異世界ストリップ~俺はレアアイテムをコンプリートして世界を手にする!~   作:夏目八尋

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ハローヤーヤー皆の衆、28話をお届けです。

夢語りの荒くれ者も、階級社会の成り上がり者も、昼間からのんべんだらりの昼行燈も、冒険者ってやつらが好きです。
どこからどう見たってスーパーマンじゃない彼らが、だからと言ってダメじゃない姿を見せてくれる場面とか、そういうのも書けたらなぁとぼんやり考えたりしつつ。

それでは今回も、よろしくお願いします。


第028話 とびだせ、冒険者の宿!

 

 

「あ? で、いででででで!!」

 

「離せ、とわたくしは申し上げました」

 

 

 ナナが、俺の肩を掴んだ冒険者の腕を速攻で掴み返していた。

 その次の瞬間にはもう、ライカンパワー全開の彼女の手によって、冒険者の腕は強制的に引っぺがされ締め上げられていた。

 

 見事に捻りまで加えられており、このまま力を入れればあっさりと骨が折れてしまいそうだ。

 

 

「あばばばばばばばば!!」

 

「ヨシ君! てめぇ、何しやがる!」

 

「ヨシ君の腕が使い物にならなくなったらどうするんだ!」

 

 

 抗議の声を上げる取り巻きたちに、しかし、ナナは毅然とした態度で言い返す。

 

 

「主様への無礼の代償、破壊をもって償っていただきたく思います」

 

 

 嘘でしょこの子、目がマジですわ!?

 絶対に報いを与えてやるという強い意志……漆黒の意思すら見える!

 

 

「はぁ!?」

 

「何言ってんだ!?」

 

「そいつがいったい何だってあいだだだだだだだ!!!」

 

「すぐに終わらせますね、主様っ」

 

 

 なおも騒ぎ立てる冒険者たちには目もくれず、ナナは素敵な笑顔で俺に宣言すると、さらに掴む手に力を入れて冒険者の腕を――って、待て待て!

 

 

「おぎゃああああ、おがあちゃーーん!!」

 

「やべぇ! ヨシくーーーーん!!」

 

「ナナ! ステ――」

 

 

 ダメだ、間に合わな――。

 

 

 

「……そこまでにしな」

 

「「!?」」

 

 

 

 不意に店に響くダンディなバリトンボイスに、この場の誰もが動きを止めた。

 

 声のした方を見れば、そこにはバーカウンターの向こうでグラスを磨く、ちょび髭のナイスミドルの姿があった。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

 ナイスミドルがおもむろに指を鳴らすと、酒場の隅にあるジュークボックスからムーディーなBGMが流れ始めた。

 

 

「ダル、ピッケ、ヨシヒサ……には聞こえねぇか。俺の前では新人のガキだろうが等しく客だ。暇なんだったらそこの討伐依頼のひとつでも受けて、ちゃっちゃと片付けてこい」

 

「うっ……」

 

 

 まさしく鶴の一声ならぬダンディの一声。

 怒りに任せて今にも殴りだしそうだった連中が、その一声でとたんに大人しくなる。

 

 

「ほら。ナナもとっとと手を離せ」

 

「よろしいのですか? 主様がお望みとあれば、わたくしがいくらでも天罰を代行いたしますよ?」

 

「せんでいい、せんでいい。そもそも頼んでないだろう」

 

「そ、そうでございましたか。わぅ……申し訳ございません」

 

 

 うんうん、素直でよろしい。

 でも天罰とかナチュラル狂信者ムーブは要注意だぞぅ。

 

 それはきっと、ナナ自身が望む巫女像からは、ズレている。

 

 

「わっとあーゆーろーる?」

 

「あ、従者、従者でございます!」

 

「よーしよし」

 

 

 場が静まっている内に、俺もナナの両脇を抱えて、気絶したヨシ君の腕から引っぺがす。

 しょんぼりしながら持ち上げられる彼女の姿は、見た目だけは愛らしい生き物だった。

 

 

「主様にはとんだご迷惑をおかけいたしました、これでは、従者として失格でございますね」

 

「大丈夫だ。これから少しずつ学んでいけばいい。理想の振る舞いってのをな」

 

 

 持論だが。

 狂信ってのはつまり、理性に対して感情が強すぎる状態を指すんじゃないかと思う。

 ナナがこれからもっと色々な知識を学んで、自分の中にある強い感情との向き合い方を知れば、いつかはそのバランスも取れるようになるんじゃなかろうか。

 

 それを教え導くのも、ご主人様で救世の使徒に選ばれた、この俺の役割なんだろう。

 たとえそれが嘘っぱちでも、だったら本物以上に本物らしくやるくらいでちょうどいい。

 

 嘘から出た真って言葉だって……いや待て。

 

 

(なんだかそう考えると、ガチで救世の使徒様ルート入っちゃった気がしてくるな?)

 

 

 まだ世間様に名乗ったりはしてないし、入ってないよな? 救世の使徒様ルート。

 

 

 

「ずいぶんと、やんちゃな従者を連れてるじゃねぇか……白布」

 

「!?」

 

 

 うおっ。いきなりのダンディバリトン。

 

 ってか、あれ?

 

 

「あんた、俺のことを?」

 

「ドバンの爺さんとは顔見知りだ。お前もそこらの半端者を躾ける暇があったら、とっとと要件を言うんだな」

 

「……あ、ああ」

 

「フッ。時は待っちゃくれねぇんだ。いちいち小さなしがらみに惑わされねぇで、やるべきことをやれ」

 

「………」

 

 

 し、シッブ~~~~~い!!

 手短に、自分の仕事をこなしながら、言葉だけで場を支配する。

 

 前に別の町で立ち寄った冒険者の宿にいたおっさんとは、立ち振る舞いの何もかもが違う!

 

 

「主様、あの方が……」

 

「ああ。あの人こそが、こういったガラの悪い連中の首をしっかり絞めてくれている、町の実力者の一人……冒険者の宿の、おやっさんだ」

 

 

 モノワルドの冒険者に、社会的地位なんてものはない。

 だがそんなゴロツキまがいの連中が、それでもゴロツキまがいでいられるのは、こういう人がいるからだ。

 

 

「フン……」

 

 

 治安の悪い場所に住むゴロツキたちの支配者にして、保護者。

 ただ者じゃないその存在感に、俺は思わず息を飲んだ。 

 

 

(ここなら、安心して仕事を受けられそうだ)

 

 

 そんな確信をもって、俺はおやっさんのいるカウンター席へと歩みを進める。

 

 

「……で?」

 

 

 何の用だ? と鋭くこちらを見つめる瞳には、俺も真っ直ぐに視線を返し。

 

 

「金になる依頼を受けたい。できれば討伐系で、レアアイテム絡みの物がいい。具体的には、あれとかな」

 

 

 最大限のリスペクトを込めて、要件を手短に伝える。

 

 受ける依頼は、最初から決めてあるのだから。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

「……パラスラフレシアの討伐か?」

 

「それそれ。その不人気依頼、俺が貰い受ける」

 

 

 張り出された紙がボロボロになっても残っている討伐依頼。

 何度も吊り上げられた討伐報酬はかなりの額になっているのに、未だに売れ残っている焦げ付き依頼。

 

 俺も情報を仕入れた時点では、割に合わないと思ってスルーした奴ではあるが。

 

 

(今の俺には、ボーナスだ)

 

 

 そんな忌み嫌われる討伐対象モンスターがいる場所の名は――ヒュロイ大森林。

 

 

「いいのか? こいつが不人気な理由は……」

 

「知ってる。問題はない。俺には強ーい味方がいるからな」

 

 

 俺はそう力強くおやっさんに言いながら、隣で可愛く首をかしげている従者を見る。

 

 

「……ふぅん。ま、やってくれるなら期待してるぜ」

 

「これまでされてこなかった分、討伐しまくってやるから、きっちりと報酬用意しといてくれ」

 

 

 俺の目線の意味を理解したかは定かではないが、ダンディから中々に熱い言葉をいただいた。

 もっとも、その期待に応えるだけの手札は既に手の中にあるから、大船に乗った気でいてもらって問題ない。

 

 

(ふっふっふ。噂に聞いたこの依頼、相手が噂通りのモンスターなら、俺はかなーり楽できる)

 

 

 さらに都合のいいことに、このモンスターはさっきも大暴れだったナナの、真の実力を理解するのにもちょうどいい相手ときたもんだ。

 このタイミングでは間違いなく、俺にプラスに働くミッションである。

 

 

「ナナ、この依頼の鍵を握るのはお前だ。奮戦を期待する」

 

「! そういうことでございましたら、このナナの、全身全霊をもって頑張ります」

 

 

 やる気に満ち溢れた瞳を向けるナナを見て、俺も気合を入れ直す。

 

 

「さぁ、クエスト開始だ!」

 

 

 盗賊殺しはいったん休憩。

 

 今回はこの“めちゃくちゃ報酬が美味い依頼”を、攻略するぜ!

 

 




ジュークボックス(R)
セキュリティに契約魔法を使っている古びたデザインのジュークボックス。
契約者が登録した音楽を、好きなタイミングで流すことができる。
登録用レコードは世界各地に広まっており、プロアマ問わずに様々なレコードが作られており、それを専門に集めて回る好事家もいるらしい。
マスターの店の格的にはレアリティHRの物がふさわしいのだが、店を始めた時に買ったこの一品を、彼はずっと大事に使っている。


ここまで読んでくださりありがとうございます!
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次回、森へ行こう!
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