「何?カズマ、もしかして緊張してるの?」
隣で千紗が心配そうにこちらを見上げている。
そりゃそうだ。緊張だってするさ。
今日、この瞬間のために俺はできる限りの努力をしてきた。
「…大丈夫だよ。そんなに緊張しなくても、さ?
アンタが今まで勉強頑張ってきたのは皆知ってるから。」
大丈夫…そうだろうか?いや、俺だって出来る限りのことはやった。そうだろう?
初めの作戦は失敗に終わってしまったが、それでも慌てることのなかったのは第二、第三の作戦を考えていたからだ。
そう、今度こそきっと大丈夫なはずだ!
「そうだな、よし、千紗行こう!」
緊張で震える手を抑えて俺は、伊豆大学の合否者が掲示されている掲示板へと向かう。
出来る限りのことはしてきたんだ。
俺の将来は今この時に決すると言っても過言じゃない!
俺の番号は・・・0723
0715
0716
0717
0718
0719・・・
駄目だ!ドキドキしてきた。
気持ちを落ち着けて、目を閉じ深呼吸をする。
覚悟を決めて目を空ける…
0720
0721
0722
0723・・・
「チクショーーーがぁぁぁ!!!」
俺は心の底から声を荒げ、受験番号の書かれた紙を破り捨てた。
「吃驚した!?急に大声出さないでよ!
・・・て、カズマ?もしかして駄目だったの?」
心配そうに聞いてくる千紗には申し訳ないが、俺は掲示板を指差す。
すると、千紗は一瞬喜びの表情を浮かべたが、すぐに思案顔になりゴミを見る目で俺を見てきた。
「・・・アンタ、もしかして受かる気なかったの?」
「何を言ってるんだ?当たり前じゃないか?」
俺には千紗が何を言いたいのか皆目検討がつかなかった。
俺が伊豆に来て早くも2年が経とうとしている。
俺の今の現状は…控えめに言っても地獄だった。
高卒認定試験に向けて、勉強していると夜になると全裸の男共に拉致られ強制的に飲まされる。酒は嫌いじゃない、むしろ好きなことには俺自身びっくりした。
だが、いくら酒が好きとは言っても全裸の野郎共と飲む酒を誰が好き好むだろうか?
ちなみに、梓という眼福スタイル美少女がいる。彼女の体は非常にご馳走様です。と伝えたくなるのだが、残念ながら彼女が俺に靡く可能性はない。
アクアという駄目人間のせいで、俺は…俺は…
梓にホモだと誤解されてしまってるんだ!!!!
どうしてそうなったのか経緯は知らない。だが、
「でも、カズマが私と仲間で良かったよ。いくら私でも普通の人には絶対こんなこと話せないもの。」
と、心の底から嬉しそうにする彼女に、実は俺はノーマルだなんて言えやしなかった。実は彼女・・・両刀イケるらしい。所謂両刀というやつだ。
ちなみに、実害はない。何故なら、好きな男のタイプを聞かれた時に「梓と同じだよ」と答えた結果、
「そっか、互いに不毛な恋をしてしまったのね。」
と同情の表情を浮かべられたからだ、
梓の好きな男のタイプは時田らしい。あのゴリラ羨ましい死ねばいいのに。
ちなみにどうして不毛なのかというと、時田には高校の時から付き合っている彼女がいるらしい。
驚くことにホモ・サピエンス、ヒト科らしい。しかも可愛いらしい。あのゴリラホント羨ましい死ねばいいのに。
因みに梓の好きな女のタイプは奈々華さんらしい。「奈々華を抱いて寝たら寝心地良さそうだよねー」とは梓の定型句だ。
ちなみに、奈々華さんにも俺は同性愛者だと誤解を受けている。
旅行に行く際に偶々奈々華さん、梓と同室になる機会があったからだ。その理由が「カズマは男の人が好きだから安心だよ!」と梓が奈々華さんに言ったからだ、純粋無垢な奈々華さんは「そ、そ、そ、そうだったのね…。でも、人の好きになる対象は人それぞれだもんね。」と顔を真っ赤にしていて非常に可愛らしかった。
俺は紳士だから手こそ出さなかったが、二人の寝ている姿は色々と溢れていて大変眼福だった。
ちなみに俺の身の回りにはもう1人美女がいる。
千紗と言い、奈々華さんの妹で居候先の娘さんだ。胸は控えめだが、尻が非常に良い。
奈々華さんは千紗を溺愛している。正直アクアのせいで千紗の貞操は非常に危うい…というのが現状だが、今は置いておこう。
因みにその千紗にも非常に残念な一面があり、とても恋愛対象に見れない。アクアは本当に余計なことしかしない。
と、いう訳で俺の生活環境は地獄と言い換えても差し支えないことを理解してもらえただろう。俺はこの地獄から抜け出すために努力を重ねた。絶対に・・・伊豆大学以外の大学に合格してみせる!と。
第一志望は梓さんと同じ大学だったが、受験すら受け付けてもらえなかった。
所謂足切り、というやつだろう。仕方ないがこればかりは努力じゃどうしようも出来ない。まぁ、この大学に行けたとしても寮に住めない俺にとっては環境も変えれなかったから結果オーライというやつだった。
第二志望は紅魔大学という場所だ。
ここには知り合いも多く、下宿先の宛てもあったのだが、試験に落ちてしまった。
この時は本当に悔しくて、涙が止まらなかった。
後輩の女の子が少し嬉しそうにしていたのが歯痒かったものだ。
第三志望は伊豆大学。
志望とはいうが正直、ここだけは行きたくない。だけど、両親から強制的に受けさせられた。ここに受かれば毎日全裸の男共に囲まれる灰色のキャンパスライフしか待っていないだろう。なのでテストは白紙で出して、爆睡してたのだが、体調不良と勘違いされ別室で受験させてもらえてしまった。
試験官と二人っきりの空間で白紙で提出する度胸はなく、幸いマーク式だったのもあり適当に答えを埋めた。ちゃんと、真面目に解いて不正解を回答するという徹底ぶりだったのだ。先ず間違いなく落ちただろう…そう信じていたのだが
「呆れた。アンタお父さんやお母さんに申し訳ないとか思わないわけ?」
合格結果を確認した俺に向かって千紗はゴミを見るような軽蔑した目線を向けてくる。
「何を言ってるんだ?
お前、あの環境で四年間だぞ?俺の肝臓がぶっ壊れて死ぬわ。
死んだら親不孝どころじゃないだろ?だから、伊豆大学に落ちるのは俺なりの親孝行だったんだよ。」
「アンタなら、別に何やかんや生き抜きそうだけどね。
でも、それなら別なサークルに入ればいいだけじゃない?
・・・私としてはダイビングサークルに入ってほしいけど。」
「最後にフラグっぽいこと言ってるけど、フラグじゃないことは十分理解してるぞ。ただ、お前はダイビング仲間が欲しいだけだろ。
・・・てか、同じ大学に入ってアイツらか逃げ切れるも思ってんのか?」
「無理でしょうね。」
だろ、と返事をする前に俺の目の前の風景は一瞬で変動していた。
あぁ、そういやもう家の近くだったな…。警戒するのが遅かった…。
「よし!それじゃ、新しいサークルメンバーの加入を祝って!」
「盃を干すと書いて!」「乾杯と読む!」
「「「「かんぱーーーいいい!!!」」」」
「うるせー!!俺はまだPaBに入るだなんて言ってね・・・」
「どーした?カズマ?
!そっか、そっか、暑くて早く飲みたいんだな?お前も好きだな!」
「ち、違」
「そーれ、駆け付け一杯だ!ほら、カズマ飲め飲め。」
「や、ゴクッ、ゴクッ!やめろ!
て、お前らふざけんな!せめてビールかなんかから始めろ!なんでいきなりスピリタス!?」
「どうした?キツかったか?ほら、烏龍茶だ。」
「あ、寿…ありが。」
佐藤カズマはポケットからライターを取り出してコップに近づけた。
何と、烏龍茶に火が着いた。
「何で、烏龍茶に火がつくんだよ!」
「「可燃性なんだろ?」」
「なわけねーーーだろ!!」
「やー、やってるね!おめでとう!カズマ!
伊豆大受かったんだって?」
「梓!助けてく・・・」
「よーし、ならカズマの合格を祝して私も飲むぞー!
ねー、カズマゲーム飲みしよ!カズマの合格祝いだからカズマの好きなゲームでいいよ!」
「野球拳でお願いします!!」
「うんうん、ブレないね、カズマは!そういう所好きだよ?
でも、私だっていつまでも負けてらんないから!よーし、やるよ!」
「ハッハー!唐突で絆創膏用意してねーだろ!今日こそは完全に剥いてやんよ!
せーの!アウト、セーフ、よっよいの!よい!!」
「いいぞー!」「カズマー!イケー」「せーのっ!」
「「「カーズッマ!カーズッマ!カーズッマ!!!」
「何でこの一瞬で、ここまでカオスな状況になれるのよ?」
「おお、千紗おかえり」「千紗ちゃん!おかえりなさい!合格おめでとう!」
「うん、ありがとう。」
こうして、俺の伊豆大学でのキャンパスライフが始まりを告げた。
PaB式烏龍茶
ウォッカとウイスキーを9:1で割ったもの
良い子は真似してはいけない。
次回、伊織死す!