ホグワーツの凶犬~ハリー・ポッター×男塾~   作:黒羆屋

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第12話 決闘騒ぎ

 疲れた体と満たされた胃袋を抱えて寮に戻ると、サロンでみんなが私を迎えてくれました。

「グリフィンドール」の為に無茶をすることはない、とは言われたものの、突発的に飛びだしちゃったわけですしね。

 なんか考えてたわけでもないんですよね。

 そう言う訳で、あの子のみならず、うちの寮の人たちが危なくなったらまず間違いなく飛びだしちゃうと思うんで、最初にごめんね、と言っておくのです。

 と言いましたら、呆れられました。

 どうやら皆さん私の事を猪突猛進の猪武者か何かと勘違いしてらっしゃるのではないでしょうか。

「いやいや」

「実際猪じゃねえか」

「吶喊吶喊の脳筋だな」

 ちょっとまて三人組、そこまで!?

「「「「そうだ!」」」」

 え、私、そこまで?

「「「「その通り!」」」」

 サロンにいた人達ちみんなにそう言われてちょっとへこんだ。

 同級のみんなどころか、寮付き幽霊の「血まみれ男爵」にも言葉少なに怒られた。

「自分を、…大事に」

 って。

 ううむ、そんなに無茶してるつもりは…。

「反省の色がないぞ」

 マルフォイ君にずばっと言い切られました。

 どうも私の無茶とみんなの無茶の境界が違う気がするんだよね。

 やはりもうちょっと穏便に何とかしよう、みんなを怖がらせるのもどうかと思うし。

 

 さて、なんか夜になると、マルフォイ君とクラッブ君がそわそわし始めた。

「どうしたのよ?」

 声を掛けると、彼らは声を潜めて「ポッターと決闘する」んだとの事。

 ずいぶんと物々しい言い回しなんだけど、決闘ってどうすんの?

 マスケットとサーベルでやるわけ?

 それなら反対するけど。

「なんだその前時代的な決闘法は」

 あ、マルフォイ君から見ても古臭いんだ、これ。

 で、どう言うルールなのよ?

 

 …ふむ、いわゆる「魔法使いの決闘」なのね。

 杖魔法を撃ちあって相手をKOすればいい、と。

 ううむ、どう言おうか。

 

 

 正直言って、私は反対だな。

 …まあ、落ち着いて。

 正直言って、普通に魔法での決闘をするなら、マルフォイ君が負けるとはとても思えない。

 なんでかって?

 今君が言った通りさ。

 君は純血の一族の嫡男、家でも魔法の呪文は練習してたはず。

 今やってる妖精の魔法、これってより上位の呪文学に行く前の基礎だけど、ここいら辺は一通り練習してきたんじゃないかな?

 …だよね。

 だから、普通に呪文を撃ちあって勝敗を決める競技、ってことなら経験の差でマルフォイ君の勝ちだ。

 そもそもポッター君は今の段階だとろくに呪文も使えないからね。

 ただ、そうなるとポッター君はどうやって攻撃するか、ってことだよね。

 呪文を知らない彼は、純粋な魔力の放出、杖から出る火花みたいので攻撃してくると思うんだよ。

 それは危険だ。

 …そうだね、本来なら赤ちゃんがぱちぱちやってるのと変わらないような代物だ。

 当たったってちょっとやけどする程度だろう。

 ただね、それも力の籠め具合では洒落にならない力が出る可能性がある。

 ポッター君は例の、何とか大魔王を赤ん坊の時にやっつけたんだよね。

 それで魔法界に名前が響いてる。

 そういう奴だと、潜在的な魔力も相応以上にあると思った方が良い。

 で、なんかのきっかけで実力以上の魔力を発揮しちゃったとしたら、予想外の怪我を負うかもしれないって事。

 今の段階で、それは馬鹿馬鹿しくないかな?

 決闘をするなら、ある程度ポッター君が呪文を覚えた時点でするのが良いと思うんだ。

 ポッター君をただ叩きのめすんじゃなく、魔法使いとしての実力を見せつけることで、相手が下だ、じゃなくて、俺が上、ってのを分からせるのが「カッコイイ」と思うんだけど。

 という感じに言葉を重ねてみました。

 正直今のまんまマルフォイ君とポッター君を喧嘩させとくと、双方にとって悪い方向にしか行かない感じがするんだよね。

 なんというか、異文化の衝突からの戦争みたいなの。

 マルフォイ君が魔法界の常識ガチガチなのはともかく、ポッター君もマグル界の常識そのまま持ち込んでる感じでねえ。

 最悪ポッター君が魔法界から追い出されかねないんだよなあ、と。

 坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、が高じて自分を認めない魔法界が悪い、て感じになるような気がする。

 ぜひともここはお互いに自身を高める方向で競うとマルフォイ君の為にも後々なるのではなかろうか。

 悪いがポッター君はどうでもいいw

 今んとこポッター君よりはロングボトム君の方が私的には近い感じだし。

 そうすると、

「そうか、上に行く、か…」

 まあ元々のスペックが高いし、家柄もルックスも良い、となれば既に頂点にいると思っても不思議はないけどね。

 とは言え、ここの先生方はマルフォイ君程度の実力じゃ歯牙にも掛けないような方々ばっかりだし、在野の魔法使いの中にもとんでもない実力者が居そうな気がいする。

 そういった連中を抑え、「魔法使いとして」大成できればそれは魔法族としての誉れ、って事になってマルフォイ家の誉れにもなるわけだ。

 それは今後マルフォイ君にとっても大きな糧になるんではなかろうかい。

 …ついでに言うと、その後ろにくっついてるクラッブ君やゴイル君にとっても有益な訳だしね。

 むろん私もw

 こう、どんどんと黒い方向へ思考が流れるのはどうしてなんでしょうかね。

 やっぱり藤堂兵衛とスィングしやすいのかしら、やだなあ。

 そんな考えをしている私を尻目に、マルフォイ君は「ポッターが十分に知識を得てから、その上で勝つ!」と盛り上がっています。

 クラップ君とゴイル君はそれに納得していないようですが。

「まあ別にポッター君は純然たる敵ってわけでもないしねえ」

 そこいら辺が分からない様子。

 敵は敵、やっつければ良い。

 まあそれもありなんだけどね。

 この場合、ポッター君は敵っていうより「張り合う相手」なんだよ。

 ライバルってやつ?

 目の前にあるとりあえずの目標だね。

 ポッター君って「世間に認められた人」な訳じゃない?

 そうそう、悪の大魔王やっつけた勇者みたいなもん。

 …どうかした? なんか変な顔してるけど。

 まあいいや。

 で、ポッター君と勝負して勝つことでポッター君の評価を下げる、そうすると相対的にこう、天秤の左右みたいにマルフォイ君の株が上がる、そう言う感じに思ってたんじゃない?

 そうじゃないんだ。

 所詮ポッター君は「とりあえずの目標」にすぎない。

 それをハードル下げてクリアしてもマルフォイ君自身が強くなった訳じゃないからねえ。

 どうせ勝つなら自分が強くなって勝ちたいじゃん?

 テストでさ、自分が40点で、相手の足引っ張って0点にして勝つより、相手が90点でも自分が100点で勝つ方がかっこいいって事。

 

 

 

 なるほど!:スリザリン寮生ビンセント・クラッブの言

 

 ビンセントは今一つ納得がいっていなかった。

 敵はいつ潰しても敵なのに。

 そもそも敵ではない、というのがビンセント、グレゴリーには理解が出来ていなかったようだ。

 彼らにとって敵は敵、味方は味方、非常に短絡で簡単な考え方が浸透していた。

 魔法族は文化の概念がマグルとは違う部分がある。

 中世時代のように、自分達および身内は「人」、それ以外は「人外」として見ており、人類博愛などの概念は薄い。

 史実にあった、誰からも尊敬されるような高潔な騎士が、異教徒の腹を裂いて金貨を探すような、そんな概念だ。

 江戸時代までの日本に置いても隣村は水資源を奪う敵として、なにかあれば普通に農具などで撲殺して何も悔いる事がなかったのと同じようなものだ。

 その辺りがマグル差別にも繋がっており、かつてヴォルデモートに純血至上主義を利用されてその親派に引き込まれた者が多くいた。

 4つの寮の対立もそれを助長しているのだが、ホグワーツを運営している理事会などもそもそもが古い考えて支配されており、そこから抜け出せないでいた。

 そんなビンセントでも、なぜかマリー・ウェリントンの言葉は聞く気になる。

 彼女はマグル生まれなのだが、ビンセント達の間にするっと入り込んできた。

 ビンセントは自慢ではないが物覚えが悪い方だし、それを自覚している。

 それでも自分に分かるように話をしてくれるマリーには好感を覚えていた。

 

 彼女は、ポッター達グリフィンドールと戦う事について、

「テストでさ、自分が40点で、相手の足引っ張って0点にして勝つより、相手が90点でも自分が100点で勝つ方がかっこいいって事」

 そう言った。

「勝つこと自体が目的じゃなくて、あいつらと競う事で自分がより強くなることが大事」なのだと。

「だからホグワーツは4つの寮に分かれてるんだと思う。

 そうでなかったら、わざわざ寮を分けて、競わせる必要なんてないからね」

 そう言うものだろうか。

「それだったら、単純に純血の魔法界育ちの子達の寮、マグル生まれのマグル界育ちの子の寮に分けて、勉強する内容も変えた方が良くない?

 私はクラッブ君達と違って、魔法界の常識を知らないから、そう言うのを含めて教える必要があるでしょ。

 実際、私は『決闘』って言ったら時代遅れのマスケットとサーベルを思い出したわけだし。

 そういう部分で私らマグル生まれは後れを取ってるのさ。

 その部分を埋めるためには別途教育がいるはずなんだ。

 それを無視してでもホグワーツはマグル生まれを4つの寮に分けて入寮させた。

 だからさ、マグル生まれの奴も含めて、4つの寮で競いあって、みんなで強く、賢くなろう、って事なんだと思うんだよね」

 ううむ。

 ビンセントにはちょっと情報量の多い話だった。

 とは言え、そう(・・)なってなければビンセントはマリーに会っていない訳か。

 それはおもしろくなさそうだ。

 じゃあ自分はどうすべきだろうか。

 そう考えるビンセント。

「そりゃ、勉強して訓練して、強くなればいいんじゃね?

 学校だってクラッブ君が強くなるんなら大歓迎だろうし、お家の人も喜ばないかな?」

 ふむ、じゃあ頑張ろう。

 ビンセントは強くなる事、それを初めて意識した。

 

 その後、ビンセントとグレゴリーは結構簡単に強くなることを放棄し、その度にマリーに叱咤激励され、ちょっとづつ魔法使いとしての腕を上げて行くのだが、それは今後語られることになる。

 

 

 

 結局、マルフォイ君はポッター君に決闘の延期を伝えるフクロウ便を出した。

 決闘は今年度の末を予定との事。

 まあ今突発的にやらんで良かったのではなかろうか。

 マルフォイ家の嫡男を傷つけたとか、大魔王を倒した英雄を甚振(いたぶ)ったとか、外聞の悪い話にはならないようで良かったよ。

 そんなことを考えていた私はちょっと油断してたみたいだ。

 大したものじゃなかったから気にも留めていなかったんだけど、周囲からちくちくと刺さる嫌な視線の事を。

 

 ちなみに、マルフォイ君の出したフクロウ便は間に合わず、ポッター君達から恨み言を言われるか、と思ったんだけど、彼らの興味はすでに移り変わってた様子でした。




静山社のシリーズだと「妖精の呪文」が3年になると「呪文学」に切り替わるようです。
ここでは妖精の呪文を初心者向け、あまり応用の利かない呪文として規定させて頂いております。
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