アイドル事務所283プロダクション、マンションの1室を利用して作られた事務所。
そんなアットホームな環境で一人キーボードを鳴らしている。
「もうそろそろ10時か、そろそろ帰らないとな。」誰もいない真っ暗な部屋に独り言ちる。
玄関が開く音がする。
「こんばんわ~......ってあんただけよねこんな時間だし。まぁちょうどいいわちょっと話聞いて。」
そんな言葉と共に現れたのは自分の担当するアイドルユニット「ストレイライト」のリーダー黛冬優子だった。
「どうしたんだ?今日はポスター撮影のあと直帰する予定じゃなかったのか?」
「そうだったんだけど、あさひと愛衣がちょっとやらかしちゃってね、別に電話でもよかったんだけどそんなに距離があるわけでもないから直接伝えに来たのよ。」
そう冬優子は言った。自由奔放で無邪気?な芹沢あさひ、ただ緊張してるだけなのに無口キャラになってしまった愛衣。確かに日々小さなトラブルは多いが今日みたいに直接伝えに来る事例は少ない。大体は後日談という愚痴を冬優子に聞かされ知ることになるのだが...
「直接言いに来るってことは、ある程度込み入った問題なのか?」
そう言いながら冬優子にお茶を入れる。
「ん......ありがと。それでまあ、単刀直入に言うとあいつらの方向性の違いについてって感じかしらね。」
「方向性の違い……とはまたずいぶん抽象的な表現だな。具体的にはどういうことだ?」
ユニットというのは結局のところ個性のぶつかり合いである。ある意味当たり前のことだがそれ故に難しいものでもある。
特にこの業界では求められるものが多すぎるため、その傾向が顕著に出るのだ。
そのため各個人のプロデュース方針には細心の注意を払う必要がある。
しかしそれは逆に言えばどの方向にも伸ばすことができるということであり、俺としてはプロデューサーとしてやりがいのある仕事でもあったりする。
「具体的にって言われるとなかなか難しいんだけど、なんか2人ともソロで活動してみたいらしいの。それだけなら別に勝手にしてれば?って感じなんだけど、最近ユニットの活動にもなんか身が入ってない感じで、正直困ってのよねぇ……。」
なるほどそういうことか。要するに自分だけの色を出したくなったというところだろう。
ストレイライトのメンバーは基本的に仲が良い。
もちろん喧嘩することも多々あるし、デビュー当時などは衝突することもあったがそれでもなんだかんだと上手くやってきた。
しかし最近はそれが表面化しつつあるようだ。
「とりあえず明日本人たちに話をしてみるよ。今の中途半端なまま活動しても良いことはない。」
「うん、お願い。」
「冬優子はそういうのないのか?」
「えっ?」
「え?じゃなくて、冬優子だってユニット活動以外にしてみたいって思うことはないのか? なんだっていいんだぞ、冬優子ならそつなくこなしそうだし。ストレイライトのこれらのためにも」
「ばーか、今のふゆはあいつらの面倒見るだけで精一杯だっつーの」
「それもそうか。すまん変なこと聞いた。」
「まあいいわ、それよりあんたもそろそろ帰りなさいよね。全く性懲りもなく残業なんてしちゃって、心配してくれる彼女でも作ったらどうなの。せっかく顔だけは悪くないんだから。」
「ははっ、俺は今ストレイライトに全力だから、恋愛なんて考える暇なんてないさ。冬優子だって同じだろ?」
「そうねぇ~、今のところはね……」
そんな会話をした次の日、事務所に行くとそこには既にあさひの姿があった。
「おはようっス!!プロデューサーさん!!」
いつも通りの元気いっぱいの声で挨拶をするあさひ。
「ああ、おはよう。今日は早いんだな。」
「そうっすか?」
少し不思議そうな顔をしている。
「そんなことよりほら、昨日冬優子から聞いたぞ。ソロ活動したいって。本当か?」
「あっ!あの話っスか!?ほんとうなんすけど、でも少し違うっていうか……まだちょっとわかんないんすよね。」
「わからない?」
「そうっす。冬優子ちゃんと愛衣ちゃんでやるお仕事ももちろん楽しいんすけど……でもなんかちょっと違う気がするっていうか……うーん……ちょっとまだわかんないっす。」
これは思った以上に真剣に考える必要がありそうだ。
「わかった。じゃあちょっと待ってくれるか?こっちとしても一度ちゃんと話し合わないといけないと思ってたところなんだ。俺含めた4人できちんと話す機会を設けよう。」
「よろしくお願いするっす!」
それから数日たったある日、今度は愛依の方からも相談を受けた。
「うち、このままやってても大丈夫かな……?」
こちらもこちらで深刻そうである。
「どういうことだ?」
「いや、そのままの意味っていうか……、グループとしてもっと面白いことがやりたいんだけど、役に立てるのかなって…。ずっと3人でやってきたのもあるのかもしんないけどなんか自分の力が分かんないっつーか気になるってゆーか……」
「そうか……、まあ確かに今まではストレイライトとしての仕事がほとんどだったしな。」
「そうそう、それにメンバーもみんな可愛くてスタイルもいい子ばっかだし、あたしだけちょっと浮いてる感じもしちゃってね……。」
「そんなことはない。3人で完成するユニット、それがストレイライトの魅力だと俺は思ってる。だからそんなこと気にしなくていいんだぞ。」
「……うん、ごめん。わかってはいるんだけど……」
「実感まではない……と。わかったよ。その辺も含めてみんなで一度話そう。今週末の土曜、ダンスレッスンの後にするつもりだが予定は大丈夫か?」
「おっけ、問題なし。」
「よし、それなら決まりだな。」
そして迎えた土曜日、事務所にはあさひと冬優子が先に来ており、俺は最後の1人を待つことにした。
「もうすぐ来ると思うぞ。」
「え?何の話っすか?宇宙人っすか?」
「あんたねぇ、この状況でもう一人って言ったら愛衣に決まってるでしょうが。いったん落ち着きなさいよね」「なるほど、そりゃそうっすね。」
「みんな遅れてごめん!電車少し遅れててさ。」
噂をすればなんとやら、本当にちょうど良く愛衣が入ってきた。
「おお、これで全員そろったな。座ってくれ。」
「それで、早速なんだが単刀直入に言うぞ。皆はどうしたいんだ?これからもストレイライトとして活動していくのか、それとも他のことをやってみたいのか。」
「わたしはストレイライトの活動続けたいっす!!でも他のこともいっぱいやってみたいっす!」
「あんたねえ、少しは空気読みなさいよね。こういう時こそみんなの気持ちを確認するべきじゃない。」
「ストレイライトでの活動は続けていきたいっす!!でも他のメンバーと色々してみたいっす!!」
「いつもと同じなのはつまんないっす!!」
連呼するあさひ
「あ”あ”ーーー!!もううっさい!!十分わかったわよあんたの考えは。あさひは少し黙ってなさい!」
おもむろにあさひに猿轡をつける冬優子。なぜ持っている。というか絵面が非常に危ない感じだからやめなさい。
「んで?あんたはどうなのよ愛衣。」
再び愛衣へと視線を向ける冬優子。
「あたしは…………」
少し間を空けて愛衣が答える。
「……正直迷ってる。今はストレイライトとしての活動も楽しくて、でもそれは冬優子ちゃんとかあさひちゃんと一緒に活動できてるからだと思う。でも逆に2人に頼らずに見える景色を見てみたいって思うことが最近よくあって……」
「それで悩んでるってわけね。」
「……うん。」
「ふぅん、じゃあ聞くけど。この中の誰が欠けてもストレイライトとして活動していける自信あるの?」
「……多分無理。」
「そういうこと。じゃあ答えなんて出てるようなもんじゃん。」
「……そうかも。」
「はい、じゃあ決定。」
「え、ちょ、ちょっと待ってくれないか!?俺はまだ何も言ってないんだが……」
「プロデューサーさん、ここは冬優子ちゃんに任せておくっす!」
「うおぉ!あさひ!お前いったいいつの間に猿轡外したんだ?」
「こんなの簡単っすよ」
「……ありがとう。」
「別に……なんもしてないわよふゆは」
「まあいい感じにまとまってるけど、とりあえずせっかく考えてきたんだから俺の意見も言わせてもらうぞ。俺はストレイライトを中心とした活動を今後も続けていく方向で考えている。3人が納得してくれればの話だがな。もちろん、全員で意見を出し合って決めていくことが一番大切だと思っている。ただ、ストレイライトとして3人でやるのに退屈を感じる気持ちもよくわかる。」
「そうっすよ!スルーされたけど私はまだ納得してないっす!」
「そこで、他ユニットのプロデューサーとも話して新しい企画を持ってきた。」
「ええっ、ほんとっすか?」
「ああ、本当だ。」
「なんすかなんすか?きになるっすよ!」
興味津々といった様子のあさひ。
さすがにここまで期待されては応えるしかないだろう。
俺は鞄の中から書類を取り出し、机の上に並べた。
その瞬間、あさひがものすごい勢いで食いついてくる。
やはりこの子はまだまだ子供なのだと実感させられる。
そんな姿を見て冬優子がたしなめる。
「ちょっと座ってなさいよ。冬たちが見えないでしょ」
「えっとなになに、ストレイライトとアンティーカのコラボステージ及びCDリリース……ってホントなのあんた!」
どうやら冬優子にも驚いてもらえたようだ。
「楽しそうっすね!いつやるんすか!来月っすか!楽しみっす!!」
ここであさひがまた口を挟む。どうやら気になって仕方がないらしい。
仕方なく、もう一度説明をしてあげることにした。
すると今度は愛衣も参加してきた。
どうやらこちらも興味があるようで、真剣に聞いてくれている。
そして、ひと通りの説明が終わったところで愛衣が質問を投げかけてくる。
「これってつまり、うちらの事務所ユニット2組ずつでやるってことだよね。」
「そうだ。もちろん今うちには7ユニットあるから3組に分けるところもあるだろうが基本はそうするつもりだ。」
「普段あんまり接しない人との仕事ってことだよね。」
「たしかにそうだけど、みんな同じ事務所のメンバーだしそこまで緊張する必要はないだろ?」
「それはそうなんだけど……」
「愛衣、いい機会じゃない。一緒に仕事してみるのだって自分の実力を知る方法の一つよ。」
冬優子が愛衣を諭している。
なかなか良いコンビになりつつあるかもしれない。
ただ、愛依は少し不安げである。
どうしたものか…… うーむ…… あっ、そうだ。
あれがあったじゃないか。
俺は思いつきで立ち上がり、窓際へと向かう。
そしてカーテンを開けると、そこにはいつも通りの光景が広がっていた。
「ほら見てみろ2人とも。」
「何よいきなり」
「いきなりどうしたん?」
「外がどうかしたんすか?」
3人は不思議そうにしている。
「ここは2階で景色もあんまりよくないけどさ、一つ想像してみてくれ。ここの交差点にさ、歩道橋があったらって。」
「はぁ?」
話が読めてこないからだろう、冬優子が困惑し呆れたような声を上げる。
「それだけでさ、全然違う景色になるだろう。それに歩道橋から見る事務所も面白いかもしれない。そう思うんだよ。」
「んで、あんたは結局何を言いたいわけ?」
冬優子がしびれを切らしたのか問いかける。
俺は、自信を持ってこう答えた。
ユニットを超えた景色、ストレイライトで見に行けばいいじゃないか。
翌日の放課後、冬たちは3人でレッスンスタジオに来ていた。
昨日あいつから渡された資料。
その内容は私たちにとって驚きの連続だった。
まず驚いたのはストレイライトとアンティーカのコラボ楽曲の方向性だった。
ゴシックで、メタリックな曲を歌い上げるアンティーカと、ハイテンポで力強い冬たちストレイライト。そんな2ユニットにこの曲とは参ったものね。
正直、あいつの発想力を甘く見ていた。いい着眼点じゃない。珍しく素直にそう思えた。
でも、問題はそこじゃなかった。
「1番と4番、どっちも歌いたいっす!」
「いい加減にしなさいよあんた。」
「ちょっと2人とも落ち着いて。どのパート歌うかはアンティーカの人達と決めなきゃじゃん」
「それもそうね……。そうだ!あんた達言っとくけどくれぐれも粗相のないようにしなさいよね!特にあさひ!!」「あと冬のことばらすんじゃないわよ。」
「わかってるっすよ!任せてくださいっす!」
「ほんとにわかってんだか……はぁ」
思わずため息をつく。
こいつに振り回されるのはもう慣れっこだけど、でもまぁいつも通りに戻ったしいっか。
いや違うかな。
一歩先に進めたのかも。
終わり
AIのべりすとで遊んでみた結果生まれたものの供養です。お目よごし失礼しました。