今日は木曜日。
今、私は校庭にいます。
これから初めての「箒を使った飛行訓練」なのですよ。
いかにも魔法使い、ってか魔女っぽい魔法だよね。
まあこの授業に関しては全く試すことが出来なかったし、心配と言えば心配なんだけどさ。
しっかり魔法の杖は持ってるし、一応の用心として購買で「トランプ」を3セットほど買っておいた。
飛行訓練は二寮合同での授業なので、私達スリザリン寮の子達はグリフィンドールの子達を待ってる最中なのです。
結構暇なのでトランプを使って
一組のトランプを、手の上で瞬間的に扇状に開いてすぐ閉じたり、高い位置からばらばらっと落として綺麗に下の手で受け止めるとか。
そう言った「奇術」的なカードテクニックですね。
皆さん楽しんでくれているようで。
こう言った「細工なし」の技術は魔法界でも受ける様子。
その内パーティーとかで披露しようかな?
そうやっているうちに、グリフィンドールの子達も到着。
全員そろうと、飛行訓練の教官であるマダム・フーチが飛行訓練に入ることを宣言する。
微妙に軍隊チックなんだよね、この方。
で、まずは箒を浮かす練習。
これは大体の人が失敗してた。
かく言う私もピクリともしやがらねえ。
ムッときたので「上がれ!」と気合(恫喝ともいう)籠めて言ったらば。
ごんっ!
あ、顎に直撃ぃっ!?
切っ先だけ跳ね上がって、私の顎をかちあげたのです。
不意打ち的に来たんで全く避けらんなかった。
おいそこ、三人組、笑ってんじゃないよ全く。
三回目でやっと普通に箒は浮き上がってくれた。
さて、こっから本格的な飛行訓練。
フーチ先生の合図で箒にまたがったまま地面をける。
そうすると浮き上がるから、2mくらいの所で機首?を下げて降りてくる、と。
さて上手く行くかなあ。
いざって時は懐のトランプが火を吹くぜ、なんつって。
なんて考えながら先生の合図を待ってたんだけど。
「戻ってきなさい!」
ってなんかすごい勢いですっ飛んでくのはロングボトム君!?
もう6m以上は浮き上がってる!
あそっから落ちたら最悪死ぬぞ!?
私は懐からトランプを取りだし、まとめてロングボトム君に向けて「投げて飛ばした」。
トランプのカードは散らばりながらもロングボトム君目がけて飛んでいく。
これは男塾の男爵ディーノという見た目「変態」の使う「
本来は「ゾーリンゲンカード」という鉄製で、縁を剃刀のように研いである凶器を使ってそれを相手に投げつけて切り刻む技だ。
もちろん普通のトランプだし、それで人を切るようなまねは私にはできない。
とは言え、
「せいゃぁーっ!!」
軽身功を使ってトランプを足場に宙を駆ける事は出来る!
一気にロングボトム君の所まで飛ぶと、
「わあ~っ!!」
彼は正に今箒から振り落とされた所で、
がちっ!
私は両足でロングボトム君の後ろからホールド!
このままだと二人とも落っこちる。
だから、私はこの場での切り札を切った。
「うりゃりゃりゃりゃぁーっ!!」
私の魔法の杖を両の手で回転させる。
この時、手首の微妙なひねりで杖に下への風を作り出す。
そうすることで上昇の力、揚力を生み出すのだ。
これぞ神拳寺奥義・
ってか痛い痛い!?
筋肉がみりみりとぶっ壊れてる音がするぅ!?
そらそうですよね! 超人が何年もの時間と命の危険を冒して習得する超絶技だもんね!
とは言えこのまま2人で地面に叩きつけられるのは御免被るぅ!?
何とかもうちょっと…、よっしゃあ!!
ロングボトム君と無事に降りられた。
危なかったわ…、って痛った!?
首から手首にかけてまんべんなく痛い!
うわ、手首ん所が真っ黒に内出血しとる!
これやばくないか?
あ、意識が…。
「知らない、てんじょ」
ネタは良いですか、そうですか。
目が覚めると、私は白いシーツに包まれておりました。
どうやら医務室みたいですね。
全然知らない天井ぢゃなかったです、はい。
なんて考えてると、
「大丈夫かしら」
そう声を駆けてくる人が。
校医のマダム・ボンフリー先生である。
気が付いたら魔法薬学の助手みたいになってて、その関係でボンフリー先生とも顔見知りなのである。
で、
「とんでもない無茶をしたものね」
はい、無茶しました。
肩は複雑に断裂、肘は骨ごと砕けて、手首ももうちょっとでもげるレベルだったとか。
…洒落になんない。
とは言え、あくまで「普通の骨折、筋断裂」レベルだったんで、通常の回復魔法で
魔法ってすげえ。
とは言え、まだ完全に治った訳でもないので、もうすこし休んでから寮に帰るようにとの事。
じゃ、ゆっくりともうひと眠り、と。
目を覚ますと、そこには鷲鼻のスネイプ先生と、おや、ロングボトム君。
何とも珍しい組み合わせだこと。
確かロングボトム君ってスネイプ先生を嫌って、というか恐れていたと思ったんだけど。
私が体勢を起こすと、
「いい、まだ寝ていろ」
とスネイプ先生。
おとなしく横になっていると、
「…ふむ、顔色も悪くない。
明日からの授業は問題なさそうだな」
そう言うスネイプ先生と、ほっとした顔をしているロングボトム君。
「そろそろ食事の時間だ、我輩は戻る」
ぶっきらぼうにスネイプ先生はそう言うと、ロングボトム君を置いて一人さっさと保健室を出て行った。
残されたのは私とロングボトム君。
ぢいっとお見合い状態。
勘弁してほしい。
「で、なんだね?」
こっちから水を向けると、
「ご、ごめんなさい…」
消えそうな声でそう言われた。
ううむ、そこまで謝られる事じゃないんだよなあ。
というのも、多分あの状態ならばフーチ先生が何とかしてただろうし。
私が手を出したのって余計なお世話だった可能性大なんだよね。
勝手に動いちゃったんだから、そんなにかしこまる事ないって。
「…それでも、ごめんなさい。
それから、その、ありがとう」
…おっけ、謝罪は受け取るよ。
それで終わり、いいね。
「うん、ありがとう…」
じゃ、そう言う事で。
さてと、飯にしようかね。
と立ち上がった所で。
「!!!!!!」
ロングボトム君が慌てて後ろを向いた。
なんぞ?
っと思ったら、そっか、肩から腕にかけての負傷だったからか。
よく見ると上着とシャツが壁のハンガーに掛かってる。
つまり私の上半身はスポーツブラだけなんだね。
思春期の男の子にはちょっと刺激が強かったか。
まあ私の場合、ボリュームを出してるのが脂肪ではなく筋肉、ってのがねえ。
色気なんてほぼゼロだけど、まあ経験のないチ○リー君だとしょうがないのかしらん。
前世男だとどうもその辺りの警戒が薄いなあ、なんて。
さて、着替えて食堂への道すがら、あれから何が起こったか聞いた。
どうもマルフォイ君が怒ったらしく、それにポッター君が乗っかって空中決戦したみたいで。
それをまずいことにマクゴナガル先生に見られたとか。
マルフォイ君は上手くやって先生に見られないように着陸、ポッター君だけが引っ張ってかれたんだそうだ。
何やってんだか二人とも。
さて飛行訓練って危険度の高い授業でおふざけどころか危険行為、となるとかなりのお説教が待っていそうだ。
ロングボトム君は「退学なんてないよね」なんて不安に感じてるようだけど、まあ大丈夫じゃない?
正直、やんちゃをする生徒って毎年いると思うんだよね。
二年先輩には「やっばい奴」がいるって聞いてるし。
そうそう、ウィーズリー兄弟。
多分だけど、その二人絶対飛行訓練でやらかしてるって。
本人たちは周りに被害が出ないようやったつもりかも知んないけど、一歩間違えれば、ってとこだったと思うよ。
ガキの考える事なんてそんなもんだって。
それに比べたらマルフォイ君とポッター君の喧嘩なんて可愛いもんだって。
とか言いながら食堂についてみると。
なんか一触即発な雰囲気。
マルフォイ君とポッター君が睨み合ってる。
なんか険呑。
マルフォイ君がポッター君になにかいって、そして離れていく。
そこでマルフォイ君が私に気が付いた。
三人がこっちに早足で近づいてくる。
「おい、体、大丈夫なのか!」
「ちゃんと治ってるよな?」
「腕もげたりしてねえよな?」
大丈夫よん。
この通り、っと力こぶを見せてみる。
ぐいいぃっと。
「…心配して損した」
「お前なああぁ」
「ほんと脳筋なのな」
マルフォイ君にはともかく、ゴイル君に脳筋扱いされたくないんだが。
まあいいや。
「ご心配おかけしました」
そう謝っておく。
そこで三人は私の後ろにいるロングボトム君に気付いたようだ。
一斉に何か言おうとしたようだけど。
「いやあ、さっき見舞いに来てくれててさ、謝って貰っちゃった」
と能天気に言ってやったら呆れたような顔をして黙っちゃった。
彼らは授業が終わった後、すぐに見舞いに来たそうだけど、面会謝絶だったそうで、大層心配していたそうだ。
こりゃ、予想以上に大ごとだったのかも知んないなあ。
後からボンフリー先生に菓子折りでも持ってかないとなあ。
あ、私の杖はクラッブ君が回収してくれてるとの事。
ルームメイトの子に渡しておいたって。
ありがたいねえ。
さて、と。
三人が寮に戻っていくと入れ替わりに、私は食堂の席に着いた。
本日のごはんはキドニーパイを中心としたもの。
肉っ気があるのはありがたい。
いくら回復したとはいえ、筋断裂を起こした体は肉を所望しているからね。
めっしめしぃ♪。
ということで、たらふくご飯を胃袋に詰め込んでいます。
うまい! 焼き加減も絶妙で、さいっこう!
ほんとはシェフに金一封とか出したいんだけど、これ作ってんのホグワーツにいる「屋敷しもべ妖精」なんだよね。
マグルに伝わる「ミルク一杯を労働対価とする妖精」で、「衣服をもらうと出て行ってしまう」というやつ。
なんで、褒めても良いけど何か上げるのは厳禁なんだよねえ。
非常に残念。
このスープも良いね、豆の味がしっかり出てるけど臭味はない。
綺麗に灰汁がとられてる。
このデザートの乾果物プディングも美味しい!
濃厚な甘みが疲れを癒すわぁ~。
そんなことを思いつつ、ふと前に目をやると、
「まったく何て自分勝手なの!」
グレンジャーさんがポッター君とウィーズリー君を罵倒してらっしゃった。
で、私が目をやった瞬間、たまたま向こうの三人と視線がかち合った。
「…」「…」「…」
もぐもぐごっくん。
「なにか?」
口いっぱい頬張ってたプディングをベロンと飲み込んで、私はそう言った。
「…いえ、なんでもないわ」
相手側代表として、グレンジャーさんがそう言った。
さいでっか。