異世界ストリップ~俺はレアアイテムをコンプリートして世界を手にする!~   作:夏目八尋

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33話をお届けです!

第2章もジワリと大詰めが近くなっております。
冒険の色々な醍醐味を少しでも伝えられれば幸いです。

それでは今回も、よろしくお願いします!


第033話 美味しい食事とキャンプスキット!

 

 

 いかに俺が天才的な能力で解体作業を行なったとしても。

 さすがにモンスター202体の処理は、日が落ちるまでに終わらせることができなかった。

 

 と、いうわけで。

 

 

「ここをキャンプ地とする!!」

 

「はい、主様!」

 

 

 俺とナナはヒュロイ大森林のど真ん中でキャンプをすることにした。

 

 

(ここは、俺の前世知識の披露しどころだな!)

 

 

 俺は意気揚々とナナに声をかける。

 

 

「ナナ。焚き火は……」

 

「こちらに。乾燥した落ち葉から始め、小枝、木片と少しずつ大きな物へ移し、火を育てていくのが肝要にございます」

 

「……水は」

 

「こちらに。近くに湧き水がございました。ですが、野ざらしの水は澄んでいるように見えてもちゃんと一度煮沸した方が飲み水として適切にございますので、処理はお任せください」

 

「……テントは」

 

「主様の解体作業中に少しずつ、準備を進めておりました」

 

 

 言われて見てみれば、木の影に、しっかりとした出来の二人用テントが張ってある。

 

 

「モンスター除けの香も焚き終えてございますのでご安心を。これから追加の水を確保に参ります。森の中では火の扱いが非常に大事ですので、主様はそのまま火の番をお願いいたしますね」

 

「はい」

 

「すべてはこのわたくしにお任せください、主様」

 

「………」

 

 

 俺たちは、実にスムーズに寝泊まりする準備を終えることができた。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

 しばらくして。

 

 

「……ふぅ」

 

「お疲れ様です、主様。それは料理でございますか?」

 

「ああ」

 

 

 火の番をするついでに、俺はフライパンの上で肉を焼いていた。

 

 もっとも、それは動物の肉じゃなく……。

 

 

「さっき、ちょっと質落ちしてたパラスラフレシアの花弁があったろ? あれだ」

 

 

 ここで刈り取った魔物の肉的な何かを料理しようと、お試しチャレンジ中である。

 

 

「とんでもない高級食材らしいからな。やっぱり一度は食べてみたいよな」

 

「それはようございますね、主様。それに……すでに、フルーツのような香りがいたします」

 

 

 切って焼いたパラスラフレシアの花弁は、牛タンみたいな見た目になった。

 特に何か調味料を使ったわけじゃないのに、ナナの言った通りフルーティーな匂いが香る。

 試しにパラスラフレシアの葉を一緒に焼いたら、添え物としていい感じに緑の彩りが足された。

 

 素人判断は危険、なんてのも、俺には何の問題もない。

 調理道具を《イクイップ》した感覚に任せれば、どうすればいいのか自然と頭に浮かぶのだ。

 

 

「おおー、これは」

 

「お腹が……空いてまいります……ぅっ」

 

 

 きゅるるるるる……。

 

 ナナのお腹から、とっても可愛い音がした。

 

 

「ぅぅ……」

 

「この匂いと見た目は、マジで食欲をそそられるからしょうがない」

 

 

 恥ずかしがる彼女に笑いかけてから、俺は木皿に花弁肉と葉っぱを取り分けた。

 高級食材を載せるには格の足りないCアイテムだが、そこは食材君の方に我慢していただこう。

 

 

「はい、フォーク」

 

「ありがとうございます、主様。では……」

 

「「いただきます」」

 

 

 今日の糧に感謝して、俺たちは花弁を一切れフォークに刺して、口に運ぶ。

 

 

 ………。

 

 

「……んぅ!?」

 

「んぐっ!!」

 

 

 バチリと、衝撃が走った。

 

 

「こ、これは!!」

 

 

 料理品適性Aの効果で、俺の舌が吼える!!

 

 

(……やっぱ牛タンだこれ!!)

 

 

 舌の上で跳ねた刺激!

 植物型モンスターだが、この部位の構造はほぼ動物の筋肉のそれと同じなのか、コリッとした歯ごたえもばっちり!

 噛めば噛むほど味が染み出し、牛タン風味の強烈なパンチに次の手が止まらない!

 

 だってこれ、花弁だぜ!?

 ただ焼いただけで肉の食感と味がする花弁って何だこれ!

 

 

(しかもこれ、ただの牛タンスライス焼きじゃない!)

 

 

 フルーティーな香りに合った愛らしい味かと思えばとんだじゃじゃ馬な辛味と苦味の連携!

 まるでオリーブオイルをぶっかけたみたいなコラボレーション!

 

 これ、もしかして染み込んだ消化液なのか? あれ調味料として使えるの!?

 いや違うな、この花弁……花弁肉だからこそ成立しているんだ!

 

 

(もはや素材ひとつで完成品。とにかく芳醇! とにかく濃厚!! だが……!)

 

 

 食べ進めることで、俺は気づいてしまった!

 この味にもうひとつ加えることで、完成に至る材料があることに!!

 

 

(ああー、何がお試しだよ! パスタ麺を茹でておけばよかったー!)

 

 

 ペペロンチーノにしてぇ!!

 絶対、絶対絶対絶対ぜぇぇぇったい、美味い!

 

 

「あぐあぐあぐあぐ……ぐはぁ!」

 

 

 結局我慢できずに自分の分を即完食。

 迷うことなく次の花弁肉を焼きながら、俺は思考する。

 

 この極上の味をより高める方法を試すべきか、より多くの資金のために我慢するべきか。

 

 

「………」

 

 

 愚問だな。 

 

 

「……食は、人生を豊かにする」

 

 

 そう言って隣を見れば。

 

 

「むぐ、むぐむぐむぐ……!」

 

 

 一生懸命もぐもぐしているナナの姿。

 よっぽどお気に召したんだろう、彼女の食べる口が止まらない。

 

 昼間あれだけ俺の食事の世話を焼こうとしてたのに、今はご覧の通りである。

 

 あのナナですら夢中にさせる、それが高級食材、パラスラフレシアの花弁!

 

 

「「………」」

 

 

 そんなナナと、目を合わせ。

 

 俺は静かに言の葉を紡ぐ。

 

 

「麺を足すとな、絶対、もっと美味いんだ」

 

「……!!」

 

 

 あとはもう、余計な言葉はいらなかった。

 

 

「びゃああうまひぃぃぃぃぃ!!」

 

「あるじさま! これは、これは魔性の味にございます~~~!!」

 

 

 こうして俺たちは、端数だった2体分の高級食材をキッチリと消費してしまうのだった。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

 最高のキャンプ飯をいただいた後は、特にすることもないから寝ることにした。

 料理に使った焚き火を消すと、森は不気味なくらい暗く静かだった。

 

 空を見上げても、目に映るのは生い茂った木々の葉が作る闇ばかり。

 念のため、俺はモンスター除けのお香をもうひとつだけ焚いておいた。

 

 

「主様、寝苦しくはございませんか?」

 

「大丈夫大丈夫」

 

 

 今俺は、二人で使うとやや手狭なテントの中で、寝間着姿のナナと添い寝している。

 光源は油を燃やす小さなランプひとつきり。

 

 

「主様との野営は初めてでございますが、不思議と大きな安心感に包まれております」

 

 

 オレンジ色の灯りに照らされ、こちらを見つめるナナの顔に影が差す。

 それでも彼女が口元に浮かべた微笑みは、夜の不安を吹き消すのに十分な温かさがあった。

 

 

「ナナはこういうキャンプは結構経験してるんだな?」

 

「はい。父や母が、巫女を目指すと言ったわたくしに、色々と教えてくださいました」

 

「いいご両親だ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 両親のことを褒められてはにかむナナは、年相応の女の子に見えた。

 

 

「少し、お話をしませんか、主様?」

 

 

 眠りにつくまで、二人でたわいのない話を重ねていく。

 これまで自分がどういうところで過ごしてきたのか、何を経験してきたのか。

 

 

「わたくしは、ここより北にある集落の生まれで、そこで両親と暮らしておりました」

 

 

 何が好きで、何が苦手で、どんな趣味があって、何を得意としているのか。

 

 

「もちろん、主様ですよ。主様が、救世の使徒様が、その物語が、わたくし大好きでございます」

 

「孤独を感じるのが、少々苦手にございます。誰かと繋がっている、それを信じられる何かが欲しいと思っておりました……今は、なんの問題もございませんよ、主様」

 

「本を読む機会をいただければ、幸せに思います。学びは必ず、主様のお力になる糧となりますから。あ、ですが今は、主様のお世話も、わたくしの望むことかもしれません」

 

「この身を賭して、主様にお仕えすること。その意志こそ、わたくしの武器にございます。おはようからおやすみまで、主様のために誠心誠意尽くします。よろしければ万事、万事わたくしにお任せくださいね?」

 

 

 まだ出会って数日と経ってないこの少女について、俺は少しずつ学んでいく。

 狂信者だとか、奴隷だとか、そういう肩書に惑わされていた分、俺はようやくここで、ナナという少女の実体に触れた気がした。

 

 まぁ、触れた実体からちょくちょく漏れてるものがあるのには目をつぶる。

 

 そして、ナナについて知る機会を得たということは、当然ナナも、俺について知る機会を得えたということ。

 俺の方からもナナが知りたいことがあるなら答えると口にすれば、彼女は少し考えてからこう問いかけた。

 

 

「主様は、どうしてこれほどまでにお金を必要となさっておいでなのですか? ただ、贅沢な暮らしをしたいがため、というわけではございませんよね?」

 

「……あ」

 

 

 その問いかけをされて、ようやく俺は思い至る。

 そういえばナナに、俺がこの世界で何をしようとしているのかを話していなかったと。

 

 

(いい機会だな)

 

 

 俺はナナに話をするついでに、自分の頭を整理することにした。

 ただ漫然とイメージを膨らますのではない、アイテムコンプリートまでの人生の道筋。

 

 それが俺には必要だと、同時に気づくことができたから。

 

 

「よし、ちょっとランタンの明かりを強めようか」

 

「はい」

 

 

 俺が身を起こし、ランタンに手を掛けるのを見て、ナナも体を起こして正座する。

 

 紙とペンを取り出して、俺は話し始める。

 

 

「俺がこの世界で目指すのは、アイテムコンプリートだ」

 

 

 これまでに俺が知りえた知識を元に描く、ロードマップを。

 

 




旅人のランタン(UC)
安い金で旅をする者の必需品。夜のちょっとした明かりに。
ランプの下側から空気を取り入れ流れを作る構造をしており、明るさ調整が可能。
ただし自然の力を利用するため安定性は低い。
むしろこういう品が安価に手に入ることで、硝子技術の普及っぷりが伝わることの方にこそ意義があるのかもしれない。


ここまで読んでくださりありがとうございます!
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