異世界ストリップ~俺はレアアイテムをコンプリートして世界を手にする!~   作:夏目八尋

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ついに話数2桁目に突入します!
これまで読んでくださっている方、これから読んでくださる方、ありがとうございます!

今回も楽しんで読んでもらえたら幸いです。

では、10話。
よろしくお願いします!


第010話 狂気! 全裸三兄弟!!

 

 鑑定を受けた、その後。

 

 ルーナルーナの鑑定屋を後にした俺とミリエラは、タイムリミットの鐘がまだ鳴ってないのを理由に、もうしばらくのあいだ商業区画のウィンドウショッピングを続けることにした。

 

 だが、店に並ぶ珍しい商品を見ても、さっきほどには俺の心はときめかない。

 それもそのはず、今の俺は鑑定屋で知った事実について、深く考え込んでいたのだから。

 

 

「それにしても、さっきのセン君すごかったね。全部だよ、全部!」

 

「ああ、そこはすごいよな」

 

「うんうん! セン君ならこの世界、本当に何でもできちゃうね!」

 

「そう、だな……」

 

 

 自分のこと以上に俺の才能を喜んでくれているミリエラの隣で、しかし俺の表情は渋い。

 

 

(全部に装備適性有り、か……)

 

 

 装備適性、全部C。

 あらゆる装備をいい感じに使える。不足なく道具が扱え、その効果を必要十分に発揮する。

 

 素晴らしい力だ。類稀なる才能だ。

 だけど。

 

 

(C、なんだよなぁ~~~!!)

 

 

 その適性ランクに対して、俺は大いに不満を抱いていた。

 

 

 

(なぜだ、どうしてなんだゴルドバ爺! どうしてB以上じゃないんだ……!!)

 

 

 モノワルドにおける装備適性CとBには、実を言うと結構な隔たりがある。

 ルーナルーナの『鑑定眼鏡』なんかがまさにそれで、あれを眼鏡適性B未満の奴が装備したところで肝心要の鑑定魔法《アプライ》は使えない。

 

 他にも絵本や歴史書で学んだ事実として、LRに分類される伝説の武具などは使用者に高い装備適性を求めるらしく、装備できるを越えてその伝説的な力を振るえる最低ラインがB、大体はA以上を要求するらしいのだ。

 

 

(つまり、Cじゃそれらが、装備はできても使えない!!)

 

 

 装備適性Cは確かに万能だが、それは一般人レベルでの話だ。

 レアアイテムをゴリゴリ使いこなすには、B以上の適性が必要不可欠なのである。

 

 いい感じでは、足りない領域がここにはある。

 

 

 

「セン君、ずっと難しい顔してるよ?」

 

「むー」

 

 

 ミリエラに指摘されても、寄った眉根は離れない。

 一応最低限通りすがりの人や物にぶつからないようにしつつも、俺は考え事を続ける。

 

 

(このままじゃ、ミリエラ攻略すら夢のまた夢だぞ)

 

 

 ミリエラが持っていた装備適性こそ、とんでもないものだった。

 複数の適性Bに、Aがふたつ。ハーフサキュバスの持つ適性傾向を超えた天才児だ。

 

 

「んっふっふー」

 

「ぐぬぬ」

 

 

 無邪気に俺の腕へとしがみついて甘えているこの美少女が、未来の俺の貞操を狙っている。

 俺より高い適性を持つ鞭や、鎖や、お薬や、エッチな下着で追い詰められたら、いよいよもって最初の村の宿屋でハッピーバッドエンドを迎える未来しか見えない!

 

 だが、だがである。

 

 

(今の俺に、それらをひっくり返す武器も、腹案も、存在しない……!)

 

 

 適性CをBへとひとつ上げるのに、モノワルドの人々は普通、数十年の時を費やす。

 成人するまでに残された時間は、あと7年。

 そして当然、俺が成長するあいだにミリエラだって成長する。

 

 

「……つ、詰んだ?」

 

「んうー?」

 

 

 俺の心に満ちていく、脱力感と絶望感。

 リセットボタンのないこの世界で、俺のたった一度の人生の未来が閉じようとしていた。

 

 

 

(……ああ)

 

 

 

 夕方時刻の、けれど赤味が遠い空の下。

 

 

 

(……目が、眩みそうだ)

 

 

 

 どうしようもない無力を感じて、俺は何か、気だるげな感情に絡め取られていく。

 前世を自覚してから3年。あれやこれやと実験を重ねて色々な道具を使い慣れようとしてきたが、それでも変わらずオールC。

 

 それはつまり、成長チートなんてものはなく、俺も例外なくこの世界の住人と同じ規格だということで。

 

 

(ゴルドバ爺、この才能設定したの多分あんただよなぁ?)

 

 

 さすがにここまで極端な才能を用意されたなら、俺だって察する。

 あの神様は俺に、この世界で何かをさせようとしている。

 

 

(だったら、だったらせめて、もっと派手な能力チートくらいよこせやぁぁぁぁ!!)

 

 

 拳を強く握り、心の中で叫ぶ。

 だがそんなことじゃ、俺の胸の内に沸いたモヤモヤしたものは全然晴れやしなかった。

 

 

「……はぁ、ん?」

 

 

 深いため息を零しながら見た、滲んだ視界の奥で。

 

 

「ふむ……」

 

 

 小さく路地へと入っていく複数の人影を見た。

 

 

「あれ、セン君どこ行くの?」

 

 

 なんだか妙にそれが気になって、戸惑うミリエラを放り出し、俺の足は自然とふらふら、路地へと向かい歩き始めるのだった。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

 果たして、人影を追って入った路地の奥では、30代くらいのガラの悪そうなヒュームの男が3人、何か小さいものを囲んでいちゃもんをつけていた。

 

 絵に描いたような治安わるわる路地裏イベントである。

 

 

「おうおう、オレの装備に変な目向けてただろ。ああん?」

 

「兄貴の装備バカにしてっと、ガキだろうが容赦しねぇぞ、おおん?」

 

「そうだそうだ!」

 

 

 どうやら小さい何かが兄貴という人の装備を見てたから、それを理由に絡んでいるらしい。

 背後からは頭巾を被りマントを羽織った兄貴らしき人物の、詳しい装備は分からない。

 

 だが変な目で見られているって文句が出るということは、それなりにみすぼらしいか面白い装備をしているのだろう。

 頭巾の時点でそうだって? バカ野郎頭巾さんはヒーローだって装備してんだぞ! 時代劇とかで!!

 

 あれは面白いじゃなくカッコいいに分類される装備なんだ、オーケイ?

 

 

「あ、あの。見てたのはすいません。その、どうか許してくださ……」

 

「お前の視線でオレの心は傷ついたんだよぉ!」

 

「ひぅぅっ」

 

 

 まぁ、その頭巾被ってる奴の人柄は、ヒーローとはおよそ縁遠い感じっぽいが。

 

 

(……どうあれ、ちょうどいい存在であることに違いはないな)

 

 

 今の俺は、生憎と心がとてもムシャクシャしている。

 行き場のないモヤモヤとした感情が、俺の体にバリバリに影響を及ぼしているのだ。

 

 この無限に湧き出す感情をどうにかぶちまけてしまいたい。

 

 そこに来て現れた、一見するといかにもなカツアゲ現場である。

 

 

(俺の目から見てあいつらは悪。それでよし!)

 

 

 自分がこの路地に吸い込まれるように足を向けた理由を自覚する。

 

 相手の事情とか真実とか、どーでもいい。

 

 今の俺はただ、暴力を振るいたいだけだった。

 

 

 

「おうおう、慰謝料だ。お前の持ってる有り金全部ぅ、寄越せガキぃ!」

 

「詫び入れろやガキぃ!!」

 

「そうだそうだ!」

 

「ひっ……」

 

 

 いよいよ恫喝し始めた兄貴とやらに狙いを定め、俺は手の平を向け、静かに呟く。

 

 

「《ストリップ》」

 

 

 呪文と共に振るう手に、何かを掴む確かな感触を得れば、それを一気に引き寄せる!

 

 

「さぁ、大人しく言うことを聞きやがれ!!」(U)

 

 

 結果。俺の手に握られていたのはマントと頭巾、グローブ、そして……ホッカホカのビキニパンツ。

 

 

(なるほど。頭巾にマントにビキニパンツは、見事な不審者3点セットだ)

 

 

 なんでこんなあからさまな装備を、と考えたところで、思い至る。

 

 

(そりゃ、一番いい性能引き出せるのを装備するよな……)

 

 

 ちょっとだけ、装備適性世界の闇を見た気がした。

 

 

 

「おうおう、兄貴のビキニパンツ適性はBなんだぞ! 兄貴のビキニパンツ……」

 

「そうだそう、だ……」

 

「おう、どうした。もっと言ってやれお前たち」(U)

 

「…………」

 

 

 すべての装備を剥ぎ取られた兄貴とやらは今、まごうことなき全裸だった。

 

 

「あ、あ、兄貴のビキニパンツが象さんにぃ~~~~~!?!?!?」

 

「そうだそうだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「はぁ? お前ら何言って……おああああああなんじゃあこりゃあああ!?!?」(U)

 

 

 驚きの声と同時にぶるんぶるんと揺れる兄貴の象さん。

 今彼はパンツという名の密林から脱出し、自由にサバンナを駆け抜けているのだ。

 

 ミリエラがキャッて言ってこっちをチラチラ見てくるのはスルーあるのみ。

 今はそれより、俺のストレス発散の方が先だった。

 

 

 

 闘争衝動は、なにも拳による対話だけが解消手段ではない。

 というか、装備を剥ぎ取ったとはいえ大の大人に素手で挑んで勝てる気はしない。

 いや、勝てるかもしれないが試したことがないのでここでは頼らないと言った方が正しいか。

 

 

(他にやりようは、たくさんあるんだからな!)

 

 

 まだまだ未熟な8才児でも、成人済みの大人を気持ちよくぶちのめす、必殺技がある。

 

 それは――――言葉だ。

 

 

「……ほいっと」

 

 レアでもないおっさんの脱ぎたてホカホカ装備など《イクイップ》したかない。

 俺は手にした装備一式を地面に投げ捨ててから、大きく息を吸い。

 

 

「……ご町内のみなさぁぁぁぁぁぁぁん!! ここに全裸の変態がいまぁぁぁぁぁぁぁす!!」

 

 

 大音量で、通りを行く皆々様に向かい、声を張った。

 

 

「ええ、全裸の変態!?」

 

「な、なんだってぇ!?」

 

「どこ! 全裸の変態どこ!!」

 

「シャッターチャンスだ!!」

 

 

 ざわめき、この装備至上主義の世界で非常にレアリティの高い変態がいるという抗いがたい魅惑に誘われ、一気に野次馬が集まってくる。

 っていうか妙に全裸の変態に対して関心高くないか町の人。普通に怖いっ!

 

 

「兄貴! あそこに兄貴の服が!!」

 

「そうだそうだ!」

 

「まじか! っていうかあのガキが何かやりやがったんだな!?」(U)

 

 

 ぶるんぶるんぱおーん。

 

 

「セン君、あっちは任せてね」

 

「よろしく」

 

 

 混乱に乗じ囁き声だけ残して動き出すミリエラを見送る。

 何を任せたか実はよく分かってないのだが、ミリエラは有能なので気にしない。

 

 

「さぁて、どうしてやろうかな?」

 

 

 俺は男たち3人と向かい合い、にんまりと笑ってみせる。

 

 そして。

 

 

「兄貴さん一人だけが裸なんて、不公平だよな?」

 

「は?」(U)

 

「へ?」

 

「そうだそうだ? ……あ、ちょっと待っ」

 

 

 同意も得られたし、俺はやる。

 

 

「おおおおおお! 《ストリップ》! 《ストリィィィィップ》!!」

 

「「ぎゃーーーーーー!!」」

 

 

 全裸三兄弟、一丁上がり!

 

 だがしかし、俺のターンはまだ続く!!

 

 

「みなさぁぁぁぁぁぁん! あそこでぇぇぇぇぇぇす!! 全裸三兄弟がいまぁぁす!!」

 

 

 奪った装備を捨てながらもう一回声を上げ、ダメ押しに野次馬連中を呼び込んでやる。

 こうなったらもうお祭りだ。1分もしないで彼らの全裸と象さんは衆目の的である。

 

 

「やばい、やばいよ兄貴ぃ!」(U)

 

「そうだそうだ!」(U)

 

「ちぃっ! どうしてこうなった!? ず、ずらかるぞ!!」(U)

 

 

 顔面蒼白になった男たちは慌てて自分の装備を回収すると、三人仲良く路地の奥へと一目散に逃げていく。

 

 

「おお、あれが全裸の変態! いい体してるなぁ」

 

「ああん! お尻しか見えなかったわ!!」

 

「ひゃー、やっぱり春って季節は人を狂わせるねぇ」

 

「いいお尻をありがとう! 全裸三兄弟ーーーー!!」

 

 

 そんなゴロツキたちの遠ざかるプリケツを見送る、やっぱりどこか全裸の変態に対する関心が高い町の人々のあいだを縫って、俺も退散する。

 

 人の群れを抜けて通りに脱したところで、俺は一仕事終えた心地で大きく伸びをした。

 胸のモヤモヤは晴れ、健やかな心地だった。

 

 

(あぁー、大声出してスッキリした。《ストリップ》の精度も上々だったな)

 

 

 プリケツ全裸兄貴たちには申し訳ないが、俺の八つ当たり相手にされたのは不運な事故だったと思ってもらいたい。コラテラルコラテラル。

 おかげで俺の頭はだいぶんスッキリし、さわやかな気分になった。

 

 

(とりあえず、ゴルドバ爺にまた会う機会があれば、パンチの一発でもくれてやる)

 

 

 おそらくだが、適性に関しちゃバランスギリギリのところにしてくれたんだろう。

 真実がどうあれ、今の俺はそう結論付け、それを信じることに決めた。

 

 

(そうだ。悩んでいても始まらない。コンプの道も一歩から、行動あるのみだ)

 

 

 途方もなく高い山だってのは元より承知のコンプ道。

 俺はまだ、この長い坂道を上り始めたばかりなんだ。止まるんじゃねぇぞ、俺!

 

 

「装備適性Cがなんだ。速攻でB以上にしてやらぁ!!」

 

 

 ミリエラの魅了対策と同じくらい問題解決の糸口がないが、それでも俺は意気高く覚悟完了する。

 

 

 

「セン君、こっちこっち」

 

 

 俺を別の路地へと手招きするミリエラと、その隣に立つ小さな……同い年くらいの女の子。

 

 ミリエラに手を振り返しながら、俺も二人が待つ路地裏へと足を進める。

 

 

「セン君セン君。この子がさっき絡まれてた子だよ。どさくさに紛れて助けてあげたの」

 

「あの、その、ありがとうございますっ」

 

「……ほぉー?」

 

 

 礼儀正しく頭を下げる女の子を目にしながら、俺は違和感を覚えた。

 

 

(これは、まさか……?)

 

 

 

 今の俺が抱えている、ミリエラの魅了対策と装備適性の向上という、2つのミッション。

 それらの問題解決へと至る筋道は、意外にも、すぐ近くに転がっていた。




男だって、全裸にするさ!


ここまで読んでくださりありがとうございます!
楽しく読んでもらえたら最高です。

お気に入り、感想、高評価、レビュー等、応援してもらえるととっても嬉しいです。
感想いただけて元気が出ました。

あと、この手のお話が好きな人のところに届くように拡散とか紹介とかしてもらえるとさらにめちゃくちゃ嬉しいです。
嬉しいばっかり言ってますけど実際嬉しいので仕方がない。

お話は転がっていきます。続きもよろしくお願いします!
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