異世界に『APEX Legends』のレジェンドたちと共に転生してしまった 作:ユウキ003
その日、俺は命を落とした。
何てことの無いある日の帰り道。
俺みたいに帰宅する人間たちで溢れかえった駅の構内。
そこで、事件は起こった。突如として構内で刃物を持った男が暴れ始めた。すぐさま悲鳴と怒号が響き渡る中で、男、通り魔は近くにいた女子大生らしき子を切りつけた。
悲鳴を上げて倒れる女の子。男はその子にとどめを刺そうと近づいている。
その時、俺は無我夢中で男につかみかかった。
正義感が強かった訳じゃない。力に自信があった訳じゃない。
それでも、彼女を助けるべきだって考えた。だから動いた。
俺は男ともみ合いになった。けれど……。
『ドッ!!!』
男の手にしていたナイフが俺の腹に突き刺さった。悲鳴を挙げたくても口が言葉を発せられない。そんな俺を見つめながら男は狂った笑みを浮かべている。
それでも、俺は最後の力を振り絞って……。
「ずあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
俺は男を道ずれにして構内からレールに向かって飛び降りた。そして、男の頭を掴んで、落下したその時、男の頭をレールに叩きつけた。
それだけで男は動かなくなった。死んだのか、気絶したのかは分からない。俺ももう瀕死で、そんな事を確認する余裕なんて無かった。
意識が遠のいていく。体が冷たくなっていく。自分でもわかる。俺はもう、死ぬ。
はっ、人一人助けて死ぬのか、俺は。……まだ、やり残した事がたくさんあるのに。
まだ、俺は『プレデター帯』にだって行けてないのになぁ。
俺は、そんな後悔を思い浮かべながら、瞳を閉じた。
そして、次に気づいた時。俺は赤ん坊になって転生していた。もちろん最初は戸惑ったさ。死んだと思った次の瞬間、俺は赤ん坊になっていたんだからな。意識も記憶もあるのに、赤ん坊の体だけは思うように動かせなかった。
転生したのか?俺?まさか人助けしたからか?はは、だとしたら、どんなラノベだよ。そう、思っていた。
その時だった。
『どうやら無事生まれたようね。うん、よく泣いてるみたいだし、健康みたいね』
ッ!?何々!?なんか声が聞こえたけど、頭の中に直接声が響いてる!?
何とか頭を振って左右を見回すと、見つけた。ぼんやりと、まるで幽霊みたいに半透明の人が浮かんでいた。それは俺にしか見えないようにで、他の人たちは気づいた様子もない。でも、問題はその人が誰なのか、って事だ。というのも……。
『ら、ライフライン~~~~!?!?!?!?』
俺が大好きだったゲーム、『APEX legends』のキャラクターである『戦う衛生兵』ことライフラインその人だった。
『な、なんでライフラインがっ!?』と、そう思って居ると……。
『へ~。人間ってこうやって生まれるんだ~!興味深いねっ!』
また聞き慣れた声が聞こえたっ!?視線を動かすと見つけたのは……。
『やぁっ!ボクはパスファインダーだよっ!』
『前線の斥候兵』こと、『パスファインダー』だった。
ぱぱぱぱ、パスファインダーまでっ!?でもどうして俺にだけ2人が見えるんだっ!?周りの皆は見えてないのにっ!
そう思って、何とか親の顔を見ようと見回した時、気づいた。この大きくは無い部屋には、他にも人影がいた事を。
『科学で敵を追跡するハンター』、『ブラッドハウンド』。
『装甲要塞』、『ジブラルタル』。
『次元をまたぐ戦闘兵』、『レイス』。
『職業軍人』、『バンガロール』。
『毒性トラップの使い手』、『コースティック』。
『ホログラフの幻術師』、『ミラージュ』。
『危険を恐れぬ高速兵』、『オクタン』。
『静電防衛者』、『ワットソン』。
『監視活動の達人』、『クリプト』。
『人工の悪夢』、『レヴナント』。
『流転の盗賊』、『ローバ』。
『火力支援基地』、『ランパート』。
『重力を操る者』、『ホライゾン』。
『爆破物の信奉者』、『ヒューズ』。
『有翼の復讐者』、『ヴァルキリー』。
『アンブッシュアーティスト』、『シア』。
か、彼等は、俺が遊びまくってたゲーム、『APEX Legends』の登場キャラクター達だっ!それが俺にだけ見えてるなんて、お、俺は一体、どんな転生をしちまったんだぁぁぁぁぁっ!?
~~~~それから15年後~~~~
元日本人だった俺は、ある日この世界へと転生した。この世界で『レイ』と言う名前を与えられた俺は、新たな家族とともに暮していた。
しかし、そんな俺には1つの特殊なスキルがあった。
そして今、俺はそれを駆使して山で『師匠』と狩りをしていた。
俺の師匠の名は、『ブラッドハウンド』。またの名を『ブロスフゥンダル』。その師匠と一緒に俺は機械的な弓、『ボセックボウ』を手に山を歩いていた。
俺は、前世の世界で1つにゲームにドハマりしていた。そのゲームの名前が、『APEX Legends』 。様々な特殊能力を持つキャラクターを選び、3人一組や2人一組のチームを組んで戦うバトルロワイヤルゲームだ。
俺は元々、APEXの兄妹作品とも言えるゲーム、『TITAN FALL』シリーズから入った人間だが、ホントにあの頃はAPEXばかりやっていた。ランクで言えばゴールド止まりの、精々中の下か中の中と呼べるくらいのプレイヤーだった。あの時の俺は、ホントに休日はAPEXばかりしていた。プレイヤーの中でも最高峰の証であるランク、『プレデター帯』を目指していた。まぁ、そこにたどり着く前に通り魔から人を守って死んで、こうして転生した訳だが……。
しかし、俺にはそのAPEX好きが高じてか、不思議な能力を授かってしまった。それが、『APEXに登場するレジェンド達を使役する力』だった。俺が生まれた時から、俺の中にAPEXの登場キャラであり、プレイアブルキャラクターであるレジェンド達が存在していた。彼等の存在は、どっちかって言うと『守護霊』や、アニメ風に言うなら『スタンド』、『サーヴァント』に近い存在だった。それに使役、と言うが実際には違う。俺に彼等を強引に従わせる命令権は無いし、彼等も自分の意思で好きなように動けるから、どちらかというと、共存している、とも言えるかもしれない。
更に俺は、彼等の装備を管理する能力があった。それに加えて、ローバのアルティメットである『ブラックマーケット』にはあらゆる装備が保存されている倉庫のようになっていた。俺がゲームで見てきたあらゆる武器、装備、アタッチメントが既にブラックマーケットの中に入っていて、いつでも取り出せるので、俺はそこから装備を取り出して、レジェンド全員に『金ヘルメット』、『金アーマー』、『金シールド』、『金バックパック』を装備させた。ちなみに俺も彼等と同じ『金一式装備』をしている。
更に何故か、ブラックマーケットの中にはゲームでは関係無いはずの食料や医薬品まで入っていた。正に至れり尽くせりだった。
食事を必要とせず(飲み食いは出来るし味も感じられるらしい)、常に俺の中に存在し、俺の意思や本人の意思によって実体化が出来るようだ。
この16年。俺はそんなレジェンド達と対話をしたり鍛えて貰いながら過ごしてきた。大体のレジェンド達からは弟のように接して貰っている。ただまぁ、一部のレジェンド達とはまだ深い関係になれていない。主にレヴなんだけど……。
まぁ、それでもそこそこ上手くやってきていた俺達。俺としても、大好きだったキャラクター達が自分の意思で行動し、俺と話をしてくるのはAPEXプレイヤーとして感無量の嬉しさだった。
ちなみに、俺の家族や俺が暮していた村の人達はレジェンド達の事を知っている。
いつぞや、村が盗賊に襲われた時だった。俺は皆に頼んで盗賊を撃退して貰ったんだ。まぁでも、レヴが大暴れしたり。ガス叔父が嬉々として盗賊を毒殺したり、ランパートが高笑いを上げながらミニガン、『シーラ』で盗賊を撃ち殺したりと。一部がはっちゃけて大暴れしたもんだから皆レジェンドたちを怖がってた。
まぁでも、ライフラインやワットソン、ジブラルタルの兄貴など、比較的なまともな皆のおかげで今では大体のレジェンド達は村の皆に慕われてる。
と言うかジブラルタルの兄貴に関しては毎日のように出てきては農作業を手伝ったりしている。おかげで俺以外の人達からも兄貴と慕われてるくらいだ。
って言うか、レジェンド達のおかげで村の生活はかなり向上した。
ブラッドハウンドが師匠になって狩りの仕方や自然との付き合い方を指導したり。
バンガロールが先生になって村の男女を問わず護身術を教えたり。
ランパートが鍛冶屋になって普通のより質の良い剣とか作ったり。
ライフラインが村医者になって皆の怪我を見たり。
クリプトの提案で、村を守る防壁や物見櫓を作ったり。
コースティックの毒の知識で対盗賊用の毒矢を生み出したり。
マジで皆のおかげで村は発展していった。いつだか、村長の爺さんから『次の村長はレイかのぉ?』なんて言われたのは記憶に新しい。
そして話を、今日俺はブラッドハウンドと共に山で狩りをしていた所に戻そう。
「……こっちだ」
ブラッドハウンドは小さな足跡を見つけると慎重に歩みを進めた。しばらく移動していると、前方に鹿の群れを発見した。
「やれるな?レイ」
「分かってる。任せて師匠」
俺は手にしていたボセックボウを構え、矢をつがえる。
こいつはこれまで幾度となくつかってきた弓だ。有効射程とか、弾道の落下とか、そう言うのはもう体に染みついてる。
初めてこれを握った頃は、ゲームの武器を手にした戸惑いで上手く扱えなかったが、それも過去の話。
「ッ!」
狙いを定めて放たれた矢は、一直線に一頭の鹿の頭に突き刺さった。その後、俺とブラッドハウンドは倒した鹿の前で手を合わせた後、近くの川で血抜きしてから俺がそれを背負って山を下りた。家に帰った俺は、そのままブラッドハウンドに見てて貰いながら鹿を解体してく。
しっかし、マジでブロスフゥンダル師匠のおかげで、前世で一般人だった俺も狩りや解体が出来るようになったなぁ。皆のおかげで村も守られてるし、発展した。良い事だ。そして夕食時になれば、気まぐれにオクタンやミラージュなどが出てきて、家族同然で食卓を囲む。俺の家族も、皆のことを家族同然に接してくれている。
そして、そんなある日の事だった。俺はとうとう16歳になった。
この世界では16歳から成人扱いとなる。そして、成人した者には1つの選択肢が与えられる。それは、生まれ育った場所に残るか。或いは村を出て外の世界へと旅立つか。と言っても、後者を選んだからって村に帰ってくるな、とは言われない。
そして俺は、選んだ。村を出て、冒険者になる事を。
「レイ。気をつけて、行ってくるんだよ」
「もし戻りたくなったら、いつでも戻ってきて良いんだからね?」
そう言ってくれる父さんと母さん。……転生して16年、俺は第2の両親に愛されて育った。前世の親だって、俺の事を愛して育ててくれた。それでも、2人は負けないくらい俺に愛情を持って接してくれた。
「うん。分かってるよ父さん、母さん。俺としても定期的に戻ってくるつもりだから。だから心配しないで。いざとなったらヴァルキリーの『スカイハイダイブ』でひとっ飛びで戻ってくるからさ」
「あぁ」
俺の言葉に父さんが頷く。
すると、俺の中から次々とレジェンド達が実体化してくる。
「皆、息子の、レイのこと。お願いね」
「任せて。レイは私達にとっても家族よ。絶対に守り切るわ」
母さんの言葉にライフラインが応える。彼女の言葉にジブラルタルやオクタン、パスファインダーが頷く。
「レイ、気をつけて行っておいで」
「うん。行ってきます」
俺は父さんの言葉にそう答えた。そして、俺は村を出た。
俺は不思議な転生をした。異世界に来て、大好きだったゲームのキャラクター達と旅をする。それはとても刺激的な転生だった。そして、この先どんな事があるのか、期待と不安で心臓を高鳴らせながら、俺は俺の旅を始めた。
俺は、異世界でレジェンド達と旅に出た。
プロローグ END
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