これはきっつい。
主に臭いが。
私は後ろ手にグレンジャーちゃんをかばいながらじりじりと後退していきます。
入口はトロールの巨体でみっちりと塞がれ、とてもすれ違いながら外に出るのは無理。
とか思っていると。
がちゃん!
閉まりやがった。
こりゃあれか、時間が来たんで自動的に鍵掛かっちゃったかな。
やばいなあ、グレンジャーちゃん守りながらこの馬鹿でっかい怪物と戦わにゃならんのか。
一人ならどうにでもなる。
しかし喧嘩の素人ちゃんが後ろにいる以上動きは制限されるし、彼女がどう動くかもわからない。
まあトロール自体は棍棒という得物を持ってるし、大体どんな動きをするかは予想できるんだけどね。
私は、
「グレンジャーちゃん、これ持って後ろに下がって。
それ持ってるとちょっとした加護があって、あれ近づきにくくなるから」
そう嘘交じりの事を言って私の魔法の杖wを持たせ、壁際に追いやろうとしました。
しかし、彼女は下がりません。
私が危険になるって。
やべ、嘘が自分の首絞めた。
こうなれば!
「りゃっ!」
グレンジャーちゃんを後に突き飛ばしつつ、トロールに突進!
うぉぉぉぉぅ!!
トロールが咆え、そしてごっつい棍棒を振りまわす。
冗談抜きで当たると大ごとだ。
だが遅い!
前進しながらダッキング、相手の攻撃の下に入り込み、
「ぅらあっ!」
棍棒を持った右手、その小指にカウンター気味の右フックを当てる。
硬った!
おっそろしく堅い指の皮。
一発じゃ無理か。
今度は内から外に振りまわして来る棍棒をさらに内側に入って、右足の小指を思いっきり踏みつける。
これもえらい硬い。
苛ついたのかトロールは今度は左の手で私を捕まえに来る。
一旦捕まったら身長で倍以上、って事は重量で八倍以上の差があるやつに抑え込まれる。
さすがに
ので、こっちから間合いを詰めて、
「っせいっ!」
相手の小指を掴んで捻りあげようとして、
「ぶおろぉぉっ!」
トロールは体勢を崩しかかりはするものの、大きく腕を振りまわして関節技を外しに来た。
さすがに全身で抵抗されると今の私では抑え込めない。
一旦距離を取るしかないね。
距離を取った私は、グレンジャーちゃんにトロールの意識が行かないように、
「へいへい! こんなちっこいのに手間かけてて良いのかい!? ハリハリィ!!」
とまあ身振りも加えて相手を挑発。
大体どんな奴でも「悪口を言ってる」くらいは分かるもんで、トロールはこっちの思惑通り激高、めちゃくちゃに棍棒を振りまわし始めた。
なかなかこういう雑な攻撃は一発良いのを当ててやると止まっちゃうんだけど、流石トロール、頑丈だこと。
さっきから右の小指にカウンターのフックを何度も会ってやって、ちょっとだけ相手が痛がる様子を見せてきた。
それと同時に右足の小指へのストンピングも継続しているのでいい加減踏ん張りも効かなくなってるんじゃなかろうか。
と思っていると。
かちゃん!
そんな音がして、トイレのドアが開いた。
そこから男の子2人の顔がが覗く。
あーだんしがといれのぞいてるー(棒)
とかぼける暇もない。
確かあれはハリー・ポッター君とロン・ウィーズリー君。
グレンジャーちゃんに言いすぎた事を後悔して2人して探しに来たってところか。
これはチャンスかも。
何とか彼らにグレンジャーちゃんを回収してもらって…さすがに無理か。
とにかく、彼らにもトロールの気を引いてもらって隙を作んないと。
なんて考えていたら、流石無茶無理無謀のグリフィンドール、2人して壊れたトイレの備品の破片なんかをトロールに投げつけ始めた。
効いちゃいないだろうが、流石にうっとうしくなったのかトロールは2人の方に向いていく。
ウィーズリー君はさらに壊れたパイプなんかを投げつけ、その隙にポッター君がトロールの死角をすり抜けようとする。
んじゃそれに私も便乗させてもらおう。
走り込んで来るポッター君に気付いたトロール、その右足の小指の付け根を、
「どっせい!」
今までにないくらい思いっきりふんずける。
くぉぉぉぉおぉぉっ!!
トロールがやっと痛みを感じたらしい、私を睨みつけた。
その間にポッター君がグレンジャーちゃんを確保。
うっし、後は何とか逃げ出すまで、と思ったところ。
かいん!
なんか良い感じにウィーズリー君の投げたパイプがトロールの頭に当たったらしい。
クリティカルヒットという奴だが、基本的な威力が低いんでトロールを怒らせただけのようだ。
完全に意識がウィーズリー君に行っちゃった。
これはやばい!
そう思った瞬間だ。
ポッター君がトロールの後ろからその首に飛び付いたのだ。
え? いや、あれ3メートルはあるよ? その首に飛び付くって、11歳の少年が?
すげえなポッター君、なんて感心してる場合じゃない!
「ポッター君、目だ、目をふさいで!」
そう言って、トロールの人差し指を左手で、小指を右手でがっちりと掴む!
「うっりゃあああぁぁぁっ!!」
トロールは右手で棍棒を持っているから、ポッター君を引っぺがすには棍棒を捨てて右手で掴むか、空いている左手でつかむしかない。
あんまり頭が良くない生き物らしいので瞬時に棍棒を捨てるって発想には行きにくいだろう。
で、今のうちにグレンジャーちゃんが脱出してくれるといいんだけど、まだ動けない状況かね?
さて事態が硬直した、そう思った時だったんだけど。
「
ウィーズリー君の魔法が振りあげたトロールの棍棒にかかり、そのまますっぽ抜けたのだ。
ひたすら右手の小指を殴り続けた甲斐があった様子。
で、ふよふよと棍棒は上昇し、
ひゅ~っ ごんっ!!
トロールの脳天に直撃した。
チャンス!
息を整え、気を練り、その力を右の掌に集中させる。
そして!
「ぬえりゃぁっ!」
南朝寺教体拳の型に沿って右掌底を空に繰り出し、そこから気の力を放つ!
これぞ南朝寺教体拳の奥義、気を圧縮して衝撃波を飛ばし、触れずして相手を倒す
この衝撃波がトロールの顎を撃ち抜き!
ぐらぁり…
大きくトロールは揺らめいて、あ、やべっ!?
トロールが倒れ込むと同時にポッター君が落っこちる!?
このまま落ちるとトイレの床に叩きつけられるかトロールの下敷きか、どっちにしてもやばい!
だっと縮地を使ってポッター君を受け止め、トロールの下敷きから救出します。
で、
どおぉん! という音と共に、トロールはぶっ倒れました。
うへぇ、あっぶなかったあ…。
それからすぐに、先生方が到着した。
で、事情を聞かれましたが、
「いや、トイレに入ってたらトロールがやって来たんでやっつけました、としか…」
言いようがないんだよね。
マクゴナガル先生がトロールが出た事を聞いていなかったのか、と言われても、
「聞いてません。
そもそもどこで言ってたんですか?」
としか。
スネイプ先生が、「先ほど、広間のパーティー会場にいなかったのはなぜか」と聞かれましたので、厨房でスナックやらデザート作ってました、と言ったら顔を覆ってしまわれました。
なんか問題あっただろうか。
で、
グレンジャーちゃんが「自分がトロールをやっつけるつもりだった。ハリーとロン、私に助けられた」と話し。
私はそこいら辺知らんからね、何とも言いようがない。
って事にしておく。
グレンジャーちゃんの思いを無駄には出来ないからね、女の子として、って女の子って誰ってひどくない?
私よ私。
で、マクゴナガル先生がグレンジャーちゃんの行為でグリフィンドールからー5点、少年2人の勇気で+10点の差し引き+5点、私の行動でスリザリン+5点だそうで。
マクゴナガル先生はそのまま帰っていきました。
そして、スネイプ先生が最後に一言。
「お前はいつまでポッターを横抱きにしているのかね」と。
そう、トロールを倒してポッター君を「お姫様だっこ」で受け止めてから、彼を下すタイミングを逸してたんだよね。
そう言われてやっと下ろすことが出来ました。
スネイプ先生には非常に呆れられましたです。
今の動きは何だ?:トロール捜索班セブルス・スネイプの言
トロールが校内に現れたと聞き、地下を捜索していたセブルス・スネイプは捜索範囲にトロールがいない事に焦りを感じていた。
見つからない場合、地下にあるスリザリン寮の入り口近辺にトロールが隠れる、という事も考えられる。
そうなると、スリザリン寮の子ども達に危険が及ぶことにもなりかねない。
それは許される事ではない。
彼はミネルヴバ・マクゴナガル副校長と第一発見者のクィリナス・クィレルと共に地下を精査していた。
暫く立った後、
ごぅん!
何かが破壊される音が響いた。
「上のようですね、おそらく」
マクゴナガルがそう言う。
スネイプも同意見だった。
階上にトロールがいるのだ。
渋るクィレルを無理やり連れ出し、現場へと急行する教師陣。
しばしの後、轟音の音源と思われる女子トイレへと行きつくと。
ロン・ウィーズリーとハーマイオニー・グレンジャー。
そして、
マリー・ウェリントンと彼女に横抱きされているハリー・ポッターがそこにいた。
彼らから話を聞く限り、
ハーマイオニーが無謀にもトロールの捕獲に挑戦し、それを心配したハリーとロンが彼女を追いかけた。
マリーはそれには全く関係なく、そもそもハロウィンパーティーの会場におらず、ハーマイオニーとたまたま会って、たまたまトロールとかち合った。
ハーマイオニーを守りながらマリーが戦い、それにハリーとロンが参戦、なんとかトロールを抑え込んだ、と。
そう言う話を聞きながら、スネイプは内心大きな疑問を持っていた。
(なぜ、マリーはポッターを
そしてマクゴナガルは何故それに対して疑問を提起しないのか。
トロールを見て失神しかかっているクィレルはこの際どうでもいい。
マクゴナガルが、ハリーの状態に突っ込みを一切せず帰ってしまったので仕方なしにスネイプがマリーに対して質問をした後。
さて、このトロールを捕縛して「禁じられた森」へと追い払う仕事がスネイプには待っている。
本当なら「闇の魔術の防衛術」を担当するクィレルがすべきことではないか、そう思うのだが。
クィレルは役に立たない。
というか、スネイプから見れば彼はとても
それならば自分がやるしかない。
そう思った時だ。
がばぁっ!!
トロールが、突然立ち上がった。
驚きでクィレルがひっくり返る中、スネイプは杖を構える。
この程度なら無言魔術で十分対処できる。
と、
だん!!
壁を叩く音が聞こえたと思ったら、マリーがトロールへ飛び蹴りを放っていた。
目の前にいた彼女が、どうやら壁にジャンプし、その壁を蹴飛ばした反動で飛び蹴りを放ったようだ。
その直撃を顔に受けたトロールは、今度こそ完全に沈黙した。
戦闘というものに慣れているはずのスネイプが危うく見落とすほどの速度で動いたマリー。
スネイプは驚きを隠せなかった。
だからだろうか。
その脇で腰を抜かしているクィレル。
彼がねめつける様な眼で彼女の動きを追っていた事、それに気付く事がスネイプには出来なかった。