異世界ストリップ~俺はレアアイテムをコンプリートして世界を手にする!~ 作:夏目八尋
ってことで、第14話をお届けします!
楽しんでもらえると嬉しいです。
それではよろしくお願いします!
前回までの! センチョウ様は!!
高難易度スネークミッションを達成したと思いきや、事故から始まる命の危機!
あわやこれまでというところで突如として現れる『財宝図鑑』!
光に包まれ気が付くと、見知らぬ場所で、見知らぬ美女に声をかけられているのであった!
一体ここはどこなのか!
目の前に立つ灰青の短髪に蒼い瞳を持つ、赤のボディコン制服がよく似合う美女は誰なのか!
九頭龍千兆様の運命やいかに!!
「……と、いう流れでございます。千兆様」
「わかりやすい説明ありがとう。天使さん」
ざっくりと、あらすじ調にここに来た経緯を教えてくれた目立つ格好の天使さんへ礼を言う。
天使の翼は持ってないが、俺を前世の名前で呼ぶあたりからして、ゴルドバ爺の関係者なのは明らかだった。
っていうか説明の時と素に戻った時の落差が激しい。スンッてなった。
「で、見知らぬ場所で出会った見知らぬ美女さんは、俺に説明してくれるってわけだよな?」
「ええ、もちろんです。千兆様。その成長途中の美味しそうな……ごほん、未来ある御身でもしっかりと理解できますよう、ご説明させていただきます」
「おい、今美味しそうって……」
「ご説明しましょう」
「………」
スッと向けられたアルカイックスマイルに、背筋が震える。
はい! これはあれだな! 触らぬ神に何とやら案件!
ノータッチ! ノークエスチョン! ノーリマインド!
説明を聞こう!
「千兆様がいらっしゃっているここは、財宝図鑑の中にある、現世とは時を等しくしない特殊な空間にございます。名を『宝物庫』。見た目には博物館のようでございますが、それは財宝図鑑がコンプリートを目的としているからでございますね」
見回してみれば、なるほど、確かに色々な物を展示できるようなスペースが用意されている。
「そして宝物庫の役割はもちろん、千兆様が獲得なさったアイテムを管理、保管することでございます」
「なるほどな」
この場所については把握できた。
だから次は、当然の疑問を天使さんにぶつけることにする。
「じゃあどうして今、俺はここに来ているんだ? ピンチだからって助けてくれたのか?」
「いいえ。首コキャメイド様との遭遇と現状には、そこまで関連性はございません」
首コキャメイド。すごい物騒だけど何も間違ってない呼称だ。
軍人っぽい口調で話してたのも相まって、あの人からはエージェント味を感じる。
「じゃあ、なんで?」
「はい。こちらにお招きいたしましたのは、さきほど千兆様が最初のレアリティSR以上の道具を入手し、装備なさったからでございますね」
淡々と説明しながら、天使さんはおもむろに右手をアテンションプリーズと持ち上げる。
そこにふわりと光を纏って、青い石が填め込まれた指輪が姿を現した。
俺がついさっき都市長の寝室から窃盗……勇者行為して手に入れたアイテムだった。
「SRアイテム『真偽の指輪』。適性C以上の装備者に、他者の真意をぼんやりと読み解く力を与える指輪にございます。ちなみに適性A以上ございましたら、道具に込められた虚実すら見抜けるようになりますよ」
俺も知らない道具の効果を、彼女は当たり前のように諳んじる。
「そしておめでとうございます。条件達成で新機能がアンロックされました」
「え?」
「これより千兆様の所有しておられるアイテムは、いつでも宝物庫から出し入れすることができますので、存分にご利用ください。装備も自在にございます」
「マジか!?」
「マジのマジでございます」
そう言うと天使さんはゆっくりと頭を下げ、一礼した。
「改めまして、名乗りを上げさせていただきます。私の名前はアデライード。財宝神ゴルドバに仕えし天使にして、千兆様の財宝図鑑が有する宝物庫の管理者代行にございます」
そうして見せた彼女の笑顔が彫像のように綺麗で、俺はさっきと違う意味でぞくりとした。
動揺を何とか取り繕おうとして、俺は浮かんだ疑問を天使さん、アデライードに投げかける。
「代行なのか」
「宝物庫の正当な管理者は千兆様ですから。私はその業務を代わりに実行しているだけです」
「なーるほど。それもそうか、ははは」
「では、説明を続けさせていただきますね」
「ははは、はー……」
ああ、なんか取り繕う必要なかったかもしれない。
まるで感情なんて持ち合わせてないとばかりに、変わらぬテンポでアデライードは説明を再開する。
俺はそんな彼女の所作にどこかゲーマー的既視感を覚えながらも耳を傾けることにし――。
「おや、BGMがご必要でございますか? でしたら素敵なコーラスを……」
「やめやめろ! せっかく答え出さないようにしてんだから! うおおお、それっぽいのを流すな! スタァァァァァップ!!」
アーアー↓アー↑アーとかめっちゃ美声なレディソプラノボイスなんて聞こえません!
っていうかこういうお茶目っぽいところも似てて困るんじゃい!
この手の空間にいる美人ってのは誰も彼もこんな風なのか!?
クールとお茶目の振れ幅がデカすぎる! へっ、おもしれー女。
俺の情緒がぐちゃぐちゃである。
「こほん。お遊びが過ぎましたね。現状、千兆様は非常に危険な状態にございます」
「っと、そうだそうだ。俺、ランダムエンカウントのエフオーイーで超ヤバいんだった」
新機能開放と新しい出会いで浮かれている場合じゃなかった。
首コキャしようと俺を狙っているメイドエージェント問題。
バッドラックとダンスっちまった結果の、バッドエンドどころかデッドエンドフラグである。
「このまま戻っても、ぶぅぅぅん、ガシ、コキャッ、だよなぁ……」
さっきアデライードがここは現世とは時を等しくしないとか言ってたし、本もワープしてたっぽいし、いっそのことちょっと離れたところに出してもらえたりしないだろうか。警備の人がいる詰所とか。
「いえ、厳密に言えばここにいるのは千兆様の心だけで、体はまだあっちにございます」
「マジで!?」
「マジのマジでございます」
俺の体、絶賛ピンチ継続中。
「うおおおん。やっぱ対策必須かぁ……」
頭を抱えて考える。
とりもあえずもノルドさん。
あの人、仕上げがどうとか言ってたし、やっぱどっかの組織の裏工作員とかなのかねぇ?
そうなると、ただあの場から逃げるだけじゃ終わらないよなぁ。
でも。
(8才にしてガチの対人戦デビューは、さすがにまだ早い。せめて成人してからがいい)
リアルな命の奪い合いとか、いずれ必要だとしてももうちょっと心の準備をさせて欲しい。
ここはどうにか話し合いにもってって、お互いクールにサヨナラしたいもんだが。
「……むむむーん」
考えがまとまらず、思考があっちへこっちへ飛び回る。
話し合いに持っていくための手順、殺されないための作戦、切り口を探る。
そうしてるうちに思い出したのは、家出娘の帰還の場面。
(あの人、カレーンのお世話係やってたっぽいよな)
あのふわっとした女の子のお世話係が、実は他所から来たスパイでした、か。
「……はぁ」
カレーン、泣いちゃうだろうな。気の毒に。
「そこは美幼女の泣き顔スチル回収のチャンスでは?」
「さっきもだったが俺の心読まないでくれると嬉しいぜアデっさん」
「アデっさん……いいあだ名でございますね」
またにっこりとアルカイックスマイルを浮かべるアデっさんにため息を返しつつ、実際問題目の前の状況をどうするかで頭を悩ませ続ける。
「このまま戻ったら死ぬよな?」
「間違いなく首コキャ死亡エンドでございます」
「ですよねー」
子供にも容赦しないノルドおば……お姉さん。
誰の指示かは知らないが、その勤勉さが恨めしい。
「えぇ、じゃあどうするかなぁ」
結局考えがまとまらなくて対策しようもなくて。
俺はその場に腰を落として宝物庫の白い天井を見上げる。
そんな俺の後ろ斜め45度くらいの位置に、アデっさんが立った。
「お困りでございますね」
「お困りでございますんだなこれが」
「大変にございますね」
「大変にございますんだなこれが」
「実は現状を打破しうる希望となる情報を、不肖このアデライード、持ち合わせております」
「待ってました!」
正直期待してた!
立ち上がり、振り返った俺の目に、アルカイック出来てないどや顔スマイルが映る。
OK把握。ノリがいい方がこの人の素だ。
「それで、俺はどうしたらいいんだ?」
「では、お耳を拝借……こしょこしょこしょ」
ほうほう、ふんふん、なるほど。
……って。
「……マジで!? そういう奴なの!?」
「はい。ですので、その力をもって、全力で抵抗なさるのが最善の策かと思います」
「うおおお、なるほどなぁ」
受けた説明は確かにワンチャンスありそうな感じだった。
ただ、実際にやったことはないぶっつけ本番というのもあって、ちょっとだけ不安が勝つ。
ゆえに。
「ここ、外とは時間の流れが違うんだよな?」
「はい。千兆様がこの場を訪れているあいだ、外の世界と時空間が分かたれます」
「だったら――」
伝えた俺の提案に、アデライードはポンっと拳で手を叩き。
「ぜひどうぞ。で、ございます」
頷き、またあのアルカイックな、けれどちょっと悪戯っぽさのある笑顔で了承してくれた。
※ ※ ※
俺の意識は、再びあの場所へと戻った。
宝物庫の中でのやりとりは本当に一瞬のあいだの出来事だったみたいで、即座に事態は動き出す。
「クッ。目くらましだろうが私には関係、ないっ!!」
『財宝図鑑』が放った光にも負けず、一旦は足を止めたノルドは再び飛びかかり、俺を目がけて迷わずに手を伸ばしてくる。
(これに捕まったらそのまま首コキャされて、俺の人生ゲームオーバーだ!)
実際、さっきまでの俺だったら何の抵抗もできずにそうなっていたに違いない。
(だがしかし!!)
今の俺はもう、さっきまでの俺じゃない!
「……《イクイップ》」
「!?」
迫りくる脅威を前に俺は新たな装備を身に纏い、カーペットを蹴る。
音もなく飛びあがった俺の体は大きく後ろに後退し、振るわれたノルドの手から逃げきった。
「……ただのガキではないな? 常人なら、今ので確実に捕らえたはずだった」
突然動きの良くなった俺を警戒して、ノルドが睨みつけてくる。
「少年。その装備は、何だ?」
そして俺の変化に気づくと、彼女はより一層険しい顔をして俺に問いかけた。
「これか? これは俺のとっておきの切り札だ」
俺はマフラーのように首に巻きついたそれを掴んで、不敵に微笑んでみせる。
「だが、詳細については……黙秘する!!」
言い終えると同時に、今度はこっちから接近する。
およそ8才児が出せるスピードを大きく超えた踏み込みと、速度で。
そして。
「はぁっ!」
「なっ!」
音もなく跳び上がり、壁を踏みしめ再びジャンプ。わずかに空を切る音だけを残し、ノルドの頭上へと移動する。
「くらえっ!!」
そのまま空中で
「くっ!!」
放った俺の踵落としは、ノルドがとっさに身を守るために持ち上げた彼女の腕に衝突し。
ゴッ!!
「っつぅ!!」
「っしゃあ!」
そのガードごと蹴り破り、大柄なノルドの体に尻もちをつかせる。
彼女の手を離れた紙束が宙を舞い、あたり一面に飛び散った。
「ふっ……!」
再び音もなく着地して、俺は即座に自分の有利な間合いへと位置取りする。
(これが、これが俺の力……!!)
およそ前世の人間からはかけ離れた身体能力。
それを発揮できたのは、新たに装備したアイテムの効果に他ならない。
(昼間はケチつけてごめんな、ゴルドバの爺さん!! アンタやっぱよく分かってるぜ!)
そのアイテムのレアリティ……
そのアイテムの真の名は……『ゴルドバの
そしてそのアイテムが持つ
(――装備者の持つ装備適性を、すべて2段階上昇させる!)
今の俺、装備適性オールA。
パンツもシャツもパジャマも靴下も、全部が俺を爆発的に強くする!
え、そのラインナップじゃどこが強化されたか分からない?
ならこれだけ知ってりゃ十分だ。
(今の俺は、首コキャしてくる推定女スパイなメイドさんよりも――強い!)
奇襲を奇襲でやり返し、驚くノルドを見下ろして。
「さぁ、どうする?」
ちょっとだけ主役っぽく、映画みたいな決め台詞を吐いてみたりしたのであった。
真名解明!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
楽しく読んでもらえたら最高です。
お気に入り、感想、高評価、レビュー等、応援してもらえるととっても嬉しいです。
もっと楽しんでもらえるよう頑張る元気の素になります!
あと、この手のお話が好きな人のところに届くように拡散とか紹介とかしてもらえるとさらにめちゃくちゃ嬉しいです。
読んでもらえることこそが作品の本望だと思っています。
さて、センチョウはこの難局から無事生き残ることができるのか。
次回へ!