ソードアート・オンライン ボンド・アンド・ディスペア 作:Maeto/マイナス人間
ステージ:セントラル・カセドラル 80階《
主武装:
・マエト:《ストラグラ》《シャドウリッパー》
・アリス:《
《
中央に小高い
陽光を浴びて小川がキラキラと輝き、若草が青々と
白一色の空間から一転して、何とも
「ふむ......」
興味深そうに周りをキョロキョロと見回すマエト。その目を、黄金の輝きが
丘のやや高い位置に立つ、金色の
彼女──整合騎士アリス・シンセシス・サーティを一目見たマエトの最初の感想が、
『あの人、
だったのも無理はないだろう。
何せ鎧だけでなく、腰に
と言っても、マエトにとっては見た目の美しさなどどうでもいい。少しでも多く情報を集めるのが最優先だ。
そう思ってじっと視線を向けていると、アリスもまた、サファイアのような
だが、別にマエトのように情報を集めて分析をしていたわけではないらしく、彼女は静かな口調でマエトに話しかけた。
「剣を2本持つような
そう言うと、アリスは左腰の鞘へと右手を伸ばした。悠然と、音高く抜き放たれた長剣が、陽光を反射して強く輝く。
(片手剣......バスタードソード寄りだな。重さ優先型か......)
そう分析し、マエトは少し悩んだ。
一撃の重さを優先するタイプが相手の場合、機動力で
だが、今まで戦った整合騎士らには、
問題は、その大技の特性と武器種そのものの特性が必ずしも一致しているわけではない、ということだ。
本来なら近接武器であるはずの
「......で、お姉さんはどんな大技を使ってくれるの?」
ゆえにマエトは、あえてアリスに大技を使わせることにした。先に相手の得物の特性を
マエトの挑発めいた発言に、アリスは一瞬だけ首を
「大技? ......あぁ、武装完全支配術に、記憶解放術のことですか。確かに、そなたがこれまでに戦った騎士たちは
そこで句切り、黄金に輝く刀身をそっと
「いいでしょう。我が神器《金木犀の剣》の力、身をもって味わわせてあげましょう。システム・コール。──エンハンス・アーマメント」
直後、
飛来する金色の突風を見て、マエトは《刀身を魔法に変換する能力》と言う可能性を
だが、
ヤバい。そんな直感に突き動かされ、マエトはすぐさま双剣を抜いた。逆手に握ったそれらの刀身を重ね、防御姿勢をとる。
紫と青の刀身に、黄金の輝きの一片が触れた。
瞬間、その圧倒的な重さによって、マエトの足が浮いた。勢いよく吹き飛ばされ、大理石の壁に背中を
激痛に顔をしかめたマエトの口から、
何とか起き上がって手を
(範囲
同じ遠距離攻撃でも、レンリやデュソルバートやファナティオの技は、一点集中や直線軌道などの要素もあって、その軌道を読みやすかった。
だが、広範囲に
かと言って、遠距離からあのプレートアーマーを
思考を
「ずいぶんと重い一発だね。金木犀ってそんなすごい花だっけ?」
ゆっくりと坂を歩き登る少年に向け、アリスは静かに答えた。
「この剣の源となったのは、ただの金木犀ではありません。セントラル・カセドラルが建つこの場所......
じっと言葉を聞くマエトに、アリスは小さな無数の花弁を刀身へと戻しながら続けた。
「その樹こそが我が神器《金木犀の剣》の原型。神の
「へぇ......」
小さく
アリスの説明を端的にまとめると、あの剣は世界最古の破壊不能オブジェクトをベースに
(範囲攻撃だけでもめんどくさいのにな......)
内心でそんな
上段突進技《ソニック・リープ》。ノーフェイクでソードスキル。スピード勝負だ。
一瞬で距離を詰めてきたマエトに、アリスも思わず目を丸くした。
だが、相手の上段斬りの軌道に黄金の刀身を素早く割り込ませた。さすがの反応力だ。
横一文字に構えられた両刃剣に、高速で振り下ろされた片刃剣が
「──!」
思わずマエトは息を呑んだ。当然だ。自分から撃ち込んだにも関わらず弾かれたのだから。
「えぇぇいっ!!」
姿勢を崩したマエトに、アリスは
本来なら
ガキィィンッ! という重く硬い音が響き、マエトは再び弾き飛ばされた。丘の
「全力で来なさい。ファナティオ殿を倒したそなたの実力が、この程度のはずがないでしょう」
丘の上から冷たく言葉を投げてくるアリスを見上げ、マエトは短く息を吐いた。
(こっちから、しかも突進技で撃ち込んだのに弾かれた。それだけ重さが違うってことか......)
素早く分析しつつ、視界左上のHPゲージをちらりと見上げる。
一撃が重すぎるせいか、ガードの上から喰らったにも関わらず、HPゲージは既に4割近く削られている。
(これ以上
ここまでの流れと自分の現状を改めて把握し、それらを踏まえて思考する。
水の中に
橋の両端を斬って地面から切り離し、盾として使って突っ込む? いや、この小さな橋がそんなに
丘の周辺の樹が密集しているエリアに誘導して、立体攻撃で削る? いや、あの範囲技なら足場の樹ごとこっちが削られる。
《永劫不朽》属性の乗った攻撃と防御を破るのは、さすがに厳しいと言わざるを得ない。どうにかして使い手本人を崩さなければ、あの騎士には勝てない。
そして今回は、崩しに欠かせない条件が3つある。
攻撃と防御の判断を遅らせ、なおかつ相手の攻撃の軌道を
ガードされると弾かれてカウンターを喰らうから、最速最短で殺し切る。もしくは戦闘不能にする。これが接近後の条件。
殺し切る、もしくは戦闘不能にするまでは、アリスの攻撃を──最低でもノーガードでは喰らわない。これが前2つの条件の条件。
これらを同時に満たせる崩しを考える必要がある。
相当に厳しい条件だが......
「システム・コール。ジェネレート・──────」
アリスには聞こえず、
こちらを見下ろしてくる騎士に向かって、全速力で坂を駆け上がる。
逆手に握った双剣で斬りかかると、アリスはそれを堂々とした動作でガード。弾かれると解っていたため今度は転倒するまでは行かなかったものの、やはり姿勢を崩したマエト目掛けて攻撃を仕掛ける。
アリスの攻撃をなんとか
あっという間に、また小川の近くにまで追い込まれていた。
アリスの攻撃を
追撃を加えるべく、アリスも即座に走った。
その瞬間を、マエトは待っていた。
「バースト・エレメント」
ごく短いコマンド。直後、ずっ! という重く不気味な音が響き、同時に橋の下で大穴が開いた。
青紫色の光に包まれた黒い穴──《
(先ほど川に落ちた時に、橋の下に闇素を......!)
アリスがそう気付くよりも早く、解放された闇素はブラックホールのように周囲のものを吸い込み始めた。
水や土だけでなく、石や草、橋。そして、アリスの足までも。
生々しい音を立てて、アリスの膝から先が
ステイシアの窓を開かなくても、天命が急減少しているのが解る。
「ぐっ、ぁぁあっ!!」
体勢を崩し、激痛で意識も乱れたアリス。その視界の端で、黄緑色の光が弾けた。
顔を上げると、マエトが剣を肩に担ぐように構えていた。光源は、マエトの右手の剣。
(先ほどの跳躍技!)
そう判断し、アリスは即座に金木犀の剣の武装完全支配術を使った。無数の花に分解した剣が、先ほど見た突進技の軌道を侵略する。
それとほぼ同時に、マエトが動き出した。
だが、超スピードで突進したのではない。非常に
驚くアリスの視線の先で、ライトエフェクトが明滅。ストラグラの刀身が輝きを失った。モーションが崩れて、ソードスキルがファンブルしたのだ。
しかし、マエトの後ろではまだライトグリーンの輝きが残っている。
痛みと驚愕に支配されたアリスの意識に、マエトの小さな声が入ってきた。
「バースト・エレメント」
直後、背後で
(
それに気付くと同時に、アリスはマエトの狙いの全てを
橋の上におびき出し、置き弾として仕込んでおいた闇素を解放して追う足を削り、同時に姿勢を崩す。
一度見せた上段突進技をこれ見よがしに使おうとして、それに対処させることで、支配術の軌道を
それによってできた下の
(ではまさか、川から上がってからの劣勢もわざと......? 私はいつから、彼の
そんなことを考えている余裕などあるはずもなく、マエトはもう既に、アリスの目の前まで来ていた。
引き絞った剣を高速で突き出すマエト。その突き技の軌道を予測し、アリスは素早く左腕を持ち上げた。剣の
だが、相手は剣を2本持っている。すぐに左での追撃が来る。
アリスの予想
金木犀の剣の柄を持ち上げ、シャドウリッパーの青い刀身を弾こうとするアリス。
その動きが、不意に
マエトが左手を
戦闘中に武器を手放す。そんな異常な行為によって、アリスの視線が思わず蒼刃に向いた。
ハッとしてすぐに視線を戻したアリスの前で、少年の左手がライトエフェクトを宿していた。
五指をぴったり
血で赤黒く染まった左手を無表情に引き抜く少年を見て、
「ふむ......あの少年、ちっと気になるな......
次回 vs