異世界ストリップ~俺はレアアイテムをコンプリートして世界を手にする!~   作:夏目八尋

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43話をお届け!

やりたい描写を詰め込むと、どうしても文字数が増えてしまう。
それでも1話4500文字以内に収まるように悪戦苦闘しつつお送りしています。

それでは今回も、よろしくお願いします!


第043話 ご契約は対等に!

 

 

「だーっはっはっは! そりゃお前の負けじゃよ、白布」

 

「ぐぇー……」

 

 

 突如として舞い込んできた厄ネタお嬢様、メリー・サウザンド。

 彼女との小一時間に渡る口論は、事情を把握したドバンの爺さんにより判定が下された。

 

 

「レアアイテムの情報に釣られてここに招き入れた時点で、お前にゃ話を聞く以外の選択肢がないんじゃ。今更駄々をこねてももう遅いじゃろうて」

 

「ふふんっ! ほらご覧なさい!」

 

「うぐぐ……」

 

 

 まったくもっての正論に、返す言葉もない。

 逃げることもお役所対応もできたのに、やらなかった結果がこれなんだしなぁ。

 

 

「おいたわしや、主様……」

 

「俺の心を慰めてくれるのはお前だけだよ、ナナ」

 

 

 ナナに頭をよしよし撫でて慰めてもらってから、俺はソファに背もたれ大きなため息をつく。

 意気消沈する俺に対し口論に勝利したメリーお嬢様は、ナナ以上ミリエラ未満に見える胸を張り、それはそれは見事なドヤ顔を決めていた。

 

 

「さぁ。これで問題なく、私の依頼を受けてくれるわよね?」

 

「ぁー……そう、だなぁ」

 

「おーっほっほっほ! ならこれで決まりね!」

 

「ぐぬぬ……」

 

 

 身から出た錆とはいえ、こうも勝ち誇られるとなんか意趣返ししたくなってくるな。

 いっそ依頼受けたフリしてお宝横からかっぱらうか?

 

 さすがにダンジョンのお宝全部持ってかれるのは辛いぞ。

 メンタル的にもコレクト的にも!

 

 

「さぁ、契約書を作るわよ!」

 

「いいや、それは待ったじゃよ。嬢ちゃん」

 

「「!?」」

 

 

 予想外の人物からの待ったに、俺とメリーは奇しくも同じ驚き顔を浮かべる。

 

 

「どういうつもりかしら?」

 

「そのまま契約すると、お互いに禄でもないことになるぞと言うとるんじゃよ」

 

 

 もはやこの場は私の物。

 そんな雰囲気を醸し出し、話を進めようとするメリーを止めたのは、ドバンの爺さんだった。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

 ドバンの爺さんは俺たちにそれぞれ目を向けると、メリーの方を見て話し始める。

 

 

「確かに白布は迂闊じゃったが、嬢ちゃんも、その依頼内容じゃ受けてもらうどころか受けたフリされて出先で殺されちまうぞ?」

 

「え?」

 

「は? 待てよ爺さん、俺は……」

 

「白布」

 

「!?」

 

 

 話を遮ろうとした俺に、ドバンの爺さんがウィンクしてくる。

 ……何か、考えがあるらしい。

 

 

「嬢ちゃん。ダンジョンなんていう危険な場所に冒険者を連れて行こうってんなら、最低限ダンジョン内で手に入るアイテムのいくつかは融通せんと割に合わん。最悪……そのローブ、剥ぎ取られちまっても文句は言えないのう?」

 

「!?」

 

「? ローブ?」

 

「なんじゃ白布、気づいとらんじゃったのか? あそこ、ブランドの意匠があるじゃろ?」

 

「んん? ……あっ!?」

 

 

 ドバンの爺さんに指摘された部分を見て、俺は目を剥いた。

 目に留まったのは、彼女のローブの一点に刻まれたブランドの証。

 

 イカと薔薇が組み合わさった意匠。

 

 

「クラーケンローズ!」

 

「イカバラじゃ」

 

 

 ほぼ同時に声を上げた俺とドバンの爺さんの言葉に、ナナが首を傾げた。

 

 

「くらーけんろーず?」

 

「王都で服作ってる超一流の服飾ブランドだ」

 

「ここじゃまずお目に掛かれない、超高級ブランドでもあるぞい」

 

 

 クラーケンローズ・プリンセス。

 通称イカバラ、あるいはイカバラプリンセス。

 

 王女お墨付きの証である“プリンセス”を屋号に掲げる栄誉を得た衣装ブランド。

 アリアンド王家の女性が成人するまでの私服を一手に引き受けているとも言われる、超一流の中でも超一流の服飾屋である。

 

 

「作られる量産品はどれもHRクオリティ。そしてその装備性能は並みのSR装備を凌駕し、オーダーメイドの特上品はURクオリティすら生み出すとまで言われている……あのイカバラプリンセス」

 

 

 ガチで全部オーダーメイドしたら、製作費1000万gを超えてくるだろうやべぇ奴である。

 

 

「見たところその魔杖以外の装備はイカバラで揃えておるじゃろ。ワシの見立てじゃ総額500万g超えといったところじゃの」

 

「ごひゃ……!?」

 

 

 ビックリしたナナがフードの中の犬耳を震わせる。

 

 まぁそれも無理はない。

 メリーは今、500人のナナを身に纏っているようなものなのだから。

 

 1ナナ=1万g

 

 

「っていうか。その魔杖だって王都の有名杖ブランド、山紫水明製だろ? すげーな」

 

「ほっほっほ。嬢ちゃんはまさに、全身ブランドレディじゃのう」

 

 

 見れば見るほど、メリーの装備はガチ物の高級品ばかりだ。

 これだけ高性能な物を揃えていれば、多少自分の適性が低くても装備の力でごり押せる。

 

 こいつらはお嬢様がここまで一人旅をしてきた、その助けになってきたんだろう。

 五体満足でここにメリーがいるのが、何よりの証拠だ。

 

 

「嬢ちゃん。あんたは確かにいい目をしておる。こいつはそうそう雑な悪事に手を付けたりはせんから、依頼主を襲ったりとかはまずないじゃろう」

 

「………」

 

「じゃがしかし、働きに見合う対価をしっかり払えぬような輩に全力で尽くすほど、善人でもない? そうじゃろ、白布?」

 

「そりゃそうだ。割に合わない仕事をやらされて時間を無駄に食うくらいなら……俺は自由を取る」

 

「!?」

 

 

 ダンジョン攻略は魅力的だが、何の見返りもなしに奉仕活動するほど時間も善意も持ち合わせていないからな。

 

 最悪エスケープオアストリップだ。アンドかもしれない。

 

 

「じゃからの……ちゃーんと、報酬については相談することじゃ。嬢ちゃんも相当に金が必要らしいが、焦りは禁物じゃて」

 

 

 相変わらず妙に含蓄ある感じの口ぶりで語るドバンの爺さんの言葉に、流石は貴族の育ちの良さ、聞き始めれば大人しく、ちゃんと耳を傾けていたメリー。

 しばらく考えるそぶりをみせて、納得したように頷けば。

 

 

「……そうね。自分に有利に進めようとし過ぎて礼儀や誠実さを欠いていたわ。ごめんなさい」

 

 

 彼女は驚くほど素直に、こっちに深々と頭を下げて謝った。

 

 

「………」

 

 

 ドバンの爺さんがドヤッとした顔で俺を見る。

 

 

(……正直、超が付くほど助けてもらっちまったなぁ)

 

 

 亀の甲より年の功っていうが、おかげで不利な契約を結ばされずに済みそうだ。

 

 

「……いや、俺の方こそここまで誘っといてゴネようとしたんだ。悪かった」

 

 

 返す言葉と共に俺も深々と頭を下げて、メリーに謝罪する。

 

 

 

 こうして俺とメリーは、互いに謝り合った。

 

 メリーの奇襲、俺の駄々こね。

 互いに不義理を働きこじれそうだった関係は、この瞬間いくらかイーブンに、対等に近づいた。

 

 

(相手の事情に巻き込まれた部分は不可逆だから、そこは後の交渉に使わせてもらおう)

 

 

 次の段階のことが考えられるくらいには、俺の頭も冷えた。

 

 

「さ、後はそこでどうしていいか困っとる従者も混ぜて、価格交渉せい」

 

 

 自分の役目はここで終わりだと、ドバンの爺さんがクールに部屋の隅の椅子に腰掛ける。

 その目は俺に「貸しじゃぞ」と言っていた。

 

 

(憎たらしいが、恩に着るぜ。ありがとう、ドバンの爺さん)

 

 

 後でもう一本。さっき渡した奴よりいい酒をプレゼントだ。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

 クールタイムを挟み、話は改めて、依頼をどう受けるかという段になる。

 

 

(メリーの立場、状況を聞いてしまった以上、今はまさしく乗り掛かった舟。無理矢理乗せられたとはいえ、乗ったからにはもう運賃が発生しているし、対岸まで止まれない)

 

 

 だったら。

 

 

(利用できるだけ利用して、最大限得するように交渉するだけだ)

 

 

「んじゃあそろそろ、交渉といこうか」

 

「ええ、望むところよ」

 

 

 仕切り直したおかげで、ほどよい緊張感と共に俺とメリーは対峙する。

 

 主な議題は報酬の内容。

 ここで手を抜いてレアアイテムの入手機会を減らされるのは、絶対に避けたい。

 

 ゆえに!

 

 

「《イクイップ》」

 

 

 交渉装備、フルイクイップ!

 

 と。

 

 

「《イクイップ》」

 

 

 見れば、メリーも何やら追加で指輪の類を装備していた。

 そして先ほどまでとは明らかに違う、口達者そうな気配が俺に伝わってきていて。

 

 

「………フッ」

 

「………フフッ」

 

 

 まぁ、持ってるよな。貴族なら。

 

 

「……スゥ」

 

「……んっ!」

 

 

 やってやろうじゃないか。

 

 

「――ダンジョンで手に入るお宝は全部俺たちが所有する!」

 

「――いいえ、最奥の宝を始めダンジョンの宝は私が所有し、その上で適正な報酬金額を精査して提示するわ!」

 

「それだと報酬計算に時間がかかって拘束時間が伸びる! 即物で支払ってくれ!」

 

「私は現金が必要なの! アイテムはドバンさんに適正価格で買い取ってもらうわ! 必要ならその後で買い戻してよ!」

 

 

 こうして、俺たちは真っ向から依頼について相談し始めた。

 さっきまでとは違う、お互いに一番いい所を探り合うような舌戦は、激しくはあれどどこかワクワクする時間だった。

 

 

「ほっほっほ。争え、もっと争え!」

 

「主様、ファイトです!」

 

 

 そんな俺たちを見つめる外野も、浮かべているのは困惑ではなく楽しげな表情で。

 

 そして。

 

 

「……んじゃ、その最奧の宝ってのだけはメリーの取り分で、他は俺たちがもらうってことで」

 

「くっ。いいわ、それで手を打ちましょう。ほんとはもうちょっと欲しかったけど、これ以上やるともっと酷い取り分になりそうだし……」

 

「クックック。適性の差が出たな」

 

 

 議論に議論を重ね、終わってみれば、かなり俺たちが得するだろう形での決着になった。

 

 本当は最奥の宝とやらも現物をまず俺が獲得して、その品の適正金額を俺が支払うって形に持っていきたかったんだが、まぁいいだろう。よくはないが。

 

 これ以上するとメリー泣きそうだったから勘弁してやる。

 

 

「容赦ないのう、白布は」

 

「レアアイテムが絡む以上手は抜かん」

 

「さすがです、主様」

 

 

 なんて、やいのやいのやっていると。

 

 

「……ちょっと、聞いてもらえるかしら」

 

 

 メリーの真剣な声が部屋に響く。 

 

 

「改めて……私にはもう後がないの。だからこのクエスト、必ず成功させなきゃいけない」

 

 

 彼女はそう言いながら、テーブルに手をついて頭を下げる。

 さっきもそうだが、頭を下げるという行為は貴族が軽々にしていいものじゃない。

 

 ないのだが。

 

 

「白布、ナナさん。どうか、あなたたちの力を……私に貸して!」

 

 

 その貴族らしからぬ姿勢に、深い誠実さと必死さを、俺はヒシヒシと感じ取る。

 交渉時から付けっぱだった『真偽の指輪』も、彼女の決意を強く俺に示していた。

 

 

 

「頭を上げてくれ、メリー」

 

 

 メリー・サウザンドという依頼主。

 正直彼女に逆転の目がどれだけあるのかもわからないし、アリアンド王国の貴族ってのもライカンのナナを抱える身としてはデメリットではあるんだが。

 

 

(それでも)

 

 

 利害とは別の部分で、彼女の力になりたいと思う俺がいる。

 

 だから。

 

 

「……ダンジョン攻略、請け負うぜ。ついでにその最奥の財宝とやら、拝ませてもらおう」

 

「主様の決定にございます。どうぞわたくしたちにお任せください。メリー様」

 

「……! ありがとう! よろしく頼むわ!」

 

 

 こうして。

 俺にとって初めての、リアルダンジョン攻略が始まるのだった。

 

 




魔術師のローブ/ブランド:イカバラプリンセス(SR)
メリーが装備している超高級超高性能なブランド物の魔術師のローブ。
耐熱耐寒耐毒耐呪に、耐魔耐物効果も付与されたマジモノの怪物クオリティ品。
さらには自動修繕効果も付与されており、ボロボロになっても時間が経てば元通り。
専用のソーイングセットを使うことで速攻修繕も可能のスグレモノ。
一着お値段300万g越えも納得の一級品である。


ここまで読んでくださりありがとうございます!
お気に入り、感想、高評価、レビュー等、応援してもらえるととっても嬉しいです。


次回、レッツゴーダンジョン!
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