ホグワーツの凶犬~ハリー・ポッター×男塾~   作:黒羆屋

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第15話 遊んだら、後始末

 たーのしー!

 たーのしーぞー!!

「おい」

 うははははははっ!

「おーい」

 まあだまだいきますよぉう、せぇんぱぁぁい!

「頼む、もうやめてやれ」

 なんだろうなあ、誰か…。

 ハッと気が付くと、腰の所にドラコ・マルフォイ君が。

 ん?

 周囲を見回すと、十人ほどの先輩方が地面に転がっていました。

 意識ある人は、半泣き状態の人がほとんど。

 そうじゃない人は恐怖の表情。

 …あ~。

「やりすぎた、かね?」

 軽く叩いてそれでだめならもうちょっと叩いてみようかと思ってたんだけど、どうも追い詰めすぎた感じだ。

 いやあ、ちょっと興が乗りすぎたかな。

 私がマルフォイ君に尋ねると、

「うん、やりすぎ」

 端的に答えが返ってきました。

 ああ、やっばいかも。

 これ、下手すると退学ものかねえ。

 まあ仕方なかろう、焦っても仕方ないしね。

 マグルの世界にはすでに生活するための環境は整ってるし、追い出されても困んないしなあ。

 

 さて、状況をマルフォイ君達に説明。

 ワルター・グレイ先輩率いる上級生グループにちょっかいを掛けられていた事。

 うちのオズボーンJr.に手を出して、犯人には一撃入れておいたこと。

 Jr.は女子に人気があるため、女子連からグレイ先輩達が嫌われた事(なお生理用品云々は省いて話してます)。

 焦った先輩方が暴力に訴えようとしたので反撃しただけの事。

 というのを切々と話した。

 んだけど。

 どんどんマルフォイ君の目が白くなっていく。

 白眼視という奴だね。

 そんな胡散臭い事をした事ないんだが。

「嘘をつくな」

 …一言で切って捨てられました、はい。

「いいか、そもそもだなあ…」

 守れ(プロテゴ)をこうやって破った奴の話は聞いたことがない。

 そもそも1年生で5年生に勝つこと自体がおかしい。

 お前色々分かってて企んだだろう。

 そう言ったことをね、お説教交じりに言われましたです。

 ううむ、ばれてましたか。

 男塾のキャラクターの知識や経験そのものは豊かなのですが、それを私自身の経験に落とし込むには、どうしても実地体験が必要なんだよね。

 だから、近い人たちには時折こうやって読まれる可能性もあるんだよね。

 …いやまさか私がそんなに分かりやすい訳は。

 そんなに単純ではないはず。

 え、顔に出やすいですかねぇ…。

 まあ、こっからは成行きに任せるしかないかな。

 正直、これ以上悪辣な事をしても意味ないし、また先輩方のお家に圧力掛ける方法も、…まあない事はないんだけど、これ以上藤堂兵衛化するのは避けたいしなあ。

 ここはマルフォイ君に間に入って貰って、先輩方との手打ちとした方が良いかも知んない。

 

 今回の事は表ざたにはしない事にしました。

 でないと、先輩方の将来に、ねえ。

 後2年ちょっとで先輩方卒業ですし、いくら実家があるからと言って、全員がそこの嫡男って訳でもない。

 そうなると就職という事になるんだろうけど、安定職の公務員となると変な瑕疵があるとそれだけで弾かれかねない訳で。

 後は1年生に十人がかりでのされた、となると外聞も悪いだろうしね。

 とは言え、純血の家系だと誇りとかしがらみとかで後に引けない可能性もある訳だし。

 なんというかまるでヤ○ザ屋さんのようなのりだが、名誉と面子が重視されるという点ではまあ似通ってはいるかな。

 そこで格上のマルフォイ家嫡男、ドラコ・マルフォイ君に出張って貰うとお互い実利が取れる、というもので。

 向こうさんは格上の純血の家系の彼に言われてしぶしぶ、という格好が作れる。

 こっちはもともと面倒事さえなければ良いので断る必要もない。

 せいぜいマルフォイ君に借りを作る程度。

 その程度なら何も困らないしなあ。

 まあ、マルフォイ君のお父上とかだと色々厄介かもだけど。

 とは言え、この程度の事でそんなに面倒事持ってくる事もないでしょ。

 

 その時の私は魔法界における「純血」という事を甘く見ていたのかもしれない。

 この後、いろいろとマルフォイ家が策謀していたことを知るのは大分後の事になってからである。

 

 

 

 僕では手に余る:マルフォイ家嫡男ドラコ・マルフォイの言

 

 本当に面倒な事になった。

 ドラコ・マルフォイはこう言った事に慣れていなかった。

 片やスリザリン寮の先輩。

 片やマグル生まれながらここの所親しくしている女生徒。

 彼としてはどちらに肩入れする訳にもいかない状況であった。

 まあ、マリー・ウェリントンからすれば、互いの不可侵を確約してもらえればいいだけなので、それほど悩む事ではなかったのだが。

 ドラコは必要以上に重たく受け止めてしまっていたのだ。

 まず、彼はマリーと先輩方に「杖の宣誓」を行ってもらうこととした。

 ヨーロッパの魔法族にとって神聖な焦点具である杖にかけて約束を守る、そう言った儀式だ。

 魔法の杖は魔法族にとって一生付き合うもう一人の自分とも言える存在。

 なんといっても、人が杖を選ぶのでなく、杖が人を選ぶ。

 そしてその杖は生涯に渡ってその人の専属となり、他の杖を使っても本来の力を発揮できない。

 それだけ重要なものなのだ。

「では、杖に誓って頂く、双方、納得していただけるか」

 時代がかった物言いをするドラコ。

 こう言う事はどうしてもそうなるものだろう。

 双方が頷く。

 とは言え、その表情は真逆だ。

 晴れ晴れとした顔のマリー。

 くやしさが溢れたグレイ先輩以下5年生グループ。

 まあ、その先にあるマリーの顔を睨みつけたとて、マリーが視線を返すだけで真っ青になるような状態なわけだが。

「私、マリー・ウェリントンは我が杖に掛けてこの誓約を堅持する」

「私、ワルター・グレイは我が杖に掛けてこの誓約を堅持する」

 双方の誓約の制約が終わったところで、ドラコが宣言をする。

「我、ドラコ・マルフォイの名においてこの誓約を締結する。この誓約が破られる事がなき事を望む」

 そうして、マリーとワルター一派の手打ちが行われたのであった。

 

 さて、その夜。

 ドラコは不安でいっぱいだった。

 というのも、このような「見届け人」は名誉ある事ではあるものの、これがきちんと正しく行われたのか自信がなかったからである。

 本来ならば、寮監のセブルス・スネイプ教授に質問しに行きたいところ。

 だが、それは出来ない。

 これは私闘の仲裁であり、ホグワーツの秩序を守るべき教授に相談していい事ではないだろうと考えたからである。

 まあ、これは杞憂であり、スリザリン寮の中のもめごとであればよほどの事がない限りスネイプは無難に片を付けようとするだろう。

 なんといってもスリザリンには名の通った家の子女が入寮しており、それを厳格に処分するというのは魔法界に暮らすものとしてはかなり厄介な事といえる。

 ともかく、自身にそこまでの自信がないドラコ。

 かと言ってビンセントやグレゴリーに聞くのは無駄が過ぎるというもの。

 他にはセオドール・ノットやブレーズ・ザビニなどはドラコと親しいといえるが、今回の件とは関係がなさすぎる。

 こう言うちょっと困った時にはマリーに聞くといい答えが返って来る事が多いのだが、そもそもマリーが今回の当事者だ。

 そうなると…。

 うんうん唸りながら悩んでいたドラコは、はたと閃いた。

 学生が駄目なら、もっと上の人がいるじゃないか。

 ドラコは便せんを引っ張りだすと、手紙を書き認め(かきしたため)た。

 それを梟に持たせると、梟は夜の空に飛び立っていった。

 

 さて、この一件以来、マリーに「スリザリンの闘犬」の二つ名が付いた。

 さらに、ドラコに「闘犬使い」の呼び名が付いた事を、彼はまだ知らないでいた。

 

 さらにさらに、後日譚。

 ワルター・グレイはこの後、己を磨き抜き、卒業時には最優秀生徒として表彰された。

 その後、彼は実家に帰るとすぐに「武者修行の旅」に出る。

 旅先で己を磨き、マグルを含めた人と関わっていった。

 そして一角の人物として魔法界の歴史に名を残すことになるのだが、それはまた別の話となる。

 

 

 

 思いもかけないプレゼント:マルフォイ家当主ルシウス・マルフォイの言

 

 その日、マルフォイ邸で書きものをしていたマルフォイ家の当主、ルシウス・マルフォイの元に、梟便が届いた。

 差出人は彼の息子であるドラコ・マルフォイ。

 ルシウスはドラコに何かあればいつでも梟便を送って来るよう言い含めていた。

 ホグワーツの内情は、ある程度は友人であり後輩でもあるスネイプから伝わって来る。

 とは言え、学生レベルの細かい事はなかなか聞こえてこない。

 この学生の話、というのは馬鹿にできず、いろいろと使い勝手(・・・・)が良かったりするのだ、ルシウスのような者にとっては。

 彼は魔法界において自身、というよりはマルフォイ家の権勢を強めるため、様々な手を使って表に裏に活動をしていた。

 息子の近況報告もまた重要な情報の一つなのだ。

 そして、

「ほほぅ、これは…」

 息子から送られてきた懸案、それはルシウスにとって、とても(・・・)面白かった。

「ふむ。

 グレイ家の嫡男と、マグル生まれの少女。

 しかもグレイ家の方が負けた、と」

 ルシウスの持つ情報だと、グレイ家の嫡男はなかなかに優秀だったはずだ。

 少女がドラコと同じ学年とすると、まともな呪文など使えるはずもない。

 さて、彼女がとてつもなく優秀なのか、それともグレイ家の子が評判倒れなだけか。

 ルシウスは取り急ぎ、ドラコに返信を送った。

 もう少し詳しい状況を知るために。

 

 すぐにルシウスはドラコからの詳細を受け取ることが出来た。

 ドラコとしてもこのような調停をすることは初めてであったのだろう。

 文章の所々に不安がにじみ出している。

 ルシウスはそれにほんの少し頬を緩め、息子のちょっとした成長を喜んだ。

 ただ、その内容は「親バカ」なルシウスとしてもいきなりは信じられない内容だった。

「んん…? これは、なかなかに…」

 一方の少女、1年生という事はたかだか十一歳かそこいらだろう。

 それが、五年生、十六歳くらいの少年、しかも魔法族としても優秀な部類に入る彼を「喧嘩で伸した」と。

 グレイが実際に「守れ(プロテゴ)」を使って、その上でマリーが勝利していると。

 その勝ち方も「バリアの上からひたすらぶっ叩いた」という訳の分からないもの。

 つまり、先手を取って殴りかかられるとひたすらサンドバッグになるという事で、大概の魔法族は勝てないのではなかろうか。

 まあ魔法にもいろいろあるので、熟練の魔法使いとなるとこんなありさまになる前に何とでも出来るだろうが。

 とは言え、

「うるさい抵抗者にちょっかいを出すきっかけ」にはなるような内容だ。

 グレイ家と言えばここ数十年純血の聖二十八家が一つ、ゴーント家の名乗りを得ようと必死になっている所。

 ゴーント家の前当主の兄弟の家系という事で、ゴーント家の直系を欲している訳だ。

 分家が本家を乗っ取る事はまあ珍しい事ではない。

 とは言え、グレイ家は保守派の中でマルフォイ家と勢力争いをする一派の、まあ末端である。

 異端は異教より憎し、などという事もあり、思想が近いがゆえに互いを認める事の出来ない関係というものもあるのだ。

 彼らに比べれば、「穢れた血」を容認するウィーズリー家の方がよほどまし。

 ルシウスの中ではそのようになっている。

 この一派を切り崩すネタの一つにはなりそうだ。

 

 ルシウスはうっそりと笑った。

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