七月に入る前に、私はテスト対策を始めていた。
というのも、だ。
「なあマリー、魔法史がさあ…」
ああはいはい、クラッブ君その時間大体寝てるからね。
ある程度はまとめてあるからこのノート参考にして勉強してみて。
「そうかありがとう。
でさ、薬草学なんだが…」
そっちはまた別にまとめてあるよ。
良かったら見る?
あと、「普通の生徒用」に魔法薬学のノートもまとめてあるし、ノート取った分と照らし合わせてみる?
「うぉありがてえ!
んじゃさ、妖精の呪文の実習の方は」
みんなでちょっと練習し直してみようか。
そっちは私も得意じゃないし。
マルフォイ君とかに頼んで見てもらおうよ。
「だな、ドラコさん呪文の実習は得意だし」
なら、みんなでテスト対策しない?
とにかく、スリザリン全体で成績上げれば恰好も良いってもんじゃないかな。
「なるほど、 グレゴリー達にも声掛けてみよう。
マリーは女子に声掛けて来たら?」
マルフォイ君にそう言われて、私は女の子達にテスト勉強みんなでやろう、と声を掛けました。
私の寮室の子達はみんな参加(パーキンソンちゃんはマルフォイ君狙いっぽい?)、他の寮室の子もちらほら、って感じかね。
マルフォイ君が声を掛けた人達はセオドール・ノット君とか、ブレーズ・ザビニ君なんかが勉強会に参加。
因みにゴイル君は強制的に参加です。
「なんで…」
駄目だよーゴイル君、逃がさないからねー。
私の周りで赤点とか許さん。
意地(物理)でも赤点回避してもらうからねー。
「マリー、目が怖いぞ…」
ぬははははぁっ!
口から煙を吐いてそうな人達がちらほら。
今まで予習復習をきちんとしてた人達は大丈夫。
男子はマルフォイ君は当然、ノット君とかザビニ君、女子だとパーキンソンちゃんとかだね。
私もみんなのノート見せてもらって、かなり参考になりました。
ありがたい事です。
一方煙を吹いてる人達は、男子はクラッブ君にゴイル君、女子はミリセント・ブルストロードちゃんとかですね。
「し、死ぬ…」
「もうダメ…」
クラッブ君、ゴイル君、そこまで?
「「そこまで…」」
しょうがないなあ、まあそろそろ糖分取っとかないと頭も動かないかな?
「ん。じゃあちょっと待ってて」
そう言うと、私は寮の外に出た。
向かうは厨房。
「ごめんよ、準備出来てる?」
そう聞くと、厨房で頑張ってた屋敷しもべ妖精達が、
「はい、お嬢様、こちらにお出来になってございます」
と、微妙にずれた敬語でお話しやがります(さらに間違い)。
そこにあったのはお茶会セット。
とは言っても正式な物じゃなくて簡単な奴だけどね。
ティーポットには良い感じで沸かしてある紅茶、それから各種お菓子。
クッキーとかクレープボールとか、小さめのチーズボールとか、軽くつまめて「暴れない」やつ。
それを持って寮へと戻ります。
途中でピーブスが襲撃してきましたが華麗にスルー。
血まみれ男爵の助けもあって、問題なく寮に戻る事が出来ました。
そして、
「ほーい皆の衆、おやつだよー!」
この一言で知恵熱から煙を吹いていた一団が復活!
「うめえ!」
「目が覚めるぜ…」
「甘いもの最高!」
さすがに受けがいいですな。
紅茶には数種類のミルクと砂糖、蜂蜜数種、メープルシロップとかも用意。
菓子類はまとめて簡単に作れるたこ焼き器を使ったクレープボールとかチーズボールとか。
甘いもの好きにはクレープボールと渋目の紅茶、がっつり食べたい子にはチーズボールとミルクティーというところかな。
これこれクラッブ君にゴイル君、みんなの分も食べちゃだめでしょ。
しょうがないなあ、予想通りなんで追加のサンドイッチ。
これも出しとこうか。
ちなみにこんだけ食べて次は眠いとか言ったら…。
「な、なんだよ」
「脅しには屈しないぞ!」
いや、私のトレーニングに付きあって貰おうかなって…。
「「寝ません!」」
速攻反応するほど嫌か。
この勉強会、テストまで週1で行われる事になり、回を重ねる毎に人数が増え、最終的にスリザリン寮1年生のほぼ全員が参加することになりました。
おかげでお菓子代が馬鹿にならなくなり…、と思いきや、やっぱりみんなそこそこ上流の子ばかりなんで、自分のひいきのお菓子屋さんからいろんなものを取り寄せて、中々に煌びやかなお茶会を開く事が出来ました。
いやあ上流階級のお菓子って美味しいよねえ。
本番ではみんな実力を発揮できれば結果は付いてくる、そう思います。
さて、学年末テストが終わりました。
こっからは実質フリータイムですな。
「試験終了おつかれー!」
あちこちで健闘を称えあう声が聞こえます。
んで、その中で憂鬱そうな顔をしている奴が一人。
ハリー・ポッター君です。
よっぽど悪かったんでしょうか、青い顔をしてます。
まあ、それよりも隣のウィーズリー君の方が問題かと。
ものっそいすっきりした顔をしてますなあ。
「やるだけやった」、というよりは「もうどうにでもなれ」って感じに見えるんだよね。
ポッター君は安心していいと思うよ。
さて、最近全く顔出せてなかったし、「暴れ柳」のとこ行って、ちょっと体動かすかねえ。
ひゅんひゅんと鞭のように柳の枝が叩きつけられる。
それをある時は避け、ある時は受け流して捌いていく。
それを十分くらい続けたろうか。
だんだんと枝のスピードが落ちて来て、やがて落ち着きました。
ふう、良い運動した。
暴れ柳の方も体?を動かしてすっきりしたのか、だいぶ穏やかな雰囲気になってます。
テストの分もあってちょっと疲れましたし、ここいらでお昼寝と洒落込みますかね。
私は暴れ柳にもたれかかってひと眠りしたのでした。
その夜。
「フラッフィー、ご飯だよー」
私は三頭犬のフラッフィーにご飯を持って来ていました。
あれから月に二~三回ハグリッドさんとここに来て、フラッフィーにハグリッドさん謹製のドッグフードを食べさせてたんですよ。
おかげで今じゃ「ご飯をくれる人」という認識を持ってくれたようで、まだ警戒はされてますがとりあえずハグリッドさん抜きでもいきなり噛みつかれることが無くなりました。
ふっ、これでスネイプ先生に勝る所が一つは出来たという事!
…こんなこと言ったら鼻で笑われそうだなあ。
「たあんと食べてねえ、元気で過ごしてもらわにゃ」
おっと、ちょびっとハグリッドさんの口調が移っちゃったかね。
もりもりとドッグフードを三つの頭で食べるフラッフィーを見ながら、一度この仔を思いっきり外で走らせてあげたいなあ、と思う私でした。
フラッフィーがお腹いっぱいになったのを見ると、私はドッグフードを詰めてきた容器を背中に背負って帰り支度。
「フラッフィー、また来るからね」
そう言うと、フラッフィーが尻尾を振って挨拶してくれます。
ちょっとは愛想を振りまいてくれるようになったなあ。
結構嬉しい。
で、部屋から出て、玄関の方へと暫く歩いて。
「あ、やべっ!」
鍵をかけ忘れた!
さすがにそれはまずい!
試験が終わってちょっと気が緩んでたか!?
万が一にも関係ない奴が入り込んでフラッフィーに食われでもしたら。
フラッフィーが殺処分されかねない!
それだと後悔してもしきれない。
私は箱を廊下に置くと、大慌てでフラッフィーの元へと戻るのでした。
やっぱりかけ忘れてる。
中でスプラッタな事が起きてませんように…。
そおっと扉をあえて中を除くと、フラッフィーが狂ったように吠えたてている。
「フラッフィー! どうしたの!?」
これはどう見ても緊急事態。
よく見ると、フラッフィーが守ってるはずの床にある扉が開いている!
私の顔を見ると、ぴすぴすと鼻を鳴らして不安だと告げてきます。
一生懸命守ってたのに不審者に通られちゃったんだもんね、不安だよね。
私はどさくさにまぎれて三頭犬の鼻面を撫でます。
ちょっと冷たくて気持ちいい、じゃなくて。
これは不味い!
そう思って私は廊下に出て、大声で叫びました。
「誰か、誰か来て下さい! 緊急事態です!」
自慢じゃありませんが私は声がでかい。
大声を張り上げると、近くにあるガラス窓くらいは壊せるくらいの声量があります。
その大声ですら誰も来ない。
幽霊達も寄ってこない。
…これはおかしい。
もしかして、何らかの「結界」が敷かれてるのか?
結界ってのは「内と外を区切る事」なんです。
この場合の結界とは一定範囲から音とか光とか、情報が出たり入ったりしない魔法的な区切りって意味です。
かなり用意周到に仕組んでるっぽいなこれ。
そうなると、このまま助けを呼びに走ったとしても、外に出られないとか誰にも会えないとかいろいろありそうだ。
…しゃあない。
私は部屋の中に入って、様子を確かめることにしたのでした。
開いていた扉:透明マントを所有する少年ハリー・ポッターの言
ハリー・ポッターは親友のロン・ウィーズリーとハーマイオニー・グレンジャーと共に、「賢者の石」をセブルス・スネイプから守るため、三頭犬の護る部屋へと侵入しようとしていた。
「妖精の魔法」の授業がある教室の先、三頭犬が守護する部屋の前まで彼らはやって来た。
鍵が掛かっていない事に不審を覚えつつ、三人は部屋に入る。
目の前には歯をむき出して唸る巨大な三つの犬の頭。
ギリシャ神話に置ける地獄の番犬のように、この犬は音楽で眠らせることができる。
そして、三頭犬の足もとには竪琴が落ちている。
きっとスネイプが使ったに違いない。
もう敵は大分先まで言ってしまっているのかも知れない。
そして「賢者の石」を使えばダンブルドア校長が居ないホグワーツに悪の大魔法使いヴォルデモートが復活するのだ。
彼は間違いなくハリーの命を狙って来る、ハリーにはそれが分かっていた。
人はそれを「運命」と呼ぶのかもしれない。
運命と戦うために、ハリーはハーマイオニーに三頭犬を眠らせるための笛を使ってもらい、床にある扉を開け、そこへと飛び込んでいった。
開けっ放しになった床の扉、その脇に転がっている竪琴。
なるほど、フラッフィーを竪琴の音楽で眠らせ、その隙に飛び込んだ訳か。
フラッフィーは申し訳なさそうにしゃがんでます。
いつもの威風堂々都は正反対の、庇護欲をそそられるそのたたずまい(人によって感じ方には個人差があります)。
もうかわいそうでついつい抱きしめちゃいましたよ。
ああモフモフ。
とは言え、何時までもそうはしてられません。
もふラッフィーを悲しませた輩には鉄槌を!
ちょっと行って殴りとばしてきましょうか。
本当はフラッフィー自身にやって貰うのが一番なんだけど、この仔床の扉入れるほど小さくないんですよね。
だから、
「フラッフィー、ちょっと行って犯人ふん捕えて来るね」
フラッフィーを三撫で(頭一つに付き一回)して、私は扉の中に飛び込みました。
飛び降りつつ、
「ぬぅっ!
両手で魔法の杖を回転させ、ヘリコプターのように飛行する、のは無理だけど、余計な重りがなければゆっくりと降下するくらいは楽にできるんだよね。
大体百mくらいかな、下の方に何か見えます。
ええっとあれは…、あ、ちょっとまずいかな。
穴の下、そこには植物らしいものがびっしりと敷き詰められています。
確かこれって「悪魔の罠」。
相手に絡みつき、絞め殺す蔦植物で、炎とか太陽の光に弱いんだよね。
だけどね。
着地した瞬間に足に絡みついてくる蔦。
それを、
「ふんっ!」
ぶっちぶちと千切りつつ、ラッセル車のように前進。
悪いけど、数絡みつかれる前に出口に行ってしまえば問題ない!
「らぁららららぁっ!!」
不安定な足場なんて、南朝寺教体拳の歩法の前には問題ない。
さっさかと次の部屋へと移動します。