ソードアート・オンライン ボンド・アンド・ディスペア   作:Maeto/マイナス人間

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引き続きバトル回です。新生アインクラッド第30層のボスって、原作だとどんなやつなんでしょうね。


第18話 悪魔

§新生アインクラッド第30層

 

 ゴリゴリと石臼のような音を立てて開く鉄扉の奥に広がる暗闇に、ユウキとマエトは踏み込んだ。素早く抜剣し、周囲に注意を払いながら、慎重に進む。

 扉の近くで、ぼうっという音がした。かがり火が灯り、暗がりがわずかに遠ざかる。数秒の間隔の後、またかがり火が灯る。青白い光源が増える度に、ボス部屋はその様相を明らかにしていった。

 完全な円形というだけで、至って普通のボス部屋のように思えたが、ユウキは違和感を覚えた。

「なんか、(せま)い......?」

 今まで彼女が見てきたボス部屋と比べて、この空間は明らかに狭かった。完全な円形の部屋という点では、初めてアスナと挑んだ第27層のボス部屋も同じだったが、直径はそれよりもかなり短いと思われる。

 そのとき、また石臼のような重々しい音が響いた。だが、扉が閉まる音ではない。音は四方八方から聞こえる。レンガ状に積まれた壁のブロックが、ところどころ出っ張ってきているのだ。何らかのステージギミックと思われるが、その用途が読めない。

 キョロキョロするユウキの隣で、マエトは目を閉じて聴覚のみに意識を割いた。全方位から響くゴリゴリとした音の中に、別の音が混ざっている。これは──ポリゴンでオブジェクトが生成される音。ボスの湧出は既に始まっていたのだ。

 にも関わらずその姿が見えないということは、隠蔽(ハイディング)系能力の高い奇襲型のボスか、この部屋の中でいま目視している範囲にはいないかのどちらか。つまり──

「そこか」

 そう言ってマエトは、さっと天井を見上げた。釣られてユウキも顔を上げる。

 それを待っていたかのように、天井付近から何かが落ちて──いや、飛び降りてきた。

 とんっ、と。ほとんど無音で降り立ったのは、巨人型のボスモンスターだった。だが巨人型と言っても、サイズは他のボスよりも小柄だ。ユウキたちよりは当然大きいが、それでもノームやインプに多い巨人型プレイヤーの3倍程度のサイズ。ボスモンスターにしては相当に小さい。

 大きく露出した、()せ細った灰色の体。(あら)っぽい質感のレザーガントレットに、ボロボロな暗緑色のフーデッドマント。目深(まぶか)(かぶ)ったフードで顔は見えないが、その奥で目が獰猛(どうもう)な輝きを放つ。

 ボスが左右の手でくるくる回していた2本のダガーを逆手に握る。音を立てて切り払うと、その頭上に《The Desperate Shadow》という文字列が表示された。デスペレイトシャドウ──絶望的な影。

「ギシャァァ──!!」

 ボスの甲高い咆哮(ほうこう)が、狭い部屋に響いた。

 

 

「このボス......!」

 ユウキが目を見開いて驚く。

(このボスの見た目......前にとー君が言ってた、ベル君を殺した人と似てる......!)

 その情報を得てから、道行くプレイヤーに注意を払ってはいたが、さすがにモンスターはノーマークだった。

 ハッとして隣を見ると、マエトの様子が明らかにおかしかった。顔に大量の汗を浮かべて、荒い呼吸を繰り返している。森の家で暴走について話したとき以上だ。ここまで苦しそうなマエトを、ユウキは初めて見た。

「とー君、大丈夫!?」

 慌てるユウキに、しかしマエトは汗だくの顔に笑みを浮かべて言った。

「......大丈夫、ギリギリ大丈夫。あいつの武器はダガー二刀流。あれなら大丈夫」

 大丈夫という言葉を繰り返すマエトだが、ユウキにはそれが自分自身に言い聞かせているように聞こえた。

「まずは攻撃パターンを見極めんとな」

 そう言ったマエトに、ユウキは気が進まないながらも「うん......」と小さく(うなず)いた。

 そのとき、ボスが再び()えた。即座にマエトが言う。

「固まってると一発でやられる。1回離れよう」

「う、うん!」

 互いに素早く距離をとった2人の前で、ボスは大きく跳躍した。2人の頭上を軽々と飛び越え、壁を蹴って方向転換。再びの跳躍で、今度はユウキの真横に着地。さすがの反応速度で迎撃しようとするユウキだが、それより早く跳躍。

 壁から壁に。壁から床に。不規則に全方位を高速で飛び回る。

「とー君みたいな動き......!」

 事実その動きは、森の中でのマエトの動きとよく似ていた。それを見て、マエトは即座に見抜いた。

「壁の出っ張り、あれこいつの足場だ!」

 そう叫ぶマエトに、背後からデスペレイトシャドウが飛びかかった。振るわれた左腕が握る片刃のダガーが、ギラリと凶悪に光る。逆手に握った切鬼(せっき)でダガーの軌道を()らし、裂鬼(れっき)で反撃しようとするマエト。だが、反対側から別のダガーが迫ってくる。

「ちっ......」

 素早くバックステップしてダガーをやり過ごすと、マエトは間髪入れず前に出た。裂鬼の赤黒銀の刀身が、青い光を放つ。カウンター系の6連撃ソードスキル《カーネージ・アライアンス》。タイミング、速度共に申し分なかったが、しかし裂鬼はギリギリのところで(むな)しく空を切った。ボスが再び壁の出っ張り──足場を使って高速で飛び回る。あまりに速いその動きを捉えきれない。

「うぅ......言い出したのはボクだけど、これ2人だけは厳しかったかなぁ......?」

 ボスの動きを目で追おうと、頑張って首を動かしながらユウキが言う。だが、マエトはそれを「そーでもないよ」とあっさり否定した。

「なんで?」

「あいつ、壁と床を足場にして飛び回ってるでしょ? こんな狭い部屋に大人数で入ったら、床に足場がなくなって上しか飛ばなくなる。そーなったら剣とか槍じゃ届かんよ」

「じゃ、じゃあ魔法は? あとシノンみたいに弓で......」

「速さだけならともかく、あんなランダムな動きはシノンさんでも捕まえられん。魔法は解らんけど、多分スペル詠唱(えいしょう)してるとこ狙われるでしょ」

「えーっと、じゃあ、壁役(タンク)の人に魔法使い(メイジ)を守ってもらえば......」

「あのスピードのランダム機動に追い付けるタンクがいたら行けるかもね」

 マエトの冷静な指摘に、ユウキは(うな)った。つまりそれは──

「じゃあそれって、少人数のアタッカーだけで倒さないといけないってこと?」

「確証はないけど、多分そーだと思う」

 このボスは、今までのボスとは明らかに違う。これまでのフロアボスは狭い空間──この部屋よりはいくらか広いが──の中央に陣取って、高い火力や厄介な技でプレイヤーをねじ伏せていた。

 だが《ザ・デスペレイトシャドウ》は、高い機動力と自由な動きでプレイヤーを翻弄(ほんろう)する。大人数でレイドを組んで挑むのが常となっているボス戦だが、そうすると先ほどマエトが言った《武器が届かない》という事態に発展する。

 火力や手数といった殲滅力で蹂躙(じゅうりん)するのではなく、動きの自由度でプレイヤーの選択肢を奪い、ジワジワと首を()めるように追い詰める。今までのフロアボスとは根底から違う。

「どうすればいいと思う?」

 ユウキが訊くと、相手の観察をあらかた終えたマエトは言った。

「んー、とりあえずこれやってみようってのはある」

「え、もう何か思い付いたの!?」

「行けるかは解らんけど、まぁやってみんとね。ちょっと手伝って」

「うん!」

 力強く頷くユウキに、マエトは指示を飛ばした。

 

 あちこちを飛び回るザ・デスペレイトシャドウの攻撃を避け続けると、ユウキはその反応速度の全てをもってカウンターの一撃を叩き込んだ。叩き込んだと言っても、すれ違いざまに基本単発技《スラント》を(かす)めるようになんとか当てただけだ。

 だが、これでボスに初ダメージを与えたのはユウキになった。すぐさま背を向けて走り出すユウキだが、ボスは憎悪値(ヘイト)を稼いだ彼女をターゲットして追いかける。

 ちらりと振り向くユウキの視界の中で、黒いアサシンコートに身を包んだ少年が、反対側の壁にいた。マエトはボスが利用している足場を蹴って、ボスの頭と同じくらいの高さまで壁を登る。

 縦1.5メートル、幅1メートル、厚さ0.8メートル。それがマエトの目算で出たブロックの大きさだ。

(思ったより狭いな。これじゃ助走なんて1歩しかできん)

 内心でそうぼやくと、マエトは両手の剣を握り直した。ユウキを追っているため、ボスはこちらに背を向けている。距離を見るに、1歩程度の助走では届かないだろう。だが、

(おれの読みが正しければ......)

 その場で軽く2回垂直に跳ぶと、マエトは足場──ではなく、後ろの壁を蹴った。体が前に押し出されて宙に出る直前に、ブロックの角を蹴って2歩目の助走。勢いよく空中に躍り出たマエト。ボスは未だにユウキをターゲットして────

 瞬間、ボスがぐるりと振り向いた。反対側の足場を蹴って加速し、その勢いを乗せて殴るようにダガーで斬りかかってくる。

(やっぱこいつ、AIのレベルがちょっと違う)

 全方位を高速かつ不規則に飛び回るなどという複雑な動きをするには、足場だけでなく敵の位置や動きも常に考えて動かなければならない。今でこそそれを得意とするマエトとて、習得にはかなりの時間を要した。

 通常のボスモンスター用AIでは、処理が追い付きはしてもそこ止まり。通常のボスモンスターも、意志があるのかと疑うほど嫌らしい攻撃をしてくることはあるが、そのぶんの処理能力を立体機動の方に費やしてしまい、攻撃が単調になる可能性がある。

 動きと攻撃、それぞれの複雑さの両立。それを成しえるのは、他のボスモンスターのそれよりも高度なAIというマエトの読みは、見事に的中した。

 ボスが振るったダガーの刃を(かわ)し、(みね)を蹴って前に出る。同時に裂鬼を鞘に納めてスペル詠唱(えいしょう)。ボスの痩せた腕に左の手の平を当て、気まぐれでスキル強化したが大して使っていない闇魔法《闇黒放電(ダークボルト・スパーク)》を使用。左の五指の先から、紫電が(ほとばし)る。同時に逆手に握った切鬼で腕を斬りつける。

 新生アインクラッドのフロアボスはHPゲージが見えないが、攻撃の手応えでダメージの通り具合いは何となく解る。

(今の感じだと多分、こいつ魔法耐性強いな。まぁおれもユウちゃんも物理アタッカーだから関係ないけど)

 そう思いながら腕に着地して、肩の方へと走る。素早く裂鬼を引き抜き、全力で肩を蹴ってフードの中に飛び込むと、マエトは赤く光る目に回転斬りを叩き込んだ。深紅のダメージエフェクトが、鮮血のように吹き出す。

「ギャァァアア──ッ!!」

 悲鳴を上げてよろめくデスペレイトシャドウの体を足場に移動して、マエトはその背後にある足場ブロックに降り立った。止まることなく振り向き、追撃を入れようと踏み出す。

 その直前、マエトの目はあるものを捉えた。ボスが装備しているマントの下から覗く、乱暴に革が巻かれた棒のようなもの。腰の後ろに横にして吊っているようだ。恐らくは剣の(つか)。サイズから推測される武器種は──バスタードソード。

 そこまで推測した、してしまった瞬間、マエトは鋭い頭痛を感じた。

「──っ! ......らぁっ!!」

 嫌な予感を払拭(ふっしょく)するためか珍しく雄叫びを上げると同時に、マエトは足場を蹴って飛び出した。すれ違いざまに首筋を切り裂き、肩を蹴って反対側の壁の足場まで跳ぶ。間髪入れずにその足場も蹴り、今度は(のど)を斬る。体を捻って頭を下にすると、ボスの(あご)を蹴って急降下し、心臓部と腹を斬りつける。着地するや今度はボスの足、人間で言うアキレス腱の部分を切断した。うつ伏せに倒れてくるボスの顔を思い切り蹴って、壁にもたれかかって座るようにさせる。

 目潰しの後からここまでの一連の動きのあまりの速さに、そして自分より大きなボスの体を一撃で押し返した蹴りの威力に、ユウキは驚愕(きょうがく)するしかなかった。特に後者は、現実で何か格闘技でもやっているのかと思ったほどだ。

「すっごい......」

 そう呟くユウキの隣に止まると、マエトは言った。

「あいつ魔法耐性は強いけど物理耐性はめちゃくちゃ低い。特に喉、首筋、心臓、腹は紙。目と足を潰した今なら、ソードスキルでその4ヶ所を叩けば一気に削れる」

 どんな凶悪なモンスターでも、ゲームである以上はゲームバランスに(のっと)ってデザインされている。高い機動力に複雑な動き、高度なAI。それらによって生まれる異常なまでの攻撃性。これに釣り合う弱点は、極端に低い物理耐性とウィークポイントの多さ。人間の急所とされる4ヶ所全てが、そのままこの巨人型ボスの急所に設定されているのだ。

 だがそれは、高速かつ不規則に動き回るこのボスに、物理攻撃を当てることができて初めて意味のある弱点。下手をすれば、一撃も当てることなく終わることだってあり得る。

 そういう意味では、マエトを連れてきたユウキの人選は──半ば以上偶然ではあるが──この上なく正しかったと言える。高い物理攻撃力と機動力を誇り、仮想世界での人体の破壊に精通していて、原則飛行不可のダンジョン内でザ・デスペレイトシャドウの動きに追い付ける。最高とさえ言える相性だ。

 ......ただ、ある一点を除いて。

 

 

「やぁぁ──っ!!」

 裂帛(れっぱく)の気合いと共に、タイムの花を思わせる紫色の光が11回(またた)く。11連撃OSS《マザーズ・ロザリオ》。そのラスト一撃がボスの腹に叩き込まれた直後、今度はマエトが足場からジャンプして、ボスをライトブルーに輝く切鬼で4回斬りつける。垂直4連撃《バーチカル・スクエア》。青白い正方形が広がると同時に、完全に運任せで構えた裂鬼が(うな)る。外燃機関のようなサウンドを乗せて、単発重攻撃《ヴォーパル・ストライク》を放つ。重い一撃を喰らったボスが悲鳴を上げる。

 与えるのけぞり効果の高い、一撃が重い技を交互に隙間なく喰らわせることで、HPを削ると同時にボスの動きを遅延させ続ける。これもマエトの指示だ。

 見よう見真似でキリトの《スキルコネクト》をやって長めのディレイを課せられるマエトが落下していく中、ユウキはマクアフィテルに炎のエフェクトを(まと)わせた。8連撃技《ハウリング・オクターブ》。

 HPゲージは見えないが、確実に相手を削っている手応えを、ユウキは感じた。

 ラストの上段斬りを全力で叩き込むと、ユウキの後ろからマエトが飛び出した。ザ・デスペレイトシャドウの腹に、紫の光を宿した切鬼とエフェクトを纏っていない裂鬼を連続して交互に撃ち込む。15連撃OSS《リベリオン・バーク》。ラスト15撃目を放ち、直後に反対側で再発動。嵐のような30連撃を全てその身に受け、ボスが絶叫する。

 硬直するマエトの眼前で、巨人がゆっくりと立ち上がった。恐らくHPゲージが半分以下になったことで、攻撃パターンが変わるのだろう。目と足はどちらも回復している。

「来るよ、とー君!」

「うん、とりあえず距離とっとこう」

 素早く後退する2人。その前でボスは、両手に持ったダガーを投げ捨てた。床に落ちたそれらが騒々(そうぞう)しい金属音を響かせる中、ザ・デスペレイトシャドウの右手が動いた。

 どくん、と。マエトの心臓が跳ねた。ゆっくりと動くボスの右手の先には、腰の後ろに横向きに吊り下げられたアレ(・・)の柄が。

 マエトの様子に、次いでボスの手が目指す先にある物に気づき、ユウキも愕然(がくぜん)とした。

「ねぇ、それ、ダメだよ......」

 うわ言のように呟くユウキ。ほんの数日前だったか、マエトのプレイヤーホームで昼寝したときに見た悪夢が、脳裏を()ぎった。

「ダメ......ダメだよ、それ......」

 震える声をこぼすユウキの隣で、マエトもまた、息を荒くしていた。

 やめろ、止まれ。その思いだけが頭を駆け巡る。

 そして、2人の思いも虚しく、ボスはバシッと音を立てて棒──柄を握った。フードの奥で、巨人の口が獰猛(どうもう)(ゆが)んだ気がした。

 ぞろり、というような音。ザ・デスペレイトシャドウが、第2の得物(えもの)を抜いた音だった。ダガーからバスタードソードに換装(かんそう)し、(にぶ)い光を放つ抜き身を下げた巨人型ボスの姿に、2人は息を呑んだ。

 我に返ったユウキは、大急ぎで隣に立つ少年の名前を呼んだ。

「とー君......!」

 だがそのときには、荒い呼吸を繰り返しながら、マエトはふらふらと歩き出していた。

「殺......してや、ル......」

 (かす)れた声が聞こえた。ノイズがかかったようなそれがマエトの口から出たものだと、ユウキには信じられなかった。

 ふと、ユウキは寒気を感じた。マエトの体から一瞬、ドス黒い何かが(あふ)れ出したように感じたからだ。

「殺シ、て......ヤル......」

 ふらついていた足は、いつの間にか床をしっかりと踏み締めており、血走った瞳はグラグラと揺れている。

 ザ・デスペレイトシャドウが「シュゥゥ......」という声を()らしながら、バスタードソードをテイクバックした。一瞬の溜め──直後、

「ジャシャァアア────ッ!!」

 奇怪な雄叫びを上げて、ボスが剣を振るった。地面スレスレから跳ね上がった刃が蛇のように襲い掛かり、マエトが持ち上げた裂鬼とぶつかって、彼を吹き飛ばす。その直前だった。

「────殺ス」

 そんな声がした。

 大きく弾かれたマエトは空中で姿勢を整えると、ボスの頭よりも更に高い足場に着地した。その身のこなしはいつもと何ら変わりなく、大丈夫なのではとユウキは安心しかけた。だが、

(違う......いつものとー君じゃない......)

 そう直感したのと、上空から声が降ってきたのは同時だった。

「殺ス、殺ス......コロ、ス......」

 そう呟きながら、マエトは()せていた顔をゆっくり上げた。その目を見た瞬間、ユウキは背筋が凍りつくような恐怖を覚えた。

 そこにいたのは、長年一緒にいた友達などではなく、殺意と憎悪に取り()かれた悪魔だったのだから。

「コロス」

 引き裂かれたような狂った笑みを浮かべ、悪魔がそう(ささや)く。

 このときユウキには、闇妖精族(インプ)特有の赤紫色の瞳が、血に飢えて赤く光っているように見えた。

 




次回 踏み出した一歩

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