ソードアート・オンライン ボンド・アンド・ディスペア   作:Maeto/マイナス人間

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ちょっと雑に書いたって自覚はありますが、お許しください。次回からが本番です。


第5話 強さの謎

§新生アインクラッド第22層 森の家

 

 

「はい、どうぞ」

 アインクラッド第22層のログハウス、アスナがテーブルに置いた皿が仮想の湯気を上げる。思わず鼻をひくつかせたマエトが感嘆の声を出した。

「おぉー......! これは実にうまそーだ。いいのかアスナさん、こんないいものを?」

 キリトとユウキ相手の連続デュエルを終えたマエトに、アスナは手料理を振る舞って労うことにしたのだ。

「ふふっ、もちろんよ。召し上がれ」

 アスナがそう言うや否や、

「いただきます」

 素早くフォークを握って手近な皿に手を伸ばし、大きめに切り分けられた魚を口にした。そこで、

「......、」

 ピタリと動きを止めたマエトを見て、不安になるアスナ。

(もしかして、口に合わなかったのかな......)

 そう思った直後、

「はむっはむっはむっ、んまいんまい」

 魚の照り焼き、添えられたキノコや野菜類、パン。それらを次々と口に放り込み、モギュモギュと音が聞こえそうなほどに頬張る。それを見てほっ、と安堵の息を吐くアスナを尻目に、

「あー! とー君ズルい!! ボクもアスナの料理食べたい!!」

 マエトの隣に座り、ちゃっかりフォークを握ってユウキも料理を頬張り始めた。一瞬のアイコンタクトを交わした後、2人のインプは競うようにフォークを動かし始めた。凄まじい勢いで空になっていく皿を見て唖然とするアスナ達。キリトやクラインに至っては、

「ダメだ、おりゃ腹減ってきたぜ......」

「俺もだ......アスナ、あとで俺にも飯作ってくれ......」

と情けない表情を浮かべていた。

 ものの数分で料理を平らげたマエトとユウキは、同時に満足そうに息を吐き、同時にフォークを置き、同時にアスナを見た。

「ごちそーさまでした」

「ごちそうさまーっ!!」

「お、お粗末様でした......あはは......」

 あまりの勢いに圧倒され、苦笑する他ないアスナであった。

 後片付けが済むと、すかさずリズベットが口を開いた。

「ねえねえ、あんた達がちっちゃい頃の話聞かせてよ」

「あ、あたしもそれ気になります!!」

「あたしもー!!」

 便乗してきたシリカとリーファ、そこにアスナも加わる。

「わたしも、ユウキのちっちゃい頃の話聞いてみたいな」

 ユウキとマエトは顔を見合わせ、

「「オッケー!!」」

 と同時に言った。

 

「とー君はねー、けっこうインドア派だったね。教室で本読んだりお絵描きしたりしてる方が好きだったよね」

「うん。それをユウちゃんが外に引っ張り出してさ、やれ鬼ごっこだのかくれんぼだのサッカーだのって」

「それでとー君転んじゃった時、ボクが一緒に保健室まで行ったんだよね」

「あと読んだ本の冊数で勝負したりね」

「あー、やったねー。その勝負はとー君の全勝だったっけ?」

「うん。ユウちゃん悔しがって、『次は読んだページ数で勝負!!』って言い出したけど、ユウちゃんそれでも負けたもんね」

「とー君の本読むペースが速すぎるの!! 国語の先生言ってたよ、『あんなに速く読めるなんて日頃から本を読んでる証拠だ』って」

「ユウちゃんもけっこう読書家だけどね」

「外で遊ぶ方が多かったもんねー」

「でも放課後は一緒に遊んだよね、家でじゃなくて公園で」

「うん、あと一緒に手繋いで帰ったりもしたね」

「家で遊んだ時は疲れて手繋いだまま寝落ちしたことあったよね」

「あったー! それでママが写真撮って見せてきたんだ、あれちょっと恥ずかしかったー」

「おれもー」

 

 思い出話に花が咲き、リズベットやアスナ達にリクエストされたことも忘れて話し込む2人。それを見てアスナ達は思わず顔を綻ばせた。

 

 

『はー、これで今日の授業終わり!!』

「お疲れ様、ユウキ」

 マエトとデュエルした日から4日後、SAO事件の被害者達が通う帰還者学校の校内を、桐ヶ谷(きりがや)和人(かずと)結城(ゆうき)明日奈(あすな)が並んで歩いていた。明日奈の右肩に乗ったプローブからは、ユウキの快活な声が流れる。

「ユウキ、最後の数学の授業で唸ってたね」

『しょうがないじゃん、ボク国語は得意だけど数学は苦手だもん。それにボク、本当ならまだアスナの学年の数学なんて習わないよ』

「予習になってちょうどいいじゃない」

『アスナは真面目だなぁー』

 などと会話を弾ませるユウキと明日奈。それに対して隣の和人は、

「うーん......」

 数学の授業中のユウキのように唸って何かを考えていた。

『キリト、何を考えてるの?』

「はぁ。キリトくんってば、こないだからずっとマエトくんのこと考えてるのよ」

『え、とー君のこと? なんで?』

 ユウキが意外そうな声を上げる。明日奈も不思議そうな目を和人に向ける。

「いや、冷静に考えるとおかしいだろ」

 和人の言い分に、明日奈は首を傾げた。

「おかしいって、何が?」

 明日奈の問いに、和人は問い返すように返事をした。

「マエト、あいつ強すぎないか?」

「......え?」

 和人の言葉に、ユウキと明日奈は改めてマエトの戦いぶりを思い出す。

「コンバートして1週間でユウキと互角以上に渡り合うなんて普通じゃないだろ」

「でも、GGOはPvP推奨なんでしょ? それで対人戦を繰り返していれば、あのくらい強くなってもおかしくはないんじゃない?」

「いや、そもそもあいつがGGOであそこまで上手く光剣を、しかも二刀流で扱えることも変だ」

『そうなの? なんで?』

 今度はユウキが問いを投げた。

「第3回BoB以降、光剣を使う人が増えたらしいんだけど、でもそれでまともに戦えるプレイヤーは1人もいなかったらしい。GGO内で、光剣の扱いを誰かにレクチャーしてもらえる訳がないんだ」

「なのにマエトくんは、光剣......剣での戦闘でキリトくんと渡り合えた」

 無言で頷いた和人は、

「マエトがGGOに来る前にやっていたゲームは何だったんだろうな......」

 と呟いた。

 そして、一行が曲がり角に差し掛かった時、内側を歩く和人の前に人影が現れた。

「おっと」

 曲がり角の手前で止まる和人に対して人影は、和人を避けるために外側へと進路をずらした。結果、

「あてっ」

「きゃっ!!」

 和人の隣を歩いていた明日奈とぶつかった。人影は後ろに下がると、

「どーも申し訳ない」

 と言ってるペコリと頭を下げた。

 シャツの上にブレザーでなくパーカーを着た、黒髪の少年だった。背はさほど高くはない。ALOで会ったマエトのアバターと、ちょうど同じくらいの身長で──。

「なっ」

「えっ」

『へっ!?』

 和人、明日奈、そしてユウキから驚きの声が漏れる。顔を上げ、和人たちを見返してきた少年は、

「マエト!?」

「マエトくん!?」

『とー君!?』

「おー、久しぶりー。アスナさんの肩のそれからユウちゃんの声するけど、それメディキュボイドに繋がってんの?」

 相変わらずマイペースな少年に、和人が問いかける。

「い、いやそんなことより、お前そのYシャツ......ってことは、やっぱりお前......」

「え? あ、うん、そーだよ」

 和人の言葉をあっさりと肯定し、少年は続けた。

「2年間、おれもあの城の中にいた。あんたらと同じ、《SAO生還者(サバイバー)》ってやつだ」

 

 

(まさかとは思ってたけど、本当に生還者だったとはな......)

 和人と明日奈がよく昼食をとっているベンチに腰かけた3人。和人の視線に気付いたマエトが、「何?」という目を向ける。

「あぁ、いや。ちょうどお前がなんであんなに強いのかを話しててさ」

「うん、そうなの。でも生還者っていうのなら、ちょっと納得ね。自己紹介してないのにわたしの名前知ってたもの」

「アスナはSAOではかなりの有名人だったからな」

『とー君、SAO事件に巻き込まれてたんだ......だからいきなりお見舞いに来てくれなくなったんだ』

「うん、それは本当にごめんね。で、強い理由だっけ? そうだなー、1年くらいずっとアホほど対人戦しててさ」

 驚きはしたが、マエトの強さの理由は分かった。和人や明日奈と同じように、SAOで命懸けの戦いを生き延びたから。

「しかし対人戦をずっとやってたって、圏内でずっとデュエルしてたのか? それなら対人戦の腕も磨かれて当然だな」

 和人の言葉に相槌(あいづち)を打つ明日奈。

 しかし、

「デュエル? おれそんなのしてないけど」

 マエトはそう言った。だが、それはあり得ない。いや、あってはならない。

「でもお前、SAOで対人戦って言ったらデュエルのことじゃ......」

 和人の言葉を、マエトは今度はあっさりと否定した。

「んーん、デュエルじゃないよ。おれがしてたのは────殺し合いだよ」

 和人達はゾッとした。目の前にいる年下の少年が、さも当たり前のように口にした《殺し合い》という言葉の冷たさは、尋常ではなかった。

「マエトくん......あなた、まさか......」

「まさかお前......レッド、なのか?」

 明日奈と和人の問いにマエトは、

「あー違う違う。そうじゃなくて」

 そう言うと少し考えるように黙った。そして、再び口を開いた。

「えっと、SAO後半の1年間で、殺人者(レッド)とか犯罪者(オレンジ)の犯罪件数が減ったことあったの、覚えてる?」

 和人と明日奈は顔を見合わせ、頷いた。

 マエトの言った通り、SAO後半の1年間で、オレンジ、及びレッドプレイヤーによる犯罪件数が減少したことがあったのだが、それとマエトに何の関係が──。

 そこまで和人が思った時、

「あれ、おれがやったの」

 マエトの声が冷たく響いた。和人も明日奈も、彼をよく知るユウキすらも、目の前の少年の不気味なまでに冷たい気配に戦慄(せんりつ)する。

「おれがオレンジとかレッドを殺したんだよ」

 その瞬間、和人と明日奈は思い出した。その当時、アインクラッドで流れた奇妙な(うわさ)。ほんの数日で消え、ほとんどのプレイヤーの記憶にも残らなかった、ある噂を。

『1人のグリーンカーソルのプレイヤーが、大勢のオレンジカーソルのプレイヤーをキルしている』。

「お前、まさか......」

 震える声を出した和人に、マエトが頷く。

 1年間、単独で100人以上の犯罪者カーソルのプレイヤーを殺害した、レッド以上にレッドだった暗闇の住人。

「《悪魔(ブラック)プレイヤー》。それがおれだよ」




次回 血染まった記憶
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