようとする。
横薙ぎは転がって回避、その後の素早い振り下ろしは…
「っ」
「…スイッチ」
「頼んだ」
「おう」
私に攻撃を入れようとした部長に対して銃を撃った朝凪君を見ながら、私は副部長を追いかける。
…思ったよりも足が早い。でも追いつけない訳じゃない。…よし。
「ぬぅ?!まさか追いつかれるとは」
「時間を稼げって言われたからね。爆弾持ちと暫く相手して貰うよ」
「厄介な…」
そう言いながら私と副部長は戦いを始める。
……でも何か違和感がある。副部長の姿からして近接戦に移行して良い筈なのにやっているのは逃亡。
逆に私から逃げようとして…いや違う。距離を取ろうと…?
「…【氷結よ。暫し顕現せよ】」
「ぬぅ!?」
私が杖を使って氷柱を撃つ。
それを庇う様に逸らした彼の姿を見つつ、杖の向きを上下左右に動かしていく。
「ぬぅぅ…本当に厄介な…」
「副部長も出来るんだ。今度教えて」
「ふふ。貴女には魔法少女があっておりますよ」
「出来る事は増やしたいの」
そう言いながら私が氷柱を撃つと、今度は樹に隠れ…そしてすぐに表れて私の方に突っ込んできた。
…さっきまで近づかなかったのに私の方に近づいたって事は…絶対何かがある。
「…とくと見よ!この!!肉体美!!!」
その言葉と同時に私は瞬時に距離を取る。
足が壊れそうなのも気にせずにもう一度ポールを蹴って、瞬時にこの場を離れるのと同時に…
「ポージングブラスト!!」
私がさっきまで居た場所に筋肉からビームが降り注いだ。
…あそこに居たら理不尽にやられてた。…本当に危なかった…
「ぬぅ…仕留めきれませんでしたか…」
「こちらは準備完了しました!任せましたよ“魔女コンビ”!」
「魔法少女…了解」
コンビと言ったって事はつまり合流して欲しいという事だろう。
取り合えず
「わっ?!私だよ私…」
「…ミリー」
「うん。貞純君にディフェンダーをやっつけてって言われたから隠れながら進んでたの」
「……デフェンダーを…やっつけて?」
道理で合流しろって言われた訳だ。
一人でやるのは大変そうだし…よし、私も一緒に隠れよう。
「…所で白薔薇モードってどうなるの?」
「んと……この試合じゃ無理そう」
「そうなんだ?じゃあ黒薔薇は?」
「そっちなら今出来る。ほい」
そう言いながら杖にカードを読み込ませるのと同時に、私の衣装が変わっていく。
ミリーとお揃いの衣装の筈なのに、真っ黒な色がそれを分かり辛くさせている。
最初は私も違うと思ってたのだが、結局お揃いなのが分かって解釈が更に進んでほっこりした思い出だ。
「…本当にお揃いなんだね」
「うん。お揃いだね」
後ろで爆風が聞こえる。銃声と盾で弾かれる音が聞こえる。
先程の様な筋肉からのビームが聞こえる。地面が削れる音が聞こえる。
…それなのに、私達は二人で衣装をまじまじと見ていた。
しっかりと歩みは進めている。それでも気になるものは気になるのだ。
「…この後ろの部分は…ふむふむ」
「リボンの付け外しが出来れば…でも此処のリボンは同じで…へぇ…」
『両チーム1名ずつリタイヤ』
「「っ!?」」
アナウンスを聞いて私達は、急いで頷いてから隠れながら進み続ける。
…そのまま薄く煙がこちらに来るのが分かった瞬間、少しだけ歩みを速めた。
「…攻撃どうしよう」
「一緒に魔法使う?折角なら合体技したい」
「ミリーとスノウの…合体技?」
「…うん。ミリーは映画だと色んな子と合体技してるから…してみたくて」
「っっっ…」
これはスノウとしての願いより私の願いだ。
スノウとミリーの合体技が見たいだけ。スノウが見たら悲しんじゃうかも。
…ごめんね?
『第3チーム1名リタイヤ!』
「うん!一緒にしよう!二人で揃ってる技…ゲイズかな?」
「だね。それだったら急ごう…」
「うん!」
二人でそんな事を言い合いながら私達が歩いていると…
「朝凪君ハラスメント――――――――ッ!!!」
『新入生チーム…1名退場…』
「…何かやったのかな」
「分からない。唯進むだけ」
そんなこんなでバレずに私達は辿り着き…小さく頷いてからお互いのカードでお互いの杖を叩く。
……これでも発動するんだ。面白い。
今度魔法少女系のコンビネーションとか出るのかな…ふふふ。
「いくよ?「せーっの!」」
「元気いっぱい」「笑顔いっぱい」
「勇気百倍」「力百倍」
「愛の力で全てを包む!」「魔法の力で全てを包み込む」
「燃え盛る愛の炎!」「幸せを呼ぶ雪の調べ!」
「ラブリー・ミリーッ!イエイッ☆」「魔法少女フェアリースノウ!」
私達は杖を投げ、そのまま両手でハートを作る。
「「あなたの!ハートを――ロック・オン♪」」
「わぁ……あ、え!?ちょ…ッ」
そのままクルクルと回って杖を取る。そしてそのまま目を瞑りながら小さく笑みを作った。
銃を構える音が聞こえたけど、ちょっと遅いかな?
「「射貫け!」」
「
「
私達の一撃はそのまま敵を貫通して奥の
…それを見た私達は杖を降ろし……小さく微笑み合った。
『
その言葉を聞いて、私達は漸く溜めていた息を吐いた。
……そして微笑み合った私達はお互いの顔に息が掛かり…それが何処か可笑しくて小さく笑い合った。
そのまま手を繋いで私達がフィールドから降りるのと同時に、向日葵ちゃんは手を離して二人の下に行くのが見えた。
…うん。巻き込みたくないんだよね。私も助かったよ。
「御疲れ様。楽しそうだったねぃ」
「…別に」
「そう?……羨ましいなぁ」
「…?」
ナズナがそう言いながら私の身体にタオルを掛けた。
…汗をかいてないのでバレない様にという配慮をしてくれたのだろう。
「私!部長のチームに――――」
そんな事を言ってた向日葵ちゃんと、それを見た男二人が嬉しそうに同調するのを見ながら…私の口は確かに三日月を描いていた。