【完結】殺生丸はメイドラゴンと再会し、現代を行く 作:妖怪もやし
戦国の時代。
妖怪が猛威を振るい、人間は人間同士で争う。
その修羅の世の中で生まれたのは、高い霊力をもって生まれた見目麗しい少女、桔梗。
自らのしたいこともできず、ただ人々のため、巫女としての義務を果たしていた。
そんな彼女が出会ったのが、半妖の少年、犬夜叉だった。
彼らは人間と半妖という敵対する種族であったが、何度かの逢瀬を得て惹かれ合っていく。
彼らの美しいラブストーリーは、ある時から歯車が狂い始める。
卑しき盗賊だった鬼蜘蛛は、清らかなる巫女の少女の桔梗に助けられ、叶わぬ恋をした。
巫女に愛しい男が居ることを知り、嫉妬と情欲に狂った鬼蜘蛛は、自らの身体に妖怪を取り込んで半妖となった。
彼は二人の関係を最悪な形で破壊し、完膚なきまでに恋路を踏みにじったが、結局は愛する女の心も体も手に入れることは叶わなかった。
時は流れても、その男は改心することはなく、奈落と名を変えて災いを振りまき続けた。
だが、悪が栄えることは決してない。
桔梗の生まれ変わりの少女、日暮かごめが戦国の世にタイムスリップし、犬夜叉の封印を解いたことからすべては始まった。
不良法師の弥勒と、退治屋の少女の珊瑚。
狐妖怪の子供の七宝。
時には敵となり、味方となり戦った犬夜叉の異母兄である妖怪、殺生丸。
彼らは全ての元凶である奈落を倒す為に集った。
そして、ついにその時が訪れる。
「消えろ、奈落…永遠にな」
奈落との決戦を終え、平穏な生活を手に入れた犬夜叉一行。
その勝利に大きな貢献を果たした殺生丸もまた、新たな生を歩みだした。
だが、平穏は長くは続かない。
「とっとと消えてください! この化け犬!」
「消えるのは貴様だ、 金の龍よ!」
殺生丸は、ふとした切っ掛けで日本に訪れた金の龍と、激しい戦いを行った。
互いに重傷を負い、殺生丸は傷を癒す為に眠りについた。
それから数百年。
「な、なんでまた貴方のすかした顔を見なければいけないんです! この犬畜生!」
「…貴様こそ。 また一戦交えようというのか」
現代の日本にて目覚めた殺生丸は、変わり果てた世の中に困惑しながらも街をさまよう。
そして、かつて激闘を繰り広げた龍…今は小林トールと名乗る金色の髪の少女と再会を果たした。
いまここに、運命が再び動き出したのであった。
「…まぁ、積もる話もあるだろうけど、ここは一先ずウチで酒でも吞んできます?」
「小林さん! こんなヤツを誘わないでください!」
「良いだろう」
「えぇー、来るんですか…?」
「トール、用意よろしくね」
「分かりました小林さん! このトールにお任せあれ!」
トールの主である小林の誘いに乗り、彼女のマンションに訪れた殺生丸。
そこに居た混沌勢の過激派イルルやカンナカムイ、偶然遊びに来ていたケツァルコアトルに動じることも無く、差し出しされた酒を味わう。
「…飲めない味では無いな」
「はー? 小林さんが用意してくれたお酒ですよ? 涙を流して味わってください! 何様ですか? 犬ですか?」
「まぁ、その辺の店で買ったフツーの酒だからね。 トール、適当につまみ用意してよ」
「了解しました、小林さん!」
「ボクも飲むよ~」
「イルルも食べたい」
にぎやかになるリビング。
自然と互いの距離は近くなっていく。
そうなると、ケツァルコアトルやイルルの巨大なそれがむにむにと殺生丸の腕や身体に当たることになるわけだが…。
動じることなく平然と酒を飲み、つまみを食べる辺りは、流石は戦国に名を馳せた大妖怪といったところだろう。
「聞くところによると、殺生丸さん…は、トールと戦ったらしいけど、何で?」
「…覚えてないな」
「覚えてないの?」
「戦いはそんなモノだ。 イルルにも身に覚えがある」
「えぇ…」
その晩の小林家の宴は、賑やかなものになったことは言うまでもない。
「邪魔するぞトール。 …ほぅ…、妖怪か」
「…貴様、出来るな」
「それはこちらの台詞だ」
「どうやら、気が合いそうだな」
「同感だ」
(え、なんかファフニールさんと殺生丸さん、一発で気が合ったっぽいぞ)
(なんか共通点でもあったんですかねー?)
黒髪の男と殺生丸の会合が、自分とのそれよりも和やかであったことに、納得がいかないトールなのであった。
ちなみに、殺生丸はファフニールに会うなり、すぐに嗅覚を操作する術をかけて貰っていた。
犬の妖怪であり、人間とは比較にならぬ嗅覚を持つ殺生丸にとって、様々な臭いが渦巻く都会は地獄だったらしい。
この時ばかりは、殺生丸も珍しく心からの感謝の言葉を述べたという。
「どうだ殺生丸、レース…乗り物に乗って競い合いながら、時に赤甲羅や果物を投げ合うのは」
「…悪くない。 ただ」
「ただ、なんだ」
「私はこういった遊戯の方が好みなのかもしれん」
「麻雀…だと」
「だが、この『げぇむ』も良い。 競い合うのは性に合っている」
「そうか! ならばこのステージで勝負だ!」
「受けてたとう」
…どうやら殺生丸はアナログゲームの方が性に合っているようだ。
それは残念ではあるが、ファフニールのゲームの良い相手になっているようで、嬉しく思う小林さんなのであった。
「トール、飲み物をくれ」
「誰が貴方のような犬畜生に! あと呼び捨てにしないでください! 私は誇り高きドラゴンであり、妖怪程度とは格が」
「淹れてあげてくれ、トール」
「分かりました小林さーん!」
「…美味いな」
「それ、紅茶って言うんだよ」
「そうか。 気に入った」
「気に入らないでください!」
つづく