神極のバディファイト   作:ヤギリ

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9.卒業ファイト開始!空乃vs紫音

 窓から差し込む朝日が、部屋を優しく照らしていた。

 

今日は卒業式。

中学生として迎える最後の朝だった。

制服に袖を通した空乃は、姿見の前でリボンを整える。

見慣れた制服。

何百回と着てきたその制服も、今日で最後になる。

 

空乃「……卒業かぁ。」

 

小さく呟く。

不思議と涙は出なかった。

寂しい気持ちはある。

でも、それ以上に胸を躍らせる出来事が待っている。

 

――卒業ファイト。

 

昨日の選抜会で決まった、紫音との一戦。

中学生最後のバディファイト。負ける気なんて、これっぽっちもなかった。空乃はデッキケースを手に取る。中には何度も一緒に戦ってきた相棒のデッキ。軽く握りしめると、小さく笑った。

 

空乃「よし、行こう」

 

 

桜並木、空気はまだ肌寒いが優しい風が桜の花びらを静かに撫でて、花びらが待っている。空には雲一つなく、太陽が暖かく地上を照らしている。

 

今日は極越都立第2中学校の卒業式。

空乃や紫音、卒業する3年生の皆がどこかソワソワしながら制服の胸元に薄ピンクの花のコサージュを付ける。これだけで今日からこの学校から卒業するんだという自覚が出る。

 

「卒業生、入場。」

 

体育館の扉が開き、後輩達や来賓の方々の拍手に迎えられて、卒業生が入場する。全員が壇上の前に並んだ所で一斉に着席する。

 

校歌斉唱が終わり、卒業証書授与が行われる。1人1人順番に呼ばれては壇上にあがり校長から証書を受け取る。次に空乃が呼ばれる。

卒業証書を受け取りながら、空乃は思う。

 

空乃(そっか、もう中学生じゃないんだ。)

 

たった一枚の紙なのに、ずっしりと重く感じた。あの日入学したばかりだと思っていた三年間が、まるで昨日のことのようだった。

 

卒業式はなんの問題もなく滞りなく進み

「卒業生、退場」の声と共に卒業式は終わりを迎えた。

 

卒業生達は教室に戻り、担任から最後のメッセージが送られる。

 

「先生は、君たちを誇りに思っています……。」

 

先生は一度言葉を切り、教室中をゆっくりと見渡した。

 

「私は、君たちの担任を受け持てたことを、心から嬉しく思います。」

 

その声は、いつものように穏やかだった。

だが、次の言葉を口にしようとした瞬間、先生は少し俯く。

 

「今日で君たちは卒業してしまうが……。」

 

そこで先生は苦笑いを浮かべ、小さく息を吐いた。

 

「……悪い。少しだけ、後ろを向かせてくれ。」

 

そう言って黒板の方へ背を向ける。

 

静まり返った教室に、かすかなすすり泣きだけが響いた。

先生は必死に涙をこらえていた。

その姿を見て、教室のあちこちから鼻をすする音が聞こえ始める。

涙をぬぐう者。

唇を噛み締める者。

そして、つられるように涙を流す者もいた。

 

1〜2分程度だろうか、先生は生徒達に向きなおり、いつもの笑みを浮かべた。

 

「みんな、卒業おめでとう。元気でな」

 

たったそれだけの言葉だった。

それなのに、その一言には三年間の思い出と、生徒たちへの想いが詰まっていた。

教室のあちこちから再びすすり泣く声が漏れる。

 

「ありがとうございました!」

 

誰かがそう叫ぶと、それはすぐに教室中へ広がった。

生徒たちも先生の気持ちに応えるように声を張って最後のお礼を返した。

 

「ありがとうございました!!」

 

先生もまた、笑顔のまま何度も頷いていた。

 

 

 

教室を後にした空乃達は、ゆっくりと校舎を出る。

 

校門をくぐった瞬間、それまでの静けさが嘘だったかのように、辺りは活気に包まれていた。

 

桜並木の下には数多くの屋台が軒を連ね、唐揚げや焼きそばやたこ焼きなどの香ばしい匂いが風に乗って漂ってくる。

卒業生や在校生、保護者や来賓者が思い思いに屋台を巡り、あちこちで笑い声が響いていた。

 

「卒業おめでとう!」

 

そんな祝福の声が飛び交い、写真を撮り合う生徒たちの姿も目立つ。

卒業を惜しむ涙は、いつの間にか笑顔へと変わっていた。

 

 

優香「わぁ〜!屋台いっぱい!空乃ちゃん、まずはたこ焼き食べよ!」

 

美白「優香さん!空乃ちゃんは卒業ファイトの前ですのよ!」

 

空乃「大丈夫だよ、卒業ファイトまではまだ少し時間もあるし」

 

優香「そうそう!それに腹が減ってはファイトはできぬ。って言うでしょ〜!」

 

美白「なんで優香さんが言うんですか」

 

 

美白のツッコミも気に留めず、空乃と優香は屋台の方へと駆け出していく。

 

「待ってよ、優香ちゃん!」

 

「早い者勝ちだよ〜!」

 

そんな二人の声が、賑わいの中へと消えていった。

美白は苦笑しながら、その背中を見送る。

そして隣に立つ紫音へ視線を向けた。

 

美白「紫音さんは行かないのですか?」

 

紫音は桜並木の先を静かに見つめたまま、小さく微笑む。

 

紫音「ええ。少しだけ……一人にしてもらえるかしら。」

 

その表情は穏やかだった。

けれど、その瞳にはどこか、この学校で過ごした三年間を惜しむような色が宿っていた。

 

紫音は近くに咲く桜の木を静かに見上げ、そっと目を閉じた。

 

来月になれば、私達は高校生になる。

だけど――私が進むのは、空乃達とは違う高校。

覚悟はとっくに決めていたはずだった。

それでも胸の奥には、まだ少しだけ寂しさが残っている。

 

もう、この制服を着て登校することもない。

まさか、自分がこんなにもノスタルジックな感傷を抱くなんて思ってもみなかった。

 

紫音「……ふふっ。」

 

思わず、小さな笑みがこぼれる。

 

こんな感情になるなんて、自分でも少し可笑しかった。

 

風が吹き抜け、桜の花びらがひらりと舞う。

紫音はその花びらを目で追いながら、ゆっくりと目を開けた。

 

空乃「紫音ちゃん!」

 

静かな空気を一瞬で明るくする声。

呼ぶ声に振り向けばそこには、いつもの屈託のない笑顔の空乃と、そして自分を支えてくれた美白と優香もいた。

3人とも紫音にとっての大事な友達。この3人と居る事がずっと当たり前だった。

 

空乃「はい、紫音ちゃん、たこ焼き食べよ!」

 

紫音はたこ焼きを受け取り、小さく笑みを浮かべる。

今はただ、この三人と笑い合える今この時間を、もう少しだけ胸に刻んでいたいと思った。

 

 

『まもなく特別レクリエーション、卒業ファイトを初めます。卒業生代表、天季 空乃さんと咲楽 紫音さんは特設ファイトステージまでお越しください。』

 

校内アナウンスが2人を呼び出す

 

空乃「あ、ついに始まるね」

 

紫音「ええ。行きましょうか空乃」

 

優香「2人とも頑張ってね!」

 

美白「素晴らしいファイトを期待してまいすよ」

 

 

「うん、ありがとう!」そうお礼を言って空乃は紫音の手を引いて駆け出す。紫音は驚く事もなく、空乃に手を引かれるまま駆けた。

 

 

卒業ファイトは、この日のためだけに設営された特設ファイトステージで行われる。

 

場所は中学校のすぐ隣にある広大なグラウンド。

 

普段は体育祭や部活動で使われるその場所も、この日ばかりは様相が一変していた。

 

巨大なステージを囲むように観客席が設けられ、卒業生や在校生、保護者、来賓が次々と席を埋めていく。

 

ステージ中央には、二人のファイターが向かい合うためのバディファイトフィールド。

周囲には大型モニターも設置され、どの席からでもファイトの様子が見られるようになっていた。

 

卒業生にとって最後の思い出となる一戦。

 

それが――卒業ファイトである。

 

ファイトステージの周りには屋台から食べものを買って椅子や地面に座りながら見る生徒、屋上からファイトを観戦する生徒や一般人が、まだかまだかと卒業ファイトの開始を待っていた。

 

 

空乃と紫音は、それぞれのファイターエリアへと歩み出る。

 

二人がステージへ姿を現した瞬間、観客席から大きな歓声が沸き起こった。

 

「空乃ちゃん!頑張ってー!」

 

「紫音先輩、負けるなー!」

 

在校生の声援が、春風に乗ってグラウンドいっぱいに響き渡る。

桜の花びらが舞い散る中、二人は静かに向かい合った。

 

これが正真正銘、この中学校で二人が交わす最後のバディファイト。

 

卒業証書を受け取り、一人の中学生として歩んできた三年間に区切りをつける一戦だった。

 

だが、二人の表情に緊張の色はない。

 

空乃はいつものようにまっすぐな笑みを浮かべ、紫音もまた静かな笑みを返す。言葉は交わさない。

それでも、お互いが何を思っているのかは分かっていた。

 

「最高のファイトにしよう。」

 

その想いだけは、二人の間で確かに通じ合っていた。

その時だった。

 

『それでは皆様、お待たせいたしました!』

 

会場にアナウンスが響き渡る。

 

『これより、極越都立第二中学校・卒業記念レクリエーション――卒業ファイトを開始いたします!!』

 

割れんばかりの拍手と歓声が、特設ファイトステージを包み込んだ。

 

2人は静かに深呼吸をする。

そして空乃と紫音はデッキケースを腕に当てがう。するとデッキケースに収納されているバンドが腕に装着された。そしてデッキが自動でシャッフルされ、原理などは分からないが、デッキトップから2枚が薄青い光りの札となってファイターの両脇に浮かんで表示され、手札のカードも薄青く発光してファイターの眼前に浮かび上がる

 

 

空乃「眩き光り、灼度の熱光となる!ルミナイズ〈太陽の導き〉」

 

紫音「美しき月の光りが運命を決める。ルミナイズ、〈優美なる月光〉」

 

 

オープンTHEフラッグ

 

 

空乃「ドラゴンワールド」

◼️手札6/ゲージ2/ライフ10

 

紫音「スタードラゴンワールド」

◼️手札6/ゲージ2/ライフ10

 

 

紫音「先攻はいただくわ。ドロー、チャージ&ドロー」

◼️手札6→7/ゲージ2→3

 

紫音は自分の手札を見る。表情には出さないが、この卒業ファイトにかける紫音の思いに応えるように、初手の手札はいい感じだ。

 

紫音「ゲージ1払い、センターにバディコール、〈月光竜 ルーナレイン・ドラゴン〉」

◼️手札7→6/ゲージ3→2/LP10→11

 

 

月光竜 ルーナレイン・ドラゴン

スタードラゴンW

月光竜

サイズ2/攻5000/防3000/打撃2

◼️【コールコスト】ゲージ1払う。

◼️このカードが登場した時、君のデッキの上から3枚を見て、その中の〈月華〉1枚までをこのカードのソウルに入れる。デッキを見たらシャッフルする。この能力は1ターンに1回だけ使える。

◼️『月光麗華』(このカードのソウルに【月華】が3枚以上ある。)

このカードの攻撃力+3000、防御力+3000!

【ソウルガード】

 

 

その瞬間――。

 

紫音を中心に、フィールド全体を包み込むように幻想的な空間が広がった。

昼間だったはずの空はゆっくりと夜へと染まり、無数の星々が静かに瞬き始める。その夜空に浮かぶのはただ一つ。

眩いほどに、それでいてどこか優しい光を放つ満月。

降り注ぐ月光はフィールドを白銀色に照らし出し、その光の柱の中から、一頭の純白の竜がゆっくりと姿を現した。

大きく肉翼を広げ、音もなく紫音のセンターへ降り立つ。

肘から手首、膝から足首にかけては、縦一線の溝が刻まれた機械的なアーマーに覆われ、その白銀の装甲は月光を受けて神々しく輝いている。

顳顬からは前方へ突き出すように二本の純白の角。

純白の身体には淡い蒼色のラインが流れるように走り、その胸部中央では、月華の力を宿す蒼いクリスタルが静かに脈動していた。

 

まるで月そのものが竜の姿を得たかのような、神秘的な存在感。

 

それが――

 

月光竜 ルーナレイン・ドラゴン。

 

ルーナレインドラゴンの登場の美しさに会場は静まり、皆が息を呑む。

 

 

空乃「出たね、ルーナレインドラゴン」

 

紫音「ルーナレインドラゴンの能力、登場した時、デッキトップから3枚を確認………。中から1枚をソウルに入れる。私は〈月光装機 ムーン・ライトクロー〉を月合体!」

 

 

月光装機 ムーンライトクロー

スタードラゴンW

月光装機/月華

サイズ1/攻4000/防1000/打撃1

◼️このカードがソウルにある〈月光竜〉の打撃力+1!

【月合体】

 

ムーンライトクローは光りの華となってルーナの周りを浮遊する。

 

ルーナレインドラゴン

打撃2→3

 

 

紫音「さらにライトに〈月光装機 ムーン・グライド〉をコールして、ルーナに月合体」

手札6→5

 

 

月光装機 ムーン・グライト

スタードラゴンW

月光装機/月華

サイズ1/攻2000/防1000/打撃1

◼️このカードがソウルにある〈月光竜〉の攻撃力+2000!

【月合体】

 

ルーナレインドラゴン

攻5000→7000

 

 

紫音「まだよ!さらにレフトに〈月光装機 ムーンディフェンダー〉をコール、そして月合体」

◼️手札5→4

 

 

月光装機 ムーン・ディフェンダー

スタードラゴンW

月光装機/月華

サイズ1/攻1000/防4000/打撃1

◼️このカードがソウルにある〈月光竜〉の防御力+3000!

【月合体】

 

ルーナレインドラゴン

防3000→6000

 

 

紫音「アタックフェイズ、ルーナレインドラゴンで空乃へ攻撃、打撃3よ」

 

 

ルーナの右手に機械的な3本爪の装甲が装備され、その爪で空乃を引っ掻く。

 

 

空乃「うぁぁ!!」LP10→7

 

 

紫音の放った大打撃の先制攻撃に、一瞬静まり返っていた会場が大歓声に包まれる。

 

驚きと興奮が観客席を駆け巡る。

しかし、その歓声は紫音の耳には届いていないかのようだった。

鋭く、それでいて静かな眼差しを空乃へ向ける。

 

観客ではない。

実況でもない。

今、紫音の世界には、目の前に立つ一人のライバルしか映っていなかった。

 

紫音「ターンエンド。」

◼️手札4/ゲージ3/LP11

 

その一言は穏やかだった。

だが、その瞳は静かに告げている。

 

――さあ、あなたの番よ。空乃。

 




サボりにサボってもう2年………
なんか、もうモチベ上がらないんすよね。笑
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