異世界ストリップ~俺はレアアイテムをコンプリートして世界を手にする!~   作:夏目八尋

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どーも、みなさん。21話をお届けデス。

書き溜めカツカツですが、どうにか公開できるようにやってます。
時間を掛けてる分しっかり仕上げているつもりですので、よければ今回も楽しんでいってください。

それでは、今回もよろしくお願いします。


第021話 俺、落札する!

 

 

 ステージの上に立たされた垂れ犬耳の美少女。

 一目見れば分かる愛らしさに、俺は目をみはり彼女を観察する。

 

 

獣人種(ライカン)、だよな? この子も……)

 

 

 年の頃はまだ幼く、10歳を越えてひとつかふたつ、といったところか。

 セミロングの白金の髪は艶やかで、その上から垂れた犬耳が愛らしい。

 華奢な体の割に体幹はしっかりしているのか両の足でしっかりと立ち、しっぽを膨らませている。あの毛並みっぷりからして、なかなかのモフリティがありそうだ。

 商品だからだろうか、ロリータ衣装に身を包んでいるがどこか動き辛そうにしており、それ以上に少女は全身震わせ、怯えている様子だった。

 

 それがまたなんとも、俺の中にある嗜虐心だか庇護欲だかをくすぐって――。

 

 

(……かわいいな、かわいい。とてもかわいい)

 

 

 そんな彼女を、司会のミッチィはライカンの少女奴隷だと紹介した。

 

 

 奴隷。

 

 人でありながら誰かの所有物となった者。人としての権利が色々奪われる。だいたいエロい。

 

                           byウェキペディア

 

 

(奴隷! そういうのもあるのか!)

 

 

 いざ紹介された“商品”に対して、俺は感動を覚えていた。

 

 前世の社会においては、世界的にそんな立場の人を作っちゃダメよと言われている存在。

 しかしこと創作物において、それはもうネタとして擦られまくった存在でもある。

 

 誰かを支配したい、誰かに支配されたい。

 

 そんな背徳的な願望を満たすために、奴隷と所有者の関係性はうってつけなのだろう。

 俺が嗜んでいたゲームでも彼らを雇って軍勢にしたり、逆に開放していったりと、様々な立場で向き合ってきた存在である。

 

 その実物をこうして目の当たりにして、俺は大いに驚き、そして心を動かされていた。

 

 前世がどうあれ、俺に今、目の前にあるものを否定する気はない。

 むしろこうして商品として出てきた以上、『奴隷』を装備できるかどうかの方が気になるくらいだ。

 まぁ装備できるとしてどんな能力が上がるのか、皆目見当がつかないけどな!

 

 

(それにしても、闇オークションで競売にかけられる垂れ犬耳の美少女奴隷か。……まさか本当にお目にかかれるとはなぁ)

 

 

 いかにもなシチュエーションでの出会いに、なんだか俺は運命のようなものすら感じていた。

 

 だが、そんな俺の感動とは裏腹に、周りの反応はあまり芳しくなく。

 

 

「おいおい、よりにもよってこの時期にこれかよ。正気か?」

 

「さすがに手は出せねぇって、こんな厄ネタ」

 

「だよな。アリアンド王国が今やってる政策を知らねぇ奴はいねぇだろ……」

 

 

 口々に不安そうな言葉を吐いては、あんなに可愛い少女を見るのすら嫌がっているほどで。

 それは想定していたのか、ステージ上のミッチィも苦笑いしていた。

 

 

(まぁ、それはそう)

 

 

 俺だって首を縦に振る。

 北の大国アリアンド王国は現在、ライカンに対してある政策を実行中なのだ。

 

 

「この少女奴隷だってきっとそうだろ?」

 

「間違いない、獣人狩りから掠め取ってきた奴だ」

 

 

 獣人狩り。

 数年前から施行された、イスタン大陸各地に生きるライカンを、探して捕らえて連れ去っていく、恐るべき政策である。

 

 これこそが、俺が今日まで彼らを見たことがなかった理由であり、今ステージの上の女の子が商品となっている原因だった。

 

 

「あ」

 

 

 そこに来てようやく俺は、彼女の首に取りつけられている首輪が、さっきのライカン兄貴の物と同じだと気がつくのだった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「いかにもいかにもこの少女。獣人狩りに追われているところを掠め取り、そのまま運び出してにございます! 追手が怖い? ですがご安心を! その際に彼女の父母を獣人狩りに差し出し、公的には死んだものとして彼女は扱われるよう取り計らっておりますゆえ!」

 

 

 まったく悪びれた風もなく、ミッチィが少女の来歴を説明する。

 すでに死んだ者であるのなら、どう扱ってもいいのだという意図がそこには込められていた。

 

 だがそんな彼の商品アピールもむなしく、客たちの反応は鈍い。

 

 

「……80年前の戦争で滅んだ獣王国ファートの生き残り狩りか。今更それが再開するとは思ってなかったもんな」

 

「新体制を敷いた王国の国是が世界制覇らしいからな。その一環として後顧の憂いを断ちたいんだろう」

 

「だが獣人狩りといっても生け捕りだろう? 実際は何か別の用途に使おうとしているらしいぞ」

 

「物騒になってるよなぁ」

 

 

 客たちから聞こえる不穏な話。

 不気味に動き始めた王国の存在を憂いた、なんとも微妙な雰囲気が場に漂う。

 

 そんな客たちが少女に向ける視線には、忌避と、そして、侮蔑が滲んでいた。

 

 

「そもそもあんな汚らわしい物をそばに置くつもりはない」

 

「まったくだ。どうせなら然人種(エルフ)の奴隷が欲しいもんだよ」

 

「こんな厄介なものに手を出して、王国に目をつけられたら堪ったものじゃない」

 

「人のなりそこない。獣が人を真似ただけの汚らわしいヒトもどきめ」

 

 

 次々と少女にぶつけられるのは、同情の言葉ではなく口撃で。

 これには商品を提示した側であるミッチィも、客をなだめるのに必死になってしまう。

 

 

「お客様、お客様。そう悪しざまにおっしゃらないで。この非合法の奴隷であれば、どのように扱ってもらってもいいのです。おもちゃにするもよし、慰み者にするもよし、壊れて動かなくなるまで、楽しまれてはいかがですか? ほれこのように!」

 

 

 そう言ってミッチィが腕を振るうと、すでに装備していたのだろう、手にしたナイフが少女のロリータ衣装を切り裂く。

 腰のリボンを断ち逆袈裟で器用に衣服だけを寸断する一閃が、彼女の幼くもふくらみかけた身を包む、下着姿を晒し出す。

 

 

 

「……ひぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

「おお……!」

 

 

 

 叫びをあげ、顔を真っ赤にする少女。

 

 だが、そんな少女の痴態に喜びの声を出したのは、俺ただ一人だけだった。

 

 

「うわぁ、やめやめろ! 俺はそんなの見て喜ぶ変態じゃないぞ!」

 

「それはサービスじゃねぇ! 罰ゲームだ!!」

 

「ふざけんなミッチィ! どうせならエルフの姉ちゃんの服を破け!」

 

「あなたが脱いでもいいのよ! ミッチィ!」

 

 

 どころか非難轟々。

 今度はミッチィに口撃が集中すれば、彼も慌てて少女に布をかけて露出を抑え、事態の収束を図る。

 

 

(……ミッチィ。俺だけはお前の頑張りを認めているぜ)

 

 

 混沌とするオークション会場でただ一人、俺だけはミッチィを温かい目で見守っている。

 

 

(少女奴隷の服ビリシチュ、心のスチルにしっかり保管させてもらったからな!)

 

 

 っていうか、見世物じゃねぇと客がキレてるのを見て、それはそれで犬耳少女がショック受けてるな。

 完全な脱ぎ損だもんなぁ。かわいそうに。

 

 

 あ、目が合った。

 あ、逸らされた。

 

 

 そうこうしているうちに、オークションの時間がやってきた。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

「……えー、こほん! ではライカンの少女奴隷! 最初は5……いえ、1万(ゴル)から始めます!」

 

 

 埒が明かないと判断してか、ミッチィが安値を付けて競りを始めた。

 この場で何としてでも売り抜きたい思いが透けて見えるのは、売る側もこれがヤバい品だと十分に分かっているからだろう。

 

 

「1万g! 1万gですよ! どなたかいらっしゃいませんか!?」

 

 

 これまで取り扱われたSR以上のアイテムに比べて、あまりにも安い値段設定。

 それほどまでにモノワルドでは命の値段が安く、もっと言えば、彼女たちライカンは今ことさらに安いのだ。

 

 ちらっと後ろを見れば、ライカン兄貴が何とも言えない顔でステージを見守っていた。

 

 

「お前買うか?」

 

「冗談はよせって」

 

「いじめるにしても、ライカンは装備なしでも強い身体能力があるのでしょう? 万が一にも逆襲されるのが怖いわよねぇ?」

 

「ええ、ええ。野蛮ですわ。それに、屋敷を獣臭くされては困りますわぁ」

 

 

 それでも、彼女に買い手はつかない。

 誰も彼もが彼女を好き勝手に値踏みしながら、金を払う価値などないと言っている。

 

 

「………」

 

 

 少女はぎゅっと被った布を握り、震え続けている。

 

 ここで売れ残ったら、その命に価値がないと切り捨てられたらどうなるのか。

 そも買い取られたとして、その先に光などあるのだろうか。

 

 きっと、そんな風なことを考えているのだろう。

 時折辺りを見回す少女の表情は、今まさに死んでしまいそうなくらい絶望に染まっていた。

 

 

 

「……1万g! 1万gですよ! どなかたいらっしゃいませんか!? はぁ……だからこんなの扱いたくなかったんですよぉ」

 

 

 誰も手を上げないまま数分が経ち、ついにミッチィが音を上げる。

 彼からの叱責の視線を受けて、少女はますます縮こまり、怖れに震え上がった。

 

 

 ……どうやら本当に、誰一人として手を上げる気はないみたいだな?

 

 なら、遠慮はいらないな!!

 

 

 

「はい!」

 

「え?」

 

「1万g!!」

 

 

 

 俺は元気よく声を張りながら、番号棒を持ち上げた。

 ミッチィがめっちゃいい笑顔を向けてきて、その隣の少女もびくりと震えながらこちらを見た。

 

 

 彼女の薄紫色の瞳と、再び目が合う。

 じっとこっちを値踏みし返すような、そして祈りと哀願が目一杯に込められた視線が、俺に向けられていた。

 

 俺はそんな彼女に満面の笑みで応えて、もう一度声を張り上げる。

 

 

「1万g!!」

 

「はい! 1万g出ました! それ以上はありませんね? あなたも心変わりないですね!?」

 

 

 オークションは番号棒上げたら最後なのに確認されてしまった。

 

 

「ありません!」

 

 

 でもせっかくだから、はっきりと答えてやる。

 ミッチィがすっごいいい笑顔を浮かべて、ハンマーを振り下ろす。

 

 木と木がはじける乾いた音が、会場に響き渡った。

 

 

「ではこちらのライカンの少女奴隷! 1万gで落札です!!」

 

「「………」」

 

 

 落札確定の拍手は、前の商品たちとは比べ物にならないくらい、小さかった。

 

 

「……あんた、マジで買うのか?」

 

 

 隣の男性にまで、心配されるように尋ねられる。

 

 

「もちろん!」

 

 

 だが俺には、何の後悔もない。

 

 なぜならば!

 

 

(もしも奴隷を《イクイップ》できるなら、その効果は絶対に確かめておきたいからな!!)

 

 

 ここで奴隷の存在を知ったその瞬間から、ずっと考えていた可能性。

 俺はそんな夢みたいなことを確かめたくて確かめたくて、ワクワクしていたからだ。

 

 それに理由はひとつじゃない。

 

 

「あの子、とっても可愛いだろ?」

 

「えぇ……」

 

 

 ドン引きされてしまったが、それだって後悔はない。

 俺にライカンの見た目への忌避感はないし、外を出歩かせるのだって手はいくらでもある。

 

 

(俺自身が強いんだ。女の子の奴隷一人扱えなくてレアアイテムコンプなんて夢のまた夢よ!)

 

 

 まぁ、それもこれも、奴隷が《イクイップ》できればの話だがな!

 ダメだったときは、どっかにあるだろうライカンの領分まで連れてって放流すればよし!

 

 キャッチ&リリース。

 そんな一時の連れ立ちって意味でも、そばに可憐な花があるのは悪い気はしない。

 

 

「ありがとう! ありがとう! 売れた! 売れた! こっちで手続きしますので、どうぞ!」

 

 

 喜ぶミッチィに手を振ってから、俺に怯えた視線を向ける垂れ犬耳少女へ向き直り、改めて笑顔を作る。

 彼女(どれい)を装備したときに起こる科学反応に、今から期待が止まらない。

 

 

「……だいじょーぶだいじょーぶ。悪いようにはしない。本当さ……っと、じゅるり」

 

 

 おっと、いけないいけない。あんまり興奮しすぎてよだれが出た。

 ふきふき。フフフ。

 

 

「ひっ……」

 

 

 ざわついていたオークション会場が、再び静寂に包まれていた。

 そしてどういうわけか、さっきまで見るのも忌避していた客たちが、ステージ奥へと連れていかれるライカンの少女へと目を向けていて。

 

 

「いや、競り落としたのは俺だからな? 今さら競おうとかはなしだぞ?」

 

 

 今更惜しみだしたかと、ちょっと危機感を感じてそう言えば。

 

 

「「いい夜を!!!!」」

 

 

 これまたどういうわけだか、客たちの息の合った掛け声で見送られてしまうのだった。

 

 




自分がしていることには、中々気づかない。


ここまで読んでくださりありがとうございます!
今回も楽しんでいただけたでしょうか。

お気に入り、感想、高評価、レビュー等、応援してもらえるととっても嬉しいです。
投稿直後とかにゴソッと増えてくUAを見るとやはり嬉しくなります。

あと、この手のお話が好きな人のところに届くように拡散とか紹介とかしてもらえるとさらにめちゃ嬉しいです。
嬉しいばかり言っている嬉しいBotをよろしくお願いします。


さて次回。
案内された先でセンチョウを待っているものとはいったい!?
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