Mate   作:ps

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後日談


楽園

「早くしろ!..まだ搬入の半分も終わってねぇんだぞ!」

彼らが降り立ったそこは..恒星がやけに明るい、地球型惑星。

 

巨大宇宙船「ノア」からの荷物の運び出しから既に三年が経過しているものの、荷物は底を尽きることを知らない。

 

ここは、地球に比べ重力が比較的弱い。

体を動かしにくいことも、作業が遅れる要因だった。

 

「あ..っついな。..焼け死ぬんじゃねぇの俺ら。」

「グチグチ言ってんな。酸素と水があるだけ有難いと思え。」

 

その星の気温は、常夏と呼ぶには温いほどの平均気温があった。

そして、この星には夜がない。..つまり1日中この熱気にさらされるのだ。

 

「んで、生命体の確認は取れなかったのか?」

「微生物が生きているってことくらいらしい。...エイリアンがみられると思ったのによぉ。」

「手ぇ動かせ!サボってんじゃねぇ!」

 

手を休める若者たちにチーフが喝を入れる。

 

「ちょっとぉ..チーフ!こんなのアンドロイドたちに任せりゃいいじゃないですか!なんたって人間サマがこんなことを..。」

「アンドロイドたちは岩窟掘削、地質調査、異常生命体調査に乗り出している。数は限られている。..それとも、命の危機にさらされてもいいってんなら、別の仕事を用意するが?」

「うっへぇ..ご堪忍。」

 

そんな彼らに、文句を言いに来るアンドロイドが。

 

「ちょっと!アンドロイドなら私たちがいるじゃないですか!何がご不満なんですか!」

「ああ..369番に955番..。別に..君たちには満足してるさ。」

 

基本は危険な任務を任されることの多いアンドロイドたちだが、たまにこんな気の抜けた安全な作業に準ずるものもいる。

それは、人間のバックアップの意味合いもあるが...わざわざこんなところへ派遣されるということは..あまり現地で役に立っていないという意味合いでも。

 

「ふっふーん!ま!私たちはデキちゃうアンドロイドたちですから!こんなの私らでもちょちょいですよ!」

そういってアンドロイドたちは再び船に向かう。

 

「ま..ゲンキなのは取柄..なのかねぇ。」

たまに余計な仕事を増やす彼女らに..船員たちはふぅと息を漏らす。

 

そこに。こんな暑い中、防護服を全身にまとった船員が。

 

「おお!ルイ!戻ったか!」

「お疲れ様です、チーフ。」

「異常生命体調査..ご苦労だった。」

「休憩です..二時間後にまた招集が。」

 

彼はヘルメット部を脱ぐ。

 

「ヨォ!ルイ!なんか面白れぇの見つかったか?」

「巨大な蛹状の幼虫らしきものが見つかった。中身は調査中だ。」

「人型とかは?」

「まったく。」

「ナンだ詰まんねぇな。」

「そのほうがいい、変なリスクは少ないほうが。」

 

そういって若手の船員は腰掛ける。

 

「お前も少し休め。食料もそこにある。」

「ええ。そうさせて..。」

 

その時。船から悲鳴が。

 

「ぎゃあああ!!!なにこれなにこれ!!」

アンドロイドたちが慌てふためく。

 

「なんだ?またモノ壊したか?..仕事増やすなよ。」

船員たちは腰を上げて彼女らのほうへ。

 

そこにあったのは...動かなく..朽ちたロボット。

それは上体を支える背骨や、手足が再現されている。

そのロボットは人を模してるだけあってどこかグロテスクにも見える。

 

「おお..すげぇの出てきたな。..まだこの船が出港した時の初期型として動いてたロボットだ。...アンドロイドがイライザによって確立されるより前の。」

「ええ...これが..私たちのご先祖..?いやだ!」

 

そういってアンドロイドはそのロボットを乱雑に投げ捨てる。

 

ルイはなぜかそのロボットが気になった。..アンドロイドたちが捨てたそれを拾い上げマジマジと...。

上腕部に..『ロペス』と書かれていた。

 

「...ロペス?」

彼は神妙な顔で何かを思い出そうとする。

 

「わぁ!!またなんか出てきた!!」

アンドロイドとしては若手の955番がまた何かを見つける。

 

今度は..女性型のアンドロイドだった。

 

「わぁ..アンドロイドだ..死んでる?」

そのアンドロイドは黒髪に..ワンピース姿の..。

目が開かれたまま..バッテリーが切れているのか。

 

「ああ..BE型か..そいつらも旧式だな。」

チーフは言った。

「BE型?それって...私たちDA型よりもずっと前の?」

「ま..アンドロイドたちは常にイライザによってバージョンアップされるからな。君たちもうかうかしていると..こいつと同じ運命だぞ。」

「やーだぁ!!」

 

そういって955番はそのアンドロイドを投げ捨てる。

 

はらりと肩にかかったワンピースの紐がずれた。

そこには..薄く何かが..。

 

ルイは駆け寄って..それを見る。

「..ルイよぉ、なんだ女に恵まれねぇからって、アンドロイドに手ぇ出したら終いだぞ?」

そう仲間は彼を冷やかす。

 

そこには書いてあった...『16』の数字が。

 

「16...16..番?」

 

そのとき..何かが..何かの声が..彼の頭に。

『...だれかいますか?』

『名前...ですか。そうですね。...、16番...ですかね?』

『これが、ノアの箱舟ってことです。だから宇宙船ノア』

『も..もう笑わないでくださいよ!あ!ロペスまで!!もう仕返しですよ!』

『私のこと、次も覚えててくれますか?』

 

......

 

ルイは硬直した。

「...おい?ルイ?」

「..16番...ロペス...。」

 

ルイは16番を抱きかかえたまま、視線をロペスへと移す。

 

そして..何かを思い詰めた。

 

彼は徐に立ち上がる。

 

「...チーフ。彼女らは..どうなるんです?」

「どうなるって...まぁ処分して再利用だろうな。」

「...もし、彼女らを譲ってほしいと言ったら?」

「..統括課が黙ってないかもな。..そいつらに、何か思い入れが?」

「..わかりません、でも..」

 

ルイのその表情から何かを察したチーフは、彼の肩をたたく。

「..統括課の弱みはいくらでも握ってる。..たまにはお前の我儘くらい聞いてやるさ。」

「..チーフ。..恩に着ます!」

 

「..マジか..あいつ。」

船員と新型アンドロイドはぽかんとその様子を眺めていた。

 

 

―――――――――――

「...さん!...てください!...ルイさん!!」

そのやかましい声に..ルイはカプセルハウスで覚醒する。

 

「...んあ..もう..時間か?」

「おはようございます!!ルイさん!お目覚めのチェス!いかがですか?」

「...朝食の用意は?」

「きっとロペスがしてくれてますよ!さ!白と黒、どっちがいいですか?」

「..あのなぁ。俺は君を家政婦として迎え入れたんだ。..遊んでてどうする。」

「え!?奥さんじゃないんですか!?」

 

ルイはその黒髪の旧式アンドロイドをみて呆れていた。

 

「ま..今日のニュースくらい聞かせてくれよ。」

「お安い御用です!」

 

そういって彼女はペラペラとビッククラウドから得た情報を彼に告げる。

 

その時、一体の旧型ロボットがトレーに食事を載せて彼のもとへ。

「ありがとうロペス。...彼女より君のほうが役に立ってる。」

ロペスは照れるように頭をかくしぐさをする。

 

「む!なんですか!私のほうが役に立ってますよ!ロペスは邪魔者です!」

そういって彼女はロボットをげしげしと蹴った。

 

その様を肴に、ルイはコーヒーを一口。

 

「...ルイさんは、どうして私たちを修理してくれたんですか?」

彼女はおもむろに訊いた。

「...どうしてだろうな..ただの気まぐれかも。」

「..ルイさん、本当はあの日のこと..覚えてくれてるんじゃないですか?」

「..さぁね。..さ、仕事の時間だ。」

 

ルイは食事を終えて立ち上がる。

アンドロイドは..彼に必要な道具が入ったカバンを差し出す。

 

「..今日は大丈夫だろうな?また余計にチェス道具なんて入れてないだろうな?」

「もっちろん!ちゃんと確認しましたから!」

「..信用するよ..じゃ」

「行ってらっしゃいルイさん!..帰ったらチェスですよ!」

「今日もか...わかったよ。行ってくる!16番!」

 

そういってルイは家を出た。

 




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