ソードアート・オンライン ボンド・アンド・ディスペア 作:Maeto/マイナス人間
制限時間:∞
ステージ:ダークテリトリー 平地
主武装:
・マエト:《ストラグラ》《シャドウリッパー》
・レンリ:《
暗いと言うには明るく、しかし明るいと言うにはどこか暗い。ダークテリトリーは、そんな異質な場所だ。
血の色の大地と血の色の空の中、マエトの目を白銀の輝きが
離れた場所に立つ若い──恐らくマエトと大して変わらない年齢の
(エルドリエって人が着てたやつよりは装甲が少ない......軽量化されてるってことはスピード型か)
素早く分析するマエトに視線を返すと、レンリは両手を腰へと動かした。中央で屈曲した、一対の薄い投刃こそがレンリの
(ブレード投げ......なら、投げたあとの丸腰のタイミングを攻めるか......)
そう考えるマエトだが、ブレードが曲がっているところを見ると、あの得物は投げた後はブーメランのように戻ってくると予想していいだろう。
飛び道具を使う相手と戦う場合、
投げ物を使う相手ならば、その投げられた武器を叩き落すという選択肢もある。
投げられたブレードをやり過ごすか叩き落とすか。どちらを選ぶにしても、まずは攻撃を観察する必要がある。
じっとマエトが待ちの姿勢を取っていると、レンリが口を開いた。
「エルドリエさんとの戦い、観させてもらいました。素晴らしい速さですが......僕の雙翼刃も、速さでは負けませんよ」
そう言うと、レンリは雙翼刃を指で
「──行きます!!」
言うや否や、レンリは両腕を振るった。しゅっ、という音。
直後、レンリの
素早く後ろに跳んだマエト。彼が直前までいた空間を、2枚の刃が切り裂いた。
(速い......)
内心でそう評価したマエトだが、それは飛翔速度だけの話ではない。
紙よりも薄い刃は、超高速で回転していた。そのため、切れ味は下手な刀剣を遥かに上回るだろう。
そうなると、遮蔽物を
何も斬ることなくそのまま飛翔した薄刃は、宙で弧を描いてレンリの手許に戻った。それをレンリは、人差し指と中指で挟んで受け止めた。
「へぇ......」
小さくそう呟いたマエトを見据え、
(雙翼刃を初見で
決然たる意志を込めて構えると、レンリは改めて雙翼刃を放った。仮想の空気が、音を立てて裂かれる。
超高速の刃を、マエトは今度はギリギリで回避した。雙翼刃を至近距離から観察する。
円弧を描いて戻ってきた雙翼刃を、レンリは指先で引っかけるようにして弾き再
わずかにタイミングをズラして飛翔する刃を
圧倒的な切れ味を誇るであろう神器を受けて、剣が耐えられるかを試すためだ。
甲高い金属音を響かせ、白銀の刃と黄金の鍔が
果たして────鍔は無傷だった。
行ける。
そう判断した瞬間には、マエトはもう飛び出していた。
鍔で受けて問題ないのであれば、鍔よりも強い刀身で防げるということに他ならない。
レンリが再び放った攻撃を、マエトは絶対の確信をもって剣で弾いた。そのまま全力で走り、距離を詰める。
弾かれたことで頼りなく揺れながら戻ってきた得物を受け止めつつ、レンリはわずかに顔をしかめた。
飛翔の速度に反応でき、かつ神器の攻撃に耐えうるだけの高優先度の武器をもつ相手には弾かれ、力業で突破されてしまうのだ。
そうでなくとも、紙より薄い刃が高速回転しているため、飛翔時には独特な高い音が鳴る。耳がいい者には、音から軌道を簡単に予測されてしまう。
(だからって、負けるつもりはない!)
猛然と駆ける相手をきっと睨み、レンリは雙翼刃を空高く投げた。高く高く
瞬間、騎士が高らかに叫んだ。
「リリース・リコレクション!!」
直後、
鋭く美しい、十字の鋼刃──記憶解放術によって取り戻された、
そっと差し出した右手を、レンリは力強く握った。その動きに呼応するように、十字刃が神速で回転する。
高く、
「飛べ、
主の意志に応え、神器はマエト目掛けて一直線に飛翔した。
(あれを受けたら
そんな直感に従い、マエトは限界まで身を低くした。地を
そのまま一気に攻めたいが、あの武器は戻ってくる。攻めに集中すると、そこを後ろから斬られる可能性がある。
(毎回の攻撃が、いちいち意識的な面で厄介だな......
内心でそう呟くと、マエトはレンリから視線は切らないまま、聴覚に意識を集中させた。
聞こえる。先ほどまでとは少し違う風切音。
でもまだ少し遠い。まだ、まだ、もう少し──────
瞬間、マエトは左手を素早く前に出した。
その指先に、レンリは白く輝く3つの光点を見た。
(
驚くと同時に、レンリは相手の目的を悟った。
直後、
「バースト・エレメント」
マエトの指先の光素が、一斉に解放された。眩光が至近距離で爆発し、痛いほどの純白が2人の視界を支配する。
雙翼刃は、投げて戻ってきたものを指で挟んで受け止めるため、ただ普通に使うだけでも圧倒的な集中力を必要とする。それを自在に操るレンリの実力は圧巻の一言に尽きるが、それでもキャッチの際に少しでも集中が乱れれば、自らの武器に指を傷付けられる。下手をすれば斬り落とされる。
(僕に一瞬の集中をさせないために......!)
マエトの狙いを改めて理解しつつ、レンリは即座に対策を講じた。
「システム・コール! ジェネレート・アンブラ・エレメント!」
光を消すべく、素早く
自然の風ではない。そんなものより、もっと速く強い突風。
(風素の解放! あの速攻が来る!!)
瞬時にそう判断し、レンリは後ろに跳んだ。同時に闇素を使って白光を消し去る。
白一色から、元の冷たい血の色に戻った世界。
その中でレンリは、文字通り自分の目の前にまで迫ってきている雙翼刃を見た。
「──ッ!?」
手で受け止める暇などなく、レンリは
倒れながらレンリが視線を動かすと、マエトの左手の指が上を向いていた。
SAOの投げ物やALOの弓矢、GGOの実弾銃を問わず、物理的な飛び道具は必ず風の影響を受ける。
だが、高速回転する薄い刃である雙翼刃は、正面からの風は高速回転によって問答無用で切り裂き、後ろからの風は薄さによってそのまま受け流す。
ただそれは、前と後ろからの風の話である。
飛翔力と回転に特化しているがゆえに、雙翼刃は非常に軽い。そして飛翔中、つまり超高速で回転している間は、屈曲していようと十字であろうと、刃は円形に限りなく近づく。
つまり、飛翔中の雙翼刃は、通常時よりも表面積が大きくなるのだ。
薄くて軽く、さらに表面積が大きい物体。それに下から突風をぶつけたら?
戻ってきた雙翼刃は、自身を受け止めようと持ち主が差し出している手のさらに上──顔に向かって飛んでいく。
(速いとか、そんな話じゃない。この人は、素因の使い方が上手い!)
こんな状況ながら、純粋な敬意をもって感嘆するレンリ。その
叩き伏せるような勢いの刺突は、レンリの体を地面へと倒し、そのまま天命を半分以上も一気に削り取った。
首が完全に破壊されたわけではないため、天命全損とまでは行かなかったものの、レンリの首の傷は十二分に致命傷だ。
そこまでの深手を負わされた若き騎士を見て、100年以上のときを生きてきたとある騎士は、深紅の鎧をがしゃりと鳴らし、呟いた。
「恐ろしいまでの腕前だ、風素の扱いも興味深い......だが我が炎の前では、風など即座に燃え尽きるぞ?」
次回 vs