彼女たちは、走るために生まれてきた。
ときに数奇で、ときに輝かしい歴史を持つ別世界の名前と共に生まれ、その魂を受け継いで走る――。
それが、彼女たちの運命。
この世界に生きるウマ娘の未来の結果は、まだ誰にもわからない。
彼女たちは走り続ける。
瞳の先にあるゴールだけを目指して
雪や寒さが段々と無くなり北海道の札幌市内もやっと春の陽気がやって来た
私は昼食のシチューを片手にテレビを見ていた
普段なら食事に集中したいから、あまりテレビを見ないんだけど、今日は違った
母がたまたまリモコンでつけた、横20センチ、立て15センチの小さな画面から聞こえる熱気と観客の声
その声に応えるようにどんどんウマ娘を抜いていくウマ娘が一人。アタシはその姿に目が離せなかった
『4コーナーを回ります。4コーナーを回った!最後の直線後方も一気にやって来た!!』
アタシは昼食そっち向けにテレビに夢中になる
その一人のウマ娘は前を走るウマ娘をあっという間に抜かし1位に躍り出た
『ルドルフ、並ぶことなく抜き去っていく!もう誰も追いつけない!これは強い!』
「凄い……凄い!!」
アタシは思わず、スプーンをテーブルに落とし、前屈みになる
彼女はそのまま誰も抜かされる事は無くゴールした
『シンボリルドルフ、今ゴールイン!見事に17人のウマ娘を従え6連勝、無敗で二冠を制しました!!』
「こんな興奮したレース初めて見た!」
アタシがこんなに興奮したのは、久しぶり……いや初めてだ
走りきった彼女は声援やテレビに向け天高く2本指を上げた
『日本のスターウマ娘から世界のスターウマ娘に飛躍するためにまずは世代の頂点へと立ちましたー!』
「うわぁ……スゴィ……」
アタシの言葉に隣にいた母は、
「……興味あるのかい?」
「え、うん!」
「やはり、ウマ娘の血は抗えないか……」
母は意味深な事を口走ると立ち上がり、リビングを後にする
そして数分後、私がシチューを口にしていると、祖母は帰ってきた
「あなたも小4何だし、そろそろ将来の事を考えてもいいんじゃない?」
母は手に持つパンフレットを私に見せてきた
「ん~……トレセン学園?」
「ええ、さっきのシンボリルドルフもここに通っているわよ」
「ええ~!じゃあ私も、ここに行ったら……」
「会えるかもしれないね」
「じゃ、行く行く行く行く!!!」
私は母の言葉に即答した。早くあの人と同じ場所で走りたい。その考えだけしか今は無かった
「……そういう事なら、入学願書を出しとくね」
「うん!ありがとうお母さん!」
私はシチューをペロリと平らげ
「ごちそうさま~」
手を合わせると、お皿を台所の流しに下げた
「ああ~楽しみだな」
私は今すぐにでもシンボリルドルフさんと一緒の場所で走りたい。その気持ちだけしかが今の自分に無かった
あれから3年が過ぎた
他の人から早いと感じるかもしれないけど、私からしたらやっとだ
最初はトレセン学園に入学すると友達に言った時にはみんなから驚かれた
友達から『かわいいから、トレセン学園で走るよりもアイドルとか女優になった方がいい』て言われたけど、でも私は
そして、やっとこの場所に立ったんだ
「着いたね……東京」
私は水色のキャリーバッグを引っ張り空港の空気……東京の空気を大きく吸う
ん~なんか汚い……
「って!そんな事よりも……トレセン学園行きの……まあいいか!もう少し空港を散策してからトレセン学園に行こうかな」
私は重いキャリーバッグを引っ張り、空港の散策を始めた
札幌空港に比べて人が多くて目が回りそう……
私は人やウマ娘に押しつぶされそうになりつつも、前へ進んだ
やっと人混みから抜けだし、思わずほっとしてしまう
「なんか……疲れたな……」
私は思わずその場に座り込んだ。こんな所で疲れていたら皇帝と走るなんて夢のまた夢。
「……頑張らないと」
私は立ち上がり、売店に行くのをとりあえず諦めて、空港の出口を探した
「あれ、見つからない……」
人混みもあって見えないのもあるかもしれないけど、その前にこの空港広すぎ!!
……こんなん売店どころか出入り口すら見つからないぞ……
「ヤバいかも……」
とにかくマップだ!マップを見ればわかる
私は空港のマップがありそうな所をひたすら見渡したが、これがまた人混みでよく見えない。
156センチてそんなに低くないと思うんだけどなぁー
「とりあえず、どうしようかな……」
途方に暮れていると、トモに不思議な感覚が走った。握られるような……その後すぐに撫でるような感覚が走った
私は恐怖を感じ思わず鳥肌……いや馬肌が走った
私は恐怖を抑えつつぎこちなく後ろを振り向いた
振り向いた先には30代くらいの髪を束ね、あご髭がちらほら見える少し清潔感の無い男性が私のトモを触っていた
「……なかなか、良い足をしている」
「キャァァァアア!!!」
私は思いっきり男性を蹴り飛ばした。男性は簡単に数10メートル後ろに吹き飛んだ
「な、何なんですか!?」
私は思わず声を荒げた。男性は痛そうに頭を押さえ起きあがる
「痛ぇな……」
「自業自得でしょ!!」
「にしてもお前、こんなん所で何をしてるんだ?」
「え、えっと……」
急に冷静にならないでよ!
「わ、私は……出口を探してて」
「そうか、ようは迷子だな。出口は右奥の方にあるから」
「あ、ありがとうございます……」
以外と親切な人なのかな
私は
「あっ、そうそう、いい足をしてる。お前ならすぐに強くなれる」
「え、あっ、はい……」
前言撤回!この人、絶対ヤバい
まあ~いいや、トレセン学園に向かおう
私は教えてもらった出口の方に足を進めるのだった
空港を出てから、まずはバスに乗って最寄りの駅まで向かって、そっから東府中行きの電車に乗らないといけないんだけど……
「う~ん……わからん……」
入り組んだ路線図。赤、青、黄とカラフルな路線図に私を混乱させる
「どうしよう……」
「お困りのようですわね」
私はその透き通った声の方に思わず視線を移した
そこには透き通るようなさらさらした長い芦毛
顔はとても整ってて美しいをそのまま型したようなウマ娘が私の真後ろに立っていた
私はその人を見て思わず背筋に緊張が走った
「あっ、えっと、その……」
彼女は私は見回すように上下に眼を動かすと
「もしかして、トレセン学園新入生?」
「え、まあ、はい」
「なら、この電車だとトレセン学園がある東府中に行けますわ」
黄色路線か……
「あ、ありがとうございます!」
「いいですわ」
何て親切なウマ娘なんだ
「そ、それでは!」
私は軽く頭を下げ言われた路線の電車に乗った
結構ギリギリで、発進の放送とベルが流れていたので、私は飛び乗った
飛び乗ったのはよかったんだけど……
「(うわぁ、狭い!!)」
人と壁に挟まれ、香水や加齢臭などが入り交じった匂いと、電車のガタンゴトンとあらゆる所から聞こえる音楽や声に、私は思わず気分が悪くなってきた
これが東京で有名な満員電車か……
そんな生き地獄状態はさらに続く
各駅停車なので出入りがけたたましく行われる。入口にいる私は押し出されないように近くにある手すりに懸命に掴まった
そんな数分、いや体感では数時間かも
府中に近づいてくると人やウマ娘はどんどん少なくなり、ようやく椅子に座れた
「苦しかった……」
私はシートに思わずも倒れてしまった。マナー的にはよく無いけど、今回だけ許して~
『まもなく、東府中、東府中……』
ああ、降りないと
私は立ち上がると
「そこのお嬢ちゃん~」
よぼよぼな声が私の後ろから聞こえる。多分私だろう。今日はよく話しかけられるな
「はい?」
「キャリーバッグを忘れておるぞ」
「あっ!すみません。ありがとうございます!」
私が倒れていたシートの横に置かれたキャリーバッグを慌てて手に持つ
「……にしても、なかなかのべっぴんさんね」
「あはは……よく地元の友達にも言われるんですよね」
「お名前は何て言うのかね」
おばあちゃんの言葉と同時に電車は止まり扉が開いた
「私はアーモンドアイです!」
と言い私は電車を降りた
「頑張りなさいよ~」
「はーい!」
私はおばあちゃんに手を振りながら電車を降りそのまま勢いよく駆けだした
「何とか着いた……」
バスに数分揺られ、やっとトレセン学園目に到着した。到着した頃には夕焼けが巨大な校門を照らしていた
巨大な校門が目の前に私は思わず固唾を飲む
緊張や恐怖、不安……だけじゃなくて、ワクワクとドキドキが同じくらい入り混じった感情が込み上げてきた
「遂にここまで来たんだ……」
何だろ涙が……
「ぐすぅ……ここからだ。ここからなんだ!」
私の左手はいつの間にか拳を握っていた
「とりあえず、学生寮に行こうかな……てか今何時かな?」
私はポケットから銀色のスマホを取り出す。
スマホのデジタル時計には5時59分。
確か寮の門限は……
『当日6時にお願いします』
『わかりました!!』
「やばぁ!1分前じゃん!」
ここから寮は……ヤバい、どうしよう……ど忘れしちゃった……
「とりあえず、半径1キロメートルを走れば……」
私はキャリーバッグを片手に走り出した
いきなり東京に来てそうそう、痴漢にあったり、路線図に目を回したり、時間ギリギリになったり、初っ端から不運が続いたけど、気を取り直して明日から頑張らないと、ここから始まる新たな学園生活を!
次回くらいにアーモンドアイのプロフィールを出そうと思います
次回も読んでくれると幸いです(いつになるか、わかりませんが……)