僕は今、大勢のイケメン集団に囲まれておでんを食べている……。
突然何を言っているんだと思う人も多いとは思うが、事実なのだから仕方が無い。
事の始まりは今日の夕飯は外で食べようと思い、アルバイト帰りに良く行くレストランに入った事に起因する。
このレストランの店長さんは気さくなお兄さんで、雰囲気も良く、お値段も店長のお兄さんがレストランの隣の菜園で育てた素材を使っている為か、普段から財政的に厳しい日々を送る僕でもこうして気軽に外食をしようと思える程にリーズナブルだ。
しかし今日に限っては、この場所に僕の居場所は無いと、瞬時に悟った。
右を見ても左を見ても……眩しいまでのイケメンな人達が、おでんを食べていたのだ。
そのまま僕は無言でドアを閉めて、近くの牛丼チェーン店で済ませようと思ったのだが、それを遮る声が耳に届く。
「あれ、もしかして今日も来てくれたのかい?」
店を出るよりも早く、おでん鍋を囲んでいた一人であり、このイケメン集団の中では唯一の顔見知りでもある店長さんに声を掛けられた。
「えっと、今日は貸し切りか何かなんですか?」
「うん。まあ、今日は色々とあってその打ち上げでね。皆で思いっきり体を動かしたからお腹がへっちゃってさ」
「そうなんですか」
どうやらこのイケメンな人達は、店長さんの個人的な知り合いらしい。
そんな中に部外者な僕が居るというのも無粋だろう。
僕は一言、それじゃあと言ってお店を出ようとしたのだが、イケメン集団の一人が出汁の染みた大根を頬張りながら前にでる。
「折角だから少年も参加していけば良いじゃないか」
このイケメンな人達の中では、一番の年配の方に見える、その男性は僕を少年と呼び、シュッと指を二本立ててポーズを決めた。
「え、僕は……」
既に居る事が居た堪れなくなってきているので、早々にこの場所を立ち去りたいと正直に言う事など出来る筈も無く、僕は急遽、このイケメンパラダイスのおでん大会に緊急参戦する事となってしまったのである。
「確かに気に入らない奴だって居るかも知れないけどさ。それでも君から歩み寄っていくのが一番の近道じゃないのかな?」
「やっぱりそうなんですかね」
おでんを食べながら世間話に華を咲かせていたら、いつの間にか僕は、目の前の男性にアルバイト先で抱えている人間関係の悩みを相談していた……。
初対面だというのに、どこか不思議な雰囲気を纏ったこの人には、不思議と何でも話してしまえる様な気分になってしまう。
最後にはサムズアップという親指を上に向ける、最後まで頑張った人だけが許されるというポーズも教えてもらったりした。
「それにしても美味いな、このおでん!」
「でしょう。俺が菜園で育てた野菜はそんじょそこらの野菜と比べられない程に、良いできですからね」
「……熱いな」
その脇ではイケメンの一人がおでんを美味いと良いながら口の中へと掻っ込み、店長さんがこんこんと菜園の野菜の良さを説明している。
更にその傍らでは、猫舌なのか小皿に移したおでんを延々とフーフーしていたりと、賑やかな雰囲気でこのイケメン達のおでんパーティーは続いていたのだが……。