異世界ストリップ~俺はレアアイテムをコンプリートして世界を手にする!~ 作:夏目八尋
まったく、みんな大好きだぜ!
ということで6話です。
またお気軽に楽しんでってください。とっても嬉しいので!
それではよろしくお願いします!
結論から言おう。
俺は、失敗してしまった。
「セン君、セン君っ!」
栄えある治安世紀末な孤児院を取り戻すべく、ミリエラに最高の体験をさせてから最悪のトラウマを植えつけよう大作戦を実行した――その結果。
「セン君、セーンーくーんー」
「………」
「……返事しないと、チュー、しちゃうよ?」
「はーい。っていうか、俺の膝の上にのって抱き着いて、返事も何もないだろうが!」
「えへへー」
どういうわけだかミリエラの好感度が天元突破、なつき度1000%になったのである。
つまり、ハーフサキュバス幼女を全裸に剥いたら、その日から好き好き言い出した件。
……うん! わけがわからないよ!
「セン君、セン君!」
ミリエラはあの日以来、四六時中俺の後ろを付いてくるようになった。
この付いてくる先が本当に場所を選んでなくて、ヤバい。
「セン君セン君、どこいくの?」
「トイレ」
「はーい」
「……って、一緒に入ろうとするんじゃない!!」
さらに、事あるごとに絡んできては、ハーフサキュバスの名に恥じない猛アタックだ。
たとえば俺の日課である技術研鑽の時間にひょっこり顔を出した場合――。
「セン君セン君、なにするの?」
「《ストリップ》の練習だ」
「……脱がすの?」
「そうだ……って、え?」
「セン君なら、……いいよ?」
「ばっ! 自分からスカートたくし上げるなぁ!!」
ご覧の有様だよ!!
「セン君だったら、わたし、何されても……」
「しない! しないから! っていうか《ストリップ》は奪うための技であって、そんな望んで捧げられても困るってのー!!」
桃色全開のミリエラの振る舞いに、俺はすっかり振り回されていた。
正直かなりやばい状態になってるミリエラだが、幸いその原因についてはすぐに知ることができた。
彼女に突然生えた頭翼と腰翼を見たマザー・マドレーヌが、その答えを知っていたのだ。
曰く、ハーフサキュバスの“覚醒”。
サキュバス族が生まれ持った執着心の発露、魅了向上、精力増強などの種族特性が後天的に発現する現象で、本来は心がある程度整った12歳頃に発生し、思春期の始まりとして扱われるものらしい。
元々早熟気味なミリエラだったが、大きな精神的衝撃から5才にして覚醒してしまい、その結果、育ちきってない体と心のバランスが大きく崩れ、乱れ、今みたいに感情の歯止めが利かない状態になってしまった。
本来出し入れ自由なはずの頭翼と腰翼が、ずーっと出しっぱなしになっているのもそのせいだとか。
つまり、俺が《ストリップ》でトラウマを植えつけるはずが、逆に彼女の覚醒を促し――。
「セン君、セン君。だーい好きっ」
この、超ド級えちえち美幼女俺のこと大好きハーフサキュバス幼馴染ミリエラ大・爆・誕っ!
……へと、繋がったわけである。
「今、彼女の口から語られている言葉は本音だよ。だから、センがちゃんと向き合っておやり」
マザーの鶴の一声で、事態が落ち着くまでのミリエラの相手は俺が務めることになった。
ただ、みんなの前で言われたマザーの言葉と、当のミリエラ自身の言動から、孤児院での俺の立場は大きく変化することになった。
即ち、ミリエラ対処班……ではなく、ミリエラの“いい人”。
それこそが孤児院で与えられた俺の、新たな役割だった。
「あらー、今日もいちゃついてるわねぇ。可愛いカップルさん」
「くぅ! どうしてオレじゃなくてセンなんだよミリエラちゃーん!」
「……目の毒」
「ぐぬぬぅっ。やっぱり愛は言葉にしなきゃ、行動で示さなきゃ、伝わらないのね!! ダンデー! アイラービュー!!」
そこはかとなく桃色雰囲気に染まった孤児院のみんなは、俺たちを温かく見守り始めた。
「お、ミリエラは一緒じゃないのか?」
「ミリエラ、センならそこだよー」
事あるごとに気を利かせては、俺たちをひとまとめにするようになり、結果。
「セン君、セン君っ!」
「ぐおおおおっ、昼寝タイムにまでひっついてくるな! 暑苦しいぃ!」
俺の自由はべたべたしたがるミリエラの行動も相まって、完璧に封じられてしまったのだ。
(どうして、どうしてこうなったーー!?)
完全に予想外の展開に、俺はどうにか打つ手がないかともがき続ける。
だがしかし。
「好きー!」
「がぁぁぁぁぁ!!」
覚醒して身体能力が向上したミリエラから、まだ未成熟なヒューマである俺は逃れることができない。
しかも覚醒すると一部装備適性もあがるとかで、ミリエラもその効果を存分に発揮しているらしかった。
サキュバス族の特性。下着全般に適性高めって、かなりズルいのではないかと思う。
毎日穿くじゃん! 絶対穿くじゃん! チートだよ、チート!!
「センく~ん」
「ぐぎぎ……はぁ、やめやめ。引き剥がせん」
今日も今日とてべったりくっつくミリエラを見る。
「あ、えへへ……」
試しによしよしと彼女の頭を撫でてみれば、ミリエラはふにゃりと蕩けた笑みを浮かべた。
ピンクの髪が揺れて、金の瞳が揺れて。
5才にして将来性抜群のビジュアルを誇るハーフサキュバスの微笑みは、やはりというかとんでもない破壊力で。
(……これはもう、結果オーライってことにしておこう)
仕掛けたのは俺の方だ。ならば、この結果は甘んじて受け止めなきゃいけないだろう。
それに、やっぱり、その、あれだ。
(美少女に好かれるってのは、すっごく嬉しいからなぁ……ふへへ)
ピコン!
破棄されていたギャルゲー脳が、無事帰還しました。
「よーしよし」
「うぇへへぇ……セン君もっとぉ~」
溶けてるミリエラをさらに撫でつつ、俺は計画の練り直しを始める。
(こうなった以上は、ミリエラも巻き込んでしまうか)
見方を変えれば、ミリエラは強力な味方だと言えなくもない。
賢く、将来性もあり、何より俺のことを好いてくれている彼女は、得難い存在ではないか。
あと可愛いし。
(そうと決まれば、さっそく俺の未来絵図を語って聞かせねば!)
脳内会議で計画変更!
ミリエラをガッツリ仲間にして、レアアイテムコンプへの道に大いに役立てる!
作戦決行即相談! 勧誘してパーティーINだ!
「ミリエラ、話がある」
「なぁに、結婚式の日取り?」
おや?
「それは……後々の課題ということで」
「うんうん、そうだね。まずは婚約からだね!」
おやおや?
「よし、ミリエラ。まずは落ち着こう」
「大丈夫だよセン君。今のわたしはこの上なく冷静だから!」
おめめぐるぐる、吐息はぁはぁ。
「……Oh」
ハハッ。まいったねこれは。
もしかしてキミ、
※ ※ ※
あくる日。
普段から寝泊まりに使っている4人部屋、にて。
「レアアイテムコンプリート?」
「そうだ。それが俺の生涯を賭けて目指す大目標だ」
俺はミリエラに、『財宝図鑑』と『神の布』を見せながら事情を説明した。
もっとも、転生やら神様やらって話は言っても混乱させるだけだから、両親から託された物を見てそう志した、という話に変えておいたが。
「財宝図鑑……この表紙、読めるの?」
「ああ、そのまんま財宝図鑑って書いてあるぞ?」
「へぇ……」
ミリエラは興味深そうに財宝図鑑を手に取って開けようとするが、本は開かない。
どうにも財宝図鑑は俺専用のアイテムらしく、俺以外の誰にも開くことができなかった。
ちなみに神の布は普通に布だから、今はミリエラが首に巻いている。
布に髪がもふっと乗っかってて、まるで純白のマフラーをしてるようでとても愛らしい――。
(……あれ、待てよ? あれって確か神が全身に巻いてた……)
神が、全身に、巻いていた。
「ミリエラ、脱げっ!」
「えっ、セン君いきなり大胆……でも、いいよ?」
「待て待て! その布。布だけな!? スッとかはらり……とかしなくていいから!!」
「ぷぅー」
俺は頭の中に浮かんだUの字を振り払いながら、着ているもの全部脱ぎ始めたミリエラを止めつつ、神の布だけ回収した。
(いやまぁ、ばっちぃってことはないとは思うが……)
これも、俺専用だな(決意)。
いざって時を除いては、まだまだタンスの肥やしである。効果もまだ未知数だしな。
謎のアイテム『神の布』。
装備するとなんか調子が良くなる以外は、未だ不明のままだ。
「ふーむ……」
脱衣チャンスを逃したミリエラが、開くことのできない財宝図鑑を手に、俺のベッドに寝転びながら口を開く。
「セン君にしか使えない秘密のアイテムかぁ……すごいね」
素直なお褒めの言葉がとても心地いい。
ミリエラの声はいつまでも聞いていたくなる甘い声だ。
「だろ? だから俺はこの本に、世界中のレアアイテムを集めてやるんだ」
得意げに鼻を鳴らす俺に、ミリエラが身を起こし、ずいと顔を寄せてくる。
密着することに迷いがない彼女は、そのまま俺の腕を掴むとピッタリとくっついた。
「ねぇねぇ。だったらセン君……大人になったら、孤児院を出て世界を旅するんだ?」
「そうなるな」
「じゃあ、わたしも付いてっていい?」
「ふむ……」
こちとらミリエラ仲間に入れようキャンペーン中の身。渡りに船な提案だ。
だがそれを顔に出すと負けた気がするので、俺はわざとらしく咳をして間を持たせる。
「うおっほん。……アイテムコンプの道は長く険しい。ミリエラにその覚悟があるか?」
「あう……うー」
仰々しく問いかければミリエラの顔に戸惑いが浮かぶ。
だが、俺が何かを言うよりも早く、彼女の瞳は真っ直ぐに俺を見返した。
「……あるよ。セン君が目指す道なら、わたしだって諦めないもん」
「そうか」
思った以上に固い決意表明を速攻でぶちかまされた俺は、そうか、としか言えなかった。
どうやらなつき度1000%は、きび団子貰った犬並みの付いてく指数を持ってるらしい。
決意に燃える金色の瞳が、なんとも頼もしい限りだ。
(まぁ、この分なら安心して連れ回せるな。こんなに可愛い仲間なら、多少愛が重くても大丈夫だろう。ギャルゲーあるあるだし)
なんて、思っていた矢先だった。
「……それに、セン君の初めては絶対にわたしが貰うんだから、逃がすわけには」
「え、なんだって?」
「ううん、なんでもないよ?」
「そうか」
…………うおっほん。
……聞ーこーえーたーよーーー!?!?
おもっくそ聞こえたよ!?!?
(なに、初めてを貰うって? それってあれでしょ? ピーでピーな奴でしょ!?)
覚醒ハーフサキュバスってそこまでなの!?
弱冠5才が何言ってるの!?
大人になったらどんな
こんな子と一緒に旅して、俺の体はもつの!?
なんかもう最初の町で骨抜きにされてずっとそこに居座って冒険終わりそうだよ!?
ハッピーだけど何も始まらないで終わるバッドエンドだよ!!
「……セン君?」
「えひゃいっ!」
ミリエラの甘ったるい呼び声ひとつが背筋を震わせる。
これから大人になるまでの10年、俺はこれに耐え続けなければいけないのか!?
(や、ばい。やばいやばいやばいやばい!!)
これはギャルゲーじゃない!! エロゲーだ!!
しかも前世じゃ発禁物のやべー奴だ!!
(対策が……対策が必要だ!)
最初の仲間が持っていた、最初のバッドエンドフラグ。
冒険が、始まる前に終わるエンド(R-18)!
大人になるまでに、あるいは大人になる前に、なんらかのミリエラ対策をしなければ。
(俺のアイテムコンプの旅は、そこで終了してしまう……!!)
まだミリエラが、俺の夢に協力的である内に。
サキュバスとしての力を100%発揮できないでいる、成人するまでに。
「……うおおお。俺はやる、俺はやるぞーーーー!!」
「うんうん。わたしも頑張るぞー、おー!」
この超絶可愛いハーフサキュバス幼馴染とのバッドエンドフラグを、折る!!
「あ、そうそうセン君。好きです、わたしを彼女にしてください」
「はい」
バッドエンドフラグを……折るんだ!!
ゲーム序盤にある大目標を捨てて目の前の幸せを得るやつ。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
楽しく読んでもらえたら最高です。
お気に入り、感想、高評価、レビュー等、応援してもらえるととっても嬉しいです。
あと、この手のお話が好きな人のところに届くように拡散とか紹介とかしてもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです。
今の時代はまず目立つのが大事だと数多の先人たちが語り継いでいるので、ぜひとも協力お願いします!
次回7話も、見るばなし。