異世界ストリップ~俺はレアアイテムをコンプリートして世界を手にする!~   作:夏目八尋

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12話のお届けです!
冒険とは、危険を冒して何かを求める行為だといいます。

なのでセンチョウ君の行動は、間違いなく冒険だと思います。
そんな事を思いつつ、今回もよろしくお願いします。


第012話 時には手段を選ばないのがコレクター!

 

 

 俺とミリエラ、そしてカレーンお嬢様が到着したとき、都市長の家の前はちょっとした騒ぎになっていた。

 

 

「お嬢様ー! カレーンお嬢様ーーーー!!」

 

「どちらにいらっしゃるのですかー! お嬢様ー!」

 

 

 門前では複数の使用人らしき人たちが、必死にお嬢様を探し声を張り上げていて。

 

 

「お嬢様……げふっえふっ、お嬢様ーーーーーー!!」

 

 

 中には涙を流しながら、声が枯れるほどに叫んでいるメイドさんなんかもいた。

 背も高く、黒髪の綺麗な見た目の人が、その身を崩すのも構わずに声を張っている姿は、なかなか心に来るものがある。

 

 

「あぅ……」

 

 

 それを目にしたお嬢様はようやく自分のしでかしたことの大きさを理解したらしく、しょんぼりと俯き、震える両手でスカートを掴んだ。

 その姿をちょっと可愛いなんて思うのは、さすがに邪な感性かもしれない。

 

 でも可愛い。

 

 

「家に帰るまでが冒険、だぞ。カレーン」

 

 

 縮こまられても困るから、軽く背中を押してやる。

 

 

「ちゃんと顔を見せて、安心させてあげないとね」

 

「セン様、ミリエラさん……はい」

 

 

 続くミリエラの言葉にも勇気づけられて、カレーンがむんっと気合を入れた。

 

 

「みんなー! ただいま戻りましたわ~~!!」

 

「あっ! お嬢様! お嬢様~~~~!!」

 

 

 カレーンの声にいち早く反応を返したのは、さっきの喉かれメイドさんだ。

 大急ぎでお嬢様の元へと駆け寄って、ふわふわで小さなその体をぎゅうっと抱きしめる。

 

 他の使用人たちも一斉に駆け寄って、いかにもめでたしめでたしな構図が完成した。

 

 

「よくぞご無事で、お嬢様!」

 

「あぅ、ノルド……力が入りすぎています」

 

「力だって入りますとも! いったいどちらへお出かけなさっていたのですか! 一人で出歩くのは危険だと、あれほど申し上げておりましたのに!」

 

「っ……ああ、ああ、ノルド。ごめんなさい。カレーンは世間を知らなすぎました」

 

 

 ノルドと呼ばれたメイドさん含め、使用人たちが心の底から安堵している姿を見るに、カレーンは相当に愛されているようだ。

 そんなお嬢様が行なった小さな大冒険という名の脱走には、そりゃもう肝を冷やしたに違いない。

 

 はじめてのおつかい(保護者不認知非同伴)は、さすがにやばいと俺も思う。

 

 

「カレーン! 帰ってきたのか!!」

 

「ああ、カレーン! 本当に心配したのですよ」

 

 

 おっと、ここにきて本命のご登場だ。

 門を越えて出てきたのは、豪勢な刺繍の施されたいかにもな服をまとった太っちょの中年と、シルクっぽいローブを上品に着こなした、背筋のすらっとした女性。

 

 まぁその正体は語るまでもなく。

 

 

「お父様、お母様!」

 

 

 カレーンのパパとママ。つまりはパルパラの都市長と都市長夫人である。

 二人はメイドたちに代わってカレーンを抱きしめると、泣きこそしてないが潤んだ瞳で愛しの娘を見つめていた。

 

 

「まったく、いかにこの街は私が管轄していて平和だとは言え、一人歩きはならんと言っておっただろうに」

 

「せめてノルドを連れて行きなさい。いえ、まぁ、彼女に言えば止めたでしょうけど……」

 

「申し訳ございません、お父様、お母様……」

 

 

 叱られ再びしょんぼりしながらも、心から反省した様子で謝るカレーンに、二人の顔にも安堵が浮かぶ。

 

 

「……いい景色だね。セン君」

 

 

 優しい家族の繋がりを見てか、俺の隣でミリエラが微笑む。

 

 

「ああ、いい景色だな」

 

 

 そんな彼女の言葉に頷きながら、俺は都市長の指に填めてある複数の輪っかを見つめていた。

 

 

(あれ、ぜってぇ高いだけじゃなくてちゃんと効果ありそうな指輪だよなぁ。欲っしぃー)

 

 

 カレーンに紹介され孤児院仕込みの目上向け挨拶を披露しながら、俺はこのチャンスをどう活用するか必死に頭を回転させていた。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 それから俺とミリエラは都市長の家に招かれ、今夜は泊っていくように言われた。

 娘を助けてくれたお礼と言っていたが、その実、より詳細な話を聞いておきたいって気持ちが見え隠れしていた。

 

 もちろん俺に断る理由はない! しっかりと都市長の家を探索させてもらうぜ!

 

 

「……なるほど、カレーンに絡んだ悪漢たちが脱ぎだしたところをセン君が大声をあげて牽制し、その隙にミリエラちゃんが動いてカレーンを救い出してくれたのだな。幼いながらも賢い立ち回りだ」

 

「二人ともありがとうね。おかげでうちの大事な娘が傷物にならなくてすんだわ」

 

「居合わせたのはたまたまでしたが、助けられて本当に良かったと思います」

 

「セン君が気づかなかったら、わたしは見逃していたかもしれません。だからセン君のおかげです」

 

「いえ、ミリエラさんが私を逃がしてくれたじゃないですか。感謝してます!」

 

「はっはっは! さすがはマザー・マドレーヌ。いい子を育てているということだな」

 

 

 まずは食事をご一緒に、ということで、事情説明がてら晩飯をごちそうになる。

 ってかやっぱ貴族の家の食事うめぇな。料理道具のレアリティも料理人の適性も高いんだろうな。

 

 路地裏の出来事については、俺の《ストリップ》に関しては伏せ、嘘を使わず『お嬢様を助けた勇気ある子供たちの話』を語って聞かせた。

 カレーン自身が特にこれをトラウマには思っておらず、むしろ大冒険だったと興奮しているのもあって、都市長夫婦は特に疑いもなく、どちらかというと興味深げに耳を傾けてくれていた。

 

 ちなみに俺たちを待っているだろうダンデたちには都市長が使いを出してくれている。

 一晩泊って翌日送るという内容だが、今頃はまたやらかしたなあいつらとか思われているかもしれない。

 これについては今後ともやらかす予定なので、この機会にますます慣れておいて欲しい。

 

 

 

「しかし、カレーンがまさか全裸三兄弟の現場に居合わせていたとはな。あれのおかげで私の職場が大騒ぎになったんだぞ」

 

「路上で全裸だなんて、本当に恐ろしいわ……」

 

「ええ、セン様たちが助けてくださらなかったら……ぽぽぽっ」

 

「ははは……」

 

 

 全裸に剥いたの俺なんだが、なんか思っていた以上に周囲へ影響を及ぼしているみたいだ。

 

 あれか、全裸ってなんか特別な罪状でもあるんだろうか。でも町の人の騒ぎ方はかなり面白がってたよな?

 モノワルドにおける全裸の立ち位置が、まだよく分からない。

 

 

「やれやれ。つい最近も機密文書が保管されていた書庫が荒らされたりと、心が休まらんときだというのに、全裸三兄弟……度し難い連中が出てきおって」

 

 

 マジでどういう立ち位置なの全裸三兄弟!? なんかごめんね!!

 

 

「あなた、お仕事の愚痴はこの席にはふさわしくありませんわよ?」

 

「おっとっと、すまんな」

 

 

 ううむ。都市長をたしなめる夫人の落ち着きっぷりよ。

 都市長とそう年も変わらないだろうに若々しいし艶っぽさもある見た目もあって、人妻熟女の魅力がたっぷりと醸し出されている。

 隣に座ってるミリエラがめちゃくちゃ観察してるし、あれが本物の淑女というものか。

 

 この人を見る限り、カレーンも将来有望だな。

 

 

「……さ! 今日は遠慮なく飲み食いし、我が家の浴室やベッドを堪能するといい」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

 手を叩き、やや強引に話題を変えた都市長に合わせて、俺も脳内から全裸三兄弟を含む諸々の雑念を放り投げる。

 

 

(そんなことより俺には今、もっとやるべき重要なことがある)

 

 

 こうして談笑している今だからこそ、探りを入れる好機!

 俺は口の中でとろっとろに溶けるビーフシチューの牛肉を味わってから、都市長に問いかけた。

 

 

「都市長様、その手に填めている指輪って、何か特別な装備だったりするんですか?」

 

「おお? セン君は私の装備に興味があるのかい?」

 

 

 お、悪くない反応。ここは……。

 

 

「はい! すっごく興味あります!! 俺、アイテム大好きです!」

 

「おおーほっほっほぅ。元気のいい返事、大変結構だ。よかろう、少し説明しよう」

 

「はい! ありがとうございます!!」

 

「おーおー。カレーンは大人しいから、元気な子供の反応は新鮮だなぁ」

 

「うふふ、そうですね。あなた」

 

 

 よっし、成功!

 やっぱり好奇心旺盛で純粋な子供の視線ってのは便利だな!

 

 

「セン君セン君。悪い顔してる」

 

「おっと。へへっ……じゅるり」

 

 

 ミリエラのナイスフォローで表情を繕って、俺は都市長の装備のご高説を賜る。

 

 

「これでも人と話すのが仕事だからね。性能はそれに特化したものを装備しているんだ。この赤い石の指輪が滑舌上昇、緑の石の指輪が交渉力上昇、そしてこの、青の石の指輪がSRの品でね、真意看破の力が向上するんだ」

 

「おおー!」

 

 

 出た出た、SR以上のレアアイテム! 欲しい、欲しいぞ!!

 

 

「で、この紫の石の指輪が、ハニートラップなどに対抗するための魅了耐性向上の指輪だ。政治に携わる者にはほぼほぼ必須の装備なんだよ」

 

「………」

 

 

 ………………。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

「うーん、むにゃむにゃ」

 

「うぇへへへ、センく~ん」

 

「………」

 

 

 深夜。

 俺はひとつのベッドで左にカレーン右にミリエラの、両手に花の状態から抜け出した。

 

 三人一緒にお風呂入ったり今も二人からふわふわ超いい香りがしたりもしているが、俺の心はそれどころではない。

 

 

「………」

 

 

 靴下を《イクイップ》して足音を可能な限り消し、用意されてるスリッパは履かずにこそこそと部屋を出る。

 

 目指す場所はもちろん、都市長たちの寝室だ。

 

 

(魅了耐性向上の指輪! これだけは、これだけは絶対に手に入れる!)

 

 

 泥棒? 盗っ人? だから何。

 

 

(俺のアイテムコンプ人生において、これは必要なんだ。ここを逃して明日は、ない!)

 

 

 それにゲームじゃ夜中に家に侵入してアイテムを漁るなんて日常茶飯事だ。

 言うなればこれは勇者行為。世界を救うために必要な行動なのである。

 

 

(そう。俺という世界を守るために、な!)

 

 

 そうして俺は夜盗行為……もとい、勇者行為をするべく、暗い廊下を静かに前進するのだった。




彼は勇者ではありません(断言)。


ここまで読んでくださりありがとうございます!
楽しく読んでもらえたら最高です。

お気に入り、感想、高評価、レビュー等、応援してもらえるととっても嬉しいです。
しおりが最新話にピッと挟んであると、読んでもらえてる! って喜んでたりします。

あと、この手のお話が好きな人のところに届くように拡散とか紹介とかしてもらえるとさらにめちゃくちゃ嬉しいです。
しょうがねぇなぁ、感謝しろよって感じで広げてもらえると、ありがてぇありがてぇと言いながらべちゃっとなります。

次回、勇者行為は成功するのか。続きます。
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