ホグワーツの凶犬~ハリー・ポッター×男塾~   作:黒羆屋

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どうも投稿が上手くいっていなかったので再アップです。


第26話 ローブの怪人物

「ふう、ふう、マリー、何があった?」

 追いついてきたハグリッドさんがそう尋ねます。

 私は左手で一角獣を指差します。

「なんと…、非道えことをする。

 動けない奴にこんなぶっとい針を…」

「あ、それ私」

「は?」

 あ、ハグリッドさん固まった。

「それ、もしかして『鍼灸マッサージ』!? 初めてみた…」

 おお、グレンジャーちゃんは知ってましたか。

 鍼灸治療。

 体に鍼灸針を打ち込んで刺激を与えることで身体機能の活性化を図る治療法ですね。

 まあ、一角獣って経絡の流れが馬に準じてるから出来たことですがね。

 男塾の知識でも、馬に乗って戦う奴がいまして、その人達のおかげで馬とかオオカミとか蛇、蝙蝠、蜘蛛wなんかの経絡はある程度目星がつくんですよ。

 今一角獣に打ちこんでる針はその逆で、筋肉の収縮と心肺機能の低下をさせることで生命活動ギリギリの状態を維持して、血液の流出とキズの壊死を少しでも遅らせてるんです。

 あんまり長い間やってると、むしろ死期が近づくけどね。

 すぐ近くにハグリッドさんが居るからこそできる手立てですね。

 で、ハグリッドさんが一角獣の手当てをしている間、みんなに事情説明をしました。

 

「ふぅむ、イッ角獣を狙う凄く強い人間型の奴、のぉ」

 ハグリッドさんは首を傾げてました。

 まあそうだよねえ、肉体的な強さなら狼人間とか巨人なんだろうけど、私の見た所あれは「武術」だったからねえ。

 しかし、一角獣の手当てはハグリッドさんが出来るとして、治癒させるにはどっか安静にできる所が必要だよねえ。

 どうしたもんだか、と考えていると。

「ハグリッド、先ほどの騒ぎは何だ?」

 どこぞで見たような人?達がそこに。

 下半身が巨大な馬の上半身人、ケンタウロスの方々だ。

 その内一人がポッター君に話しかけている。

 早くこの森を出た方が良い、と。

 …ポッター君、額を抑えてるね。

 あそこには確か有名な「傷」があったはず。

 どうやら早めに森を出ないとポッター君の負担になるかな?

 どうやら一角獣の治療が終わったらケンタウロスの方々が一角獣を引き取って休ませてくれるらしい。

 ハグリッドは彼らに付いて一角獣を運ぶんだと。

 で、

「私の名はフィレンツェ、よろしく」

 全体的に金色の毛を持つケンタウロスが私たち子どもの引率をしてくれるんだとか。

 ありがたい事です。

 

 道がてら、みんなに色々聞かれました。

「マリー、大丈夫なのか?」

 マルフォイ君が心配そうにそう声を掛けてくれます。

 ポッター君達が「え? あれドラコか?」とか言ってますがどういう事なのやら。

 あ、そう言や右肘、外れたまんまだったっけ。

 ちょっと待っててね。

 右手を地面につけて、左手を右肘に添えて、と。

 ふんぬっ!

 

 ごきゅん!

 

 中々にえげつない音を立てて、肘がはまりました。

 ちょっと痛い。

 周りの子達はさすがに引いてますね。

 まあ、普通は腕の関節外される、とか言う経験なんてないと思うけど。

 そしたら、

「ねえウェリントンさん、大丈夫? 痛くない?」

 ロングボトム君がそう気遣わしげに聞いてきます。

 なんでもロングボトム君は魔法の素質が開花するのが遅かったようで、この年で色々荒行みたいなのをさせられた事もあったとか。

 そん時に腕を脱臼した事もあったようなのですな。

 うむ、ぽやんとしたロングボトム君にそんな壮絶な過去があるとは思いもしませなんだ。

 マルフォイ君も意外そうな顔をしてます。

 さて、それよりも問題はポッター君ですかねえ。

 さっきから真っ青です。

 額の古傷の痛みが今までないくらいひどかったんだとか。

 フィレンツェさんがポッター君を労わってます。

 確かにふらっふらですもんね。

「そういや、今までにもそんな事あったの?」

 そう聞いてみました。

 会話が弾めば気分も晴れるかな、なんて。

 で、

「こんなこと今まで一度だって…、いや、そうじゃない。

 ええっと、そう、入学の時だ。

 そう、初めてスネイプと目があった時、あの時に傷が痛んだんだ…」

 ほほう、で、それ以降は?

「スネイプ先生とは散々「やりあって」るポッター君だと、目を合わせる事なんか散々あったんじゃないのかな?」

 私がそう言うんだけど、ポッター君は不思議そうに、

「そう言えばその後は一度もない」んだとか。

 不思議な話だね。

 スネイプ先生とポッター君の繋がり、か。

 スネイプ先生異様にポッター君嫌ってるもんねえ。

 とは言え、それだけでもない感じなんだけど。

 とにかくポッター君の傷とスネイプ先生、何の因果関係があるのやら。

 

 その後、何故あの怪人物が一角獣を狙ったか、という話になって。

 フィレンツェさんが「君達、一角獣の血が何に使われるか知ってますか?」

 と、問い掛けてきました。

 はて?

 なんかすっごい力を得る代わりに呪われる、くらいしか知りませんな。

 ポッター君達は、

「魔法薬学の時間に角とか尾の毛を使ったきり」

 って答えてます。

 フィレンツェさんは、

「一角獣の血は死の淵にいる時だって命を長らえさせてくれる。

 でも、それは恐ろしい代償を払わなければならない」

 んだと教えてくれました。

 自身の命を長らえるために一角獣を殺す者は、得られた命も完全ではない。

 その血が唇に触れた瞬間からその者は呪われた生を生きる。

 それは生きながらの死の命なのだと。

 生きながら永遠に呪われて死を生きる。

 中々に詩的な感じですが、まあ、何かを成し遂げたいとか、どうしても死んでたまるかっていう欲望を持つ輩ならそれを望みそうだなあ。

 藤堂兵衛とか。

 そしてそうなった瞬間、後悔して呪いを解いて普通に生きるための方法を手段を選ばず探し回るんだろうなあ。

 ん?

 どうやらポッター君とグレンジャーちゃんはなんか気が付いたっぽい。

「ハリー、もしかして…」

 あ、こっちが聞き耳立ててるのに気が付いた。

 それっきりポッター君とグレンジャーちゃんはこっち、というよりは私とマルフォイ君、ロングボトム君を気にして話を止めちゃいました。

 中々面白そうな事が聞けるかと思ったのに。

 

 で、ポッター君は頭の中で色々考えて、どうやらさっきのローブの存在を、

「あの人」

 ではないかと。

 そうすると額の痛みもなんとなく分かる、と。

 …乳児の時に刻み込まれた記憶が、ヴォルデモート卿を見た為に痛覚としてリフレインした、と。

 そんな感じなんかね。

 だけどなあ。

「…私はそうは思わない」

 私はポッター君にそう言った。

 

 

 

 額に傷を持つ少年ハリー・ポッターの言

 

 少女、マリー・ウェリントンはハリーに、

「私はそうは思わない」

 そう言い切った。

 ハリーにとって、先ほどの怪人物がヴォルデモートである事は事実として認識されていた。

 不完全な命ですら求める者、呪われた生を求める者。

 ヴォルデモートはすでに滅んでいる。

 ならば、不完全であろうと呪われていようと、現世に権限するためには手段と選んではいられないだろう。

 それに、「完全な生」を得るための方法ならある。

 ホグワーツに隠されている「賢者の石」だ。

 賢者の石から作りだされる「命の水」ならば、完全な生を与え、不老不死を実現することができるはずだ。

 そこまでマリーに、というかマリーに繋がっているセブルス・スネイプに「ハリー達が賢者の石に関して知っている」事を知られる訳にはいかない為に、話す事は出来ないが。

 だからこそ、ハリーは彼女がなぜそう言い切れるか、と尋ねたのだ。

 そうすると、

「だってさ、ヴォルデモート卿って、」

 そう言ったところで周囲から

「なんてことを!」

「呼んではいけない『あの人』の名前を呼ぶなんて」

「やめてよマリー! その名前は呼んじゃいけない!」

「なんと! 『あの人』の名を呼ぶ者が常命の者にまだいたとは…」

 と驚きとともに警告されていた。

 最も彼女は、

「いや、所詮名前じゃん、神様とか妖怪じゃあるまいし」

 とかぶつぶつ言っていたが。

「まあいいや、んじゃ『あの人』って大魔法使い、なんだよね」

 その通り。

 彼の魔法使いは圧倒的な魔法の力で11年前に魔法界を蹂躙した正に「悪の大魔法使い」だった。

 彼と戦う事が出来るのは「英雄」アルバス・ダンブルドアその人だけだった。

 ダンブルドアにだけはヴォルデモートは細心の注意を払って戦いを避けていた。

 だからなのか、ヴォルデモートはダンブルドアに敵わない、そうも言われていた。

 果たしてそうか。

 ダンブルドアは本当にヴォルデモートの敵足り得たのか。

 あくまで戦いになるだけの話で、実際に戦えば、ダンブルドアはヴォルデモートに勝てなかったのではないか。

 様々な憶測が飛ぶのだが、少なくともヴォルデモートは多くのマグルと、そして腕利きの魔法使いを屠って来た希代の魔法使いであったのは間違いない。

「でさ、そんな怪物じみた魔法使いが『肉体的に強くなる』意味って何?」

 彼女からそう聞かれて、皆は首を傾げた。

 それはどういうことか。

「だってさ、いちいち拳骨で殴って相手をやっつけるよりもさ。

 ヴォ、じゃなくて『あの人』って杖の一振りで人を殺せるし、服従させる事も出来るわけじゃない?

 じゃあ、毎日一生懸命サンドバッグ殴って、拳骨強くする意味ってある?」

 一同はさらに首を傾げる。

 喧嘩が強くなるのと、ヴォルデモートの強さと、何が関係があるのか。

 その疑問に、

「私がさっき戦った奴、間違いなく格闘術の功夫(クンフー)を積んでる。

 それも片手間じゃなく、確実に何年も研鑽を積んでると見た」

 と、マリーは返した。

 

 おもむろに、マリーは拳を構えた。

「ちょっと見て欲しいんだけど」

 彼女はそう言うと、皆の目にとまらぬ早業でパンチを繰り出し始めた。

 ひゅんひゅんとパンチが空を切る音が聞こえる。

 格闘の素人である彼らでも、このパンチがものすごく速いものである事は見て取れた。

「今のパンチ、全部避ける自信、あるかな?」

 一通りパンチを繰り出したマリーはそう皆に聞いた。

 子ども達はともかく、戦いの経験のあるフィレンツェですら、一撃も貰わない、とは言い切れない攻撃だった。

「このパンチを、あれは全部受け流したんだよね。

 しかも左手だけで」

 マリーはそう言った。

 ハリーは、受け流すという言葉がどういう意味かは分からなかった。

 ただ、あのスピードのパンチを一発も受けなかったというのは分かった。

「そんなん、魔法使いがやる意味ある?

 私らは後々攻撃を受け止める守れ(プロテゴ)を教わる訳だし、それ使えないと思う? 『例のあの人』が」

 そうマリーは言った。

 魔法使いを目指す子どもたちはそれはそうだ、と納得した。

 ただ一人、

(その守れ(プロテゴ)を逆に使ってピンボールやった(マリー)の言葉だと…)

 そうドラコは思ったが、多分これ言ったらマリーが不機嫌になると思って言わなかった。

 まあ実際、たかが学生の魔法と、大魔法使いの魔法が同じ威力という事はなかろう。

 マリーは、

「さっきの奴は間違いなく格闘技の修業を何年も積んでる。

 正直、魔法使いとして強い奴がやるこっちゃないんだよ。

 だから、違うと思うんだよね」

 そう締めた。

 しかし、それならあの傷の痛みは何なのか。

 ハリーにとって、謎は深まるばかりだった。




多分マリーは猿、鼠、魚(ピラニア)、蜂類、象など針治療できると思われます。
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