その日、私は深夜に寮を抜けだしました。
あ、別に寮則に違反した訳じゃないですよ。
ちゃんと寮監であるスネイプ先生から許可は貰ってます。
一応禁じられた森に行く前にスネイプ先生には挨拶をしていきます。
校内を見廻りしてる他の先生やフィルチさんに会った時に万が一話が通ってないと心配ですからね。
…ハグリッドさん、所々そう言う配慮とか抜けてる気がするし。
森番とかしてると、もしかしたら人とのかかわりが薄くなるからそう言ったところがぽこっと抜けるのかもしれません。
森番するのにはいら、なくもないよなあ。
森の中にはケンタウロスとか狼人間とか鬼婆とか、言語の通じる存在も多いですしね。
そういや森に住む大蜘蛛って話通じるのかしら。
魔法生物って普通の生き物よりも賢い事が多いし、あのサイズの蜘蛛ってあきらかに魔法生物だしねえ。
しかし、夜のホグワーツはまた風情があって良いねえ。
普段生徒さん達が居るはずの空間には人は私くらい。
時折ふわぁっと幽霊顔を見せるくらいか。
「おやお嬢さん、こんな夜更けにどこに行かれるので?」
そう声を掛けて来るのはハッフルパフ寮の寮憑き幽霊の「太った修道士」だ。
この幽霊とも私は顔見知りなんだよね。
というのも、ハッフルパフの寮の出入口って厨房の近くにあるんだよ。
だから、ちょくちょく厨房に出入りしている私も彼と顔見知りって事なんだよね。
「ども、『太った修道士』、ちょっと遅い時間だけど、禁じられた森にね。
ハグリッドさんの頼まれごとなんだよ」
特に隠す必要はないんで、その通りに話します。
「なるほど。
先生方はご存じで?」
少なくともスネイプ先生とハグリッドさんは知ってるはず。
他の先生方にも話は通ってると思うんだけど…。
「まあ、ハグリッド君ですからねえ…、
スプラウト先生には話しておきましょうか。
他の生徒には…」
まあ黙ってて欲しいかな。
深夜の徘徊が常態化すると学校としても、ねえ。
「そうですなあ。
今の時期はむしろ安全かもしれませんが、問題が解決すれば我々幽霊も頻繁に城内を見回る事はしなくなるでしょうからなあ。
っと、この事はご内密に…」
ううむ、やっぱりホグワーツは生徒には内緒で厳戒態勢なようだ。
でもだから逆に今、夜に出て歩いても「人目がある」事が多い、ってわけだ。
よっぽどの実力者じゃないとここに入り込むのは難しい訳だね。
んじゃ、行ってきますよ「太った修道士」。
私はひょいと頭を下げて、玄関へと歩き始めました。
月明かりの中、ランタンもつけずに「禁じられた森」へと歩いていきます。
…やっぱりホグワーツ、私は好きだ。
いろんな美しさがここにはある。
表に出ている所にも、密かに隠された美しさも。
今私がみている美しさはホグワーツにいる人達の中でも極少数だけが知っているものだ。
ちょっとした優越感かなあ。
ついついにやいて歩いて行ったもんだから、ピーブスに真顔で、
「お前、大丈夫か」とか言われたw
ほっとけや。
消えていきそうな:ホグワーツ憑き騒霊ピーブスの言
ピーブスは幽霊ではない。
何時からホグワーツに存在するかも分からないし、人間だった記憶もない。
ただ、「騒がしく」あれ、その為に存在しているのだと。
そう言う存在であると。
その日、彼はふらりへらりとホグワーツの夜を楽しんでいた。
いくら騒がしくしても、聴衆がいなければ意味がない。
まあこの深夜にこっそり出て歩くような命知らずもいない事はない。
フレッド&ジョージ・ウィーズリーのように。
彼らをおちょくりまわすのもピーブスの楽しみの一つだ。
そして深夜のお楽しみが最近1つ追加された。
とにかく一年生はまだすれて(ウィーズリー兄弟のように)いないからか、非常に反応が楽しい。
生き残った男の子なら、なおさら楽しい。
つい口笛を吹きたくなるような楽しさを感じてしまう。
という事で、調子っぱずれの口笛を吹きながら校内を徘徊していると。
玄関から出ていく人影を発見。
ランタンを付けていない様子から、ちょっと外を覗こうっていう程度の悪さをしようとしている生徒か、そう思って、ピーブスはそれに近づいていった。
それは、最近ピーブスとしのぎを削っているマリー・ウェリントンだった。
彼女はランタンを持たず、しかしその足取りは落ち着いていた。
まるで夜は我が味方、と言わんばかりだ。
いくらペットに蝙蝠を飼っているとはいえ、蝙蝠のように夜行性という訳でもあるまい。
ふんふんと鼻歌を口ずさみながら、彼女はしっかりした足取りで禁じられた森に向かって歩を進める。
何かに取りつかれたか、何かやばい呪いでもかかっているのではないか、そう思う位に彼女は迷いなく歩いている。
ピーブスは不安になった。
このままマリーが禁じられた森に入っていき、そのままいなくなるのではないかと。
実際、この千年ほどでそういった生徒や職員は一定人数いるのだ。
禁じられた森が人を誘う、などといった迷信も麓のホグズミード村にはあるくらいだ。
ピーブスはふらぁっとマリーに近づき、
「お前、大丈夫か?」
そう声を掛けた。
するとマリーは、
「うぉっ! …なんだピーブスか。
どうしたん?」
と、いつも通りの反応。
というか、こんなんが消えそうな儚さとか、
「…ないわー」
つい声に出してしまう。
「なんだよ、とうとうおかしくなったか? って元からか」
マリーはそう言ってげらげらと笑う。
もう幻想的とか儚いとか、見事に吹っ飛んだ。
むしろそのぶっとい眉毛が
「月夜の晩はご用心♪
変人怪人マリーが出るぞ♪」
そんな歌を歌い、マリーをおちょくり回しながらピーブスは姿を消した。
何なんだ失敬な。
ぷんすこ怒りながら禁じられた森の入口にある森番の小屋に到着。
こんこん、とドアノッカーを叩くと、
「おう、だれだぁ?」
と誰何の声が。
「マリーです、手伝いに来たよ」
と応答すると、
「おおそうかぁ! 入ってくれぃ!」
とのこと。
中に入るとハグリッドさん、と、
「わふっ!」
ファング君。
ひとしきりワンコを撫でて、ハグリッドさんの方を向く。
「で、任務内容は?」
「任務なんぞといぅめんどぅなもんじゃないわい。
玄関のとこに積んどぉる荷物をもってくだけじゃぁ」
…結構な量あったよね、あれ。
「じゃからマリーに頼んだ。
ハリー達じゃぁマリー一人分も運べんじゃろぉ」
…だろうね。
玄関に積んであったのはどでかい木箱が三つ。
一箱当たり百Kg位ありそうだ。
確かにこれだとポッター君達三人だとまともに運べなさそうだなあ。
さて、気張らないと。
目の前の大きな箱。
腰を落として箱の淵に手をかける。
「ふうぅ…」
ゆっくり調息し、気の力を全身に廻らせる。
「むんっ…」
ゆっくりと箱が持ち上がる。
しっかりと、落とさないように抱え直して準備完了。
「準備できたよ、行こうか」
そう言うと、
「おぉう! 先導するぞぉ」
ハグリッドさんは大きな箱を二つ重ねて肩にひょいと担いでいた。
パワー凄えなあ。
こっちはけっこうギリだし、前が見えないからチョイとしんどい。
あ、そうだ。
「ちょっと待って、持ち方変えるから」
そう言って、もうちょっと安定して持ちあげつつ前の見える状態に持ってきます。
「はあぁっ!」
箱をさらに上に掲げつつ、箱の下に潜り込んで。
「…マリーよぉ、それ、だいじょうぶなんか?」
あ、平気っすよ。
頭の上と両の手の平の三点で支えた方が安定するから。
あと、前も見えるし。
「お前さんがそれで良いなら良いがのぉ、じゃ、行こうかい」
で、ホグワーツに戻ることとなりました。
てくてく歩いて、この辺りは、あれかな、「妖精の魔法」教室の近辺かな。
「マリー、疲れんかぁ?」
ハグリッドさんが聞いてくるけど、まあ大丈夫かな。
急いで移動するならかなりしんどいけど、ゆっくりとしたスピードだし問題はない。
っていうか、ハグリッドさんこっちに配慮してくれてかなりゆっくり歩いてくれてるから大丈夫なんだよね。
で、この廊下の行き止まり、ここんとこが目的地みたいだ。
一旦箱を地面に下ろして(私の頭上の奴はハグリッドさんが下ろしてくれました)、ハグリッドさんがガチャガチャと扉を開けます。
で、その中に箱を運びこむんだけど、まずハグリッドさんが一つ持って入って、で、それに私がつづいて入って。
その中には、
うるるるぅぅ…!
うるるるぅぅ…!
うるるるぅぅ…!
唸りを上げる三つの顔。
三匹の巨大犬、と思いきや、その首の根元は一つ。
三頭の猛犬、これって…。
「ケルベロスだ。
何かを守らせるにゃぁぴったりの番犬よぉ」
ふわあ…。
毛は短めのように見えるけど、でっかい分モフッと感が凄い。
耳がちょっと垂れ気味なとこもプリチィ。
ハグリッドさんの方を見て、見なれない私の方を見て、どうしよっかなあ、と悩んでる姿もかーいい。
これは、
「ラブリィですね!」
「分かるか! こいつの名前は
で、ハグリッドさんはフラッフィーにご飯をあげ始めました。
ケルベロスは、伝説上の地獄の番犬ケルベロスの名前を取った魔法生物だそうで、番犬としてはとても優秀なんだそうです。
食事も、ある程度は取らなくても大丈夫だそうで、守るものがある場合、一週間に一回くらいで大丈夫だとか。
今回はハグリッドさんが十日ほど用事(なんか特殊な魔法生物の学会に参加するんだとか)で外出するために、多めに食事を与えておきたかったんだそうです。
本当ならホグワーツの職員に頼んで魔法で運んでもらうのが良かったらしいんですが、皆さん忙しいらしく、上手くお願いできなかったとか。
で、「お前さんなら持てるじゃろぉ」ってことでこの巨大荷物を持つ事になった訳です。
まあ、おかげでフラッフィーと会う事が出来た訳ですが。
…しかし皆さん忙しい、と。
多分あれだなあ。
「マリー、すまんがここの事は…」
了解っす。
フラッフィーの事とか、その
そんなことより、フラッフィーに馴染んでもらうためにご飯持って来る時にはぜひ一緒に!
「お、おう…」
絶対にフラッフィーをモフるんだ!
私は拳を固めるのでした。
その姿を見てフラッフィーに怯えられたのは別の話(涙)。
それから暫く時がたち。
四月の
魔女見習いの私がミサに参加するのは微妙な気もするけど、まあこの世界に生まれたのは神さまのおかげだ、しっかり感謝しとかなきゃね。
で、戻って来たなら。
ハグリッドさんの様子が不穏だ。
森の手伝いをしようか、って言うと、
「いやぁ、暫くはぁ大丈夫だなぁ」
とかって言ってごまかされる感じなんだよね。
まあ、最近は寒さもまだ厳しいし、寮の部屋にJr.を置く許可をみんなから得られたんで、Jr.は普段は部屋の屋根にぶら下がって寝ているから良いんだけどさ。
それと同時にグリフィンドール三人組の様子も奇妙になって来た。
なんかそわそわしてる感じ。
隠し事ありますよ、ってね。
マルフォイ君なんかはにやにやしながらちょくちょく聞き耳を立ててる。
どうやらクラッブ君とゴイルくんには言ってない様子。
まああの二人の場合、隠し事苦手そうだから、諜報活動とかできなさそうではあるけどね。
そう言うのは私が得意なんだけど、マルフォイ君は頼んでこない。
まあ彼の場合、女の子にそんな事は任せられない、というとこなんだろう。
マルフォイ君紳士だからね。
で、今は薬草学の授業。
今日は「絡み蔦」の苗木をプランターから薬草畑に移植する実習。
こういうのも楽しいもんだ。
時々指に蔦が絡みついて来るんだけど、これはこれで可愛いもんだなあ。
これが育つと腕一本くらい捩じり折るくらいの太さになるんだからなかなか壮絶だよね。
とか作業してると。
「へえぇ…」
おお、マルフォイ君がワルい顔してる。
あの三人組、何かやらかしやがったかね。
その三人組は授業が終わると同時にどっか行っちゃった。
気が付くとマルフォイ君も一緒に。
クラッブ君とゴイル君が「あれ、ドラコさんは?」って顔でこっちを見てる。
首を振って、「私知らない」と伝えると、二人は揃って首を捻った。
これは、と思ってたんで時間を開けて禁じられた森へと続く道をハグリッドさんの家の方へ歩いていく。
と、
「マリー!」
お、マルフォイ君だ。
「後で話がある、ちょっと付き合ってくれ」
との事。
なんか見たな。
厄介事の予感です。
その後、暫くしてポッター君達三人がこっちに歩いてきました。
「や、やあウェリントン。 ご機嫌いかが」
ってウィーズリー君、ものっそい不審だぞ。
「あ~っ、ええっとね、ハグリッド、今物凄く忙しいのよ。
今は行かない方が良いと思うわ」
グレンジャーちゃん、私普段からハグリッドさんの手伝いしてるからその言い訳は逆効果なんだけどなあ。
「頼むよ、今ハグリッドの所に行かないであげて」
…はあ、しょうがないな。
どうやらとんでもない災厄事をハグリッドさんが持って来たか。
どうせ動物関係なんだろうなあ。
さすがにドラゴンとかはないと思うけど、グリフィンとかはありそうだなあ。
餌の馬肉とかどうすんだろ。
今のご時世、グリフィンが満足する量の馬肉は金額的にも厳しいぞ、ハグリッドさん。
とか思ってたんだけどなあ。
「間違いない、この目で見たんだ!
ハグリッドの奴は飼育禁止のドラゴンをふ化させたんだ!」
アホかあッ!?
ケルベロスの生態に関しては筆者のねつ造です。
「魔法ワールド」の設定の中でそのような記述は無いはずです。