「おのれディケイド! 貴様のせいでこの世界のおでんは破壊されてしまった!」
「いや、俺はおでんを食ってただけなんだが……」
メガネのおじさんは、銀のオーロラから出てくると同時に、同じくパーティー会場に出現したオーロラから出て来たマゼンタのトイカメラを首からぶら下げたイケメンさんを睨みつけて、意味不明な言葉を口走る。
当然ながら、理不尽な難癖をされたイケメンさんも、餅巾着を食べながら反論した。
この二人の間にどういった因縁があるのかは僕には分からないが、流石にそんな理屈は無いだろうと部外者の僕でも思う。
「うるさーーーーーーーーーーーーい! この世界を貴様の旅の終わりにしてくれるわ!」
だけどイケメンさんの反論に眼鏡のおじさんは聞く耳も持たず、逆上して怒りの雄叫びを上げると、またしても巨大なオーロラが、おじさんの背後に浮かび上がり、そのオーロラの中からこの世の者とは思えない異形の姿の怪物の大群が押し寄せる。
「やれやれ、どうやらこの世界でも俺は戦わなくちゃいけないらしいな」
異常な事態だというのにも関わらず、トイカメラを首に提げたイケメンさんは恐怖など微塵も感じさせないばかりか、呆れ混じりに溜息を吐き出すと、一枚のカードを取り出した。そしてやっぱり腹部にはベルトの存在。
周りを見れば他のイケメンの皆さんも、真剣な表情でそれぞれ形の違うベルトを腹部に巻き付けている。
中には例外も居るけれど、殆どはそんな感じだ。
そしてイケメンの皆さんは一斉に叫ぶ。
『変身!』
その言葉を合図にイケメンの皆さんの姿が変わり、オーロラの中から出て来た怪物達に対して向かい合う。
ここから激しい戦いの火蓋が切って落とされるのかと、僕は予想したのだが……この先の展開は予想外の事態へと発展した。
何故ならおじさんの後ろに控える怪物達が、背中からある物を取り出したからである。
大きな鍋を始めとした調理器具に加え、豊富な食材の数々……いや、自分でも何を馬鹿な事を言ってるんだとは思うのだけど、現実としてそんな光景が目の前に広がっているのだから仕方が無い。
「ディケイド! 貴様のせいでこの世界のおでんは破壊されてしまった! だからこそ貴様におでん作り勝負を挑む!」
さっきからディケイド、ディケイドと連呼しているおじさんだけど、あの今はトイカメラと同じ色の全身マゼンタになってしまったイケメンさんの名前なのだろうか。
どう見ても日本人に見えるけど、実はハーフなのかも。
でもそんな事よりも、さっき眼鏡のおじさんはなんて言った?
確か……。
「おでん勝負って言いました?」
何て事は無い。
あまりの異常事態に僕の常識的な感覚が、何処か麻痺してしまったのだろう。
僕がもしも冷静だったなら、絶対に行わない筈なのにこの異常な状況を作り出してしまった眼鏡のおじさんへと話し掛けてしまったのである。
「その通りだよ少年。そしてこのおでん勝負の審査員は公平にする為にも君にやってもらう!」
案の定、僕の質問におじさんは答えを返した上に、とんでもない役目を押し付けられた。
もしもこの世界にヒーローが本当に居るのなら、どうか僕をこのカオスな状況から救い出してください……いや本当に。