仮面ライダーウォーズ 作:ルマ
時系列は第七話直後の小話から始まります。
今回は標華さんと或刻さんの出会いを語ります。
こう言うところでキャラの深掘りしっかりしなきゃ…w
ではどうぞ!!
ー或刻sideー
一つの戦いは終わった…結局戦いが終了した後壊占さんに説明を求めても
壊占「心配すんな、しばらくしたら説明すっから」
と僕を家に送り、その場をはぐらかしてすぐに帰ってしまった。
家に帰ると電気が何故か消されていた。その時までは標華さんが帰る時に消したのだろう位に思っていたのだが、
「あれ、標華さんまだいたんですか!?」
標華「……ん?あ」
明かりをつけると片づけられた部屋の椅子に標華さんは座りながら眠っていた。
目を擦りながら僕の方を向く。
標華「おかえり。あれ先輩は?」
「僕も先輩なはずなんですけど…帰りましたよ。用事があったみたいで」
標華「ふーん…?」
そう言いながら彼女は立ち上がり、僕の周りをぐるぐる回り始める…
身体全体を見ながら、目の前で急に立ち止まったかと思えば、標華さんは口を開いた。
標華「また戦ったの?」
「何故それを!?」
標華「見ればわかるよ。肩の力の入れ方が。右側にかなり負荷をかけたでしょ」
確かに、ファーストホッパーの攻撃の時もタイタンメソロジーの必殺の時も僕は右側に力を入れていた
つい恥ずかしく感じてしまい、右腕を隠すように体の後ろに隠す。
その姿を見て、標華さんは呆れたように言葉をつづける。
標華「それに、昔からの付き合いだしね。キミがおじいちゃんの家に引っ越してきて以来の仲だよ?」
「あ、あの時はお世話になりました…」
確かに僕はもともとこの街出身ではない。もっと地方の方で育ってきた。しかし、両親がいなくなってしまったことで唯一の親類であるおじいちゃんが住むこの街へやってきたんだ。
その時の僕は、家族を失ったことで全てを拒絶してたんだったな。
標華さんの言葉で、不意に昔の記憶が思い起こされる…
ー12年前 三者sideー
緑豊かなこの街に、少し大きな家がひとつ。その家の持ち主は黒宮家。
そこに住む老人、黒宮 弦二郎はお隣さんの奥さん、須道 美智香に相談をしていた。
弦二郎「孫がの…出てこんのじゃ」
美智香「お孫さんって確か…あの事件の?ってすいません黒宮さん、不謹慎なことを…」
あの事件、それは連日ワイドショーなどでも取り上げられている事件。『黒宮一家殺人事件』だ。
謝ろうとする美智香、しかしそれを弦二郎は静止させる。
弦二郎「ああ、おやめくだされ。起きてしまったことをいつまでも悔やんでいたら、あの子を笑顔にする者がいなくなってしまう。そうしてしまっては、息子たちに死んでも顔向けできんわい。」
美智香「そうですね…それで、お孫さんのお名前は?」
弦二郎「或刻じゃ…ショックが大きかったと言うのもあるじゃろうな。」
或刻は今外に出ることを拒絶している。もう2度と同じ思いをしたくないからだろう。
美智香は頭を少し悩ませると、そうだ!と両手を叩いた。
美智香「うちの子と会わせてみましょう!」
というと、家の方からドタバタと足音が聞こえてきてドアがばたりと開かれると、可愛らしい少女が美智香の元へ走ってきた。
標華「なーに!!お母さん!!」
弦二郎「標華ちゃんかい…?」
美智香が言った『うちの子』、名前は標華。黒宮家が住む地域でその名前を知らない者はいない。
母に似た天真爛漫っぷりで周囲を笑顔に、どんなイベントでも真剣に取り組むその真面目さで4歳ながらさまざまな伝説を作ってきた所謂『すごい子』だ。
美智香の元にやってきた標華は全く曇ることのない笑顔で弦二郎の方を見る
標華「あ!弦二郎おじいちゃん!やっほー!」
弦二郎「ああ標華ちゃん、相変わらず元気いっぱいだね。」
標華「うん!昨日は保育園のかけっこで一位取れたんだ!」
標華は元気に昨日あった出来事を弦二郎に教えていく。
不思議と、その笑顔に引き込まれるような感覚を弦二郎は覚える。
弦二郎(ひょっとしたら…彼女なら或刻を変えられるかも知れぬな)
わずかに、だが確かに感じたこの感覚に弦二郎は希望を感じ、標華に一つのお願いをする。
弦二郎「標華ちゃん、キミにお友達になってほしい子がいるんだ」
標華「?」
弦二郎の真剣な眼差しに、思わずキョトンとしてしまう標華。
弦二郎「ひとまず、美智香さんも標華ちゃんも家においで。この後雨の予報だしね」
その提案で、二人は黒宮家に上がることになった…
ー黒宮家ー
少年、黒宮或刻は自身に用意された部屋の片隅で膝を抱えて座っていた。部屋のカーテンは全て閉め切っており太陽の光が届かないまるで深海のようで、彼の心の暗さを表現したような空間だ。
或刻「……」
そこで扉からトントンと音が鳴る。
弦二郎「或刻?そろそろお昼ご飯にしようか」
引っ越し先で世話をしてくれている弦二郎がそういうと、或刻は無言で立ち上がり、扉の前に立って開けようとする…その時だった。
ばたんっ!!
標華「こんにちは!!或刻くん!!」
或刻「うがっ!?」
弦二郎 美智香「あ」
勢いよく扉が開かれ、その扉にぶつかってしまった或刻は気絶してしまった…。
ー現在 或刻家ー
或刻「…そういえば初めて会った時のこと、未だに僕謝って貰ってないんですけど」
標華「な、なんのことかなー」
ー12年前 黒宮家ー
或刻は気づくと、居間の畳部屋に寝かされていた。
少しふらふらする頭をなんとか振り払い、周囲を見渡す。
標華「あ!起きたんだ!」
襖から先ほどの少女、標華がこちらに気づき駆け寄ってくる。
標華「いやあさっきはびっくりしたよ!まさかぶつかっちゃうなんて思わなくて…キミは或刻君だよね?これからよろしく!」
と言って、手を差し出し握手を求めてくる標華。
或刻「………」
この時、或刻は久しぶりに頭の思考を再開した。
或刻(一体なんだこの人!?急に話しかけてきたかと思ったら何故か僕の名前知ってるしって扉が勝手に動いたのこの人のせい!?ってか何だこの距離感っ!)
そして体感5時間、実際5秒の時間が流れ或刻が発した言葉は…
或刻「とりあえずアンタだれ?」
標華「え?えっとねー」
弦二郎「標華ちゃんじゃよ。」
キッチンのほうから、祖父である弦二郎がやってきた。
弦二郎「わしが呼んだんじゃ、お前の友達になってほしいとな。」
或刻「おじいちゃん、友達はいらないって前にも言った。」
というと、標華は或刻に近づき思った疑問をぶつける
標華「え?なんで?友達いたほうが楽しいよ!」
そういって或刻に近づく標華。或刻はそれに反発するように立ち上がり、
或刻「うるさいな…僕に関わんないでよ!!」
握手を求めた手を払いのけ、そのまま家を飛び出した。
その光景を見ていた美智香、弦二郎を手招きで少し離れた扉まで呼ぶと話し始める。
美智香「…一応、家からは出ましたね。」
弦二郎「あぁ、でも或刻の心を救えてはおらぬ。標華ちゃん!」
標華「え、えっと?」
弦二郎は標華に声をかけると、目線を合わせ今の或刻の状況を説明する。
弦二郎「今の或刻は、心に深い傷を負ってしまっているんだ。あの事件のことは、君もよく知っているだろう?」
標華「うん。もしかして、或刻君が?」
弦二郎「君が初めて、或刻に大きな変化を与えられた…どうか、あの子の心を救ってはくれないだろうか?」
標華は考える、例の事件で唯一の生き残りである或刻。その境遇は自分では考えられないほどつらいだろう。
しかし、だからと言って目の前に自分のことを大切に考えている人がいるのにそれを邪険にしてはいけない。
そんなことをしてしまっては、或刻自身も、おじいちゃんもどっちも報われない。
改めて状況を整理した標華は、覚悟を決め弦二郎に向きなおる。
標華「うん。任せてよおじいちゃん!私が何とかする!!」
弦二郎「そうか…では頼む!」
標華は頷くと、或刻の跡を追うように外へ出ていった。
そこへ美智香が不安そうな顔をしながらやってくる
美智香「弦二郎さん?」
弦二郎「おお美智香さんや、どうしたんだい?旦那さん早めに帰ってくるのかい?」
美智香は弦二郎の目を見て、その事実を告げる
美智香「この後、雨の予報ってご自分でおっしゃってませんでした?」
弦二郎「あー…しまったのお」
2人は急ぎ傘を準備し始めるのだった。
ー森の奥地ー
緑豊かなこの地域、その由来は一つの大きな森があるからだ。
この森は国の自然保護地区にも指定されているほどで、森の中にも大きな川が流れており、そこからさまざまな生き物が生態系を作り出している。
そんな森に珍しく、一つの足音が鳴り響く。
或刻「はぁっ…はぁっ!」
しばらく走っていなかったからなのだろうか、無我夢中で走った結果奥地に入ったところで大きな大木にもたれかかる。
或刻「なんで僕の周りには常に人が寄ってくるんだ…僕はもう大切な人を失いたくないんだ」
両親を失う前の自分だったら、人が周りにいることは彼にとって嬉しいことだった…
しかし、今の自分にとって親しい人ができることは、失ってしまうかも知れないという不安を抱えてしまうようなもの。
そう考えてしまうと、彼は再び親しい人を作ろうと思えなくなり、引っ込み思案になってしまっていたのだった。
???「なーるほど?そういうことだったんだ」
或刻「なっ…!?」
走ってきた方を見ると、先ほど或刻と友達になろうとした標華が歩いてくる。
或刻「な…なんで着いてこれたんだ?」
標華「簡単だよ?走ってついてきた!」
笑顔で淡々と説明する標華、息は上がっているものの、その姿を見た或刻は心の中で思った
或刻(怖っ…)
お互い息を整えると、標華は改めて或刻に向き直る
標華「きみ、大切な人を失うのが怖いんだ?」
或刻はその事実を告げられ、今まで溜まっていた胸の内の思いを吐き出し始める
或刻「ああそうだよ!それまで当たり前のようにいた家族が自分の知らないところで突然死んじゃったなんて言われて、わけ分かんないまま現実だけ突きつけられて…ずっと続くと思ってた幸せが急になくなるんだって分かっちゃった僕の気持ちが…アンタに分かる!?」
標華は考える。今でこそ両親や友達と仲良く暮らしているもののそれが急にいなくなってしまったらどうだろう。
きっと不安や恐怖で心が支配されてしまうと思った。でもこれはあくまでも想像だ。
実際に失ってしまった彼の心は誰にも推し測れる物ではない…。だからこそ、標華は弦二郎の事を思い出す。
標華「…それをさ、誰かに言わなかったの?」
或刻「……え?誰かに言う?」
標華「そうだよ。自分が辛いって、誰かに相談しなかったの?それこそ弦二郎おじいちゃんとか!」
その問いに、或刻は黙る…。
標華「きみがどれほど辛い思いをしたのか、私なんかじゃ全然分かんないけど…でもそれって、誰かに相談したら気持ちって少し軽くなると思うんだ。弦二郎おじいちゃん、ずっときみがお部屋から出なくて不安そうだった。心配もしてた!きみが大切な人を失うのが怖いって思うのと同じみたいに、弦二郎おじいちゃんだってきみを失うのが怖いんだよ!」
或刻「!?…おじいちゃんは僕のこと心配してた…の?」
標華は頷き、言葉をつなぐ
標華「じゃなかったら、私をきみと会わせたりしないでしょ?」
標華は再び、或刻の前に手を差し出す
標華「過去を見つめることも大切だけどさ、今を見つめて歩こうよ!或刻君!」
或刻はしばらく迷っていたが、真っ直ぐ見つめる標華の姿を見てひとつため息をつくと
がしっとその手を取った。
或刻「…あなたの言葉に、少しだけど勇気をもらいました。」
標華「え、君その喋り方」
或刻「僕はもともと、こっちの話し方が楽でして…あの話し方はとにかく拒絶するために作っていました。」
標華「えぇ?あの話し方の方が気楽な気がするんだけどなぁ…ま、いいや!雨降りそうだし一緒に行こ!!」
気がつけば、空には大きな雨雲が広がっていた。
そしてポツンと、一粒の水滴が降り始めたのだった…。
ー現在 或刻家 或刻sideー
「結局雨が降ってきて、おじいちゃんたちに合流するまでに結構濡れちゃったんですよね」
標華「そうそう!!」
「そういえばあの時お風呂一緒に入ったのは楽しかったですね…」
と言いながらお風呂のことも思い出そうとするが…刹那
腹部に強烈なパンチが繰り出される
「ぐふぅ!?一体なぜ!?」
というと、標華さんは少し赤面しながら言う
標華「それは思い出さなくていい…いいね?」
「……ハイ」
とてつもない恐怖に襲われ、これ以上攻撃されないよう口をつぐむ僕。
結局その後は戦いの手当てをしてもらい標華さんは帰って、僕もまた眠りにつくのであった…
そして時間は進み一週間後、ここから新たな物語が始まることになる。
と言うことで一週間が経ちました!まぁ時間が経つのはよくあると言うことで…
次回は第八話!お楽しみに〜!!