異世界ストリップ~俺はレアアイテムをコンプリートして世界を手にする!~   作:夏目八尋

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書き溜めた分がもうなくなってきてるぜ。
書き溜め分がなくなったあとも最低週1投稿はしたいと思っていますので、変わらず応援のほど、よろしくお願いします。


ということで、13話をお届けです!


第013話 悪党は一人とは限らない?

 

 

 抜き足、差し足、忍び足。

 深夜の都市長邸を、俺は気配を殺しながら進む。

 

 

「ふぁ~あ……」

 

「!? ……っぶね」

 

 

 見回りのメイドさんから身を隠したりしながら、少しずつ、少しずつ。

 目的地である都市長たちの寝室へと向かっていく。

 

 

(さぁ、待っててくれ。俺の魅了耐性向上の指輪ちゃん!)

 

 

 都市長が装備するほどのものならば、間違いなくミリエラからの魅了には耐えられる。

 

 俺は野望のため、未来の安全のため、悪の道を邁進していた。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

「……ここが、都市長たちの寝室か」

 

 

 俺はそろっと、音を立てないように気をつけながら扉を押す。

 

 

「んごごごご……ぴゅるるるる……」

 

「すやすや」

 

 

 豪奢な作りの部屋の奥、キングサイズのベッドの上で、都市長夫婦が眠っていた。

 

 

(よしよし、安眠してる。より良い装備でより質の高い睡眠体験を、ってやつだな)

 

 

 貴族様なんだからいい物着てぐっすり寝ているに違いないという俺の読みは当たっていた。

 おかげでもうちょっと派手に動いても大丈夫そうだと、俺は部屋の物色を始めた。

 

 

(とはいえ、目当ての品以外は興味なしっと……)

 

 

 目的の物である魅了耐性向上の指輪を探す。

 部屋にある机の引き出しの中、クローゼットの中とあれやこれやと探し回り。

 

 

「……やっぱあそこか」

 

 

 最後に視線を送ったのは、夫婦が寝ているベッドについた、枕元の小さな収納スペース。

 目覚まし時計や魔法のランタンがある場所の、隣に置かれた豪奢な飾り箱。

 

 箱のサイズや手に届きやすい場所にあることからも、ほぼ間違いない。

 

 

(あの中に、俺の目指すお宝がある)

 

 

 俺はゆっくりと、最大限に足音を殺してベッドに近づいていく。

 

 逸る気持ちを抑えて一歩ずつ、ゆっくり、ゆっくり……。

 

 

「ん、んん……」

 

「!?」

 

 

 夫人が寝苦しそうな声を上げたところでビタッと動きを止めて様子を見る。

 布団を払った夫人は薄いネグリジェ一枚だけを纏った姿で、柔らかそうな肉付きの二の腕や太ももを惜しげもなく星の光の下に晒している。

 

 つい数時間前まで楽しく談笑し、言葉の端々から知性を感じさせていた女性の、あまりにも無防備な肢体がそこにはあって。

 

 

(……エッッッッッッ)

 

 

 俺は、思わず傍へと近づいて、まじまじと見てしまう。

 

 

(体が勝手に……って奴だな)

 

 

 これはあれだ、ギャルゲー共通ルートで手に入るちょっとセクシーなCGだ。

 

 

「うっわぁ、これが熟した女性の体か……すげぇな」

 

 

 だが俺の目の前にあるのは本物の女体だ。2Dでも3Dでもない実体である。

 モチモチしてそうな腕の肉はもちろん、あられもなく晒されている太もものムチムチ感ときたらもう、8才の体であっても否応なくドキドキしてしまう。

 それに濃い生地で作られたネグリジェの向こうには、今も呼吸に合わせて上下する、豊満なバストが隠されているのだから、これはもう魅力という名の暴力だ。

 

 こんな女性の旦那に選ばれた都市長さんは、間違いなく幸せ者である。

 

 

(……しかし、当然といえば当然だが、ミリエラやカレーンとは違うなぁ)

 

 

 さっきまで、部屋のベッドで二人に抱き着かれていた感触を思い出し、改めて女体の神秘を実感する。

 

 ぷにぷにの柔らかさと、むっちりとした柔らかさ。

 正直どっちも魅力的であると言わざるを得ない。

 世の大多数の男がこれらを秘宝だと断言するのも納得である。

 

 レアアイテム蒐集を人生の大目標に掲げた今世の俺ではあるが、やっぱり、ギャルゲーみたいな恋を楽しんだりするのもいいんじゃないか、なんて思い直したくなってくる。

 

 

 

「……って、そうだ。アイテム……!」

 

 

 ハッとして、正気に戻った。

 恋愛も何も今その流れに従えば、俺の人生ハッピーバッドエンド確定なんだっての!

 

 

(あくまでメインはレアアイテム蒐集! ヒロインの恋愛スチル回収は、その次だ!!)

 

 

 夫人の傍まで来ていたおかげで、小箱まではもう目と鼻の先だった。 

 

 

(あと少し……!)

 

 

 ベッドの縁に膝を乗せ、身を乗り出して箱に手を伸ばす。

 あとほんのちょっとで手が箱に届く、その瞬間だった。

 

 

「んうー……」

 

「は? うおっ……!?」

 

 

 ぬるっと伸びてきた腕に絡めとられて、俺の体が一瞬で引き寄せられる。

 直後、背中に感じるモチっとした柔らかさと、人肌特有の温かさ。

 

 

 

「んー、あなたぁ……」

 

「!?!?!?」

 

 

 俺は、都市長夫人の抱き枕にされていた。

 

 

「温かいわぁ……それに、抱きしめやすいサイズ感……むにゃ」

 

(ひ、人違いでーーーーす!!)

 

 

 下手にジタバタすることもできない!

 起こしてしまえばこのたった一度のチャンスが無駄になる!

 

 

「んふぅ」

 

(うおおおおおお!!)

 

 

 決して、この柔らかさと心地よさをもっと堪能したいわけではない!

 

 

(やばいやばいやばい。どうする? これ見つかったら将来的なミリエラどころじゃなく即バッドエンドじゃねぇか!)

 

 

 ここまで深く入り込んだ状態では言い訳のしようがない。

 夫人も、都市長も、どっちも起こさないでこの状況を突破しなければ、俺に未来はない!

 

 

「う、おおお……」

 

「ダメよあなた、逃げたらダメ」

 

 

 ぎゅううう。

 

 

「ふん、ぬぅぅぅ……」

 

「うふふ。いつもは自分からいっぱい抱き着いてくるのに、今日は私を誘っているの?」

 

 

 ぎゅっぎゅっ。

 

 

「押してダメなら、引いて……」

 

「そう、そうよ。身を委ねて。あなたはいつもいっぱい頑張ってるんだもの。私で癒されて、ね?」

 

 

 むぎゅーー。

 

 

「………」

 

 

 やだー!

 あのぽっちゃり中年の裏の顔なんぞ知りとうないーーー!!

 

 二人っきりの時は嫁さんに甘えまくってるとかそんな情報は知りとうなかったーーー!!

 

 

 

 色々と限界が来た俺は、最終手段を試みた。

 

 

(うおおおおおおお!!)

 

「あんっ!」

 

 

 体を捻り、その勢いを利用して拘束を抜ける!

 押しても引いてもダメなら、多少のリスクを覚悟しての強硬策だ!

 

 

「ん、ンン? ん? あら?」

 

 

 刺激の強さに、夫人が目を覚ます。

 俺は彼女の視線から、床にべったり寝そべることで辛くも逃げおおせた。

 

 

「んん、あなた……ん」

 

 

 布団を自分で剥いでいたことに気づいた夫人は、それを被ると同時に愛しの旦那様にしがみつく。

 

 そうしてしばらく、寝息が2つになったのを確かめてからようやく俺は立ち上がった。

 

 

 

「……ふぅ。正直、かなりヤバかったな」

 

 

 日常的にミリエラから受けていたラブコールも相当だが、このほんのわずかな時間の攻防は、俺の心の深い所まで刻みつけられただろう。

 

 具体的には背中に押しつけられた柔らかい奴の感触とか。

 

 

(まぁ、それはそれとして。とっとと目的を果たして撤退だ)

 

 

 俺はさっきのやり取りを思い出フォルダにしっかりとセーブしてから、改めて箱に手を伸ばす。

 夫人が都市長に引っついてくれたおかげで、今度は楽に取ることができた。

 

 

「……へっへっへ。ビンゴぉ」

 

 

 箱の中身は予想通り、都市長が指に嵌めていた指輪が綺麗に並べられていた。

 その中から迷うことなく、紫色の石が填められた指輪を取ろうとして、ピタリと手を止める。

 

 

(……これ、全部持ってってもいいんじゃね?)

 

 

 だって、ひとつだろうがそれ以上だろうが、勇者行為は勇者行為だ。

 どうせなくなった事実には気づかれるんだから、全部取った方がお得に違いない。

 

 

(それに魅了対策の指輪だけを奪う、なんて。動機を疑われると足がつきかねないしな)

 

 

 ここは少しでも情報のかく乱が必要だと判断し、俺はすべての指輪を根こそぎゲットする。

 最低でもR以上は確定しているこれらの品々は、今後間違いなく俺の力になるだろう。

 

 

「……ククッ」

 

 

 俺は青の石の指輪と紫の石の指輪を指に嵌め、一人ニヤニヤする。 

 これは決して目的の品に加えてSR装備ゲットだぜ! と喜んでいるわけではない。

 

 俺の偉大なるアイテムコンプの道が遂に始まったことを、そのためにここまでのリスクを負って手に入れたその努力をこそSR装備ゲットだぜやっほぅー!

 

 

(さぁ、手に入れたからにはとんずらだ!)

 

 

 空の箱をベッドの下に転がし、俺は来た時以上に慎重な足取りで都市長夫妻の部屋を出る。

 再び道行く見回りメイドさんの目を盗み、廊下をコソコソ移動してカレーンたちのいる寝室へと……。

 

 

「なっ……!?」

 

「っと!?」

 

 

 やべっ!

 角を曲がったところで誰かとぶつかった!!

 

 

「……あなたは」

 

「うっ」

 

 

 ぶつかった相手は、あろうことかカレーンを探して喉をからすまで声を張っていたメイドさん。

 名前は確か、ノルド。

 

 

 

「こんな夜更けに、どうしてあなたが?」

 

「あ、いえ……その、トイレに……」

 

「へぇ、トイレ」

 

 

 こちらを見下ろす視線が、少々キツい。

 子供に対して、それもカレーンの恩人に対して向けるような目線じゃなくて、ブルリと背筋が震える。

 

 明らかに、疑われている。

 

 

「トイレの場所は夕刻にお教えしましたよね? こちらとはほぼ真逆ですが」

 

「それは、その、暗くて……」

 

 

 自分でも苦しい言い訳だと思うが、どうにか通れ! 通ってくれ!!

 

 

 

「……なるほど。そうでございましたか。でしたら私がご案内します。こちらですよ」

 

 

 不審には思われたが、かといって子供が何かをするとも思えない。

 そんな感じの反応を見せ、ノルドさんが俺に背を向けた。

 

 

「あ、ありがとう、ございます……」

 

 

 俺はそんな彼女に怖々とお礼の言葉を告げながら。

 

 

(おおおおっし! 助かったぁぁぁ!!)

 

 

 内心でガッツポーズをしていた。

 

 

「あまり、夜の屋敷をうろついてはいけませんよ。子供であってもここは政治に携わる者の家の中なのですから、疑いをかけられるのが常なのです」

 

「は、はい。気を付けます」

 

 

 注意を受けて、これでおしまい。

 あとはトイレに連れて行ってもらって、寝室に戻ってミッションコンプリートだ。

 

 

(ほっ。マジでやばかった。生きた心地がしなかった。まさか見回りメイドが複数人いたなんて……)

 

 

 最初に躱したメイドさんが囮で、こっちが本命の見回りだったりするんだろうか。それを考えるくらいにはノルドさんに気配がなかった。

 それともたまたま彼女には用事があって、鉢合わせになったとか。

 

 ほら、よく見てみれば彼女の手には結構な量の書類が抱えられているし。

 

 

「………」

 

 

 とある人物の、小さな愚痴を思い出した。

 

 

「……《イクイップ》」

 

 

 まぁ、思いついても正直こういうのはスルーするのが大正解なんじゃないかと、俺は思う。

 

 

「ノルドさん」

 

「なんですか?」

 

 

 これはあくまで自己保身。安全を確信するための、確認作業だ。

 

 

「その。その書類って、都市長さんたちが寝ているあいだに持ち出してもいい物なんですか?」

 

「……ええ、これは。ご主人様の指示で持ち出している物ですから」

 

「あ、そうなんですね」

 

「ええ」

 

 

 中庭を望む一枚ガラスの大窓から、月の光が差し込んでいる。

 

 

「……ノルドさん」

 

「なんですか?」

 

「……どうしてトイレじゃなく、屋敷のもっと人気のない場所に、俺を案内してるんだ?」

 

 

 装備した青い石の指輪が、俺に気づかせてくれた。

 

 

「……おっと、失礼」

 

 

 先導する彼女が、その先で俺に何をしようとしているのかを。

 

 

「……ッ!?」

 

 

 そして残念なことに俺はもう、ターゲットとしてロックオンされているってことを。

 

 

「子供の首を折る程度ならば一瞬のこと、場所を選ぶ必要はないのだった」

 

 

 口調を変えたノルドさんが、いや、ノルドを名乗る何者かが笑顔で振り返る。

 彼女の瞳は、俺に対する殺意で真っ黒に染まりきっていた。

 

 

「聡い子供は嫌いではないのだが、虎の尾を踏んでしまったな」

 

 

 メイド衣装の殺意が、俺に向かって飛んでくる。

 

 

「作戦も仕上げの段階でな。ここで私と出会ってしまった不幸を、あの世で呪うがいい!」

 

「……!」

 

 

 ノルドの両腕が構えを取り、宣言通りに俺の首に狙いをつけた……その瞬間だった。

 

 

 

「何っ!?」

 

「へっ!?」

 

 

 突如として俺とノルドのあいだに光が生まれる。

 予兆のない突然の出来事に、突進中のノルドはブレーキをかけ、俺は光の中に何かの影を見る。

 

 

「……財宝、図鑑?」

 

 

 それは『神の布』に包まれた、俺の『財宝図鑑』だった。

 ベッドの上に置いておいたはずの物が、どういうわけだか俺の目の前に現れていた。

 

 

「なんで……うお!?!?」

 

 

 疑問に思う暇もなく、財宝図鑑からさらなる光が放たれて、俺の目を潰す。

 耐えきれないで目を閉じた俺は、なんだか温かいものに全身を包まれた感覚を得て――。

 

 

 

「……チョウ様。千兆様」

 

「…………え?」

 

 

 次に目を開けたとき、俺は見知らぬ場所で、見知らぬ女性に声をかけられていた。

 

 

 




幼少期編も佳境!


ここまで読んでくださりありがとうございます!
楽しく読んでもらえたら最高です。

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彼を呼ぶ声はいったい何者なのか。待て次回!
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