ソードアート・オンライン ボンド・アンド・ディスペア   作:Maeto/マイナス人間

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第3話です。次の次の次の話からが本番です。


第3話 2つの再会

§ALO内 央都アルン

 

「仮想世界でも、友達とショッピングって楽しいよね」

 アスナの言葉に、リーファが金髪のポニーテールを揺らしながら「そうですね!」と同意を示す。

 キリトとシノンがGGOからALOに戻ってきて2週間と数日経ったある日、アスナ、リーファ、シノン、シリカ、リズベットはアルンでショッピングを楽しんでいた。シリカの近くを飛ぶフェザーリドラのピナの上に乗るユイも楽しそうにはしゃいでいる。

 女性陣の買い物の荷物持ちを手伝わされている──というより荷物を押し付けられているキリト、クライン、エギルの男3人としてはそんな余裕もないが。

 皆でショッピングと言っても、各々(おのおの)が好きな店を見回っているので、店に統一性はなく、ランダムなタイミングでランダムな量の荷物が増えていくのだ。STRを優先的に伸ばしているキリトやエギルですらげんなりしている。クラインに至っては、

「女の子とショッピングって聞いたから来たのに、ただの荷物持ちかよ......!」

 と涙ながらにうちひしがれていた。まさにそのタイミングで、

「はいっ、これもよろしくーっ!!」

 と言ってリズベットが追加した武器防具の強化素材は、クラインの体と精神を同時に苦しめた。

「嫁さんとの買い物とは、全然違うな......」

「せめて、コインロッカーでもあればな......」

 エギルとキリトも呻く。

 彼らの前では、シリカがアクセサリーショップのショーウィンドウに張り付き、リズベットがお菓子屋ではしゃぎ、シノンが本を物色し、アスナとリーファが雑貨屋でポーションやマジックアイテムを見繕っていた。

「「「まだ増えるのか......」」」

 既にストレージは容量満タンになっており、自分達の腕で抱えるしかないのだが、女性陣にもストレージはともかく腕を酷使してもらうのは気が引けるような......。

 そうキリト達が思っていた時、急に腕を苦しめていた重量が減った。荷物がどんどんストレージにしまわれていき、開けた視界の真ん中に、アスナとリーファとシノンがいた。

「ごめんね、ずっと荷物持っててもらっちゃって」

「いつもの感覚で荷物持っててもらってたけど......」

「買い物の量はいつもより多かったみたいね、ごめんなさい」

 荷重からの解放感に、長く息を吐く3人。そこに、シリカとリズベットも合流する。

「すみません、荷物重かったですよね?」

 申し訳なさそうに言うシリカに続き、リズベットも謝罪するが、

「いやーごめんごめん、あはははは」

 こちらはあまり申し訳ないと思ってないような気がする。対してユイとピナは男達を労った。

「パパ、お疲れ様です!!」

「きゅいっ!!」

 1人と1匹の労いを聞いて、キリト達にも笑顔が浮かんだところで、アスナがぽん、と手を叩いた。

「よしっ、じゃあお散歩しよっか」

 

 

 今度は純粋に散歩のため、一行がゾロゾロとアルンの街を歩いていると、

「おっと」

「あてっ」

 エギルの太い声と、少年のような声が同時に聞こえた。キリト達がエギルの方を見ると、エギルの前で闇妖精族(インプ)の少年が尻餅を突いていた。

 黒いレザーシャツの上に、紫のラインが入った黒のアサシンコートを着ている。左肩には黒曜石の軽金属防具。背中には片手直剣が下げられている。

(黒いコート......パッと見た感じだと、なんかスプリガンみたいだな)

 何となくそう思ったキリトの前で、

「すまねえ、大丈夫か?」

 張りのあるバリトンで聞いたエギルに、黒革のズボンに包まれた足でにゅっと立ち上がりながら少年が答えた。

「はい、だいじょぶです」

 その声に、キリトとシノンは聞き覚えがあった。

 少年が体の向きをくるりと変えて、キリト達の方を向く。

「お友達の皆さんも、散歩の邪魔してすいませんね」

 そう言って、少年がペコリと頭を下げた。頭が上がり、その顔が視界に入る。

 長めのパープルブラックの髪、影部分が紫がかった乳白色の肌、赤紫色の瞳。それらを見て、キリトとシノンは異口同音の声を上げた。

「「マエト!?」」

 

 

「先週からコンバートしててね。いやー、この世界はすごいな。空飛べるし魔法あるし、オリジナルの技作れるし空飛べるし」

「空飛べる2回目よ」

 シノンに突っ込まれながら、ALOに来たことをキリト達に事後報告したマエト。アスナ達はキリトとシノンから彼の話を聞いていたのだが、こうして実際に会うと──。

「(本当にあれがキリの字が言ってた(つえ)ぇ奴か? 全ッ然強そうに見えねえぞ?)」

「(人は見かけによらないって言うけどねぇ、あんなのんびりしてる子がそうとはとてもとても......)」

「(いやでも、キリトさんだってパッと見は強そうじゃないじゃないですか。そのギャップがすごく......)」

「(シリカちゃん、落ち着いて......)」

 クライン、リズベット、シリカ、リーファが、頭をぶつけてこそこそ話しているのを見て苦笑するキリト達。マエトは相変わらずのマイペースで、ストレージから取り出した飲み物を飲んでのんびりしている。

「マエトは今何してるんだ?」

 キリトに聞かれて、マエトは口許を腕で拭いながら答える。

「んっと、なんかコンバートして少しした頃に、強いプレイヤーがいるって(うわさ)聞いてさ。戦ってみたいなーって思って探してんの」

 強いプレイヤーの噂、と聞いてキリトやアスナが真っ先に思い浮かべたのは、目の前の少年と同じインプの少女剣士ユウキだ。

 彼女のギルド《スリーピング・ナイツ》のメンバー全員の名前を《剣士の()》に刻むために、自分達に力を貸してくれる7人目のパーティーメンバーとなる強いプレイヤーを探して辻デュエルをしていた少女で、その戦闘力と反応速度はキリトをも上回る。

 彼女はアスナに依頼して、2週間前にその目的を達成したため、もう辻デュエルはやっていないし、今日は病院の検査のためログインしてくるのはもう少し先だ。

「えっと......そのプレイヤーについて、他に何か知らない?」

 そう聞いたアスナを見て、なぜか少し驚いたような顔をしたマエトは、しかしその問いに普通に答えただけだった。

「んー......確か、《ゼッケン》とかいう異名が付いてるって」

「《絶剣(ぜっけん)》......!」

 間違いなくユウキのことだ。

「わたし、その子と友達なの。今はまだログインしてないけど、もうしばらくしたら来ると思うから、そしたら連絡しようか?」

 アスナの申し出に、マエトは喜んで応じた。

「おー、そりゃありがたい。どーもありがとう、アスナさん(・・・・・)

「ふふっ、どういたしまして」

 そう言ってからアスナは、ふと疑問を感じた。

「じゃあそれまで俺とデュエルするか」

「お、いーね」

 とキリトと話している少年を見て、思う。

 ──あれ? そう言えばわたし、マエトくんに名前言ったっけ......?

 

 

 キリトとマエトのデュエルが白熱している中、アスナはログインしてきたユウキにメッセージを飛ばした。

『ユウキの噂を聞いて、戦ってみたいって言ってる子がいるの。パナレーゼの、ユウキが辻デュエルしてた場所に来れる?』

 返答は即時だった。

『うん、今すぐ行くよ!!』

 返信から1分と経たずに、ユウキが《スリーピング・ナイツ》のメンバー5人と共に現れたのと同時に、キリトとマエトのデュエルも決着が着いた。

 今回はギリギリ勝ったマエトの回復をリーファが、今回はギリギリ負けたキリトの蘇生をアスナが行う。蘇生するや否や、

「よしよし、これで1勝1敗だな」

「すぐに2勝1敗にしてやるからな」

 などと言い合っている2人に、アスナが声をかける。

「ほらほら、そこまで。ユウキが来たよ」

 アスナが言い終わらないうちにぴくっと反応するマエト。

「ユウキ......?」

 アスナがどいて、ユウキとマエトが顔を合わせた。

 その瞬間ユウキが、

「へっ!?」

 と素っ頓狂な声を出す。口を開けたまま、大きな眼をぱちくりする。

 いや、ユウキだけではなかった。マエトも無言ではあるが、眼と口を開けて驚いたような顔をしている。

「え、も、もしかして......」

「まさか、本当に......?」

 2人のインプが掠れる声で呟くのを見て、周りの全員が戸惑った。

「ユ、ユウキ、どうしたの......?」

 アスナが(たず)ねるが、ユウキはそれにも答えなかった。ただ、目の前の少年と見つめ合い、そして──。

「もしかして、《とー君》!?」

「まさか、《ユウちゃん》!?」




次回 ユウキとマエト
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