「お婆ちゃんが言っていた。おでんを食べる時は……」
人差し指を天に掲げ、おでんの食べ方を語られるというのは、僕の人生で初めての体験だった。
どうやら話を聞く限り、このおばあちゃんからの教えを説く、イケメンなこの人も店長さんと同様に料理はかなりの腕な様で今度は、鯖の味噌煮を食べさせてくれると言っていたのだが、どうして鯖の味噌煮?
殆どのイケメンな人達はさっきの鯖の味噌煮を強くプッシュしてくる人と同様に成人しているみたいだけれど、中には僕とそんなに歳の変わらない学生だと思われる人達も居た。
だけど何て言えば言いんだろうか。
「このおでんというのは、中々に興味深いね。検索してみよう」
おでんを食べながらそう言うと、いきなり立ち上がり白紙の分厚い本を広げて、天を仰ぎながらまだお婆ちゃんとおでんの話を語る人の隣で、おでん情報を話し始める子。
更にはいきなり髪の色に赤、青、黄色に紫のメッシュが入ったかと思うと、突如として性格が豹変してしまう子がいたり、周囲の大人達に急かされて、唐突にバイオリンを弾き始めたこの周りには、コウモリみたいなオモチャ? が飛び交っていたり。
「今日から俺達はダチだぜ!」
「は、はあ……」
そんな変わった同年代の子達を見ていたら、昔のドラマの再放送で見た様な、短ランにリーゼントという不良ルックな子に僕は気に入られたらしく、拳を合わせて上下に叩き握手するという、何だか不思議な挨拶を交わしたりと、兎に角個性豊かな子達ばかりだ。
しかしこのイケメン達プラス、僕の参加するおでんパーティーはまだまだこんなものでは終わらない。
先程のバイオリンの演奏が切欠となったのか、今度はイケメンの一人が即席のかくし芸大会を始めてしまったのだ。
「さあ、ショータイムだ」
多くのアクセサリーを身に着けた人が前に出てそう言うと、掌みたいな形状の形が中央にデザインされた腹部のベルトに、これまた変わったデザインの大きな指輪を押し当てると、いきなり格好がカジュアルな服装からタキシード姿になってしまったり、いきなり腕が赤い模様の中に、消えたかと思うと、大量のドーナツを取り出して、しょっぱい物の後は甘いものが食べたくなったと言って食べ始めたり、何か仕掛けのあるマジックなのだと分かっているのだけれど、それでも本当の魔法を使っているかの様に見える。
本人も自分は魔法使いだ何て、小粋なジョークを飛ばしている辺り、もしかしたら舞台でマジックを披露したりする本職のマジシャンの人なのかも知れない。
「良し!それじゃ盛り上がってきたとこで、今度は歌でも歌うか!」
プロ顔負けのバイオリンの演奏に続き、本当の魔法の様なマジックショーが終わった後、先程からずっと検索しようと言った後、延々とおでん情報を網羅していた子とペアを組んで、ハードボイルドな帽子を被った人が、お店の奥からカラオケマシーンを引っ張り出して来て、歌い始める。
それに便乗してか、続いて何故か木の枝にパンツをぶら下げた人も、歌い始めたりとかなりの盛り上がりを見せる中、この場にいきなり銀色のオーロラが出現した。
何を言っているのだと思われるかも知れないが、見たままの事実なのだから、他に言い様がない。
しかもその銀色のオーロラの中から一人の人が出現したのだ。
「ここがおでんパーティーの世界(会場)か」
首にマゼンタのトイカメラをぶら下げて現れた新たなイケメンは、誰に言うでも無く発した呟きは確かに僕の耳に届いた。