結局、私
というか、スネイプ先生マルフォイ君を守るために私を生贄にしましたね。
まあ、大丈夫だけど。
主として先輩方、6、7年生くらいの男子生徒が中心となって私に対する糾弾を行うって事になってたらしい。
しかし、
「彼女に手を出してはいけません」
そう止めてくれたのは、前に揉めることになった5年生のワルター・グレイ先輩。
彼は今まで私が稼いできたポイントを調査し、スリザリンに大きな貢献をした事を提示してくれたんですよ。
うむ、これぞ「情けは人の為ならず」って奴ですよね。
「なんか違うだろ」
そですかね、マルフォイ君。
「先輩タコ殴りにしたのは『情け』なのか」
「普通恨むぞ」
いや、でも、あれ? そうかな?
で、ワルター先輩は、
「6年の先輩はともかく、7年の先輩にトラウマ植え付けるのだけはやめてくれ!
人によってはN.E.W.T試験とかあるんだから、試験にこけたらそれこそ人生に関わるんだからな!」
ホグワーツに置ける進級試験、て言うんですかね、は7年間で2つあります。
1つはO.W.L試験。
これは普通魔法試験の略で、これをクリアしないと6年生になれません。
人によってはここで退学しちゃう人もいるくらい。
魔法界における最低限の資格、ってとこですかね。
で、7年生の最後に行われるのがN.E.W.T試験。
これは7年間の総括的な奴で、これを通るといわゆる高学歴って事になります。
魔法省とかに入る人はこれ通ってますね。
まああと数ヶ月で受験ですからね、変なプレッシャーは困りますわね。
あ、そう言うことか。
そろそろ切羽詰まってんすね、先輩がた。
だから…
「それ以上は言うな、面倒な事になる」
あい。
しかし、先輩には助けてもらっちゃったっすね。
「そう思うなら、そうだな、この前出てきたクレープボール、お前の考案なんだって?
今度また出してくれ」
そう言うんなら大歓迎。
その内おやつに出しましょうて。
さて、今回の事でグリフィンドールは合計-150点という馬鹿みたいな点数を引かれる事になった。
あの時、ポッター君とグレンジャーちゃんの他に、彼らを助けるためにネビル・ロングボトム君が寮を抜けだしていたんだそうだ。
これはロングボトム君とばっちりだなあ。
それは同様にスリザリンも-40点、私とマルフォイ君の為に差っ引かれてる。
で、この激高なマイナスポイントでポッター君は
まあそうだね、一気にマイナス150点だから。
とは言え、本来はグレンジャーちゃんとロングボトム君との合算なんだが、ポッター君、なまじ名前が売れてたもんで、彼一人の「功績」になっちゃった訳。
おかげで現在トップのスリザリンから年間優勝を奪う機会がなくなったとみんな思ってるのな。
スリザリンのみんなはポッター君見る度にお礼を言ってる状態だ。
他の寮に関しては、レイブンクロ―が追い上げてるもんで、中々のデッドヒートっぽくなってる。
まあ、私の-20も効いてる感じ。
だから最後の年に我らが寮に優勝杯を。って考えてた先輩方からは私の行為が許せない、って事になってたんだろう。
…私じゃないと、それがマルフォイ君に、いや行かないな。
マルフォイ家に喧嘩売る事はないだろう。
そうなると行き場のない怒りはポッター君に向かう感じかな。
まあ気にしてもしょうがない、後は頑張って挽回するのみ!
で、翌朝。
スネイプ先生から私とマルフォイ君にお手紙が。
告 処罰は今夜十一時より行う。
玄関ホールに集合の事。
ミスター・フィルチが待っている。
彼の指示に従う事。
セブルス・スネイプ教授
だそうです。
楽しみですね(ヤケ)。
夜です。
不安そうなマルフォイ君を連れて、玄関ホールまで行きます。
まだちょっと冷え込んでいるので手袋とマフラーくらいは用意。
そこいらへん疎そうなんでマルフォイ君の分も用意。
さて、玄関ホールに付くと、そこにはフィルチさんが。
にやぁ、っと中々に不気味な笑み、っつうかわざとやってますね、あれ。
「まあやらかしたもんだ、今日の罰はとおっても辛いぞぉ、楽しみにしとく事だ」
マルフォイ君がすっかり委縮しちゃってます。
いや、フィルチさん、あんまりいじめないで下さいって。
と目でそう言うと、
「ふっ」
鼻で笑われました。
馬鹿やりやがって、でも猫缶はまけてやらん。
そんな顔ですな。
ちくせう。
暫くすると、ポッター君、ロングボトム君、グレンジャーちゃんがやってきました。
しっかし大丈夫かね、ロングボトム君この暗い中でも分かるくらい真っ青だよ。
さて、これで全員そろった訳だ。
フィルチさんが手元のランタンに火を灯し、みんなを外へと誘う。
マルフォイ君はさすがに怖いのか、ちょっとふるえている。
まあ、ロングボトム君が延々とメソメソしてる声が怖い、というのもあるかも知んないけど。
で、月明かりの中、歩いていくと、その先には「禁じられた森」。
手前には明かりの灯った森版の小屋がある。
その前で待っているのは「今回の加害者」ハグリッドさんだ。
少しは懲りなされ。
ポッター君はほっとした感じだけど、そこにフィルチさんが水を差していく。
しっかりと脅しておいて、
「んじゃ、後は頼むぞ」
っと、私にぽそっと言って帰っていった。
しっかし、ハグリッドさん、
ちょっとした攻城兵器じゃん。
これまたかなりぶっとい矢を矢筒に何本も背負ってる。
で、足元にはファング。
この子臆病だって言うけど、むしろ臆病な位の方がこの森だと生きてけるんじゃなかろうかい。
暗い夜の森の中を、ハグリッドさんを先頭に歩いていく。
みんな、かなり怖がっている。
これが普通だよね。
「マリー、お前は怖くなぃんか?」
そりゃ怖いっちゃ怖いけど。
私はある程度夜目が効くしね。
それに、南朝寺教体拳をある程度修めると、夜の闇はむしろ味方、そういう意識が心に刻まれるんだよね。
だから今はむしろ落ち着いてるんだよね。
「ん、大丈夫」
私はそれだけを伝えるのでした。
で、途中で二手に分かれる事になったのですけど。
私はマルフォイ君、ロングボトム君とファングと一緒に行く事に。
「だ、大丈夫だよね」
「あんまりくっつくなロングボトム!」
そんな会話をしながら獣道を歩いていきます。
ここを外れるとヤバいらしい。
…この辺りは大丈夫かな?
がさり。
音がたつ度にロングボトム君がビビります。
おかげでマルフォイ君は落ち着いてる様子。
先に誰か取り乱すと妙に落ち着いちゃうよね。
で、マルフォイ君ったらロングボトム君をおちょくろうとしたんだけど、流石にそれは許容できない。
「はいストップ」
止めます。
むっとした顔のマルフォイ君。
「思い出して、ここは『禁じられた森』だよ。
大きな音で寄って来るのがハグリッドさんだけじゃないって事」
その言葉にマルフォイ君ははっとした様子。
そのまま森の調査を進めました。
ある程度進むと、鼻に異臭を感じました。
「ん?」
「どうした!?」
「な、なに!?」
二人が私に話しかけますが、それを無視して鼻を動かします。
ううぅ~っ。
ファングがうなります。
あっちだ。
私は駈け出しました。
後ろで、
ぱ~ん!!
連絡用の花火が炸裂します。
ロングボトム君がパニック起こして鳴らしたようですが、これは予期せぬファインプレー。
すぐにハグリッドさんが来てくれるでしょうて。
私はファングと一緒に走ります。
そこは、ちょっと開けた平地でした。
何か蠢いている音がします。
音を頼りに移動していくと。
そこにはぴくぴくと引き付けを起こしている大きな馬のような生き物が。
馬のような体躯、額に長い一本の角。
これ
首筋から一筋の血が流れてる。
なんだっけな、ユニコーンの血は呪われる代わりに強大な力を与える、だっけ。
そんな感じの話が魔法薬学の参考資料の中にあったっけ。
とにかくまだかろうじて生きてるようだし、何とか応急手当しないとな。
私は懐から長い針を持ちだしました。
これは中国武術で使われる武器の一種で「鶴刺千本」と言います。
経絡に打ちこむことで死に至らしめたり、逆に治療を施したりする暗器ですね。
動いている相手に正確に打ち込む、というのは無理でも止血程度に使うなら可能なんですよ、私。
なんで。
「ふっ!」
さすがに一角獣の経絡を完全に知っている訳じゃないけど、体に触れてればある程度は分かるもんです。
で、一応の止血と痛み止め。
ちょっとはましになったかな。
と思った瞬間!
…森の奥に不気味な人影が浮かびあがる。
ぼろぼろのローブのような物を纏わせた何か。
それはすうっと背を屈めると、こちらに向かって突っ込んできました。
迎え撃つ、なんてことはしない!
こちらからも突っ込む!
後ろには非戦闘要員のファングと負傷した一角獣が居る。
少しでもあいつを引っぺがさないと!
「ぅらああああっっ!」
私は声を張り上げながら拳骨を構える。
声を上げることで、自分がここにいることを周りに知らせているのだ。
もちろん厄介なのがよって来る事もあるだろう。
でも、それよりも早く魔法生物の専門家であるハグリッドさんに来てもらわないといけないから。
一刻も早く一角獣の手当てをする必要がある。
多分だがこの一角獣こそがハグリッドさんが探してたもの。
この仔を確保しておけばこっちの勝ち、とられて殺されでもしたら負け、分かりやすいじゃねえか。
双方が走り出したために距離が一気に詰まってくる。
「ぜあっ!」
速度の乗った拳骨を打ち出す。
当たれば一撃、とは行かないだろうがっ?
ぱん、と軽い音で拳は
こいつ格闘技やってんのか!?
それとも、いや考えてる暇はない!
「けあっ、かかっかかかっかかあっ!!」
一見ボクシングのようなジャブを撃ちつつ、相手の周囲をボクシングのフットワークで回る。
その中にちょっとだけ南朝寺教体拳の動きを混ぜ込み、相手にタイミングを絞らせない。
勘だが、こいつにペースを取られるとまずい、そんな気がする。
それは間違ってなかった。
ジャブってなボクシングの中でも、というか格闘技の中に置いてもことさら「早い」攻撃だ。
それをこいつは左手一本で受け流している。
避けるのでなく受け流す。
どんな技術だよ!?
だが!
「!?」
首に巻いてたマフラー、これを相手に叩きつける!
もちろんダメージになんかならない、でも。
「!?」
一瞬そのマフラーに視界を遮られる。
これは南朝寺教体拳が奥義、
本来は蝙蝠の群れで視界を塞ぐけど、そこまでじゃなくとも一瞬視界を塞ぐことができれば、
「だしゃっ!」
必殺の右の拳骨が相手の土手っ腹に食い込む。
ぃよしっ!、そう思った瞬間。
ゴキン!
やられた!
拳の引き際を掴まれ、肘関節を捩じられ外されたのだ。
だが!
「らあっ!」
この距離なら外さない! 思いっきり頭突きをかます!
ごつっ!、という鈍い音が周囲に響く。
その瞬間、私と相手、双方が距離を取った。
こっから仕切り直し。
相手には二撃入れたけど、こっちは腕一本失った。
これはやばいかな…、だけど!
戦意を絞り出してると、ファングが大きな声で騒ぎ始めた。
それと共に、
「お~い、マリー! 無事かあぁ~っ!」
周囲にどう間声が響きます。
その声が聞こえたのか、ローブの存在はすっと後ろに下がるとハグリッドさん達の方に視点を向けたのでした。
危険な存在:運命を持つ少年ハリー・ポッターの言
大きな声に導かれ、ハリー・ポッターととルビウス・ハグリッド、ハーマイオニー・グレンジャーは禁じられた森の奥にある開けた場所へと走っていた。
正確に言うと、ハリーとハーマイオニーはハグリッドに掴って、彼が子ども達を運んでいた。
傍から見ると山男が子どもを誘拐する図である。
そしてハリーは見た。
マリー・ウェリントンとローブを深く羽織った謎の人物が対峙しているのを。
マリーは右腕をだらりと垂らし、相手を睨め付けていた。
その後ろには大きな生き物と、ドラコ・マルフォイとネビル・ロングボトムが口をポカンと開けてマリーを見ていた。
ローブの奴はハリー達がやって来たのに気付いたのか、ゆっくりとこちらを見た。
ずきり。
その時、ハリーが今まで感じた事のないような激痛が彼を襲った。
ふらりと倒れてハグリッドの肩から落ちそうになり、慌ててハーマイオニーがハリーを支える。
周りの者が見えていないかのようにローブの奴がハリーに近づいていこうとする。
そこにマリーが左の魔法の杖で殴りかかる。
それはローブの奴の左手に払いのけられた、だが。
だかだかっ!
蹄の音が鳴り響き、ローブの奴に長大な槍が付きこまれた。
月明かりに全身が金色にたなびくケンタウロスの姿が浮き上がる。
金色のケンタウロスがローブの奴に槍で
しかし、
ふわり
ローブの奴は重さを感じない動きで槍を避ける。
そしてハリーから視線を外す事無く、森の闇の中へと消えていった。