【完結】殺生丸はメイドラゴンと再会し、現代を行く   作:妖怪もやし

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2話 白銀の大妖怪は呪いの龍と対局する

 

 

 

 

 

    パチリ

 

 

 

 

「『ふぁふにぃる』たちは、別の世界から来たのか」

 

「そうだ」

 

「先日、カンナから聞いたが、貴様は初めに『巣』として、山に住みつこうとしたようだな」

 

「そうだな。 人間どもの間で騒ぎになったと聞く」

 

 

 

    パチリ

 

 

 

 

「もうやらないで下さいねー。 洒落にならないんで」

 

 

 

 

 

    パチリ

 

 

 

 

「なぜ洒落にならぬのだ? 我らが自然を家とするのは当然だろう」

 

「よく言った殺生丸よ! そうだ、全ては自然そのものを支配下に置こうとする人間の腐ったありように矛盾がある。 我らは自由に山を、森を、高原を、湿原を、川を、湖を、海を、時に闊歩し、時に枕とする権利がある! 当然のことだ。 それを奪おうとする人間の姿勢は忌むべきものだ」

 

「権利…という概念はよく分からんが、言いたいことは分かる。 同意だな」

 

 

 

 

 

    パチリ

 

 

 

「いや、まー分からなくはないですけど。 とにかく、そういう考えは持っていても、本来の姿になってお散歩とかをするのは止めてね」

 

 

 

 

    パチリ

 

 

 

 

 

「で、次の巣を見つけるのに少し難儀したと」

 

「難儀という程でも無い。 俺の力をもってすれば容易かった。 あの黄金を換金さえ出来ていれば、あっという間に新たなる我が居城を手にすることが出来たのだ。 それをすることの出来ない人間の世界にこそ問題がある。 貴様もそうは思わぬか?」

 

「思う」

 

 

 

    パチリ

 

 

 

 

「思うんですか…」

 

 

 

 

    パチリ

 

 

 

「で、今は貴様がお気に入りの『げぇむ』が大量においてある、滝谷という人間の家に世話になっていると」

 

「そうだ。 言っておくが貴様が同居することは困難だ。 なぜなら俺だけで一杯だからな。 それほどこの国の人間どもが暮らしている家屋は狭く貧弱なのだ」

 

「そうか」

 

「貴様はこの国で名を馳せた大妖怪だったのだろう。 人間どもの意識を、改革しようとはしなかったのか」

 

「しなかった。 人間どもの暮らしになど興味はないし、支配する気も無かった」

 

「フッ…やはりそうだろうな。 殺生丸よ、貴様は俺が見込んだ通りの男だ」

 

 

 

 

    パチリ

 

 

 

「で、現状は」

 

「貴様はこの小林家に住むのも不可能であり、私が世話になっている家に住むのも無理という事だ」

 

「この小さい空間の集合体が家だというのが、私には未だに呑み込め無いのだがな」

 

「それは同意だ。 私は初めはこの立方体の全てが、城主と臣下のすむ城だと感じたのだがな。 壁一枚を隔てた先に別の家庭があるなど、怖気が走る。 これは人間の文化の腐敗の象徴だな」

 

 

 

 

 

    パチリ

 

 

 

 

「では、私の巣…『家』を貴様らは用意できんということか」

 

「そういうことだ」

 

「分かった。 投了する」

 

「…まて、逃げる気か。 まだ盤上の戦いは互角といったところだろう」

 

 

 

 睨むファフニール。

 怒気を受け流す殺生丸。

 見ていた小林がため息をついた。

 

 

 

「用事が出来たのでな。 納得ができぬなら、この将棋板をそのままにしておいて、また挑んでくると良い。 受けて立つ」

 

「そうか。 なら良い。 挑んで来いという言い方は、俺が挑戦者であるかのように思われるからやめろ。 あと、将棋板は片付けてしまって良い。 棋譜は俺が記憶しておく」

 

「流石だな」

 

「で、用事とは」

 

「行く場所が出来た」

 

 

 

 

 二人の妖怪の対局が終わった。

 殺生丸の両肩に豊満なそれを乗せ、彼の顔を後ろから挟むような状態で対局を見物していたイルルは、決着が持ち越されたことに不満気だ。

 殺生丸はそんなことは気にせず、将棋セットを当たり前のようにカンナに片付けさせ、立ち上がった。

 胸置き場となっていた肩が急に動いたことで、転びそうになったイルルを右腕で支える殺生丸。

 

 

「…礼は言わぬぞ」

 

「そうか」

 

 

 殺生丸はイルルにそう返すと、ベランダに出て指を鳴らす。

 瞬時に蒼天が黒い雲に覆われ、首が二つある馬の妖怪が姿を現した。

 ファフニールが舌打ちして認識阻害をかける。

 

 

 

「久しいな、阿吽」

 

「貴様のしもべか。 それは良いが、そういった現象を起こすならば、前もって言っておけ」

 

「世話をかけたようだな。 助かる。 認識阻害か…。 またの機会に教えてくれ」

 

「良いだろう」

 

「殺生丸様ぁ~~~~!!!!」

 

 

 

 

 阿吽と呼ばれた馬の妖怪の背から、転がり落ちるように小妖怪が現れる。

 殺生丸に永久の忠誠を誓った従者で、名は邪見という。

 

 阿吽と邪見。

 共に殺生丸と共に戦国を駆け抜け、因縁の敵である奈落との戦いにも同行した猛者だ。

 阿吽はともかく、むせび泣いている邪見の姿から猛者という雰囲気は一切ないが、猛者と言ったら猛者なのだ。

 

 

 

「お会いしとうございました! この邪見、殺生丸様が負傷され傷を癒す為に眠りに着いてから、従者であるこの身も同様に睡眠をとらず、ずっと目覚めるその日を待ち焦がれていました」

 

「そうか。 ご苦労。 あとで寝ることを許可する」

 

「忠臣が居るようだな、結構なことだ」

 

「そうだな、『ファフにーる』」

 

「ふ、俺の名前を発音するのにも、少しずつなれてきたか」

 

「ああ、殺生丸様が負傷され申したのも、全てあの憎らしき金色の龍の仕業…! 許すまじ金の龍!」

 

 

 

「ただいま帰りましたーー!!!」

 

 

 

 

 怒りに打ち震える邪見の気持ちを知る由もなく帰宅する金色の龍。

 商店街で良い食材が買えたらしく、ホクホク顔である。

 途端に怒鳴り声をあげる邪見。

 

 

「あー!!!! 貴様は殺生丸様を負傷せしめた憎き金の龍!」

 

「なんですか貴方は? いきなり怒鳴りかかるとはドラゴンの恐ろしさを味わいたいようですね! やりますか、チビ妖怪!」

 

「やめて、トール」

 

「はい、小林さん!」

 

「邪見もやめろ」

 

「は、私は何も申しておりませんが」

 

「…貴様らの家来、賑やかだな」

 

「うんうん。 良い光景だねぇ~」

 

「けつぁる…こあとる、だったか。 来ていたのか」

 

「ルコアで良いよ~」

 

「分かった。 『るこあ』」

 

 

 

 つづく

 

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