「あんた達は……」
出された怪物達の作った絶品のおでんを前に、絶望に沈むイケメンさん達の前に、エプロンを装着した集団が姿を現して、中央に陣取っていた全体的に緑色な人が、諦めるなとイケメンさん達を鼓舞する。
その姿を前にして、メガネのおじさんにディケイドと連呼されていたマゼンタ色のイケメンさんが呟く。
「最後まで諦めるんじゃない! 俺達もおでん作りに力を貸す! 皆の力で最高のおでんを作り出すんだ!」
緑の人の掛け声を合図に、緑の色の人の周囲の人達がイケメンさん達の下へと駆けつけて励ましの声を掛けつつ、横一列に並ぶ。
総勢で何十人と居るのだけど、こうして居並ぶと何だか壮観で、悪の怪物達を倒す為に終結したヒーローにのようだ。
実際にこれからする事はおでん作りだけれども……。
意外な増援を得たイケメンさん達は勢いを取り戻し、凄まじい勢いでおでん作りを再開した。
先刻まではバラバラに行われていたおでん作りだったのだけど、緑の色の人達を中心に団結力が生まれているのが僕にも分かる。
その効果なのかな?
直前まで言い争いをしていた半分こと宇宙飛行士っぽいイケメンさん達も、お互いに協力しておでん作りに取り組んでいた。
「さあ、これで完成だ」
やがて出来上がったおでんを、代表して僕の知人である店長さんが持って来てくれた。
まあ、現在の店長さんも今の姿は見慣れた調理を兼任しているコック姿ではなく、金色と黒を貴重にした赤い複眼を持つ異形の姿をしているけど。
「そ、それじゃあ頂きます」
僕は再びおでんに箸を伸ばし、最初に持ってこられたおでんと同様に大根を一撮み。
見た目としては普通のおでんだ。
何の変哲も無いただのおでん。
だけどこのおでんからは、何か得体の知れない凄みを感じさせる。
恐る恐る僕は、大根を口の中へと運ぶ。
「こ、これは!?」
口の中に大根を入れた次の瞬間、僕は今までに無い衝撃を受けた。
さっき食べたおでんが全てを調和させる最高のおでんとするならば、今食べたおでんは他には存在しない個性の主張!
僕は、急いで他のおでん種も次々と口にしていく。
舌の上に広がる数々の個性的な味。
だけどその個性は己を誇示しながら、他の個性を潰す事無く共存している。
「この勝負……店長さん達の勝ちです!」
僕は全力で叫ぶ。
「ちょっと待て!」
イケメンさん達が勝利に沸く中で、この結果に一人納得出来なかったのか、メガネのおじさんが抗議の声を上げる。
「往生際が悪いぞ鳴滝」
「黙れディケイド! 何故だ少年!? 何故私達の作ったおでんがライダー達の作ったおでんに負けたのだ!?」
僕は言葉で納得してもらおうとは最初から考えていない。
「食べてみてください」
何か言いたそうな顔をするメガネのおじさんだったけど、僕の差し出したおでんをおじさんは一口だけ口にする。
「こ、この味は……」
僕の言いたい事が伝わったのだろう。
ディケイドと連呼しているマゼンタ色のイケメンさんを睨み付けながらもおでんの味に感動したのか、涙を流すメガネのおじさん。
「今回は大人しく負けを認めてやる……だが! これで終わったと思うな! 次の世界こそ貴様の旅の終わりとしてくれるわ!」
最後にそう捨て台詞を残し、メガネのおじさんは怪物達と共に出現した巨大なオーロラの中へと姿を消してしまった……。
今度こそ終わったんだ。
……で、この惨状はどう後始末を着けるんだろうか?
僕は全ての戦いが終わったのだとという雰囲気を醸し出すイケメン集団さん達を見ながら、結局この展開に終始おいてけぼりだった一般人として、おでんを食べながら改めて現実逃避する事にした。
結論。
やっぱりおでんは美味しいです。