異世界ストリップ~俺はレアアイテムをコンプリートして世界を手にする!~   作:夏目八尋

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投稿して数分で感想貰って何事かと思ったぜぇ。
超ありがとうございます!



第1章 幼少期編
第002話 俺、目覚める!


 

 

「……《イクイップ》!!」

 

 

 それが、俺が九頭龍千兆という前世を思い出した瞬間だった。

 

 手に持っているのは刃の潰れたナイフ。

 この世界、モノワルドにおける通過儀礼で用いる5才児用の『装備』だ。

 

 いかにもお誕生日パーティーといった風情の部屋の中で、俺は俺を取り戻した。

 

 

「どう? 手に馴染むかしら?」

 

 

 そう言って俺の顔を覗き込む老婆は、お世話になっている孤児院の院長マザー・マドレーヌ。

 大丈夫だと頷いてみせると、笑顔でシワシワの顔がますますシワシワになった。

 

 

「……ふむ」

 

 

 試しに手の平でナイフを弄んでみる。

 すると、まるでこれまでの人生で長く慣れ親しんだ物であるかのように、手の上で踊り、俺を傷つけることなく転がすことができた。

 もちろん、前世を含めて生まれてこの方こんな扱い方をしたことはない。

 

 

「あらあら、センはナイフと相性がいいのね」

 

「いいえ、マザー。この扱い方、短剣全般が得意なのかもしれないわ」

 

「だな。もしかしたら刃物全部いけるかもしれないぞ?」

 

 

 ナイフで遊ぶ俺の姿に、マザーと、同じ院で働く大人たちが騒ぎ出す。

 そんな騒ぎを横目に俺は、今日の主役を見つめる院の子供たちへと目を向けた。

 

 

(マッドにリンダ、ポワンゾにノリスタス……分かる。どうやら5年生きた分の記憶もしっかり蓄積されてるみたいだな)

 

 

 名前と、彼らと一緒に過ごした日々が思い起こせたのを確かめてから、俺はナイフを手に椅子の上へとよじ登る。

 そこには重ねたパンケーキにクリームを塗りたくった、ホールサイズのケーキがあった。

 

 

(ナイフとケーキ、そして誕生日。あとはお察しだな)

 

 

 この世界に生まれ、5才の誕生日を迎えた子供に与えられる最初の役割が、これである。

 孤児の俺に正確な誕生日など分からないが、初めて《イクイップ》を使った日を便宜上の誕生日にできるというのは、素敵な文化だと思った。

 

 院の子供たちは、俺が務めを果たす瞬間を今か今かと待ち望んでいる。

 

 

「……とうっ!」

 

 

 気合を入れて刃をふるう。

 刃の入ってないナイフでも、今の俺にケーキを均等に切り分けるなんてのは造作もなかった。

 

 

「……すごっ」

 

 

 ほぼブレもなく人数分に切り分けられたケーキを見つめ、我がことながら驚かされる。

 

 

(これが……《イクイップ》の力!)

 

 

 事前に神様に教えて貰っていたとはいえ、実際目の当たりにするとやっぱり胸が躍る。

 適正さえあれば、ずぶの素人でもここまでの扱いができる。

 これが世界の普通なのだから、我ながらとんでもない場所に来たと思った。

 

 ちなみに装備の解除は思うだけで出来た。

 ナイフは手に握ったままだったが、感覚的な話、結びつきが外れた感じがあった。

 

 

「さぁ、センがケーキを切り分けてくれたわ。みんなでいただきましょう」

 

「はーい!」

 

 

 マザーの呼びかけに子供たちは歓声を上げ、そこからパーティーが始まった。

 

 財政的に慎ましやかな生活を強いられている孤児院でも、出される料理の質は決して悪くはない。

 スープはちゃんと味がするし、ケーキもちゃんと甘い。

 

 

「おかわり!」

 

 

 食べるに多少の余裕もある。

 

 

(……ゴルドバ爺の計らいってやつかな?)

 

 

 どうにも天涯孤独の身の上のようだが、質の高い孤児院で育てられているようだ。

 位置取りとしてはイージーでもハードでもないノーマルなところだろう。

 

 

(ともかくここが、第二の人生のスタート地点……!)

 

 

 クリームで口元を汚しながら、俺は密かに考えを巡らせる。

 

 

(この世界に多数存在するレアアイテムを、俺は人生をかけて蒐集する。だが、本当に人生をかけて集めるばかりじゃ、この世界を楽しむことはできないだろう)

 

 

 なにしろ人生は一度きり、周回プレイはできないのだ。

 

 レアアイテムを集めつつその力を使い、この世界を存分に謳歌する。

 

 俺がやるべきことは、これだ。

 

 

(どんな状況にも対応できるように、今は自分の能力を磨かないとな)

 

 

 鍛えて、学んで、成長する。

 それが成人前の自分のやるべきことだと決定する。

 

 

(んで、鍛えるといったら、この能力も、か)

 

 

 俺は《イクイップ》とは別に《ストリップ》も使えるようになったと漠然と理解していた。

 

 ゴルドバ爺の言い方から察するに、この能力はおそらく俺だけのもの。

 使いどころは考えないといけない。

 

 

(そう、この力は俺のとっておき、切り札なんだからな!)

 

 

 丁寧に生きよう。

 そんな風にふわっとした結論をつけて、俺は自分のケーキの最後の一切れを頬張った。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

 ――3か月後。

 

 

「《ストリーーーーーーップ》!!!!」

 

「ばっ! こらーーーーーー!!」

 

「逃げろー!」

 

 

 拝啓3か月前の俺、丁寧は浜で死にました。

 

 誕生日を迎えてからの俺は、自らの力を最大限使って、アイテム収集の練習に励んでいた。

 

 

「セーーーーーーン! 私の下着を返しなさーい!!!」

 

「ひゃっほーぅ! 50連勝ーーー!!」

 

 

 繰り返し、繰り返し、来る日も来る日も練習の日々である。

 そう、技術というのは毎日の積み重ね。繰り返して体に馴染ませていくもの。

 的確な発動。正確な部位狙いを習得するには、常日頃から難度の高い練習が欠かせないのだ。

 

 

「毎日毎日何度も何度も! 今日という今日は反省室に叩き込んでやるんだからねぇぇ!!」

 

 

 決して勝気な従業員のリザさんが、耳まで真っ赤になってキレ散らかす顔が見たいからやっているわけではない。

 一番反応がいいからって狙い撃ちしているわけではない。

 

 

「セン! すっげぇ!!」

 

「今日もリザの下着盗ったの!?」

 

「最強じゃん」

 

「ふっ、手に入れたはいいがただの下着なぞ俺には無用の長物。またお前たちに授けよう」

 

「ははー!! セン様財宝神様ー!」

 

「晩御飯より前には洗面所の籠に返すんだぞー」

 

 

 厳しい修行の過程であらゆるものを獲得し続ける俺は、今や孤児院のスターとなっていた。

 アイアムいたずらキング。

 

 この頃は何かに秀でてかつ利益を生む存在は、人望を集めやすいのだ。

 

 

「ねぇねぇ、ダンデの下着盗ってきてよ」

 

「リンダまたダンデおじさんのもの欲しがってるー」

 

「うっさいわねポワンゾ。欲しいものを手に入れるためなら手段を選んじゃいけないのよ。ねぇ、セン。おねがい~! またお菓子分けてあげるからー!」

 

「はっはっは、お安い御用だ」

 

 

 御覧の通り、ちょっとこの年から性癖のねじ曲がりが心配な女の子とだって仲良しである。

 

 

「お安い御用……じゃ、ないでしょ!」

 

「げっ、リザ! お前ら助け……いねぇ!?」

 

「はーい。反省室行くわよぉ」

 

「ぎゃー!」

 

 

 たまにお灸をすえられたりもするけれど、俺は元気です。

 

 

「まったく。《イクイップ》を覚えたとたん悪戯っ子になって……」

 

「しゅいましぇーん」

 

「その《ストリップ》? っていうのもよく分からないけど、悪用しちゃだめよ?」

 

「はーい」

 

「……はぁ、全っ然反省してくんないわねぇ」

 

 

 当然である。これは来たる日に向けた、れっきとした修行なのだから。

 

 キリっとした顔で反省室に閉じ込められ、俺ははめこみのガラス窓から外を眺める。

 

 

「……あー。今日もいい天気」

 

 

 青い空、白い雲、のどかな平原。

 

 こんな孤児院にもガラスとか普及してるし、この世界の技術レベルは相当に高いと思う。

 道具を重視する世界ゆえに、その開発競争も激しいのだろう。

 

 

(その上、杖とか装備すると魔法までバカスカ打てるらしいし、何でもありだな)

 

 

 今まで見たことはないが、飛行機くらいなら普通にあるんじゃね?

 

「……はぁ、旅に出たい」

 

 世界はきっとものすごく広い。

 今からわっくわくが止まらないぜ!

 

 

 

 未来のことばっかり考えてたら日が暮れて、晩飯前に俺は反省室から出された。

 その後はテキパキお手伝いして、晩御飯タイムだ。

 

 

「……手伝いとかはすっごく真面目にやるのよねぇ」

 

 

 当然である。あれはあくまで修行であって、孤児院のことは大好きなのだ。

 

 

「それでは今日も、日々の糧に感謝して……いただきます」

 

「いただきまーす!」

 

 

 マザーの号令に従って感謝を捧げ、俺はさっそくスープにパンを浸して頬張る。

 こうすると固めのパンが柔らかくなるし、スープの味がじっくり染み込んで美味い。

 

 いつもはこのまま食事に没頭するところだが、今日はちょっとだけ違った。

 

 

「みなさん、今日はお話があります。食べながらでいいので聞いてくださいね」

 

「んぐんぐ」

 

 

 マザーから突然のお話。

 食べながらでいいということなので咀嚼しながら話を聞く。

 

 

「実は明日、この孤児院に新しいお友達がやってきます。ヒト種の中でも純ヒューマを預かる当孤児院ですが、その子は少しだけ、みんなと違う特徴があります」

 

「もぐもぐ」

 

 

 ヒューマというのは前世基準でいうところの、人間。

 純ヒューマというのは異種間交配もあるモノワルドにおいて、特にヒューマとしての血が濃いヒューマのことだ。

 

 

(それを引き合いに出して、違うとわざわざ言うのなら……)

 

 

 ある種の期待感を持って、俺はマザーの言葉を待った。

 そしてマザーは、俺の期待にきっちりと応えてくれた。

 

 

「明日くる子はヒューマとサキュバスのハーフ。ハーフサキュバスです」

 

「んぐもぐ……ごくん」

 

 

 やったぜマザー。明日はホームランだ!

 どう考えても可愛い子が来る流れ。素直に感謝です。

 

 

「多少の種族特性の違いから戸惑うこともあるかもしれませんが、仲良くしてくださいね」

 

「はーい!」

 

 

 マザーのお願いに元気よくお返事しながら、俺は胸躍らせる。

 

 

(エルフでもドワーフでもなく、サキュバスと来たか。いったいどんな子が来るのやら)

 

 

 頭の中で昔プレイしたゲームのサキュバスキャラたちを思い出してはしみじみしていると。

 

 

「あら、セン。食欲ないの? 食べないなら貰ってあげるわ。あむっ」

 

「お゛っっ!?」

 

 

 大事にとっておいたチーズを復讐の悪魔(リザ)に奪われてしまうのだった。

 

 

 

 そして、翌日。

 

 黒い馬車に乗ってやってきたその少女は――

 

 

「……はじめまして。ミリエラです」

 

 

 同い年とは思えない蠱惑的な見目と、愛らしい声。

 

 

「よろしくおねがいします、ねっ?」

 

 

 そして、計算され尽くした小首を傾げて見せる笑みで。

 

 

「は、はい……」

 

 

 出迎えに出てきた俺たちを、一瞬で魅了したのである。

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