「ただいま」
「ん、おかえり〜」
コンビニの袋を持ったくろめが部屋に入ってくる。うずめはテレビを観ながら返事をした。
「はい、言ってたヤツ買ってきたよ」
「ありがと」
くろめは袋の中からパックのジュースを取り出した。うずめはテレビから視線を外さずに左手を差し出した。渡せ、と解釈したくろめはジュースをうずめの手に乗せた。うずめはジュースを受け取ると、口元に持っていくと、またくろめの方へ差し出した。
「ストロー刺して」
「そんくらい自分でやれよ」
「今良いとこだから」
「オイ」
テレビには録画していたであろう刑事ドラマが映っている。どうやら今犯人を問い詰めているシーンのようだ。くろめは大きなため息をつくと、ジュースを受け取った。
と、ここであることを思い付く。袋の中には、自分用に買ったパックのコーヒーがある。それも無糖のブラックコーヒーだ。くろめはそれを取りだし、ストローを刺すと、うずめの手に乗せた。
「ありがとう」
うずめはなんの疑いもなくそれを口に運んだ。
「ぶふっ!!!??」
「んふっ……」
うずめはコーヒーを吹き出した。その様子を見てくろめは小さく笑った。
「おいテメェ! これどういう……」
隣を見て怒鳴ったが、そこにくろめの姿はなかった。かわりに、くろめが入ってくる時に閉めたはずのドアが開いているのが見えた。これから考えられることは一つ。
「逃げてんじゃねぇーー!!!!」
うずめは、くろめを探すために部屋を飛び出した。
*
(くそっ、あいつどこ行きやがった?)
適当に教会内を走り回る。が、くろめがどこに逃げたか、どこに隠れたかは検討もつかない。当たりを見回しながら走っていると
「うわっ!」
「ねぷっ!」
曲がり角で誰かにぶつかってしまった。目の前に居るのは白いパーカーの少女……そう、ネプテューヌだ。
「いたた……ちょっと! ちゃんと前見て歩いてよね!」
「悪いねぷっち! でも今はちょっと人探ししてて……」
「ん……? なんか、コーヒーの匂いしない?」
ネプテューヌの目はすぐにうずめの方に向いた。うずめの着ている服にはコーヒーのシミができている。
「うずめ……もしかして自分で着替えれないの?」
「着替えれるけど!?」
「いやいや、だったらコーヒー零してそのまま走り回ったりしないでしょ!」
「これには深い訳が……」
「どんな訳があっても普通零したら着替えるでしょ! もーまったくうずめったら……」
ネプテューヌはうずめの手首を掴んで引っ張った。
「な、どこに連れていくんだよねぷっち!」
「まずは着替えなきゃダメでしょ? 服のシミ落ちなくなる前に洗濯してもらわなきゃ」
「そんなことより俺は……」
「ハイハイ口答えしない」
ネプテューヌは半ば無理矢理にうずめを引っ張っていった。
*
一方その頃くろめはと言うと……
「お、ぎあっち、ここに居たのか」
「わあぁーーーー!!!!???」
教会の大浴場の脱衣場に居た。そこでたまたま、風呂上がりのネプギアと鉢合わせしていた。
「覗きですか!!?」
咄嗟にバスタオルで体を隠した。
「安心しな、覗きに来たわけじゃない。同性の裸に興味は無いしね。オレはぎあっちに用があってきたんだ」
「私に?」
「ああ。それに、風呂上がりならなお好都合だ」
「?」
「ほら」
くろめはパックのジュースをネプギアに差し出した。
「これは……?」
「二個買って一本飲んだんだけど、どうも口に合わなくてさ。ぎあっちにやるよ」
「でも……うずめさんにあげるのじゃダメなんですか?」
「飲まないって言ってた」
「あぁ、そうなんですね。では……ありがとうございます」
ネプギアはジュースを受け取る。まだ冷たい。
「じゃ、そういう事で」
くろめは背を向けてヒラヒラと手を振りながら脱衣場を出た。
「さーて、あいつはまだ私を探し回ってそうだし、ちょっと散歩にでも行くか」
その後、くろめはコンビニの袋を持って帰ってきた。中には同じジュースと、うずめが好きなスイーツが入っていたとか。