異世界ストリップ~俺はレアアイテムをコンプリートして世界を手にする!~   作:夏目八尋

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60話をお届けします!
ここを読んでいる読者の皆さんは、バブちゃんを乗り越えてきた猛者たちだ。
顔つきが違う。

ということで、今回もよろしくお願いします!


第060話 ドラゴンの巣!

 

 その日、にわかに村が騒がしくなっていた。

 

 

「おいおい、聞いたか!?」

 

「聞いた聞いた! ちょっとマジでやばいよな!?」

 

「……?」

 

 

 別々の方向から酒場に入って来るや否や、興奮した様子で語りだす男たち。

 

 ボクはそれが気になって、そっと聞き耳を立てる。

 

 

「“開かずの扉”が開いたってな!」

 

「!? それ、ホント!?」

 

「うえ!?」

 

「え、あ……ごめんなさい」

 

 

 思わずテーブルを叩いて声を荒げてしまった。

 

 でも、最初は面食らった様子だった彼らも、すぐにニンマリとした笑みを浮かべると。

 

 

「まぁー、驚くのもしょうがねぇって話だよな」

 

「だな。気にしなくていいからな、坊主!」

 

 

 そう言ってボクの肩をバシバシ叩いて許してくれた。

 

 

「あはは……えっと、それで。その話、本当なの?」

 

「本当だとも! 何十人って奴らが証人さ!」

 

「なんでも鍵穴玉に光る鍵をぶち込んだら、そのままパーッと光って扉の向こうに吸い込まれちまったって話だぜ」

 

「連れもまとめて消えちまってたから、きっと扉が奥へ導いたんだってな!」

 

「……!」

 

 

 噂にしては具体的すぎるそれは、ボクの知識に照らし合わせても、事実だと確信に足るもので。

 

 

「教えてくれてありがとう! おじさん! お金ここに置いとくね!」

 

「おおい、まだ料理出しとらんぞ!?」

 

 

 お昼ご飯なんて食べてる暇がないくらいの状況に、ボクは大慌てで店を飛び出した。

 

 

「……これ、ヤバいよね?」

 

 

 飛び出したところで、ボクは自分の胸ポケットに向かって声をかける。

 

 返事はすぐに返ってきた。

 

 

「ヤバいなんてもんじゃないわよ! そのパーティがもしも生きて戻ってきてご覧なさいな、どんだけの超レアアイテムが世にバラまかれるか!!」

 

 

 鈴のように凛と響く声を上げる、ボクの相棒。

 彼女の焦り具合からも、事態が放置できないものだってのがよくわかる。

 

 

「とりあえず、現場に行って情報収集するわよ! テトラ!」

 

「了解、ラウナベル!」

 

 

 彼女の指示に従って、ボクは全力疾走で“開かずの扉”へと向かう。

 

 数分と待たずに到着すれば、尋ねるまでもなくその情報で溢れていた。

 

 

「俺たちは伝説を見た!」

 

「扉は開いた! 挑戦者は今、ドラゴンの山の宝物庫へ!」

 

 

 人々の声に合わせて陽気に竪琴をかき鳴らし、吟遊詩人が歌う。

 

 

「挑戦者の名前は白布! 勇猛果敢なるレアアイテムハンター!!」

 

「……白布!!」

 

 

 つい先日聞いた名前に、ボクはその人の顔を思い出す。

 

 隣の席に座った、年が近くて、そして……一目でわかるほどの、実力者だった。

 

 

「げぇー!? よりにもよってあの要注意人物!? 昨日の今日で動いたっての!?」

 

「うう、遅きに失したっていうんだっけ。やっちゃったかも……」

 

 

 でも、いまさら後悔してももう遅い。

 

 ボクたちは、ボクたちにできることをするしかない。

 

 

「こうなったら、直接追っかけるわよ!」

 

「うん! ……『風精霊(ふうせいれい)のブーツ』よ、力を貸して!!」

 

 

 装備している靴の力を開放する。

 瞬間、ボクの体は羽みたいに軽く、風に乗って駆け抜ける力を得る。

 

 

「さぁ、根性見せなさい! “勇者”テトラ!!」

 

「了解! 振り落とされないでよね、“導きの妖精”ラウナベル!!」

 

 

 跳ぶ。

 

 ボクたちは全速力で、彼らが目指すだろう先へと向かう。

 

 至竜が座する、白竜山脈最高峰。

 

 

(霊峰アルバの、ドラゴンの巣へ――!)

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

 クソでか扉を開けた向こう側は、これまた神秘的な小部屋でした。

 

 

「床にはでっかい魔法陣。天井は照明代わりの光る石」

 

「主様、あちらに両開きの扉がございます」

 

「小さな開かずの扉みたいね」

 

 

 部屋の特徴はこれだけ。

 さっきまでのめちゃくちゃでっかい空間からのギャップに、少しだけ息が詰まる。

 

 

「変に罠がある感じでもなし、とっとと扉を開けて出ようか」

 

「そうね。なんだか息苦しいし」

 

「わかる」

 

 

 意見が合ったメリーと頷きあっていると、先に扉に向かっていたナナから報告があった。

 

 

「主様、メリー様。この扉はどうやら、先ほどと同じ鍵扉のようにございます」

 

「あら、本当ね。開かずの扉と同じで緑色の玉がついてるわ」

 

「はい。普通に押しただけでは、ビクともいたしません」

 

「ほうほう」

 

 

 

 ………。

 

 

 

「――――白布ッッ!! 鍵! 鍵はある!?」

 

「あるじさま!!」

 

「え? あ、ああああ!?」

 

 

 慌てて自分の手元を見る。

 

 俺はしっかりと『マスター・キー』を握っていた。

 

 

「……ある!!」

 

「!? ふ、はぁぁぁぁぁー……お、驚いたぁぁ……!」

 

「わたくし、こ、腰が……」

 

 

 俺の言葉に安心して、メリーとナナがへなへなとその場にへたり込んだ。

 

 

「……っぶねぇ。壊れてたら詰んでたのか」

 

 

 URチート開錠アイテム『マスター・キー』はどんな鍵扉でも開くすごい奴だが、同時に使う度に破損判定が入る消耗品である。

 その破損率は装備適性Aの俺をもってしても、破損確率60%という期待値“使い捨て”の代物。

 モノワルドの九分九厘以上の人が、1回の使用でぶっ壊すアイテムである。

 

 

「ってことはこの部屋、『マスター・(ズル)キー』対策の部屋ってことか。おっかねぇ」

 

 

 実際俺も使い捨てのつもりでこのアイテムを使用した身。

 見事に罠に掛かったといえる。

 

 

(こんな狭くて何もない場所でずっと閉じ込められるとか、即死トラップよりもヤバい死に方するところだったぜ……)

 

 

 ファンタジーのセキュリティ、舐めたらあかんぜよ。

 

 

「……だがしかし。見方を変えればここは、間違いなく大事な場所へ繋がってるってことだな? つまりチャンスだ」

 

「あはは、そこで気持ちを切り替えられるあんたの胆力、どうなってるのかしらね」

 

「さすがは主様、にございます……」

 

「もうちょっと休憩したら、扉を開けて先に進もうな」

 

 

 さすがに腰砕けの二人を放置してはいけないもんな。

 

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 

 俺たちは魔法陣の上でしばらく休憩したのち、小さな開かずの扉の鍵を開けた。

 

 

「む。こっちは光らないで普通に開いたな」

 

 

 というか左右にスライドして開いた。

 開かずの扉とは似て非なる機構に、職人の技が冴え渡っている。

 

 

「扉の向こうは……上り坂、ね」

 

「真っ直ぐではなく緩やかに曲がっておりますね。先までは見通せなくなっています」

 

「なるほど、そう簡単には行かせてくれないってことだな」

 

 

 威厳よりも実利を取ったダンジョンスタイルだ。

 嫌いじゃない。

 

 

「とにかく、進むっきゃないだろう。俺たちの望みはこの道の先にしかない」

 

「はい」

 

「えぇ」

 

 

 ドラゴンの財宝を目指して、俺たちは歩き出す。

 このパッと見シンプルな道に、いったいどれだけの罠が仕掛けられているのか。

 

 

(だがしかし! 今の俺たちには秘密兵器がある!)

 

 

「……メリー」

 

「はいはい。チェックするわね」

 

 

 罠の有無は、メリーが都度《神の目》を使ってチェックしてくれる。

 天使に与えられたそのギフトに掛かれば、仕掛けられた罠の位置などパパッと判明してしまうのだ。

 

 

「使い始めれば、マジで便利だなそれ」

 

「そうね。罠がありそうなところにはアイコンがあるように見えるわ。そこの壁とか」

 

「危険そうな感じするか?」

 

「そんな感じはないわね」

 

「どれどれ?」

 

 

 ポチっとな。

 

 

「きゃあああ!?!?」

 

 

 突然天井から現れた拘束具に、メリーが捕まった。

 四肢を拘束されてしまった彼女はそのまま吊り上げられ、背を反り地面に向かって胸を突き出したポーズで宙ぶらりんになる。

 

 

「ちょっと!!」

 

「いや、どの程度の罠が仕掛けられてるのかチェックは必要だと思ってな」

 

「一個も罠踏まないなら必要ないでしょその確認!!」

 

「主様がボタンを押したにもかかわらず拘束されるとは……さすがです、メリー様」

 

「さすがです、じゃないでしょ!?!? もー! 早く解きなさいよーー!!」

 

 

 

 相変わらずの試練体質に感心しつつメリーを助けた俺たちは、今度こそ罠を避けつつ進んでいく。

 

 そうして俺たちは、そこへと辿り着いた。

 

 

「こ、ここは……!」

 

 

 坂を上った果てにある、鍵なし扉を開けた先。

 赤い岩壁で作られた空間と、壁から染み出した緑の液体が湯気を立たせる、人工的に工夫された痕跡を随所に残す大きな泉。

 

 鼻をくすぐるこの匂いは間違いなく……硫黄の類が混ざった香りで。

 

 

 カポーンッ。

 

 

 泉の端に設置してある竹細工から、素敵な音が響く。

 

 

「「………」」

 

 

 それらが指し示す答えは――。

 

 

「温泉だ」

 

「温泉にございますね」

 

「温泉だわ」

 

 

 ――まぎれもなく、温泉だった。

 

 

 




風精霊のブーツ(SR)
風を司る精霊の補助が得られる魔法が込められたブーツ。
装備者に対する空気抵抗を軽減、追い風による支援等で機動力を向上できる。
精霊装備適性がC以上、あるいは靴装備適性がB以上あると、某配管工もびっくりなハイジャンプが可能となる。


ここまで読んでくださりありがとうございます!
お気に入り、感想、高評価、レビュー等、応援してもらえるととっても嬉しいです。


次回、温泉回!!
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