異世界に『APEX Legends』のレジェンドたちと共に転生してしまった 作:ユウキ003
異世界へと転生し、大好きなゲームのキャラクターであるレジェンド達と旅に出た俺。
『んでよ~レイ。まずはどこ行くんだ?』
村を出てしばらくすると、俺の傍に幽霊みたいな半透明で実体化するオクタン。今更だけど、レジェンド達は普通に実体化する事も出来るほかに、俺だけに見える幽霊みたいな姿で実体化出来る。この時だと、ものに触れたり掴んだりっていう事は出来ないけど、偵察とかにも凄い役立つ。
「一応、村から一番近い町の『カトーラ』に行って冒険者に登録するつもりだけど」
この世界の職の1つである冒険者は、俺が前世で読んでいたラノベの冒険者と殆ど変わらない。冒険者ギルドに登録し、ギルドから依頼を斡旋される。依頼をこなして報酬を受け取る。それが冒険者だ。
『おぉっ!冒険者かっ!って事は冒険するんだなっ!依頼って事は、ドラゴンと戦うのかっ!?楽しみだぜっ!』
「って言っても初心者の俺じゃそんな凄い依頼とかは受けられないと思うよ?」
俺はオクタンの言葉に苦笑しながらそう答える。
『って言うか、冒険者ってのは儲かるのか?』
更に俺の隣に現れるミラージュ。
「う~ん。やっぱり上のランクに行くほど儲かるんじゃない?聞いた話だけど、強い冒険者は時に国から貴族として取り立てて貰えるらしいし」
『おぅっ!って事は、俺達が貴族みたいになれるって事か!?ならレイっ!やっぱ上を目指すしかないなっ!』
「アハハ、そうだね」
相変わらずのミラージュに俺は笑みを浮かべる。
『貴族ってマジかっ!だったら毎日美味い酒が飲めるなぁっ!』
『レイが貴族になったら、アタシらも鼻が高いねぇ』
続くランパートとホライゾンの言葉に俺は苦笑する。
そうやって、傍目には一人旅だけど俺には家族同然のレジェンド達がいる。おかげで旅も楽しい。
でも、その時だった。
村から続く林の中を走る小道を抜けて、草原の中を走る大きな街道へと出たその時。
『ッ!レイッ!前方で戦闘よっ!』
咄嗟に響くレイスの声。慌てて前方を見ると、彼女の言うとおりだった。
俺達から100メートルほど離れた場所で、豪華な馬車が襲われていた。馬車を守ろうと金属製の鎧を纏った、騎士みたいな人達が薄汚れた装備の盗賊らしき男達と戦っていた。だが、騎士と盗賊では人数に差がありすぎた。数に押し込まれ、更に騎士と戦う盗賊たちの後方、少し離れた小高い丘には、予備の戦力なのか待機している男達の姿もある。
こいつは不味い。このままじゃ馬車の中の人が危険だ。
『どうするよ、レイ』
その時聞こえる、ジブラルタルの声。皆、俺の判断を待っている。そうだ。彼等が戦ったとしても、全ての責任は指示を出す俺にある。なぜなら、彼等は俺にとって守護霊のような存在だからだ。……まぁでも、やるしかないだろ。こんな状況、見過ごせない。
「馬車とその護衛の騎士の人達を助けるっ!皆の力を貸してくれっ!」
俺の言葉に応えるように、皆が次々と実体化していく。
俺は素早く戦況を見て、指示を考え、下す。
「ジブラルタル、ライフライン、ワットソン、ミラージュ、ヒューズ、バンガロール、シアはオクタンのジャンプパッドで馬車の傍へっ!負傷者の救助と馬車の防衛、騎士の援護をっ!」
「了解したぜアミーゴ!」
俺の指示を受けて真っ先にオクタンが飛び出す。
「ジャンプパッド放出っ!」
そしてオクタンがどこからか取り出した、オクタンのアルティメット、『ジャンプパッド』。
「イィヤッハァァァァァァァァァッ!」
そしてスライディングしながらパッドに乗ったオクタンが次の瞬間、馬車の方に飛んでいく。更に続けてジブ、ライフラ、ワットソン、バンガ、ミラージュ、ヒューズ、シアが次々とオクタンに続く。
「パスファインダーはジップラインを敵の予備部隊の方へっ!ランパート、ブラッドハウンド、レイス、クリプト、レヴナントはそれで移動して、予備部隊を蹴散らしてっ!」
「OK!ジップライン射出っ!」
パスファインダーが生み出したジップラインに次々と皆が乗り込んで敵に向かっていく。
「残りのローバ、ヴァルキリー、コースティック、ホライゾンはここで俺と狙撃による支援っ!ローバっ!ブラックマーケットをお願いっ!」
「任せなさい。ショッピングの時間よ」
ローバがブラックマーケットを展開し、俺はその中からチャージライフルを取り出し、更にアタッチメントの『2~4倍可変式AOG』を取り出して装着し構える。更に敵の接近を警戒して、コースティックがガストラップを周囲に敷設する。
そして、俺は盗賊の胴体目がけてチャージライフルの引き金を引いた。
~~~~
襲われている馬車の護衛である騎士達は、劣勢を覆そうと必死に戦っていた。だが、相手の数はこちらの倍以上だ。一人、また一人と味方の騎士が倒れていく。騎士の隊長である『ロバート』は苦虫を噛みつぶしたような表情のまま、剣を振り続けていた。
と、その時。
『『『『『『ドドドドドドドッ!!!!』』』』』』
何かが盗賊達の側面から襲いかかった。それは、ロバートは知らない武器である銃火器で武装したレジェンド達の射撃だった。次々と目の前の盗賊達が倒れていく。
と、その時。
「ドームシールド展開っ!」
彼等の傍に飛び込んできたジブラルタルが、馬車の周囲を覆う青白いシールド、ドームシールドを展開した。予備部隊の方から矢が何本も飛んでくるが、それはシールドに弾かれるばかりだ。
更にライフラインが倒れた騎士の傍に駆け寄る。
「まだ息があるわねっ!ほら、しっかりしなっ!」
ライフラインは相棒とも言える『D.O.Cヒールドローン』を展開し、瀕死の騎士を助け起こした。ちなみに、この蘇生はゲーム内で『金バック蘇生』と言われた効果と同じだ。なので起こされた騎士も、傷こそ完全に塞がっては居ないが、ある程度体力が回復した状態で起こされる。更にライフラインはそうやって金バック蘇生で次々と瀕死の騎士達を助け起こしていく。……流石に死亡した騎士達を助ける事は出来なかったが、それでも何とか戦えるレベルまで数人の騎士達が復活した。
そして、それを呆然と見ていたロバートがようやく我に返った。
「ちょ、ちょっと待てっ!?何だお前達はっ!?」
我に返ったロバートはレジェンド達に剣を向ける。が、彼等はそれに怯えた様子も無い。
「安心しろブラザー。俺達は味方だ。助けに来たのさ」
「そ、それを信用しろと?」
ロバートはジブラルタルの言葉を信じられない様子だった。まぁ、彼等からしたら未知の武器を使うレジェンド達を疑っても仕方が無い。
「味方に決まってるでしょ?そうじゃなかったら助けないわよ」
『ドンッ!』
ライフラインがそんな事を言いながら、ドームの外に一瞬体を晒し、手にしていたショットガン、『EVA-8オート』をぶっ放して賊の一人を吹っ飛ばす。
更に、ロバートの周囲ではオクタンにワットソンにシアにヒューズにバンガロールが大暴れしていた。
「おらっ!ナックルクラスターを食らえぇっ!」
ヒューズのアビリティ、ナックルクラスターが男達を吹き飛ばし……。
「欺されたなぁ!」
ミラージュのアルティメット、『パーティーライフ』のデコイを切り裂き、欺された盗賊達。そして次の瞬間には、ミラージュが手にしていたショットガン、『マスティフ』を食らって吹き飛んだ。
「オラオラっ!こっちこっちっ!」
オクタンは興奮剤を自分に注射しては盗賊達の周りを走り回りながら『モザンビーク』の散弾を撃ち込んでいく。
「こいつチョロチョロとっ!」
盗賊の1人が何とかオクタンに近づき剣を振り下ろそうとするが……。
『ダンダンッ!!』
バンガロールの手にしたマークスマンライフル、『G7スカウト』が頭と心臓を一発ずつ撃ち抜く。
「フェンスを展開するわ」
更に、敵の接近を阻むためにフェンスを展開するワットソン。ただの青白いそのフェンスを甘く見た盗賊達がそのまま突進してくるが、直後に体を痺れさせそのまま地面に顔面からダイブする羽目になった。そして動けない所をワットソンのサブマシンガン、『R-99』が撃ち殺していく。
更に離れた場所にいたホライゾンやヴァルキリー、コースティックにローバ、そしてレイの狙撃が次々と盗賊を撃ち倒していく。
『い、一体、彼等は何なんだ』
ロバートは、呆然と盗賊相手に大暴れするレジェンド達の背中を見ている事しか出来なかった。
そして更に……。
「お、おいっ!?何だありゃっ!?」
後ろで待機していた盗賊達が、突如現れたレジェンド達に戸惑っていた。
「知るかっ!それより俺達も行くぞっ!このままじゃ金づるに逃げられっ!」
そう、言いかけた男だったが……。
『ドンッ!』
放たれたウィングマンの一撃が男の頭を吹き飛ばした。慌てて音がした方に盗賊達が向くと……。
「皮付き共が。その腸、引きずり出してやろう」
物騒な事を言いながら片手でウィングマンを構えるレヴナントが立っていた。彼等からすれば、普通の人間からかけ離れたレヴナントに戸惑うのも無理は無い。
「ひ、怯むなっ!相手は1人っ!」
と、言いかけた直後。
『ギュルルルルルルルッ!』
彼等の耳に響く、何かが回転する音。直後。
『ドドドドドドドドッ!!!!』
無数の銃弾が降り注いだ。
「おぉらぁっ!シーラの出番だぁっ!」
それはランパートのミニガン、シーラによる射撃だった。銃弾を受けて男達が次々と吹き飛び、死んでいく。
「こ、こいつぅっ!」
弓を手にした男がランパート目がけて矢を放つ。しかしそれは彼女の前に展開された壁、『増幅バリケード』のシールドに阻まれ、弾かれただけだった。
「怯むなっ!側面から回れっ!」
と、更に男の1人が指示を出し、数人が迂回してランパートの元に移動しようとするが……。
「EMPプロトコル作動」
クリプトが事前に配置していたドローンから放たれたEMPに阻まれた。球形に広がるEMPの中に突っ込んだ男達は、全身を駆け巡る電流に痺れて動けなくなってしまったのだ。
『ダラララッ!ダラララッ!』
更に、レイスが手にしたプラウラーSMGがランパートの取り逃がした盗賊達を無慈悲に撃ち殺していく。
『ダァンッ!』
更にブラッドハウンドのロングボウが正確に盗賊の頭を撃ち抜く。
「く、くそぉっ!やってられるかっ!俺は逃げるぞっ!」
すると、劣勢を感じ取ったのか無数の盗賊達が我先にと逃げ出した。が……。
『ビシュッ!』
それを後ろから放たれたボセックボウの矢が貫く。
「命中。やったねっ!」
それはパスファインダーによる狙撃だった。
やがて、盗賊達はレジェンド達の前に敗走を始めた。しかしそれも、レイやホライゾン達の狙撃で半数以上が物言わぬ骸に成り果てるのだった。
~~~~
ふぅ。俺は、息をついて掲げていたチャージライフルを下ろした。少し離れた所には、盗賊の骸の山が出来ていた。これには嫌悪感こそ覚えるが、吐き気を催す程じゃなかった。俺はこれまで村で命を狩って日々の糧を得て居た。それに盗賊相手に戦った事は一度や二度じゃない。……小さな俺の村で略奪しようと襲ってきた盗賊連中相手に、初めて人殺しをしたのはもう2年近く前の事だ。……今更この程度で吐きはしないが。……その事で前世の俺とはかなり変化している事を実感しながらも、『今更か』と俺は認識している。
俺が既に『異常者』に片足を突っ込んでる事を自覚しながらも、俺は気持ちを切り替え、皆と小走りで馬車の方へ向かっていた。そして俺がたどり着くのと同タイミングで、丘の方を攻撃していたレヴやレイス達も合流してくる。
そして俺はバッグにチャージライフルをしまう。
ちなみにだが、俺達の持つバッグってのは一言で言うと『有限なドラえもんのポケット』だ。入れられる物の数に限りがあるが、入れられるだけ物をスロットに入れられるし、どれだけ弾や武器を持っても重さは全く感じない。食料品などの生物は入れられないと言う制約があるが、それでも十分にオーバーテクノロジーの固まりである。
で、話を戻して俺は皆の前に出た。
「あ、え~っと。お怪我はありませんか?」
しかし最初になんて言えば良いか分からずこんな事を聞いてしまった。
「あ、あぁ。私は大丈夫だが、君は?」
対して相手も、俺やレジェンド達への驚きが抜けきらないのか返事に覇気が無い。
「俺の名はレイ。あ、それと彼等は俺の仲間ですから、安心して下さい」
「仲間?では、君たち全員冒険者なのか?」
「あ、えっと。俺はまだ何ですけど。ちょっといろいろ合って」
う~ん。レジェンド達についての説明は……。言葉でしてたら長いよなぁ。ここはちょっと見て貰った方が早いか。
「ごめんパスファインダー。一度俺の中に戻って」
「OK!」
そう言うと、パスファインダーの体が霊魂のようになり、俺の体に入ってくる。それに棋士さん達は戸惑う。
「パスファインダー、もう一回出てきて」
「はいは~い!」
更にもう一度、俺の体から飛び出した霊魂のような物が瞬時にパスファインダーに変わる。
「こ、これは一体……!?」
「彼等は俺という器の中に存在する守護霊のような存在なんです。眷属、はちょっと違うな?僕も違うし。……まぁ力強い家族同然の仲間ですね」
「そ、そうか」
騎士の隊長さんは戸惑いながらも頷くが、多分俺の説明の殆どは頭の中に入ってないだろうなぁ。……だってパスファインダーとかレヴナントとかって完全に人じゃないし。ブラッドハウンドも顔が分からないから色々怪しいし。ヒューズは右手が義手だし。
騎士の人達がレジェンド達に戸惑っていると……。
「あっ。そう言えば、馬車の中の人達は大丈夫ですか?高級そうな馬車なので、もしかしたら凄い人が乗ってるんじゃ無いかと思ってたんですが……」
「ッ!?そうだった!姫様っ!お怪我はありませんかっ!」
隊長さんがドアをノックし声を掛ける。すると……。
『ガチャリ』と音がしてドアが開く。中から現れたのは……。
「ロバート?賊はもう退散しましたか?」
金髪のロングヘアに、青い瞳。ピンクを基調としたフリルの多い、如何にも貴族が着るような華やかなドレスを纏った女の子が馬車の中から現れた。
「はっ。セリーヌお嬢様。彼等の助けもあり、無事に退ける事が出来ました」
ロバートと呼ばれた隊長さんはその場に膝を突いて報告している。そして、お嬢様と呼ばれた女の子が俺とレジェンド達に目を向ける。
「……こちらの方々は?」
見た目的には俺と大差無いであろう女の子が、困惑とも興味とも取れる表情で俺達を前に首をかしげている。
「彼等はその少年、レイの守護霊のような存在だとか。レイ、こちらはブラウン公爵家令嬢、『セリーヌ・フォン・ブラウン』お嬢様だ」
「えっ!?」
公爵って、確か爵位の中で一番上の位じゃっ!?俺は慌ててその場で膝を突いた。そりゃ、こんな豪華な馬車に乗ってる程だから偉い人だろうとは思ったけど、まさか貴族でも最上位の公爵の人だったなんて。
「おいおいどうしたブラザー?」
すると、後ろに居た皆が首をかしげている。
「もしかして、彼女って偉いの?」
「確か、公爵は貴族の爵位の中でも最上位はずよ」
首をかしげるバンガロールにローバが答える。
「えっ!?じゃあ本物のお姫様なのっ!?ボク、お姫様初めて見たよっ!」
そう言って嬉しそうに手を叩くパスファインダー。しかし、皆の態度に騎士さん達の鋭い視線が……。
「ご、ごめん皆ッ!とりあえずありがとうっ!でも一回戻ってっ!」
「え~!?こういう時はお姫様の手を取ってキスしたりしないのっ!って、ボク口無いやっ!あはははっ!」
「ごめんパス、ちょっと黙っててっ!」
とにかく、俺は皆を一度体の中に戻すと改めてお嬢様の前で膝を突いた。
「その、仲間が失礼しました。どうかひらにご容赦いただきたく……」
慣れない敬語を使いながら頭を下げる。うぅ、貴族相手に怒らせるのは色々不味いよなぁ。報復で村に手を出してきたりしてきたら。俺としても黙って見てる訳にはいかない。ただでさえ俺の仲間のレジェンド達は血の気が多いし。
「大丈夫ですよ。気にしては居りません」
すると聞こえる優しい声。
「それよりも、あなたは私たちの命の恩人。どうか顔を上げて下さい」
「は、はい」
俺がゆっくりと顔を上げると、俺ににっこりと微笑むお嬢様。どうやら良識のある人みたいだ。おかげで助かったと言えば助かったが。
と、そこへ。
「レイ。いや、レイ殿」
ロバートと呼ばれていた騎士さんが俺の傍に近づく。
「私は『ロバート・グリス』。お嬢様の護衛をしていた騎士達の隊長だ。改めて、貴殿らの助力には感謝している。ありがとう」
「いえ。俺もたまたま通り掛かっただけですし、俺の仲間の、レジェンド達が居なければどうなっていた事か。……皆さんをお助けできて、何よりでした。……ただ、お助けできなかった人達がいたのは、残念です」
そう言って俺は、地に伏した騎士の人達に少しだけ視線を向ける。俺がもう少し早く着いていれば、ライフラインの金バック蘇生で助けられたかもしれない。
「そうだな。……だが、貴殿が責任を感じる事は無い。しかし、無礼を承知で1つお願いをしたい」
「はい。何でしょう?」
「……彼等の墓を建てたい。手伝ってくれ」
「分かりました」
悲しそうなロバートさんの言葉に、俺はすぐに頷いた。
その後、俺はローバのブラックマーケットの中にあった鉄製シャベルを取り出し、穴を掘った。その作業にはジブラルタルやオクタン、パスなどに協力して貰った。その後、遺体を布で包んで埋めた。その際、彼等の所持品をいくつか拝借する。これは彼等の家族に届けられるとロバートさんが言っていた。そして近くの林から持ってきた木材で十字架を作り、それを墓の上に立てた。
「……黙祷」
ロバートさんのかけ声に応じて、生き残った騎士の人達が静かに目を瞑り俯く。俺もそれに倣って、彼等の冥福を祈る。
その後。
「あの。皆さんはこれからどちらへ?」
「我々はこの先にあるカトーラの町へ行く予定だ。そこにはお嬢様の母方のお祖母様、『リランダ・クイットナー』様が居られる。元々この辺りはお嬢様のお母上の一族であるクイットナー伯爵家が収めている。今日は、そのリランダ様の元を訪れるために来ていたのだが……」
「そこを襲われたんですね」
そう言って俺は、近くに転がっている山賊の死体へ目を向けたのだが……。
「あれ?レイス?ランパートも」
いつのまにか、俺の中から出てきていたレイスとランパートが死体の様子を見ていた。
「2人とも、どうかしたの?」
「……レイ。こいつら、ただの盗賊じゃないかもしれないわ」
「え?」
「それは、どう言う意味ですか?」
俺が疑問符を浮かべ、聞こうとするが先にロバートさんが問いかけた。
「私たちやレイはここからそう遠くは無い村で暮していたわ。村も何度か盗賊に襲われた事があるから、用心して最近では村の周囲の警戒もしていた。でも、この規模の盗賊がここ最近近くで活動していた痕跡は無かったわ」
「ヤァ。それにレイ。こいつを見なよ」
そう言ってランパートが俺に何かを投げ渡した。それを受け取ってみるけど……。
「これは、ナイフ?」
盗賊の私物らしいナイフだった。
「そうさ。そいつを見てどう思う?」
「どう思うって……」
ナイフを見てみるが、一言で言って『ボロボロ』だ。柄の部分に巻かれた滑り止めの布はボロボロだし、革の鞘から抜いて刃の部分を確認するけどこっちも薄汚れてボロボロ。刃こぼれしてる所もある。
「……まぁ、長年使い込んでボロボロだね」
「ヤァ。その通りさ。けどじゃあ、こいつはどうかな?」
『ザッ!』
ランパートは俺の傍に、盗賊が使ってた剣を突き刺す。それを抜いて確認してみるけど……。
「え?何これ?こっちは新品同然じゃん」
殆ど汚れの無い鏡みたいにピカピカの刀身。柄や鞘にも殆ど汚れが無い。すると……。
「どうやら新品のソードを持ってるのは、そいつだけじゃないみたいだぜ」
ジブラルタルとオクタンが俺の傍に、抱えた剣の山を置いていく。確かにどれもこれも殆ど汚れが無い。新品同然だ。更に……。
「おい。向こうの連中からも装備を持ってきたが、どれもこれも新品だぜ」
更に丘の方に行っていたのかヒューズが手にした剣や弓を持ってくる。
「ふむ。使い込まれた痕跡が無い。こちらも新品同様だ」
それを手にして分析するブラッドハウンド。
「それだけじゃない。こいつら、服は薄汚れてるが一部の連中は新品同様の防具まで身につけていた」
そう言ってクリプトが死体の1つを指さす。そっちに目を向けると、確かに来ていた服は薄汚れていた。だが、返り血に濡れた鎧も、まだ真新しかった。
「ほぼ全員、新品の武器に一部には真新しい防具。それにこの数の盗賊。こいつは、盗賊に見せかけた暗殺だろう」
「ッ!?暗殺っ!?」
クリプトの言葉にロバートさんが反応する。
「しかもこれだけの数の荒くれ者を集めるだけの発言力。これだけの装備を集める資金力を併せ持った奴が背後にいる。恐らくそいつが、この暗殺の首謀者だろう」
クリプトの言葉に、騎士の人達が表情を引き締める。暗殺と聞けば護衛であるロバートさん達だって心穏やかではいられないだろう。それに暗殺計画が存在するのなら、襲撃がこれだけとも考えられない。
「あの、皆さんはカトーラの町へ行くんですよね?なら、俺も同行させてください」
「レイ殿をか?」
「はい。どうせ俺もカトーラの町を目指していましたし、この先何があるかも分かりません。俺の仲間であるレジェンド達の中には索敵が得意な者も居ますし、皆の戦闘力もさっき見て貰った通りです。……どうでしょうか?」
俺の言葉にロバートさんは少し迷った後。
「そうだな。確かに君を含めた19人が護衛として参加してくれるのなら、今居る戦力も単純計算で倍になる。……分かった。こちらとしても提案はありがたい。カトーラの町まで護衛を頼みたい」
「分かりました」
こうして俺はセリーヌお嬢様の護衛をする事になった。とは言え、騎士の人達が乗っていた馬がやられてしまったので、ここからは町まで徒歩だ。幸い、今からなら徒歩でも2時間あれば到着するそうだ。
そして、ゆっくりと進む馬車の周囲を俺達が固める。馬車の助手席にはクリプトが座りドローンで色々確認している。オクタンはアビリティの興奮剤で先行して道の安全の確認に走って貰った。また、馬車の後ろにある荷物を載せる場所にはパスファインダーが座り、後ろを警戒している。
その道中で……。
「あの、ロバートさん」
「何かな?」
俺は武器、チャージライフルを手にしながらロバートさんに声を掛けた。
「さっき、クリプト、俺の仲間の1人が言ってましたけど、これだけの人員に装備を集められるのはきっと大金を動かせる人間です。失礼だとは思いますが、心当たりはありませんか?」
「…………」
そう問いかけると、ロバートさんはしばし口をつぐんだ。悩んでいるのか、或いは安易に言えないのか。とか考えながら黙っていると……。
「今から話す事は、他言無用で頼む」
「……分かりました」
そう言って、ロバートさんの話が聞けた。
「実は今、セリーヌお嬢様にこの国、『センクトブルク王国』の第2王子との結婚話が上がっている」
「結婚ですか?」
「あぁ。ただ、まだ正式な話ではなく、王族もお嬢様のご両親であるブラウン公爵家の方々も乗り気、程度の話だ。しかし今、センクトブルク王国では2つの派閥が争っている」
「派閥争い、ですか?内容は?」
「1つは第1王子の派閥。もう1つが第2王子の派閥だ。第1王子は国王の正室の子で、第2王子は側室の子なのだが、第1王子は傍若無人な事で有名なのだ。一説には、奴隷を買おうとして、『王族の品位が下がるから』と進言した執事を、激昂しその場で切り捨てた事もあるとか」
「……生まれた国の王族に文句は言いたくないですけど、そんなのが王様になったら、国民は国を捨てますよ?」
「そうだな。そのため、多くの者は第1王子を良く思っては居ない。だが、正室の子であり男児である以上は王位継承権がある。また、そんな第1王子に取り入って王国の実権を握ろうとする輩も少なからず存在する。対して、第2王子はまだ14と若いが、勤勉で心優しい性格だ。周囲にも礼節を持って接し、紳士の中の紳士とさえ称される程に立派なお方だ。そのため現国王の忠臣たちを始め周囲からの人気もある。多くの者は次期国王として第2王子を推薦している。そして国王陛下も、第2王子寄りの立場を取っている」
「……聞いた限りだと、第2王子の派閥が優勢に思えますが?」
「確かにな。だが、第1王子派閥の中には実力行使によって第2王子の派閥の者達を消し去ろうとする輩までいる始末だ」
「……そうまでして実権を握りたい、と」
そう言って、俺は呆れたようにため息をついた。
「そうだ。そして、先ほど話した結婚の話も、大きな発言力を持ち国内でも良識派と呼ばれる貴族の筆頭であるフォン・ブラウン家を第2王子の派閥に引き込み、自分達の派閥の正当性を主張したいがためでもある」
「政略結婚、と言う奴ですか。でも、第1王子派の連中はその結婚で第2王子派の力が強まるのを危惧した」
「そうだ。それが恐らく、先ほどの襲撃の理由だろう」
「……それで、相手の見当は付きます?」
「いや。第1王子派の貴族連中は目的のためなら手段を選ばない連中だ。元々黒い話の絶えないような者達の集まりでもある事から考えて、誰であってもこの手を選んで来そうだ」
「ロクデナシの集まりだから逆に誰だか分からないって事ですね」
「……レイ殿、一応相手は貴族なのだが?」
「生まれてこの方、貴族は見た事ありませんでしたし。それに、そんな悪逆非道の限りを尽くしてそうな連中を貴族と認めるのは、なんか癪ですから」
俺の言葉に、ロバートさんは苦笑を浮かべる。更に……。
『ははははっ!良く言ったぜブラザーっ!』
霊体のジブラルタルが笑い、ライフラインやワットソン、ローバ、シアがうんうんと頷いてる。
と、そうこうしていると、先行していたオクタンが戻ってきた。
「オクタン、どうだった?」
「パパッと前の方を探ってきたが、とりあえず道沿いには怪しい連中はいなかったな。ただ……」
「どうしたの?」
「町の手前にさ、道を左右から挟むように林があってよ。中まで確認した訳じゃねぇから分からねぇが、何か居るかもしれねぇ」
「林、かぁ。バンガロール、どう思う?」
俺は軍人でもあるバンガロールを呼び出し問いかけてみる。
「もし黒幕が慎重で狡猾な人間ならプランを複数用意していても可笑しくは無いわね。林と道の間の距離は?」
「ざっと見て10メートル前後って所だな」
「それなら、十分弓の射程圏内ね。私なら、弓兵を林の中に展開して左右から奇襲をかけるわね」
「確かに」
バンガロールの言葉にロバートさんが頷く。
「オクタン、林を迂回できそうな道はあった?」
「いや、ダメだ。木々は結構密集してるし林自体も左右に広かった。迂回も無理だし、結構中の方はデコボコで倒れた木もあった。林の中を抜けるのも無理だな」
「実質一本道、か」
俺はオクタンの答えを聞き、考える。
「レイ殿、作戦はあるか?」
「何とか。レジェンドの中には防衛に優れた者も居ますし、彼等にはアルティメットと呼ばれる必殺技のようなものを持つ者も居ます。……奇襲の可能性があるので、とにかく索敵能力に優れる俺の仲間の、ブラッドハウンド、クリプト、シアなどの力を生かして敵を早期発見。相手が奇襲してくる前に、彼等のアルティメットで先制攻撃が出来れば、何とか」
「分かった。……君たちの力に頼ってすまないが、頼むぞ」
「はい」
そこからは、レジェンド全員を召喚して移動を開始した。林では先ほどのように数多の悪人が待ち構えているかもしれない。でも、俺には不安など無かった。
なぜなら、俺の傍には頼もしい18人のレジェンド達が居るのだから。
第1話 END
楽しんでいただければ幸いです。
感想や評価、お待ちしてます。