【完結】殺生丸はメイドラゴンと再会し、現代を行く 作:妖怪もやし
「ほう、数百年ぶりに顔を見せたと思えば、住処と金銭を欲するか。 なんとも陳腐な要求よな。 お前が嫌っていた、俗物そのものでは無いか」
「おっと。 口を開くな。 言いたいことは想像がつく」
「金色の龍との対決か。 あったな、そんな事も」
「避けようと思えば避けられた衝突だったであろう。 あの龍も、まぁ、血気盛んな状態であったとはいえ…だ。 その戦いによって重傷を負い、傷を癒す為に眠りについていたなど、何の言い訳にもならぬ」
「お前が男として、これ以上の恥を晒したくないのであれば、早々に立ち去ることだ」
「この母をあまり失望させるでない、殺生丸よ」
小林さんちにて、殺生丸とファフニールとカンナとイルルが戦っている。
ゲームで。
「ファルコンパーンチ!」
「ショーリューケンッ!」
「ンチャァッエイッッ!」
「それで、すごすごと帰って来たと」
「ああ」
「ざまあみろですよ! あーあー、この犬の親は比較的まともなようで良かったです! そう、親に何とかして貰うだなんて、甘ったれですよ! 甘ったれ! 世の中を舐めてません? 居るんですよねー、そうやって自分の人生に危機感を持てない方って! 自分の人生は自分で何とかするんですよ! あなたは犬だから犬生ですね! やーい犬!」
「オモイデニハナラナイサ…」
ファフニールが勝った。
「よしっ…」
「いま貴様が使った『きゃら』、私に似てるな」
「確かにな」
「お前にも似てる。 髪の色を変えたらそっくりだ」
「そうか? どこがだ」
「髪が長いところと、悪役感が」
「俺は悪役ではない。 俺の居城に無断で立ち入り、宝を強奪しようとした下衆な人間共こそが悪なのだ。 そもそも、正義と悪を人間如きが論じようというのが、そもそも誤り。 奴らの無知蒙昧なる思想の現れだ。 毒されるな、殺生丸よ」
「そうだな」
ファフニールの熱弁に頷く殺生丸。
「ちょっと! この私の言葉を無視ですか? シカトですか?」
「私は一度抜ける」
「では、一人はCPUにしておく」
「ああ。 その『しぃぴぃゆぅ』に任せるとするか」
コントローラーを机に置き、ソファにもたれかかる殺生丸。
「…そうですか、殺生丸はその気になればすぐ親に会いにいき、友好的な会話ができるんですね」
「友好的というか、追い返されただけだろ」
「…親…ですか」
「ファフニール、操作うまいな」
「滝谷のところで鍛えられたからな」
なにやらトールがシリアスな雰囲気を醸し出している。
だが、操作に集中しているファフニールもカンナもイルルも、画面を眺めている殺生丸も、誰も何も言わない。
耐えられずに怒声をあげるトール。
「そこ、シカトしないでください! こっちが意味ありげなコト言って、その話をもっと広げようとアピールしているのに!」
「面倒だ。 そういうのは小林とでもやってろ」
「右に同じだ」
「カンナもどーかん」
「何故だ…。 なぜ私の攻撃は当たらず、ファフニールの攻撃ばかり当たる」
「ふ、経験と技量の差だ」
悔しがるイルルに勝ち誇ってみせるファフニール。
もはや皆トールの言葉など忘れているかのようだ。
「ぐぬぬ…! ふえーん! 小林さーん!」
「ヤツなら仕事だ」
「ガハッ!」
全員に塩対応をされ、この場に居ない小林に泣きつこうとするも、ファフニールの冷静な言葉に撃沈するトール。
そんな彼女に、着物姿で足を組んだ殺生丸が声をかける。
「おい、紅茶」
「はー? 何ですかその亭主関白の夫みたいな発言! 今の時代にそういうのは通用しませーん! そもそも、貴方の命令なんて聞きませーん!」
全力でそっぽを向くトール。
「では邪見、淹れろ」
「かしこまりました、殺生丸様!」
「あー! ちょっと、私の誇り高きキッチンに入ろうとしないで下さい! ていうか居たんですか貴方! そもそも、貴方はたぶんお茶の淹れ方なんて知らないでしょう? 良いですか、紅茶の淹れ方というのはですね…」
キッチンに駆けていくトール。
「…これは貴様の計画通りか、殺生丸よ」
「ふっ…」
「…多分、せっしょーまる、そこまで考えて無い…」
「ふっ…」
「その、『かつて敵だったが今は仲間になったクール系強キャラ』にしか許されないような、笑ってるのかそうで無いのか分からん謎の発声はやめろ。 結局、計算なのか、偶然の産物なのかどっちなんだ。 あと、笑ったのかどうかを言え」
「…」
「黙るのか」
「えーえんの謎」
紆余曲折ありながらも、殺生丸は再びトールの淹れた紅茶を味わう。
ファフニールとカンナとイルルも同じ。
邪見は飲ませて貰えていない。
トールにベランダに蹴りだされ、泣きながら阿吽に乗り込み、認識阻害をかけられながら空を飛んで何処かへ消えた。
ファフニールが『早く認識阻害を覚えろ』と、ゲームをしながら静かにキレた。
「分かった。 今から学ぶ。 教えてくれ」
「良いだろう。 来い」
「ああ。 …あ」
「どうした」
「阿吽が行ってしまった」
「飛べんのか」
「飛べるが、私が飛ぶ姿は目立つ」
「なら俺の背に乗れ」
「助かる」
ドラゴンの姿に戻ったファフニールに乗り、殺生丸は去っていった。
「来たわよ、カンナさん!」
「よく来た、才川。 いま二人ぬけたところだ。 入れ」
「望むところよ!」
彼らが去ったあとのリビングにまた一人役者が増え、楽しい時を過ごしたという。
遠く離れた、人の視界が届かぬ平原。
「覚えた」
「早いな」
「あとで阿吽たちにも教えておく」
「そうしてくれ」
「では、俺は帰る」
「感謝している」
「ふっ…」
ファフニールは帰り、殺生丸は自然の中を探索して、適当な場所を見つけて寝た。
つづく