異世界ストリップ~俺はレアアイテムをコンプリートして世界を手にする!~   作:夏目八尋

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今回はちゃんと時間に投稿します! できたよね?

ということで15話をお送りします。

まず伝えたいのは 祝! UA1000越え!
気づいたときには1100越えてましたが! 圧倒的感謝!

それだけ沢山の人に読んでもらえているということで、とっても嬉しいです!
書き溜め分消化までもうあと少しですが、それまでは毎日投稿かつ区切りがいいところまでしっかり進むのでよろしくお願いします!


第015話 九頭龍千兆式交渉術!

 

 

 月下の都市長邸廊下。

 尻もちをついたメイド……もとい、どっかの女スパイのノルド。

 

 

「さぁ、どうする?」

 

 

 それを見下ろし勝ち誇る俺、装備適性オールAの男、センチョウ。

 

 

(……っぶぁぁぁぁ!! なんとかなったぁぁぁぁぁ!!!)

 

 

 の、内面。

 どうにかこうにか形勢逆転、ピンチを乗り切り大安堵である。

 

 

(宝物庫の中でめいっぱい練習してきた甲斐があったぜ。何とか動けた!)

 

 

 GRのチート装備『ゴルドバの神帯』の力を使って装備適性を上げた俺は、ぶっつけ本番になることを忌避して練習タイムをとった。

 

 モノワルドにおいて絶対たる力を持つ装備適性。

 装備者に適性に応じた補正を与えるそのシステムは、適用されたその瞬間に、装備者もまた装備の扱い方を引き上げられた領域まで何となく把握する。

 

 

(分かっちゃいるし、そこは信じていいと思わなくもない。が……)

 

 

 それでも俺は、たとえ世界がそういうものだと分かっていても、命がかかった状況のそれもぶっつけ本番で、装備適性Aという未知の領域がもたらす力に身を任せる勇気は持てなかった。

 

 そこで、俺は自分の気が済むまで宝物庫に留まり、練習しまくったのである。

 

 

(すり足したり壁を蹴ったり、床に寝転んで寝間着の寝心地を確かめたりな!)

 

 

 なお、あっちで休んでもこっちで体力回復したりはしない模様。

 宝物庫内でした装備もこっちには反映されないし、完全にイメトレ専用だな!

 

 しかぁし、そのイメトレの成果は存分に発揮されたといっていいだろう。

 

 

(備えあれば憂いなし。装備も訓練も事前にいっぱい準備した奴が強いのだ!)

 

 

 おかげで「装備? 何それ?」とばかりに素手で首コキャしてきた女スパイも、尻もちついて驚きの顔。次の手を打とうとするような気配もない。

 

 

(機先は制したっていうんだっけね、こういうの)

 

 

 想定では相手を弾き飛ばして向かい合うくらいを考えていたが、想像以上に優位を得た。

 この辺はやっぱり装備適性オールAの補正っぷりを実感する。

 

 

(神帯と本を除けば、レアリティRもなさそうなパジャマと下着と靴下だけでこれなんだからやべぇよな)

 

 

 ともあれ。

 こうして練習の甲斐もあり、俺は人生初の死線を潜り抜けたのである。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

 どうして私は、こんなところで尻もちをついているのだろうか。

 

 

「さぁ、どうする?」

 

 

 問いかけているのは齢にして8才の少年。

 私がお世話役に扮して騙し、利用していた都市長の娘と同じ年の、子供。

 

 

(そんな子供に出し抜かれたというのか、この私が?)

 

 

 不可解な出来事は確かにあった。

 こちらの狙いを見抜かれ警戒されてしまった。

 

 だが、それでも十全に装備した私が、寝間着姿の子供に後れを取るはずがなかった。

 これまでの人生で鍛えた暗殺の技術がよもや通じないなどとは、微塵も思っていなかった。

 

 

(音を立てない歩法を使った、ならば少なくともB以上の靴下適性を持っている。だが、それだけではあの動きは出来ない。パンツ適性による股関節の可動補正でもあったのだろうか。それとも、この幼さにして適性A以上だとでもいうのか? いや、そもそも。あの本と、布はなんだ?)

 

 

 これまで培った知識を総動員してその正体を探るが、その行為自体が後手に甘んじていると己を情けなく思う。

 

 大事な任務の最後の最後に、とんだ失態を演じてしまっていた。

 

 

(まったく、ツイてないにも程がある……)

 

 

 こっちは潜入任務完遂の最終日。

 ていよくカレーンを誘導して外へ飛び出させ、その騒動のうちに仕掛けを施し、夜に回収。

 パルパラの機密情報の束をごっそり奪い、あとは祖国に悠々凱旋するだけだった。

 

 そこにひょっこり現れた孤児院の少年。

 たまたまカレーンを助けた縁で一晩泊る栄誉を賜った、なんてことない、ちょっとだけ運が良かった平民。

 

 それが人生26年、密偵歴13年の経験と秘密道具適性Bを誇る私の殺意を見抜き、身体能力を凌駕して、今こうして優位な立場から私を見下ろしている。

 まるで私の抵抗にすべて対応できるとでも言いたげに、問いかけている。

 

 

「………」

 

 

 閉口するしかない。

 とんだ怪物と出会ってしまった。ぶつかってしまった。見逃せばよかった。

 

 

(虎の尾を踏んだのは、私だったか)

 

 

 容易く狩れると思っていた相手は、初めから全力を出さねば一矢も穿てない相手だった。

 

 逃げなければいけない。戦闘から逃走へ思考を切り替える。

 

 

(私は捕まるわけにはいかない。祖国のため、あの方のため)

 

 

 生存を第一に考える。

 

 

(落とした資料は諦める。今はどうにかこの怪物の目を盗み、退路を確保するしかない)

 

 

 相手が仕掛ける前に動かなければと、その動きのひとつも逃すまいと目を向けたその時。

 

 

「《ストリップ》」

 

 

「え――?」

 

 

 ただ淡々と、何の予兆もなく少年の口から放たれた聞き慣れない単語。

 何かの呪文を唱えられた、と思った時にはもうすでに。

 

 私は、決定的な敗北を刻み付けられていた。

 

 

「……!?!?」

 

 

 思考が停止する。

 

 

 だって当然だろう?

 気づいた時にはもう、理解不能な出来事は起こっていたんだ。

 

 

(は、え……?)

 

 

 その瞬間に感じたのは、力をなくした喪失感と、肌寒さ。

 その原因は、装備していたメイド服が消失したから。

 

 この危機的状況で、どういうわけか私は、怪物を前に下着姿を晒していたのである。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

 い・つ・も・の。

 

 

(まぁ、今の俺にできることなんて、これくらいしかないわけだよ。ワトソン君)

 

 

 装備を奪うことイコール能力低下なモノワルドにおいて最強の一手、《ストリップ》。

 唱えられさえすれば対象の装備を剥いでしまえるチートオブチートは今夜も健在である。

 

 

「な、な……?」

 

 

 俺が呪文を唱えたことは分かっているけど起こったことが受け入れられない。

 そんな顔でこっちを見つめるノルドには、ちょっとだけ同情する。

 

 謎の女スパイかアサシンか、とにかく暗躍のプロである彼女。

 彼女の装備適性がいかほどかはわからないが、手に装備なしで俺を首コキャできるってことは、装備に頼らない範囲でも相当の研鑽を積んできたに違いない。

 そんな熟練の技が通じないどころか、気づけば服まで奪われて、本来絶対見せない素肌を晒してるとあっちゃ、完全に理解不能だよな。

 

 

(……あー。今ならどうして全裸三兄弟があれだけ町の人に騒がれたか分かるな)

 

 

 装備至上のモノワルド。常識的に考えて「装備しない生活」がありえない。ましてや「装備どころか着てすらいない」ことの意味不明さたるや、俺の前世でどうたとえられるだろうか。

 全裸の男たちが堂々と街を歩いてますって言われたら、俺だってスマホ持って見に行っちゃうもん。配信者だし。

 この世界ならなおのこと、そんな狂気の沙汰をやったアホがすぐ近くに出たと聞いたら、そりゃあ町の人のテンションもバグって野次馬根性も出てくるってもんである。

 

 

(改めて、この能力のやばさを理解したぜ、ゴルドバ爺……!)

 

 

 《ストリップ》はそんなイカれた状況を相手に押しつける、精神攻撃でもあったのだ。

 

 

 

「《イクイップ》……さて。あんたが誰の指示で、何が狙いでここで暗躍していたかなんて、俺には分からない」

 

「!?」

 

 

 話は戻って対ノルド。

 俺はパク……勇者した都市長の交渉装備を身に着けながら、牽制を兼ねて、それっぽいことを口にする。

 

 

(実際どこの誰の差し金かなんて知らないし、知りたいとも思わない)

 

 

 巻き込まれるだけ面倒そうだし、関わるにしても今の俺は8才児、自由も力もない。

 

 

(思えばこれ、マジでどっちにとってもただただ不幸な事故なんだよな)

 

 

 俺と彼女の出会いは偶然で、なんなら同じ悪党同士。

 出会わなければそれぞれに目的を果たしてはいさようならだったかもしれない。

 

 

「だが、こうなった以上は情け無用。そっちは命を奪おうとしてきたんだから恨みっこなしだ」

 

「あ……あぁ……」

 

 

 ああ無情。

 出会ったからには食い合って、弱肉強食するしかない。

 

 俺から力は示した。だが、ここから彼女が抵抗しないとも限らない。

 少なくとも彼女をある程度までは無力化しないと俺も危ないし、最悪の事態もあり得る。

 

 実際問題彼女を素っ裸にしても地力で首コキャされたら終わるので、脱がしても俺のピンチ度は変わんないのだ。

 

 

(だから彼女が混乱しているあいだに、交渉終了までもっていく!)

 

 

 チート魔法《ストリップ》は、神様がくれたモノワルドのバランスブレイク級の力だ。

 そんな力を持った俺は、ノルドにとっては突如現れた神話生物みたいなもの。

 相手が正気度ロールしてるあいだに、俺はこの優位を最大限に活用したい。

 

 ゆえに、俺は今、高身長黒髪ロングメイドさんのストリップショーを演じているのだ。

 

 

(そう。だから、これはしょうがない。しょうがないんだよなぁ……ふっふっふ)

 

 

 心のスクショを連打連打。メイドさん脱衣スチルゲットだぜ!

 

 

「クックック……おっと」

 

 

 思わず口元が緩んでしまった。

 油断が負けフラグになる前に、やるべきことをやってしまおう。

 

 

「お前は、いったい……」

 

「《ストリップ》」

 

 

 俺は再び無動作で呪文だけを唱え、ノルドの頭のカチューシャを奪う。

 

 

「!?」

 

「メイド服が消えたのが、何かの偶然じゃないってこれで理解したよな?」

 

 

 会話の主導権は渡さない。

 今一番俺が得をする交渉方法は、力の差を見せつけてからの、恫喝だ。

 

 ちなみに消えたメイド服とカチューシャは、宝物庫の保管庫というスペースにぶち込んだ。

 レア度を問わず100万個くらいのアイテムを収容できる便利ゾーンである。

 練習中にアデっさんから教えてもらったんだが、出し入れ自在も相まって、まるでアイテムを消滅させたようにも見えるのが素晴らしい。

 

 

「完全に無力化されたくなければ、俺の願いを聞いてもらおうか。そっちもこんなところで捕まって終わりたくはないだろう?」

 

「………」

 

 

 あ、頷いた。

 こんな状況でもいくらか冷静でいられてるの、さすがプロって感じだな。

 もしかしたら交渉力アップの指輪の力もあるのかもしれない。

 

 

(どっちにしろ、おかげで話を進めやすい)

 

 

 俺はノルドが聞く姿勢をとったのを見てから、宝物庫での練習がてら考えておいた要求を口にする。

 

 

(欲しいのは身の安全と、本格的に自由になれる成人するまでの時間的猶予)

 

 

 ゆえに、提案するのは。

 

 

「……少なくとも向こう7年。この町には手を出すな。この町の平穏を乱すなと、あんたのご主人様に伝えてくれ」

 

 

 まったくもって自分本位な、自己保身の極みみたいな内容だった。

 

 

 




交渉術(奪衣)。


ここまで読んでくださりありがとうございます!
楽しく読んでもらえたら最高です。

お気に入り、感想、高評価、レビュー等、応援してもらえるととっても嬉しいです。
褒められると伸びます。色々な物が。

あと、この手のお話が好きな人のところに届くように拡散とか紹介とかしてもらえるとさらにめちゃくちゃ嬉しいです。
楽しむ仲間をぜひ増殖させていってください。

いよいよ次回でメイドスパイ戦完結です!
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