「はぁ...はぁ...」
町外れにある小さな診療所。俺はそこに辿り着く。海風で所々錆び付いている。そんな古びた診療所の戸を開け中に入る。
「ん?あぁ、あんたか。おやおや、今日はいつもに増して酷い有様だね」
「...、金ならある...」
「オッケー、じゃあついてきな」
彼女の後ろについて行き、診察室に入る。
「ちょっと散らかっているけど気にしないでくれ」
「...」
椅子に座り背を向ける。
「どれどれ...、うわぁ、今回も随分とやられたね。酷いもんだ。それにしてもだいぶやつれたようだね、ちゃんと飯食ってるのか?」
「いや...、ほぼ摂れてないに等しい」
「だろうね。そうじゃなきゃほんの数か月でここまで痩せるなんておかしいよ」
あはは...、と乾いた苦笑いをしながら消毒液が滲みる痛みに耐える。
「全身に打撲と一部骨折しかけてるところもある、特にこの肩の切り傷、応急処置はしてるみたいだけど、これ下手したら完治させることできなかったかも。刺すというより抉るといった方がいいな。そんな感じになってる」
彼女はそう言いながらもてきぱきと手当てを進めていく。
「...気にしないのか?」
「何が?」
「俺が嫌われているって言うのに」
「私にとっちゃ金をちゃんと払ってくれる人は全員患者だよ。そんなこと気にしてたら私も食っていけないからね」
「そうか...」
「それよりもおまえ、私のことよりも自分のことを心配したら?このままじゃ、もっと身を滅ぼすよ」
「...」
何も言えずに黙っていると「手当て、終わりだよ」と声がかかる。
椅子からゆっくりと立ち上がって代金を払い立ち去ろうと戸に手を掛ける。
「ちょいまち」
「ん?」
手を掛けたまま振り向くと彼女の手にはラップに包まれた惣菜パンがあった。
彼女はそのパンをこちらに差し出している。
「いまこれしかないんだ、もってけ」
「...ありがとう」
それを受け取りそのまま戸を開けて外に出る。
診療所の近くにベンチがあったのでそこに腰を掛ける。受け取った惣菜パンのラップの包みを剥がし、口に運ぶ。ろくにちゃんとした飯を食べていなかったせいか『美味しい』という言葉しか思い浮かばなかった。
「っ、ゴホッゴホッ」
しかし、うまくのどを通らない。
お腹は空いているのに、次の一口が進まない。体が食事を拒否しているようだ。
「はぁ...」
弱い海風が全身を撫でるように吹く。時折、消毒液が滲みている場所が痛む。
「身を滅ぼすか...。現状をどうにかする方法があればいいんだけどな...」