ソードアート・オンライン ボンド・アンド・ディスペア   作:Maeto/マイナス人間

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ここから短編集的な感じで過去編を中心に4話出します。お付き合いください。


短編1話 ザ・パスト・オブ・スマイル

「何見てるの?」

 ある日の昼休み。2年生の教室の窓から外を眺めていたクラスメートに、紺野(こんの)木綿季(ゆうき)は声をかけた。

 長めの黒髪の、大人しそうな少年だった。同じクラスになってそれなりに日は経っているが、話したことはあまりない。

(えーっと、ともや君......だよね? 名前)

 相手の名前を思い出している木綿季に、クラスメート──前田(まえだ)智也(ともや)は答えた。

「鬼ごっこ見てる」

「外に出て一緒にやらないの?」

「おれ、鬼ごっこやったことないから、どーやって混ざればいいのか(わか)んなくて」

 やや(うつむ)き気味に言う智也を見て、木綿季は今までの昼休みを思い出してみた。確かにこの少年は、椅子に座って本を読んでいるか、お絵描きをしているかのどちらかだった。

(お外がニガテなのかな......?)

 ずっとそう思っていたが、輪への入り方が解らないなら、自分が手を引っ張ればいい。

 智也の右手を掴み、木綿季は言った。

「じゃあボクと一緒に行こ! 一緒に鬼ごっこやろうよ!」

「わっ!?」

 文字通り手を引っ張って、木綿季は智也とグラウンドへ向かった。

 

 

「はいタッチー!」

「わっ!?」

 鬼ごっこが始まって、ものの数十秒で智也は捕まった。理由は単純、彼の足が遅かったからだ。

「10秒数えて、それから追いかけてね」

 そう木綿季に言われ、智也はこくりと(うなず)いた。

「いーち、にーい、さーん、しーい......」

 その間に、木綿季やクラスメート達は智也から離れた。

「......きゅーう、じゅー。......もう、いーんだよね?」

 誰にともなく呟くと、智也は駆け出した。とりあえず一番近くにいた木綿季に狙いを定め、逃げ出した彼女を追いかける。

 走って、走って、走って──詰まるはずの距離は、しかしいつの間にか遠くなっている。智也は1年生のとき、運動会のかけっこでビリだった。

 逃げていた木綿季が振り向き、

「どーしたのー?」

 そう聞いてきた。他のクラスメート達も口々に、

「もしかして疲れた?」

「え、早くない?」

「でもいつも体育でビリだよ、あいつ」

「足遅いし疲れるのも早いって、ダメダメじゃん」

 散々に言われ、智也はムッとした。

「......おれ、だって......」

 そう呟き、右足を踏み出した。木綿季を追うべく地面を蹴る。

 そして、前に出そうとした左足が、右足に引っ掛かった。ずざーっという音の中に、「あいたっ」という声が混ざる。

 むくりと起き上がった少年の膝から、血が出ていた。

「転んだー、ダッセー」

「大丈夫ー?」

「あ、血ぃ出てるー!」

 クラスメート達が口々に(わめ)きながら近寄ってくる。ふらつきながら立ち上がった智也に、木綿季が聞いた。

「大丈夫?」

「うん......多分」

 そう返すが、右膝は熱をもったように痛く、智也は「......いたい」と一言呟いた。

「保健室でバンソーコー貼ろ」

 そう言って、木綿季は手を差し出した。

「ボクも一緒に行ってあげる」

「......うん」

 弱々しく頷き、智也は木綿季の手を握った。

 

 

「鬼ごっこ初めてなんだし、しょーがないよ」

 保健室に行く道すがら、木綿季がそう(なぐさ)めてくれた。

「何回もやったら、きっと足も速くなって、鬼ごっこ強くなれるよ」

「......そーなの?」

 聞き返す智也の手を握る手に力を込め、「うん」と木綿季は言った。

 その後たどり着いた保健室で手当てを受ける智也に、木綿季は言った。

「ボクはみんなのところに戻るけど、君はどうする?」

 智也は少しだけ考えたが、無言でふるふると首を横に振った。

「そっか。じゃあまたね、ともや君」

「うん」

 短く答えると、智也は教室に向けて歩き出した。しかし数秒後、ちらりと後ろを振り向く。自分に背を向けて走る、小柄な少女が目に入った。

「......足、速いなー」

 

 

 放課後、木綿季は1人で下校していた。

「姉ちゃん、公園で待っててって......日直くらいボク手伝うのに......」

 そんな独り言を言いながら歩く木綿季。その時、目的の公園の中に人影を見つけた。公園なのだから他人がいてもおかしくないが、いたのは1人の少年だけだった。

「ともや君?」

「え? ......あ、ゆうきちゃん......」

 1人で公園を走り回っていた智也。その息は、昼休み以上に荒かった。

「なんかすごいジグザグに走ったりしてたけど、何してたの?」

 木綿季が(たず)ねると、智也は息を整えてから答えた。

「練習......鬼ごっこの」

「鬼ごっこの練習?」

「うん」

 目の前の少年を、木綿季は素直にすごいと思った。数時間前に初めて鬼ごっこをして負け、強くなろうと練習してる。そんな負けず嫌いな少年を、応援したくなった。

「よーし、ボク手伝うよ!」

「え」

「ともや君鬼ね、ボクを捕まえてごらん」

 そう言って、木綿季はたったか駆け出した。いきなり話が進んで戸惑う智也に、木綿季が言った。

「早く早くー!」

「あ、うん」

 戸惑いつつも返事をして、智也は走り出した。智也に合わせて、昼休みの時よりもゆっくり走ってくれている木綿季に追い付くと、その背中に触れた。

「た、タッチ......」

「そうそう、その調子! じゃあ次はもうちょっと速く走るよ!」

 そう言うと、休むことなく走り出す木綿季。慌てて追いかけると、智也は再び彼女の背中に手を伸ばした。

 

 

「ユウー」

 公園の入り口で藍子(あいこ)が妹を呼んだ。返事はすぐだった。

「あ、姉ちゃん!」

 木綿季はやや離れたところから駆け寄って来ると、藍子に抱きついた。

「ユウ、何してたの? なんか汗かいてるけど」

「鬼ごっこの練習! ともや君の手伝いしてたの」

 そう言う木綿季の視線の先には、ベンチに座ってぐったりしている少年がいた。

「あの子?」

「うん」

 話しながら、少年のいるベンチまで歩く。こちらに気付いた少年に、藍子は言った。

「君が、ともや君?」

「うん......だれ?」

 聞き返す智也に、藍子は名乗った。

「わたしは藍子。木綿季の双子の姉だよ」

「ゆうきちゃんの、お姉さん?」

「うん。ユウの相手してくれてありがとう」

 にっこり笑って礼を言う姉に、木綿季は抗議した。

「姉ちゃん! ボクがともや君の練習に付き合ってたんだよ!?」

「ともや君がいなかったら、ユウ1人だけだったんだから、一緒だよ」

「むー、そうだけど......」

 口を(とが)らせる木綿季。その様子を見ながら、智也はぼんやり思った。

(ゆうきちゃん、お姉さんにユウって呼ばれてるんだ......そっちのが呼びやすそう)

 智也の思考を、藍子の声が打ち切った。

「じゃあユウ、そろそろ帰るよ」

「うん。またね、ともや君」

 藍子の手を握りながら言ってくる木綿季に、智也は言った。

「うん、またね......『ユウちゃん』」

「あ......」

 目をぱちくりさせる木綿季。胸の中で仲良くなれた気がした嬉しさと、何となくの気恥ずかしさが(ふく)れ上がり、 嬉しさが勝った。

「またね、『とー君』!」

 

 

 翌朝、智也が学校の昇降口で(くつ)を履き替えていると、

「あ、智也君。おはよう」

 声をかけられて顔を上げると、穏やかな笑顔があった。誰だったか一瞬考え、

「あ、ユウちゃんのお姉さん。おはよ」

 そう返すと、藍子はクスクス笑った。

「それだと呼びにくいでしょ、名前は藍子だよ。何でも呼びやすい呼び方してくれればいいからね」

 そう言われ、智也は少しだけ考え、そして。

「じゃあ......『藍姉(あいねえ)』」

「......ふふっ、一気に親しみやすい感じになったね」

「あ、嫌だった......?」

「ぜーんぜん。むしろ弟までできちゃったみたいで、なんか嬉しいかも」

「ならいいんだけど」

 そんな会話をしていると、木綿季の元気な声が聞こえてきた。

「あー! 姉ちゃん、もうとー君と仲良くしてる!!」

 どうやら姉に、コミュニケーション能力の高さでも上を行かれたと感じているようだ。

「あ、ユウちゃん。おはよ」

「おはよー、とー君!」

 元気よくそう返し、木綿季は智也の肩を叩いた。直後、

()っ......!」

 体を強張(こわば)らせる智也に、木綿季も藍子も驚く。

「え、とー君? 大丈夫......?」

「痛い......昨日いっぱい運動したから......」

 生まれたての子鹿のようにプルプルしつつ言う智也に、藍子が納得したように(うなず)く。

「あぁ、筋肉痛ね。昨日のユウとの鬼ごっこの特訓が効いてるんだと思うよ」

 その言葉に、木綿季がバツの悪そうな顔をする。

「ご、ごめん......」

「んーん、だいじょぶ......鬼ごっこは今日は無理だけど......」

 そう会話しながら教室へ向かう間、そして授業中も、智也は痛そうに震えていた。

 

 

 3日後の昼休み。筋肉痛の日の昼休みを鬼ごっこをしているクラスメート達の観察に費やした智也は、特訓の成果を発揮していた。

「あれ? なんで!? 捕まんない!!」

 智也を追う鬼の男子が驚く。逃げる相手の背中に手を伸ばすが、届く前に逃げられてしまう。

「すごーい!」

「前は弱かったのに」

「速くなってるー!」

 その日の鬼ごっこでは、智也は一度も捕まらなかった。

「やったね、とー君!」

 自分のことのように嬉しそうに言う木綿季とハイタッチを交わす。その時、一緒に鬼ごっこをしていたクラスメート達が、

「すごいね、びっくりした!」

「鬼ごっこ強くなったね!」

「すごい速かったよー!」

 称賛される智也を見て、木綿季は誇らしさで胸がいっぱいになった。

「特訓、大成功だね」

 そんな声が聞こえて振り向くと、藍子が微笑んでいた。

「うん、とー君もすっごく嬉しそうだよ!」

 その時、クラスメート達に囲まれながら、智也は思っていた。

(すごい......速いって、すごいんだ......!)

 そして次の日、やはり智也は筋肉痛になった。

「いたい......あるきたくない......」

 体だけでなく言葉すらも震えている智也に、木綿季は苦笑しつつ提案した。

「じゃあ、今日は一緒に本読もうよ!」

 そうして2人は藍子と一緒に、昼休みに図書室を訪れた。

「......ユウちゃん、なんか楽しそうだね」

 ニコニコ顔で本を物色する木綿季を見た智也に、

「ユウは本好きだからね。運動のが好きに見えるくらい元気だけど」

と藍子が説明した。「えへへー」と笑うと、木綿季は本棚から絵本を引き抜いた。

「とー君は何読むの?」

 絵本を片手に尋ねた木綿季に、智也は両手で抱えた4冊の本を見せた。

「ん」

「え、こんなに!?」

「うん」

 しれっと頷くと、智也は近くの椅子に座り、本を読み始めた。隣に座って木綿季も読み始めるが、

「......えっ?」

 彼女が半分読み終えた辺りで、智也は次の絵本に手を伸ばした。

「も、もう読んだの......?」

「うん」

 数分後、木綿季と藍子が次の本を物色していると、智也が先程の本を本棚に戻していた。

「も、もう4冊読んだの?」

「うん」

 やはりしれっと頷く智也。

「とー君、本当に読めてるのかな? パラパラ見てるだけだったりして......」

「テストしてみる?」

 妹と小声で話し合うと、藍子は智也に質問した。

「智也君、これどんな本だった?」

「ずっとお風呂に入ってなかったおじいちゃんとおばあちゃんがお風呂入って、体の汚れで人形作ったら男の子になって、それが鬼退治する本」

 即答だった。

「これは?」

「2匹のねずみが森ででっかいパン作って色んな動物と食べる本」

「これは?」

「カラスの夫婦がいっぱいパン作ってパン屋さんする本」

「これは?」

「ねずみが着てたチョッキを色んな動物が着たら、チョッキが伸びちゃってブランコになった本」

 矢継ぎ早の質問にも全て即答する智也に、木綿季はぽかーんと口を開けた。

「わたし、次はその本読みたいな。貸して」

 そう言って藍子は、智也から4冊の本を受け取った。新しく手に取った本を読む木綿季と智也の横で、全速力で本の内容を確認すると、藍子は木綿季に小声で報告した。

「中身、全部ちゃんと合ってたよ」

「......、」

 思わず言葉を失うが、木綿季はふんすと息を吐くと智也に言った。

「とー君! 今日から金曜日までの2日で、どれだけ本読めるか勝負しよう!」

「なんで?」

「なんでも!」

 ふんふんと鼻息を荒らげる木綿季に、思わず藍子がくすりと笑った。

「ごめんね、智也君。ちょっと付き合ってあげて」

 藍子にまで頼まれては断れず、智也は頷いた。

「......うん、わかった」

 そして金曜日。教室に入った智也に、木綿季が得意げに話しかけてきた。

「おはよー、とー君。これでどーだ!」

 そう言う木綿季の手には、図書室で使う図書カードがあった。勝負期間中に借りた本は全て絵本だが、その数は11冊。

「ユウ、家でもずっと読んでたもんね」

 藍子に頭を撫でられ、嬉しそうに笑うと、木綿季は智也に言った。

「それで、とー君は何冊読んだの?」

「18」

 さくっと返ってきた答えに、姉妹は揃って硬直した。

「え......18冊? ほんとに......?」

「うん、はい」

 差し出された図書カードを見ると、確かに期間中に借りた本は18冊だった。しかも、

「絵本は10冊だけね。残りは......『炭酸飲料のひみつ』『お金のひみつ』『殺虫スプレーのひみつ』『危険生物のひみつ』......これって、教育漫画?」

「うん。なんか面白そうだったから読んでみた。()って実は怖いんだね」

 のんびりと言う智也だが、木綿季にはそれも聞こえてなかった。

「表紙が固くて、分厚いやつだよね......あれをいっぱい読んだの......?」

「ユウ......大丈夫?」

 がっくりする妹に声をかける藍子。しかしこの日の木綿季は、昼休みにサッカーで智也に勝つまで、元気がなかったという。

 そしてこの日から、2人は何かしかの形で勝負をすることが多くなった。

「とー君! 国語のテストで勝負しよう!」

「うん、いーよー」

「とー君! サッカーで勝負しよう!」

「えー......うん、いーよ......」

 基本的には、どの勝負でも木綿季が勝っていた。特に運動の勝負では、木綿季は確実に負けなしだった。だが、

「とー君! 読んだ本の数で勝負しよう!」

「いーよ、頑張ってねー」

 読書勝負で木綿季が勝ったことは、2年生の春から4年生になるまでの間、1度もなかった。

 

 

 3年生の春。木綿季と藍子と智也は、お菓子屋にいた。このあとのお花見で食べるお茶菓子を買うためだった。だが、

「桜もちがいい!」

「お団子がいい!」

 何を買うかで木綿季と智也が()めていた。だが、喧嘩(けんか)と言うにはその光景はあまりにも微笑ましく、藍子は仲裁に入らずほっこりしていた。

「姉ちゃんも桜もちがいいよね!?」

「藍姉はお団子とどっちがいい!?」

 ぴったり同時に()いてくる2人に、藍子は思わず笑ってしまった。

「ふふっ、あはははははっ......!」

「姉ちゃん! どっちにするの!?」

「藍姉、早く!」

 2人の至って真剣な顔は、藍子を更に笑わせたという。

 結局桜もちと団子の両方を買って、3人は近くの公園に行った。満開の桜に迎えられ、木綿季は歓声を上げた。

「わぁー! すっごーい!」

 ぴゅーんと駆けていく木綿季に、

「ユウー、転ばないようにねー!」

 と言うと、藍子は智也とシートを()いた。袋からお茶菓子を、(かばん)からお茶の入った水筒を取り出すと、木綿季はすぐに戻ってきた。

 桜の木を見上げながら、3人はのんびりした。

「桜もちもお団子も、どっちも美味しいね」

「んむ、んむ......おいひい」

「そうね......あんこの甘さが染みる......」

 小3らしからぬ藍子のコメントを聞いて笑うと、智也は立ち上がった。

「ちょっとトイレ」

 そう言って公衆便所に向かう智也を見送ると、木綿季は言った。

「とー君、嬉しそうだね。良かった」

「ユウも嬉しそうだよ」

「うん! 姉ちゃんととー君と一緒にいるの大好きだもん。とー君も、姉ちゃんと一緒にいれて楽しいんだろうね」

「......ん? わたし?」

 首を傾げる藍子に、木綿季は言った。

「うん。とー君きっと、姉ちゃんのことが好きなんだよ」

「あ......そう、なんだ......」

 自信たっぷりに言う妹に、藍子は心の中でこう言った。

(智也君が好きなのは、わたしじゃなくてユウだと思うけど......)

「ただいまー」

 と声がした。ちょうど智也が戻ってきたところだったが、その顔は眠たそうだった。

「とー君、眠そうだね」

「うん、あったかいしねー」

 もう既に半ばぼんやりし出した智也に、藍子は言った。

「ユウに膝枕してもらってお昼寝したら?」

「え、ボク!? 姉ちゃんじゃないの!?」

 驚く木綿季だが、藍子は穏やかに言った。

「たまにはする側もいいよ?」

 姉にそう言われ、木綿季は大人しく智也に膝枕した。すると、

「すぅ......すぅ......」

 少年はすぐに寝てしまった。

「とー君、気持ち良さそう」

 そう言って微笑む木綿季。たまには膝枕する側なのも、悪くないと思うのだった。

 その後、目を覚ました智也と姉妹は、ある約束をした。

 来年も一緒にお花見をしよう、と。

 そして月日が経ち、3人は4年生になった。

 2年間同じクラスだった木綿季と智也は、今年は違うクラスになってしまった。3人揃ってクラスは違うが、相変わらずの仲良しのままだった。

 ──そのはずだった。

 だがその幸せは、ある日を(さかい)に壊れていく。

 4年生になって間もないある日、教室でぼんやりしながら2時限目の開始を待っていた智也の耳に、クラスメート達の会話が聞こえてきた。

「ねぇねぇ聞いた? あっちのクラスに、病気の子がいるんだって!」

「聞いた聞いた! 怖いよねー、私たちにもうつるのかなー?」

「えー、やだー!」

 そう言って騒ぐ女子達を見て、智也はぼんやりと考えた。

(病気かー、そんな大騒ぎするような病気なのかな? どーゆーやつだ? あとそれって誰が......)

 その疑問の答えは、すぐに分かった。

 だがそれは、望まない答えだった。

「その病気の子って、名前なんだっけ?」

「えっとね、木綿季って子」

 

...

 

......

 

............

 

..................

 

「............え......?」




(つづく)
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