ホグワーツの凶犬~ハリー・ポッター×男塾~   作:黒羆屋

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第17話 悪人問答

「つっかれたぁ~」

 私はしゃがみこみながらそう呟いた。

 周囲には同じように座り込んだり、ひっくり返っている屋敷しもべ妖精(ハウスエルフ)達の姿が。

 ここはホグワーツの厨房。

 私()はたった今まで激戦を繰り広げていたのである。

 

 これは遡る事1時間前の事。

 私は授業が終わった後に、ちょっと小腹を満たすためにホグワーツの厨房に立ち寄った。

 今日はハロウィン。

 屋敷しもべ妖精達が大わらわで調理室を飛び回っているだろう。

 そこに押しかけて、チョイとだけ食べ物を分けてもらうのだ。

 こんなことをちょくちょくしていたから、屋敷しもべ妖精達とはすっかり顔見知りだ。

 時々前世の知識や男塾の知識の中にある和風だったり、ホグワーツでは作られた事のない料理を提案して、試作したりもしている。

 これでも子どもの頃から料理はしてましたからね、優秀な体と優秀な才能バンザイ。

 中華系のチャーハンとか、中々に好評でしたね。

 ジャポニカ米は手に入りませんでしたがインディカ米で作るチャーハンもかなりおいしいです。

 素晴らしいのは屋敷しもべ妖精の家事スキルとそれをブーストする妖精魔法ですな。

 この場合の妖精魔法って、「妖精が使うような便利だったり、ちょっとしたいたずらに使う魔法」って意味です。

 で、鶏ガラのスープの水分を抜いて粉末にしたり、一瞬で寒天を戻したりとなかなか凄い。

 こう言った使い方は魔法族の主婦の方々が得意だそうで、ぜひとも学びたいものです。

 で、覗いたならそこは修羅場、というか阿鼻叫喚。

「ひゃっひゃっひゃあぁ~!」

 奇声を上げながら鍋やお玉が空を飛んでいた。

 じゃなくて。

 その脇にはホグワーツのいる騒霊(ポルターガイスト)の「ピーブス」が悪ふざけをしていた。

 しかも、だ。

 ちょうどこの日はハロウィン。

 屋敷しもべ妖精が一番忙しい日だ。

 そこでやらかすか。

 さすがにご飯を粗末に扱うのは前世日本人としては許し難い。

 こそーっとピーブスの後ろに近づき。

 すぅ~っ。

 

「何しとるかこの馬鹿モノぉ~っ!!」

 

 武術の呼吸法で鍛え込んでいる肺活量で一喝!

 某塾長ほどの声量はないものの、ピーブスの鼓膜?を揺らすことには成功!

 ピーブスは騒霊だけあって、物理的に叩く事が出来ません。

 だけど、音を聞いたり、光を感じる事は出来るので、大声は効果があるんじゃないかと思ったんですが、効果覿面。

 ふらふらぁっとするとそのままひっくり返りました。

 その後すぐに「血まみれ男爵」が来てくれて、ピーブスを回収していってくれました。

 それは良いんですけど…。

「…これはひどい」

 完成していた料理のうち、いくつかが完全に駄目になっていたんです。

 掃除などは魔法を使えば一発です。

 数が足りなくなったのも複製呪文で何とか。

 ただ、料理全部がパーになったのもあるようで、かなり頑張ってもしんどい感じ。

 なので。

「いよっし、いつもおやつを恵んでくれる君達に、今回私が助っ人やっちゃおう!」

 という事で、お手伝いをする事にいたしました。

 屋敷しもべ妖精達には恐れ多いって言われましたが、この状況だと本当にハロウィンパーティーが駄目になる可能性があるんでごり押しさせて頂きました。

 …まあハロウィンに一品作ってみたいなあって思ったのもあるんですけどね。

 

 まずはイギリス料理の定番であるウナギw。

 普通はぶつ切りにしてゼリー寄せにするのが定番。

 とは言え、これは好き嫌いが激しくてねえ…。

 普通に売ってるやつだと私も苦手。

 なので、まずは頭を固定して3枚におろします。

 私物の鉄串(鶴刺千本とも言うw)に刺して火で炙る。

 その間に漬け調味料を作ります。

 魚醤(ガルム)、ってマジかこれ、古代ローマで使われてたやつで、確か歴史から消えた調味料なはずなんだけど。

 まあいいや、魚醤とワイン、砂糖と香辛料と香草を使って「なんちゃって醤油ベースのたれ」を作ります。

 …うん、かなり違うけどおいしい。

 これに焼き上がったウナギを付けてもう一遍焼いて、さらにたれを付けて「洋風ウナギのかば焼き」の完成。

 とは言え、これだとまだみんなに食べてもらうには地味なので、これを「うまき」にしていきます。

 簡単に言うと「日本式巻いて作る卵焼き」の中にウナギのかば焼きを入れる奴ですな。

 さすがに四角い卵焼き器はないものの、丸いフライパンでもやろうと思えばできます。

 細かく刻んだニンジンやパセリなんかを混ぜ込んだ卵液を焼いて、その端にウナギのかば焼きをセット。

 で、ウナギを中心にくるくると巻いていきます。

 巻き終わったら反対側に移動させて、また卵液を投入。

 それを巻いて、を2回ほど繰り返して焼き上がり。

 後は手ぬぐいなんかで形を整えて完成、と。

 屋敷しもべ妖精にも食べてもらったけど、OKの許可が。

 彼らの舌を満足させないとみんなには振る舞えません。

 で、次はカボチャや秋野菜のてんぷら(フリッター)

 (いろどり)が良くなるんだよね。

 追加で小麦粉と米粉にふくらし粉、砂糖と少々の塩を混ぜて生地を作って。

 これでモツァレラチーズとチェダーチーズを包むようにしてボール状に成型。

 んでシリアルを砕いた衣を付けて油で揚げて上からココナッツシュガーをまぶし。

 最後にケチャップを添えてチーズボール完成、と。

 これらも食べてもらうとOKが出た。

 とにかくこれらを作りに作りまくって、足りない分は複製呪文で増やす。

 それらを配膳室にセットする。

 なんでも今回の配膳は演出上、厨房横の配膳室に用意する必要があるんだそうで。

 それら一通りが終わったのがたった今でした。

 

 魔法の光に包まれ、消えていく料理を見ながら屋敷しもべ妖精達と軽く食事を取る私。

 いや、さすがに疲れちゃって、食堂まで行く気力が、ね。

 もうちょっと休んでからじゃないと動けなかったんで、さっきの料理の残りを彼らと一緒に食べております。

 なんでもないお水がものすごく美味しい。

 ほっとします。

 …さって、何とか動けそうだ。

 屋敷しもべ妖精(せんゆう)達と別れていざ宴会場に!

 …の前にちょっとトイレ寄ってきましょう。

 

 

 

 用を足して一息ついて、さて宴で食いまくるぞ、という所で。

 なんか泣き声が。

 そういやここのトイレって、ホグワーツに憑いてる幽霊、「嘆きのマートル」のトイレだっけ?(違います)

 まあそれなら「嘆いて」いて当然か。

 で、ジャーっと水を流す音。

 ん? なんか変じゃないか?

 マートルって水流すとかするんだっけ?

 まあいいや。

 トイレの個室を出ると、そこには。

「おや、グレンジャー女史」

 今のところ学年ではトップクラスのガリ勉ちゃんであるハーマイオニー・グレンジャーちゃんが顔を洗っていた。

「あなた、スリザリンの…」

 なんでホグワーツの学生さんはまず寮の名前で人を思いだそうとしますかね。

「マリー・ウェリントン。

 あんたと同じく『マグル生まれ』のスリザリン生だよ」

 (つと)めてフレンドリーに。

 んでないとスリザリンってだけで他の寮生が怯えるんだよね、何故か。

「仕方ないでしょ、実際スリザリンは悪の魔法使いを多く輩出してるんだから」

 いやいや、それは甘いな。

 有名な「悪の魔法使い」は確かにスリザリンが多い。

 それに、野心がある割に保守的、という貴族っぽい感性の人間が多いんでとっつき辛い感じは確かに。

 野心的であるがために既得権益に噛みつく事もあるし、同時に既得権益を守るために下劣な手段を使いる場合もある。

 そういった点では確かにスリザリンは「悪」に近しいのかもね。

 でも私達マグル生まれに分かりやすい悪の魔法使いって、結構レイブンクロ―から出てるんだよね。

「どう言う事?」

 悪の魔法使いのステロタイプってどういうのだと思う?

「そうね、世界征服、とか?」

 それも1つ。

 典型は「ヴォルデモート」だよね。

 …そんな驚かんでも。

 所詮名前だろ?

 で、他には。

「塔に籠って悪い実験をしてる…、あっ!」

 そう言う事。

 知識を求めるあまり外道外法に走る魔法使いって一定層いるんだよね。

 有名な「禁忌の呪文」だけど、あれ作りだしたのは多分レイブンクロ―の出身だよ。

 他には、なんとか監獄って、そうそうあずかまん、え? ちがう? アズカバン? どっちだっていいじゃん。

 …よくないっす、すんません。

 それはさておき、そこで禁忌の呪文の研究とかしてた奴はどうよ?

 スリザリンのやり方じゃないと思わない?

 そそ、外道知識の実践はレイブンクロ―っぽいよね。

 …グリフィンドール?

 それこそ「独善」で動くじゃん。

 その結果、社会とぶつかるってありそうだけど。

 実際、最悪の殺人事件とかって、調べてみるとグリフィンドールの事、結構あるみたいよ。

 正義感が空回りした結果、って感じ。

 ルールを無視する傾向が多いしね。

 否定出来る?

 …まあ、スリザリンは「ルールを利用して優位に立つ」だからね。

 ルールの悪用はあり得るわね。

 でも、それすら無視して単体で突っ込むなら、それはただのテロリズムだよ。

 体制側の腐敗悪人がスリザリンで、アウトロー、テロリストがグリフィンドールってとこかな。

 そう考えると、それぞれの寮にも正負の側面があって面白いよねえ。

 

 なんてグレンジャーちゃんと話しこんでいる最中でした。

 なあんか生臭いような、どぶ川のような、そんな匂いがして来たのです…。

 

 

 

 スリザリンとの問答:グリフィンドール寮生ハーマイオニー・グレンジャーの言

 

 ハーマイオニー・グレンジャーはトイレに籠って泣いていた。

 フリットウィック先生の「妖精の魔法」の授業に置いて、ハーマイオニーは 浮遊せよ (ウィンガーディアム・レヴィオーサ)の魔法を成功させた。 

 それは良いのだが、出身が魔法族のロン・ウィーズリーが発音が悪いために呪文が成功しないことを指摘した所、機嫌を損ねたのだ。

「誰だってハーマイオニーには我慢が出来ない。全く悪夢のような奴」

 とまで言われたハーマイオニーは涙を堪えれらなかった。

 誰にも見られたくない。

 彼女は近くのトイレまで走って、そこで泣いていた。

 

 泣き疲れて、ふうっと息をついた。

 今の自分の顔はさぞみっともないだろう。

 ロンに見られでもしたらさらにひどい事を言われそうだ。

 さらに気分が下降しそうになって、あわててハーマイオニーはトイレの個室から出て、手洗いで顔を洗った。

 この腫れぼったい顔のまま、ロンに会うなど彼女の矜持が許さなかった。

 じゃばじゃばと乱暴に顔を洗い、さて食堂に移動してロンの奴に嫌味の一つでも言ってやろう、そう考えていた時だ。

 トイレの個室の扉が開き、のっぽの女の子が出てきた。

 彼女の事は何度か印象的な事が合って覚えていた。

 一度目はホグワーツ特急の中。

 ネビル・ロングボトムがペットのヒキガエルであるトレバーを見失った時。

 彼女は気軽に声を掛け、特急から下りた後にトレバーを見つけてネビルに返してくれた。

 また、初めての魔法薬学の時。

 ハーマイオニーよりも参考資料を読み込み、ネビルとハリーの失敗して爆発しそうな鍋の処理を行っていた。

 そして飛行訓練の時。

 飛行箒の取扱いに失敗したネビルを助けるため、奇妙な技を使って空を飛んでいた。

 …考えると、全てにネビルが関わっている。

 まあそれはさておき、彼女の名前は…。

 忘れてしまって詰まっていたハーマイオニーに対し、

「マリー・ウェリントン、あんたと同じく『マグル生まれ』のスリザリン生だよ」

 と、手をひらひらさせながら、気楽な感じでそう自己紹介をしていた。

 

 彼女とは、「議論」が出来た。

 もちろん意見が合う事ばかりではない。

 だが、世の中を「まっすぐ」見るハーマイオニーに対し、世の中を斜めにみる、というのだろうか、世間の裏の事情なども知っているのではないかと思わせる口調で話すのに、こちらの意見を完全に否定することのないマリーを、ハーマイオニーは面白いと感じていた。

 違う寮に入る資質を持つ生徒同士の会話、それをハーマイオニーは今まで必要ないと感じていた。

 というよりも、マグル生まれであるハーマイオニーにとっては現在の環境に適応するだけで精いっぱいという所があった。

 この辺り、実のところ一緒にいる相手の違いにもよるし、本人達の姿勢にも違いがある。

 魔法界出身のドラコ・マルフォイ達と一緒におり、先達であるハグリッドやスネイプなどにも積極的に質問をして魔法界を理解しようとしているのがマリー。

 マグル生まれであるハリーは当然として、魔法界の常識を当然の事としていているのでマグルとの差異が分からないロン、学業に専念しすぎるために彼から魔法界の常識を学ぶ時間がないハーマイオニー。

 ハーマイオニーから見てマリーが優秀に見えているとしたら、そう言った差異によるものだ。

 少々の嫉妬を交えつつ、ハーマイオニーはマリーとの話を楽しんでいた。

 

 だが。

 

 マリーがふいに顔をしかめた。

「どうかしたの?」

 ハーマイオニーがマリーの異変に気付き、そう尋ねた。

「いやね、なんかこう、変な匂いしない?

 ホグワーツのトイレって常時綺麗だし、こんな汚水みたいな臭いしないと…」

 その時彼女達は見た。

 女子トイレに入って来る、巨大な人影を。

「ねえあれって…」

「トロルだかオーガーだかだったけかね?」

 巨大な棍棒を持った、人型の怪物。

 それが彼女達の前に立ち塞がった。




ちなみにハッフルパフ出身の「悪の魔法使い」は、環境によってそうならざるを得なかったタイプではないかなと。
友人である悪の魔法使いを見捨てられなかった、守るべきものがあってその為に世間と敵対せざるを得なかった、とか。
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